2013/12/05

Winter Chess IM 3rd and 4th rounds


ホテルもこの日からクリスマス仕様になりました。

Winter Chess 3日目は、10時と20時半からの1日2試合スケジュールです。前日、チェコのFM と日付が変わるまで試合をしていた身としては、この午前中からのスケジュールは厳しく感じます。シャワーを浴びて朝食を摂り、不十分な準備のままで会場へと向かいます。

Cuadras Avellana, J (FM, ESP, 2318) - Kojima, S (FM, JPN, 2351)
Winter Chess IM (3)

1. e4 c6 2. c4 d5 3. exd5 Nf6 4. Nf3 cxd5 5. cxd5 Nxd5 6. Nc3 Nxc3 7. bxc3 g6 8. d4 Bg7 9. Bd3 O-O 10. O-O Nc6 11. Bg5?!



Japan League 以来となるCaro-Kann Pseudo-Panov です。この手は一見するとありそうにも思えますが、e5 のマスを先にコントロールしなければいけませんでした。11. Re1 が最も指される手で、それに対しては本譜のようにb6-Bb7 と組むのがベストだとされています。

11... b6?!


11... Qa5! (狙いはc3 取りと、Bc8-Bg4 からのg5 のビショップ取り。) 12. Bd2 e5!= こうしてe5 さえ突ければ、すでに黒のオープニングの問題は解消できています。

12. Be4 Bb7 13. Re1 Re8 14. Qa4 Qc7 15. Rad1 Rac8 16. c4 Na5 17. Bxb7 Qxb7?



17... Nxb7! 18. Rc1 e6!= 本譜では、c4-c5 と突かせるアイディアを過小評価していました。正しくはこのようにナイトをb7 退き、c4-c5d4-d5 を止めておけば、黒はさほど悪くないでしょう。

18. c5 h6?! 19. Be3?!


e7 へのプレッシャーを緩和するためにビショップを退かせてみましたが、h7-h6 を突いた直後に、ビショップをd2 に退かれるとまずいことに気づきました。19. Bd2! Qc6 20. Qxc6 Nxc6 21. d5+/- 白のパスポーンは強力で、これを捌くのは簡単ではないでしょう。

19... Qd5! 20. Rc1 Red8! 21. Rc2 g5!? 22. h3 Rc7 23. Rec1 Rdc8??



これが衝撃的なブランダーであることに、両者とも全く気付いていませんでした。23... Bf6 24. Bd2 Bxd4 25. Bxa5 bxa5 26. Qxa5 Rdc8 27. Nxd4 Qxd4 28. c6+/= ならば、白にチャンスがありそうですが、まだまだゲームは続くでしょう。

24. Bd2?


24. cxb6 Rxc2 25. Rxc2 Rxc2 26. Qe8+ Kh7 27. bxa7+- Oh... ルークを捨てるとプロモーションが止まりません。

24... e5!?


単にナイトを退いては厳しいと思いましたが、上記と同じアイディアが決まるようになります。24... Nc6 25. cxb6 axb6 26. Qb3!? (26. Qa6 Bxd4 27. Nxd4 Qxd4 28. Be3 Qd5 29. Qxb6+/- これでも黒はcファイルのピンが厳しいでしょう。) 26... Qd8 27. Qxb6+/-

25. Bxa5?



やはり白は、25. cxb6! Rxc2 26. Rxc2 Rxc2 27. Qe8+ Kh7 28. bxa7 と指して勝ちになります。

25... bxa5 26. dxe5 Rxc5 27. Rxc5 Rxc5 28. Rd1 Qe6 29. Qe4 Qc8?!


ここはお互い、一体何を考えていたのか。29... Bxe5! とポーンをかすめ取って何もありません。f7 のポーンの存在を忘れており、30. Re1 とされるとまずいと思っていました。実際はビショップが避ければOK です。

30. g4!? Rc2 31. Nd4 Rc1 32. Rxc1 Qxc1+ 33. Kg2 Qb2?!



この辺り、時間のない中で正確に指すのは難しかったです。33... Qc4! のほうが、e6 のマスを抑えつつ、ナイトもピンにしてa2 を狙えるのでベターでした。

34. a4 Qb4 35. Qa8+?!


