報告が2日遅れましたが、日曜日は森下文化センターで開催された、11th International Solving Contest に参加してきました。プロブレムを解く大会への参加は初めてで、どれだけできるか少し緊張気味の朝でした。会場に集まったのは少人数でしたが、それでも桑田くん、塩見さん、龍二さんというIVL メンバーがいたので一安心。2時間で6問のプロブレムを、世界中の愛好家たちがいっせいに解く(時差はありますが、どこも1月25日開催です。)、ISC への初挑戦です。日本の運営責任者である若島さんが問題と解答用紙を配り、スタートの合図で始めるのは、大学の試験のようですね。
前半の1R で出た3手メイトがこちらです。怪しげな白のポーンと、ルークが取られそうなところが気になります。私は最初、最も自然な1. Rg5 でメイトになると考えていました。1. Rg5 e3 2. Qd3! (3. Qd5#), 1... axb5 2. Qa7! (3. Qa7#), 1... d6 2. Qxa6! (2... dxe5 3. b7# 2... e3 3. Qc8#) 1... d5 2. Qb3! (2... dxc4 3. Qxc4#, 2... d4 3. c5# 2... e3 3. cxd5#) このように、全て違う形でチェックメイトにできるため、非常によくできた問題だと感心します。
しかし、1... a5! だけに対しては、残り2手でメイトにする方法がありません。私はこれに気づいて焦り、時間をかなり使って考え直しました。上に書いたいくつもの美しいメイトが、たまたまで本筋とは全く関係ないとは思えません。ならばクイーンはb3 に残したままで、ルークを捨ててもメイトになる方法を見つけました。
1. Bg7!
f5 のルークを取らせた際、e5 のポーンまで取られてしまっては、黒キングに逃げられてしまいます。そこでビショップでポーンを守り、d6 のマスや、Kd6-Ke5-Kd4 といった逃走ルートを消しておきます。また、2. Rf7! と次に指せれば、3. Rxe7# を防ぐ方法がありません。
1... gxf5
他のあらゆる手は、上に記した変化ですべてメイトになります。
2. Qh3! fxg4
他の手であれば、全て3. gxf5# となります。
3... Qxg4#
1. Rg5 は、この問題の製作者によるトラップなのでしょう。1... a5 に気づかなければ、正解だと勘違いしてしまいます。しかし、ポーンで攻撃されているルークが逃げるような、実戦的かつ自然な手が、こうしたプロブレムの答えであるはずがありません! こうしたことに気づき、製作者の意図を読み取ることが、プロブレムを解くカギとなります。
そして初参加の私にとって驚きだったのは、参加者の全員がこうして複数のチェスセットを持ってきていたことです。解けないポジションをいつまでも考えているより、他のポジションに切り替えたほうが効率が良いのは、普通の試験と同じでしょう。その際、いちいちポジションを並べ直すのは手間ですし、時間のロスです。そのため、こうして複数のチェスセットを用意するのが当然のことだそうです。しかし、龍二さんが問題と同じ、6つのチェスセットを持ってきたことには驚きました(笑)
私にとって、2手、3手メイト、エンドゲームはなんとかなりましたが、5手、6手メイト、ヘルプメイト、セルフメイトは全く歯が立ちませんでした。ヘルプメイトは、黒から始めて両者が協力し、指定の手数でメイトにする問題です。例えば上の図は2手メイトなので、黒、白、黒、白が指して黒キングをメイトにする手順を3通り答えます。午前のヘルプは3手でしたのでお手上げでしたが、午後のこちらは2手なので、なんとかなるだろうと思いました。思いましたが... 全然だめです。普通のチェスでは、相手もメイトになるために協力するということがありえないので、そこは完全に頭を切り替えないといけません。こちらの問題の答えの分かった方は、コメント欄にどうぞ。(28日追記、前夜の更新では、b4 に黒ポーンを入れるのを忘れていました。すみません。)
私は4時間かけて12問を解き、60点満点で23点、日本の参加者13名のうち、龍二さんに次いで5位でした。初参加で20点を超えるのは上出来だそうですが、私としてはエンドゲームを完答できなかったことに不満が残ります。他の国の結果も含めた順位は、ISC の公式HP で確認ができます。イングランドのGM John Nunn がエンドゲームを間違えているのは意外ですね...
