2013/12/11

2013年後半の遠征を振り返って

スペインバルセロナから2回目の更新です。無事に家に帰るまでが遠征ですが、一応試合はすべて終了しているので、今回の遠征を通して改めて感じたことや、今後のことについて、いくつか書き出してみようと思います。ちょっと長くなりそうなので、あまり興味のない人は適当に読み飛ばしてください(笑)

(1) 3つ目のIM ノームについて


今回の3か月に渡る遠征の最大の目標は、何といっても2月までの遠征で取り損ねた、3つ目のIMノームの獲得でした。すでにこちらのブログでは経緯を説明していますが、10月のFirst Saturday の最終戦で敗れたことで、一度はこの大会でのノーム獲得は無理だと思われました。しかし、ハンガリーチェス連盟の協力もあり、11月のFIDE Congress で、9R までの戦績でのノームが認められることとなり、私としては大変嬉しかったです。日本人として初めてのIM Elect になれたことは、今回の遠征の最低限のハードルクリアと言えるでしょう。今回の遠征中、たくさんの応援メッセージを送ってくださった皆さん、そしてノーム獲得が決まった11月半ばに、お祝いのメッセージを送ってくださった皆さんには、改めてこの場で感謝の言葉をお送りしたいと思います。

(2) レイティング2400到達について

こちらはノームを3つ揃えることよりも苦労しています。私が今、ノームを取れるような戦績で連続3大会をプレーできれば、レイティングは2400に到達するでしょう。しかし、良い時があれば悪い時もあるのが人間というもので、なかなかそう簡単にはいきません。実際、ノームを揃えてから2400到達までに、数年かかっているプレーヤーもいます。マヨルカの大会を終えても、私のレイティングは2350台でストップしており、残りの50弱を稼ぐにはもう少し時間が必要です。こちらは私にとって、来年クリアすべき次なる目標となるでしょう。こちらも、なるべく早くに達成したいですね。

(3) ノビサドのトーナメントについて

ノビサドの大会は初めてのセミクローズドで、IM セクションと言いながらGM がいたり、IM ノームの最低基準である平均レイティング2230を超えない可能性があったりと、なかなか怪しいシステムでした。それでも、ノビサド自体は良い街だったと思いますし、宿や値段も納得できるレベルでした。オーガナイザーのGM Sinisa も親切で良い人でしたね。今後、日本からわざわざセルビアに飛ぼうとはあまり思いませんが、ハンガリーを拠点にするのであれば、セルビアの大会は気楽に足を伸ばしやすいと思います。

(4) アグリジェントのトーナメントについて


シチリア、アグリジェントの大会は3泊4日で7R という弾丸日程でしたが、ヨーロッパの代表クラスであるGM 2人と対戦できたのは良い経験でした。(結果もついてくれば、なお良かったのですが...) そして、この大会を調べていて気づいたことですが、イタリアは意外と賞金付きのオープン大会が多く、その一部はFIDE の大会HP に掲載されていません。(ここ重要!) イタリアの大会を探すためには、こちらのHP をチェックするのが良いでしょう。

そしてもう1つ、重要なことです。イタリアで開催されている各大会の賞金額は様々ですが、おそらく優勝賞金が500ユーロを超えると、GM が参加するようになります。GM は(基本的には)チェスのプロであるため、賞金を稼ぐためにオープン大会に参加します。GM は一般的に参加費がタダですが、500ユーロ未満の優勝賞金であるならば、割に合わないと考えるGM が多いのではないでしょうか。もちろん、場所による交通費やスケジュールも関係してくるので、厳密には言い切れないですが、割と良い線をついている気がします。この辺りのことは、アメリカの大会事情に詳しい上杉くんにも聞いてみたいですね。とにかく、これから海外大会のレベルを予想する際は、優勝賞金をチェックすることは必須にしようと思っています。

(5) チェコのトーナメントについて


ブルノ、ピルゼンでの15日間、16試合は、私のこれまでの人生において最長のFIDE 公式戦連続記録でした。私の他には、カザフスタンのWIM Abdulmalik、ウクライナのIM Piankov、ロシアのGolcman らも2つのトーナメントに連続で参加しており、これはスケジュールを組んでいるオーガナイザー側の意図通りと言えるでしょう。多くの試合をまとめてこなしたいプレーヤーにとって、こうしたオーガナイザー同士が連携したトーナメントというのは、大変ありがたいものです。

さらに、これらの大会の良い点として次に挙げられるのは、参加費が安いことです。私はホテルではなくホステルに泊まったため、1大会の参加費と宿泊費は75ユーロずつほどでした。私がこれまで参加してきた大会の中でもダントツの最安値ですし、なかなかこれを下回るオープン大会を探すのは難しいと思います。ちなみにIM タイトルを獲得すれば、参加費はタダになるので、さらに安くなります。

その代り、優勝賞金はイタリアより下がり、9R のブルノで40000円程となります。シチリアのアグリジェントよりも、列車やバスが利用できるブルノ、ピルゼンのほうが交通の便は良いはずなのに、GM が参加しなかった理由がこれでしょう。GM との試合を求めるならば、こうした優勝賞金の低い大会は避け、チェコでももっと大規模な、プラハオープンなどに目をつけると良いかと思います。