検討で私が指摘したのは35. e6! と突く変化で、黒キングの守りを弱めてクイーンとナイトで攻めれば、実戦的には黒が正しくディフェンスするのが難しいように見えます。

35... Kh7 36. Qd5 Qxa4 37. Nc6 Qf4!



f7 を守りつつ、e5 のポーンをアタックするこのディフェンスが好手で、白に決定打を与えないようにします。

38. Qd3+ Kh8 39. Qd5 Kh7 40. Qd3+ Kh8 41. Qd8+ Kh7 42. Qd3+ 1/2-1/2


白が勝負を仕掛けるとすれば、42. Ne7 からg8 のメイトを狙うほかありませんが、これに対しては42... Qe4+ 43. Kf1 Qh1+ 44. Ke2 Qe4+ 45. Kd2 Qb4+ とし、パペチュアルチェックに持ち込むことができます。途中ひどいポジションがありましたが、なんとかこのゲームを拾って午後の4R に備えます。


2時過ぎに試合が終わり、少し余裕ができたので外のカフェでコーヒーブレイクです。次の対戦相手、インドのWIM Dave, D が指すラインを確認しつつ、Caro-Kann Advanced の各ラインを見直していました。飲み物は1.2 ユーロのエスプレッソ。この日パルマに出ていないので、お金を使ったのはこれだけです。

Dave, D (WIM, IND, 2182) - Kojima, S (FM, JPN, 2351)
Winter Chess IM (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. c3!?



私の予想がどんぴしゃりで、過去に指していたのと同じラインを使ってきました。Caro-Kann の自信を取り戻すため、ここは勝ちに行くラウンドです。

4... e6 5. Be3 Qb6 6. Qb3 Nd7 7. Nd2 f6 8. f4 g5!


Caro-Kann のエキスパート、ハンガリーのGM Lucas, P によれば、このラインは早いポーンブレイクを入れなければ、白のスペースアドバンテージが黒にとって厄介だとのこと。h7-h5, Bf5-Bg4, Ng8-Nh6-Nf5 と指すプランもありそうですが、よりスペースを求めるために、f7-f6, g7-g5 のアイディアで白のポーンを崩しにいきます。

9. fxg5!?



この手は彼女の用意だったようですが、私はほぼノーチェックでした。9. Ngf3 gxf4 10. Bxf4 Bh6! がメインラインです。

9... fxe5 10. Be2!?


ここで相手からまさかのドローオファー。3連敗中の彼女は早くポイントが欲しかったのだと思いますが、多少知らないポジションになったからと言って、簡単に下相手にドローを受けるIM Elect は世界中のどこにもいないと彼女に教えなければいけません!

10... exd4 11. Bxd4 Qxb3 12. axb3 e5



私はこれで、すでにオープニングは満足です。黒の厚いセンターと広いスペースは、黒に十分なチャンスをもたらすでしょう。

13. Bf2


13. Rxa7 Rxa7 14. Bxa7 b6 15. Ngf3 Ne7 16. O-O Nc8 17. Ra1 Bc5+ 18. Kh1 O-O=/+ コンピュータはこのポジションをかなり考えているようですが、人間の感覚で言えば、a7 にビショップが突っ込むのは自殺行為です。(そう言いながら、初戦でa2 にクイーンを突っ込んだプレーヤーがどこかにいたような...)

13... Bd6


ここは多少迷いましたが、13... h6! 14. Ngf3 (14. gxh6 Nxh6=/+) 14... hxg5 15. O-O Nh6 16. Nxg5 Be7=/+ として、黒が少し良いようです。白のダブルポーンを解消させるべきなのか迷いましたが、g5 のポーンは重要なf6 のマスを抑えているため、これを消しておくメリットのほうが相手にパスポーンを作らせるデメリットよりも大きいようです。この辺りの判断は少し難しいですね。

14. Ngf3 Ne7 15. Bg3!? a6 16. b4 O-O-O 17. Nd4 Bc7?!



白の16手目は読み落としでしたが、冷静に考えれば白マスビショップを放棄しても黒はさほど問題がないことに気づけるはずです。私は本譜のようにBd6-Bc7-Bb6 から黒マスビショップを交換し、e3 辺りの黒マスを弱めるプランを採用しましたが、もう少し良い手がありました。17... Rdf8!(f5 に来るナイトを守ることで、Be2-Bg4 に備えつつ、f2 に下がるであろうビショップをアタックします。) 18. Nxf5 Nxf5 19. Bf2 e4!=/+ 本譜では諦めたeポーンを伸ばすプランが、ここでは有効になります。

18. Nxf5 Nxf5 19. Bf2 Rdf8!


上記と同じアイディアで、ナイトに紐をつけつつ、f2 のビショップを攻撃します。

20. g4 Nd6 21. Be3 Bb6!=/+



相手にダブルビショップを持たれている場合、1組のビショップを交換しておくのは基本的に良い戦略です。ここでは黒マスビショップを交換しておくことで、f2,e3 といったマスを弱める狙いもあります。

22. Bxb6 Nxb6 23. Nf3?


この手は私を驚かせました。e5 へのアタックは白の反撃の糸口にはなりえません。私がメインで考えていたのは、23. Rf1 Rxf1+ 24. Kxf1 Rf8+ 25. Kg2 e4 26. b3 Kd7=/+ という変化ですが、これでも黒はポーンストラクチャーの良さで、わずかなチャンスあるでしょう。

23... Nbc4 24. O-O-O Rf4!