会場にはチェスプロブレムを扱った機関誌や書籍が置いてありました。指定のポジションがどのような手順で現れたのかを答える、Proof Game の問題集は、製作者の橋本さんから購入させていただきました。Proof Game については、また後日記事を書くかもしれません。
打ち上げはにゃんこのいる中華料理屋で、6時間ほど飲みながら、様々な話しをしていました。昨年の9月以来となる若島さんだけでなく、数年ぶりにお会いする元日本チャンピオン、鈴木知道との再会も嬉しかったです。そして今回、普段とは違うチェスの世界を垣間見ることができたことは、非常に興味深く、チェスには様々な楽しみ方があることが分かりました。日本ではマイナーなチェスの中でも、さらにマニアックなチェスプロブレムの世界ですが、また機会を見て関わっていきたいですね。
12 件のコメント:
ぁぁぁ、b4に黒ポーンが置かれてる・・・。Nb4 e6 Nd5 Rf7かRe8#とかいう筋を考えてましたのに・・・。
ぁ、黒h7がいるからそれも違いますな・・・w
じゃぁ、Qxe5 Bxh7 Qe6 Rxg5# ですかね・・・ひとつは。いっぱいコメントしてすいません。。
シームさん ご無沙汰しています。コメントありがとうございます。
そう! b4 にポーンがあったんですよ。すみません、今日のお昼に追加しました。そして1つ目のメイトは、それで正解です。若島さんいわく、この形はそのピンメイトが本筋で、あとは若干邪道なメイト形らしいです。
2通り目ですが、Nb2 e6 Rd7+ exd7# でいかがでしょうか・・・。未だにg3のビショップの意味が分かっていませんww
2通り目 Nxe5 Rxe5 + Kd4 Re5d4
3〃 Nxc5 e6 Nxe6 Rg5
シームさん
それで二つ目はオッケーです。三つ目も頑張ってください (^ー^)ノ
タイムオーバーさん
コメントありがとうございます。g6 のビショップでの、ディスカバードチェックによるチェックメイトは狙いたいのですが、h7 にあるポーンが曲者で、ビショップを取られてしまいますね。
Bh4w Rxf4 Kxf4w Rf8w
3通り目、出来ました。
Re7 Rf6 Kxe5 Rd6#
最後ですので、ちょっと長いコメントになりますがご容赦下さい。
この問題を含めて6問を、たったの2時間で解答される参加者の皆様には脱帽です。
あとこの1問だけを見ても作品として素晴らしかったのは、黒a8ルークがc8のビショップが動くことで、白のチェックを防ぎながら逆チェックになるという防御を用意しており、一筋縄ではいかないことです。
さらに、小島さんが最初に忘れていた黒b4のポーンですが(←しつこいw)、ここに配置されていないと、
Nb4 Ref8 Nd5 Rxf4# という変化が生じてしまいます。
黒g3のビショップが無いと(ポーンでもよさそうですが、デザイン性でしょうか、そこはわかりませんでした)、
g3 e6 f3 exf3# という変化が生じてしまうため、これも消しておく必要があります。
最後に、白のc5のポーンが謎でした。
先に考えた2通りのメイトの形(変化)、1.Qxe5 1.Nb2 では、白のc5のポーンは機能していません。
これでもし、最後の答えがNxc5という手が入ってしまえば、もともと白のc5ポーンが必要なかったことになります。
しかし、なかなかこの白のc5のポーンを使う変化が見えずに、結局こんなにも時間が掛かってしまいました。
これだけの完成度の作品を作る人ももっと評価されていいと思うのです。
ブログでこの素晴らしい作品を私たちに提供していただき、ありがとうございました。
1週間たっぷり楽しみました。
あ、正確には、
Re7 Rf6+ Kxe5 Rd6# ですな・・・。
シームさん、色々とコメントありがとうございました。詰将棋に慣れている方からすれば、全ての駒の位置に製作者の意図が込められていることを理解できるのでしょうが、私たちはまだまだです。g3 のビショップや、c5 のポーンについてまで考えてくださって、こちらこそありがとうございました!
ちなみに答えをまとめておきましょう。記事に書いた公式HP からも確認できますが、棋譜の表記方法が違うので、私も確認するのに苦労しました(笑)
1... Nb2 2. e6 Rd7+ 3. exd7#
1... Qxe5 2. Bxh7 Qe6 3. Rxg5#
1... Re7 2. Rf6+ Kxe5 3. Rd6#
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