2014/03/08

A Story of Rating Calculation


今夜はどういった話題にするか少し悩んでいましたが、今まであまり語ったことのなかった、レイティング計算の話にしようと思います。これは私がチェコのトーナメント中に思いついたことでしたが、ふと昨晩思い出したので、このタイミングで記事にしてみます。あまりこの話題に興味のない人にとっては退屈な記事かもしれませんが、少しだけお付き合いください。

レイティングというプレーヤーの実力を表す数値は、試合をして勝てば上がりますし、負ければ下がります。それでは、その変動数がどのように決定されるはご存知でしょうか。レイティングの変動を簡単に説明すると、1試合をこなして、その結果から相手のレイティングとの差から定まる期待値を引き、係数をかけた数字だけ上昇します。文章だけだと少しわかりにくいので、式にします。

(試合で獲得したポイント - 期待値) × 係数

FIDE のサイトでは、レイティングの計算式が公開されており、この式と各自の係数を知ることができます。実際この式に数値を当てはめて考えてみましょう。私がレイティングの同じ相手と1試合して勝った場合、得られるポイントの期待値は0.5(勝率50%)、レイティング2400に到達したことのないプレーヤーの係数は15 であるため、

(1 - 0.5) × 15 = 7.5

こうして7.5 レイティングが上昇すると計算できます。相手側は獲得ポイントが0であるため、7.5 マイナスです。ちなみに、既定の30試合をまだこなしていないプレーヤーは係数が30、2400に一度でも到達したことのあるプレーヤーは係数が10となります。つまり、30試合をまだこなしていないプレーヤーは、同じレイティングの相手に1回勝って15、2400に到達したことのあるプレーヤーは、5上がるという計算になります。国内のレイティングはもう少し係数が細かく設定されていますが、基本的に計算式は同じはずです。

ちなみに、レイティングは100高い相手との1試合の期待値は0.36(勝率が36%)、200高い相手との1試合の期待値は0.24(勝率24%)とされており、これらは公開されていませんが、FIDE のRatings Change Calculator のページ で、適当に数値を当てはめていけば、知ることができます。

そして1試合して得られるポイントは、勝ちで1、引き分けで0.5、負けで0 の3通りしかありません。このシンプルな計算式で全てのレイティングの変動が求まるため、勝ちと負けで各自の係数分(私であれば15)、レイティング差がつくということが分かります。勝ちとドローでも係数の半分、私であれば7.5 の差が付きます。これって結構大きいですよね。私はチェコのBrno Open で最終戦を終えた後、このことについて深く考えてみました。


Semenova, E - Kojima, S
Position After 31.b3

Brno Open の最終戦、私はここから優勢を築きましたが、ちょっとした判断ミスでイコールに戻し、最後のエンドゲームでは負ける変化すらありました。最終的には相手も間違えたことでドローに落ち着き、私のこの大会のレイティング変動は-3.6 と確定したのですが、私はこのゲーム内容と数字を見て、つくづく思ったのです。レイティングが上がるも下がるも紙一重なのだなと。

先日、森内さんの覆す力を読んでいても思いましたが、勝負の結果がどちらに傾くかというのは、非常に危ういバランスの上に成り立っており、たった1手のミスでどちらにも転びうるでしょう。チェスの場合、勝ちと引き分け、引き分けと負けも、両者の細かいミスによってどちらにもなりえます。(時には勝ちから負けも!) それを踏まえると、レイティング3.9のプラスと、3.6 のマイナスというのは、本当に小さな差で生まれると考えることができます。こうしたことは理屈の上では誰でも理解できることですが、私にとっては遠征中に、2400という目標のためにレイティングを少しでも稼ごうと、必死にプレーする中で強く実感できたことです。

長くなりつつあるので、そろそろまとめます。こうして時にはたった1手の判断が、1試合でのレイティング変動差を生むわけですが、それが1試合、2試合と続いていけば、どんどんと厚いものになっていくでしょう。そうした1手の判断を正確にしていくことが、実力を上げるという1つの考え方であり、結果の紙一重を自分側に引き寄せられる(引き分けではなく勝ちに、負けではなく引き分けに) プレーヤーを、実力者と呼ぶことができるのだと思います。レイティングという数字ばかりを追わないほうが結果がついてくることもありますが、レイティングはシビアに結果を反映するものですし、やはりレイティングの上昇はモチベーションの向上につながります。Brno Open のSemenova 戦のような危ういゲームを反省しながら、手の正確性を上げていくというのは、レイティングを上げていく1つの有効な手段だと考えています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

将棋ウオーズはID作ってませんが トライというのは チェスで言うと 黒キングがe1に来たら黒勝ち とかそんな感じみたいです▼o・~・o▼

Shinya_Kojima さんのコメント...

引き分けを極力減らそうとして生まれたルールらしいですね。理解しました ( ̄^ ̄)ゞ

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