1日更新が遅れましたが、名古屋オープン2日目のレポートです。初日で3連勝となった私は、2R で南條くん、3R で青嶋くんを破った三ツ矢さんとの全勝対決を迎えます。昨年、初のオリンピアードも経験し、次回のオリンピアード参加権利も獲得している三ツ矢さんは、この2年間で本当に強くなったと思います。
私は相手キングの前を開き、確実にチャンスを作ったはずでした。しかし、決定的な決め手が分からず、ポジションを難しくしてしまいます。
36... Qf1+?
ところが、三ツ矢さんは時間切迫でドローのチャンスを逃します。私は試合後の検討で、36... d3! とシンプルにポーンを突く手を指摘しました。私は本譜のように、Rg8-Rg6 と指して、f6 のポーンを取ってチェックしつつ、クイーンを取るスレットを作りたかったのですが、それにはQf2-Qe1+ でチェックを外し、さらにdポーンを突き進めるプランで対抗することができます。(すぐにQf2-Qe1+ を入れないのは、f6 のポーンをすぐに取られないようにするためです。)こうなると黒のパスポーンは非常にプロモーションできそうなので、白はパペチュアルチェックでドローにするしかなかったでしょう。
37. Ka2 d3 38. Rg6!
今度はクイーンがfファイルにいたままなので、f6 取りがクイーン取りのスレットになってしまいます。こうして、ポーンが3段目にいる状態でf6 を回収し、ルークがディフェンスに回ることができれば、黒は駒得のリードを活かしたプレーができます。
39... Kc5 39. Rxf6 Qd1 40. Rf5+ Kb6 41. Rf1 Qe2 42. Qf2+!?
時間切迫により、クイーンを残して攻め切れるか読めなかったため、安全策でクイーン交換したエンドゲームを選択します。
42... Kb5 43. Qxe2 dxe2 44. Re1 Nd4 45. b3!+-
これでc4 のマスへの侵入を防げば、e2 のポーンは問題なく捌けるので、白の勝ちとなります。逆にこの手以外は、黒が大逆転で勝つでしょう。
45... Kc5 46. Kb2 Kd5 47. Kc3 Ke4 48. Kd2 Kf4 49. Kd3 Nxb3 50. Kxe2 Kg3 51. Kf1 Nd2+ 52. Kg1 Kf4 53. Re7 1-0
こうして単独4連勝を決め、優勝へと一歩近づきました。次は隣のボードで優位に試合を進めるSimon が上がってくるかと思いましたが、なんと大逆転で北神さんが勝利。私と3.5P の北神さんが、トッポボードで対戦となります。昨年の名古屋オープンでポイントを落とし、優勝を逃した悔しい一戦と同じペアリングです。
早い段階で2ポーンアップとなり、これは5連勝なるかと思っていたところ、自分の読み抜けに気づいて少し焦ります。b7 のナイトがc5 に逃げれば、Nb4-Nc2 で守りのクイーンを外されてしまいます。どうしたものかと頭をひねっていると、実にクリエイティブな手を思いつき、試してみることにしました。
21. Nxg6!?
私が指したい誘惑に逆らえなかったのはこの手です。初見では何事かと思うかもしれませんが、白はすでに2ポーンを得ているため、こうした大胆な作戦に出ることができます。代わりにコンピュータが示したのはシンプルな変化で、21. g4! Be6 22. Rd2! (これでNb4-Nc2 を防げば、次に白はナイトを逃がすことができます。) 22... Rxb7? 23. Bxb7 Qxb7 24. Rd8+ Bf8 25. Qh6+- 不思議なことに、クイーンがこのように跳びこむ手を見落としていました。上手く捌けば、Rxb7 はスレットになっていなかったんですね。
21... hxg6
これは素直すぎて、私であれば指すのを躊躇します。21... Rxb7 22. Nxe7+ (22. Nh4!? Bc8 23. Bxb7 Bxb7 24. Nf5!+- 私はこれで勝ちだと試合中に読んでいました。2ピースルークでも、白は3ポーンを得ていて、しかも黒キングの守りはガタガタです。) 22... Qxe7 23. Bxb7 Qxe3 24. fxe3+- これも白は最初の駒得のリードで、2ピースルークながら、4ポーンをゲットしています。後は丁寧に指せば勝てるでしょう。
22. Be5 Nfd5
黒はb8 のルークを取らせては、次のRd1-Rd8 でゲームオーバーなので、こう指すしかありません。しかしこれであれば、白はピースを取り返して、駒得の大きいエンドゲームに突入することができます。
23. Bxc7 Nxe3 24. fxe3 Rc8 25. Rd8+ Rxd8 26. Bxd8+-
これでピースを捌き、3ポーンアップのエンドゲームとなります。ここから白は多少マテリアルを返しても、cポーンをメインの武器に戦います。
26... Nxa2 27. Bxe7 Nc1 28. c5 Nxe2+ 29. Kf2 Nc3 30. Nd6 Be6 31. c6 Nb5 32. Nxb5 axb5 33. b4!?