(6) マヨルカのトーナメントについて


マヨルカは再びIM ノームを目指すクローズドトーナメントでしたが、ノームを目指さなくても良いということで、のびのび指すことができたような気がします。これまで公開していませんでしたが、この大会の参加費は6泊7日、朝食と夕食が付いて合計350ユーロです。私はさらにノームを達成していると理由で、50ユーロ値切り、300ユーロにしてもらいました。(ブリッツから参加したため、エキストラの2泊分をさらに払っていますが) この値段が安いか高いかの判断は人それぞれだと思いますが、マヨルカのビーチに面した四つ星ホテルが、宿泊場所+試合会場であることを考えれば、十分に安いと私は思います。おそらく、夏の観光シーズンを外しているために、実現可能な値段なのでしょう。観光客の多い真夏にこの値段であれば、完全に赤字である気がします... 値段と内容を考えれば、今後IM トーナメントを探す人には、是非お勧めしたい大会です。

そしてこの大会中、WIM Dave の母親から、現在私がいるバルセロナの夏のオープン大会は良いと勧められました。振り返れば、昨年の春に浜松の大会に参加した際も、対戦した秋山ヒメナさんから、スペインの大会は良いと言われていたのでした。スペインのオープン大会についてはまだしっかりと調べていませんが、イタリア、チェコと同様に、今後の長期遠征を考えて良い国であることは確信しています。

(7) ハンガリーを離れた理由について

ここは今日の記事でも一番大切なだと思うところです。私は3つ目のノームを達成したことで、ハンガリーのノームトーナメントにこだわる必要がなくなり、近隣の国の大会に足を運ぶようになりました。結果的にレイティングは大きく稼げませんでしたが、これは正解だったと思っています。

私がハンガリーの外に出た一番の理由は様々ですが、一番は私以外のプレーヤーも参加しやすい大会を発掘することにあります。(ノビサドとスペインはさておき) イタリア、チェコの大会はどちらも良いもので、今後、日本から団体での参加を検討する価値は十分にあるでしょう。私が経験してきた団体での海外オープン大会参加は、フランスのカペル、タイのバンコク(もしくはパタヤ)、マレーシアのクアラルンプールなどですが、ヨーロッパ方面で、もう少し数を増やしていくべきだと思っています。なんといっても、チェスはヨーロッパが本場ですからね! 私も昔は井上さん、馬場さんらに案内されて海外大会についていくだけの小僧でしたが、最近は後輩を引き連れて、こうした大会を周らなければいけない立場です。後輩たちに、勝手にここに行けというのは酷な話ですからね。そのためにも、どこのどういった大会が参加しやすいかを、自らチェックする必要があります。

最近は大学生たちの交流が盛んな割には、彼らだけで海外の大会にチャレンジしようという流れは、今のところあまり見えてないように思えます。(去年のマレーシアぐらいですかね) 私も情報の提供や、可能であれば自身の参加という形でサポートをしていくので、私よりも若い世代には、もっと積極的には海外のオープン大会に参加してほしいと思います。過去にカペルやマレーシアに参加した先輩方にも、どんどん話を聞いてみてください。チェスのレベルに関係なく、海外の大会に参加するということは、特別な経験になるはずです。

(8) 私の今後について

なんで12月中に帰ってくるの? といまだに聞かれることがありますが、これはブログにすでに書いた通り、ヨーロッパには180日中90日しか滞在してはいけないという、シェンゲン協定のためです。もう説明するのが面倒なので覚えてください(笑) これを厳密に守るならば、私は3月の半ば頃まで、ヨーロッパに戻ることはできません。南條くんからは、すぐアメリカにでも行けば? と言われましたが、いまのところそうする予定はありません。

13日の帰国後は、しばらくは日本でレッスンやレクチャーの日々に戻りつつ(依頼はいつでもどうぞ!)、次は3月末、チェコツアーの一環である、タイのLanta Open への参加を考えています。こちらはまた後日の記事で詳しく扱いますが、先に情報を知りたい方は、大会名から飛べるリンク先をチェックしてみてください。そして(7)と繋がりますが、やる気のある大学生たちと参加できれば面白いかなと考えています。もちろん社会人も歓迎ですよ!

ちょっと長くなりすぎましたが、ひとまず書きたいことは書き切りました。それでは皆さん、また12月13日以降、再び日本でよろしくお願い致します。ブログに書けない内容の裏話などは、また飲み会の席のお楽しみにということで(笑)

2 件のコメント:

マヤ さんのコメント...

始めまして!

初コメです。

チェスプレイヤーとして、チェコに住んでる女の子として、小島さんのファンとして、
小島さんのチェコトーナメントにの進行見ました~
結果の満足ですかなぁ?

これからも応援します!

ちなみにチェコに滞在は楽しかったですか?
また戻ってくることを願いです!



Shinya_Kojima さんのコメント...

マヤさん

初コメントありがとうございます! チェコはすごく楽しかったですが、負けた2試合は悔やまれます。今度は暖かい季節に行ってみたいですね〜。

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