ここはどちらか迷いましたが、今振り返れば、c7 までポーンを指しておくほうが簡単そうです。33. c7! Be5 34. Bd8 Bc8 35. Bc6 b4 36. e4+- 黒はどうすることもできません。
33... Be5 34. g4 f5 35. gxf5 Bxf5 36. Bf1 Kf7 37. Bc5 Ke6 38. Bxb5 Kd5 39. Bb6 Bxh3 40. c7 Bc8 41. Ba5 g5 42. Ba4 Bc3 43. Bc2 Kc4 44. Bg6!
最後は、どのようにc8 のブロッケードを外すかですが、bポーンを進めることと、f5 でビショップをぶつける2つのアイディアを思いついたので、それでゲームオーバーでしょう。
44... Bxb4 45. Bxb4 Kxb4 46. e4 Kc5 47. Bf5 Bb7 48. c8=Q+ Bxc8 49. Bxc8 Kd4 50. Bf5 Ke5 51. Kg3 1-0
これでジャパンリーグ同様、5連勝を達成して、ひとまず優勝を確実にしました。隣のボードのPhan - 南條戦は、序盤から黒がうまく指していましたが、Phan さんが中盤、ちょっとしたタクティクスで駒得し、そのまま黒キングを捕まえました。南條くんは今回、かなりやらかしています...
4勝1敗のPhan さんが1P 差で追ってくるため、最終戦で負ければ同率もありえる状況でした。最後はジャパンリーグと同じく、青嶋くんに黒を持ち、今度は長い長いファイティングゲームに。一つ勝つチャンスがありましたが、それを逃したためにドローに落ち着きました。こうして6試合を戦い、青嶋くんとのドロー以外は全て勝って、5.5P での優勝です。名古屋オープンは、2011年以来の優勝でした。
1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2465) 5.5/6
2nd Place Kitagami, T (USA, 2190) 4.5/6
3rd Place Phan, N (VIE, 2220) 4.5/6
2nd Place Kitagami, T (USA, 2190) 4.5/6
3rd Place Phan, N (VIE, 2220) 4.5/6
今回の名古屋オープンは、2人のIM とプロ棋士の青嶋くん、さらに2200台クラスの実力者も集まり、私が過去参加した名古屋オープンの中で、最もレベルが高かったと思います。(私が参加をパスした中では、GM Baburin とIM Collins が参加した2009年の名古屋オープンが、過去最高のレベルだったでしょう) そんな大会で優勝できたことは、素直に嬉しく思いますし、名古屋地域のプレーヤーとも交流できたので、今回の遠征も非常に充実したものとなりました。また10月には中部快速オープンが開催されるため、詳細を確認してから、参加を検討しようと思います。名古屋オープンの参加者と運営の堀江さん、皆さんお疲れ様でした!
名古屋最後の夕飯は、エスカの海老どて食堂へ。ここは店内に巨大なエビフライの模型があり、その写真を撮るためだけに店内に入ろうとする人もいます(笑) 日本で一番大きいという35cm のエビフライは注文しませんでしたが、23cm の通常のエビフライと、初めて見る開きのエビフライ、さらに刺身などがついたセットはボリューム満点でした! また次回の遠征でも、名古屋グルメを満喫したいと思います。(ちなみに今回も、栄地下街、緋毬のかき氷は逃しました...無念)
0 件のコメント:
コメントを投稿