すぐにナイトがe3 に飛び込むよりも、h8 のルークをゲームに参加させるほうが強力です!

25. h3


25. Rde1 Re8 Rhf8!!


Analysis Diagram

24... Rf4 を指した際、この手が成立するかどうかを最も慎重に読みました。f3 のナイトが逃げるようであれば、黒はe5 の守りを気にしなくても良くなるため、白が勝負にいくならば、エクスチェンジ取りでしょう。

26. b3 Rxf3! 27. Bxf3 Rxf3 28. bxc4 Rxc3+ 29. Kd2 d4!黒の2コネクテッドパスポーンは非常に強力で、エクスチェンジの代償は十分すぎるでしょう。唯一反撃できそうなのはfファイルからの侵入ですが、パスポーンのレースは圧倒的に黒が有利です。

25... Rhf8 26. Bxc4 Nxc4 27. Nd2 Nxd2! 28. Rxd2 Kd7-+



シンプルにマイナーピースをすべて交換し、黒が勝てるであろうダブルルークエンディングに突入します。ここにきて白は、序盤に崩したポーンストラクチャーが痛手となります。

29. Rg2 Rf1+! 30. Rxf1 Rxf1+ 31. Kd2 Rh1 32. Rg3


fファイルからの反撃も、黒にとっては問題ではありません。32. Rf2 Ke7 33. Rf5 e4-+

32... e4! 33. Ke3 Kd6 34. Kf4



34. g6 hxg6 35. Kf4 Rf1+ 36. Kg5 Rf3 37. Rg1 Rxh3 38. Kxg6 Ke6-+ 白はポーンを捨ててキングをアクティブにしようとしても、逆に黒のセンターポーンを抑えることができなくなるだけでしょう。

34... Rf1+ 35. Ke3 Ke5 36. h4 b6!?


残り時間は10分ほどでどう勝負を決めるか悩みましたが、シンプルにセンターの2コネクテッドパスポーンを押し進めることにしました。キングサイドは3対1 ですが、キングがアタックにもディフェンスにも使える黒は、これを何とでも捌けるでしょう。

37. h5 c5 38. bxc5 bxc5 39. g6



39. Rg2!? d4+ 40. Kd2 Rh1 41. g6 hxg6 42. hxg6 Rh6 43. g7 Rg6 44. Rh2 Rxg4 45. Rh5+ Kd6 (45... Kf4?? 46. Rh4!+- は要注意です。) 46. Rh7 Kd5 47. cxd4 cxd4 48. Ke2 Kc4-+ 最も難しいのはこちらの変化でしょうが、それでも正確に指せば黒が問題なく勝てそうです。

39... hxg6 40. h6 d4+ 41. cxd4+ cxd4+ 42. Kd2 Rh1 43. g5 Rh2+ 44. Kd1 d3 0-1


こうしてなんとかスペインでの初勝利を挙げました。私に敗れたDave はこれで今大会4連敗。2200近いレイティングを持つ彼女も、2300クラスが揃うこのIM トーナメントでは苦戦を強いられます。

Winter Chess IM Tournament Schedule

12/02 20:30 R1 Cubas Pons, J (FM, ESP, 2284) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1-0
12/03 20:30 R2 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Sorm, D (FM, CZE, 2303) 1/2-1/2
12/04 10:00 R3 Cuadras Avellana, J (FM, ESP, 2318) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1/2-1/2
12/04 20:30 R4 Dave, D (WIM, IND, 2182) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 0-1
12/05 20:30 R5 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Merry, A (FM, ENG, 2326)
12/06 10:00 R6 Cruz Lledo, P (FM, ESP, 2298) - Kojima, S (FM, JPN, 2351)
12/06 20:30 R7 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Rodriguez Lopez, R (IM, ESP, 2244)
12/07 20:30 R8 Ivanov, J (IM, BUL, 2368) - Kojima, S (FM, JPN, 2351)
12/08 10:00 R9 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Mascaro March, P (IM, ESP, 2426)

今日はちょうど折り返しとなる5R です。イングランドの若武者相手に勝ち越しとなる白星が取れるか、後半戦に向けて大事な一戦になりそうです。


まだ誰も手を付けていない巨大ティラミス。もちろんデザートとしていただきました。


こちらではおじさんが生ハムをせっせと切り出していました。当たり前ですが、こうして巨大な塊から少しずつ食べる量をはがしていくんですよね。スーパーなどでは、すでにパック詰めされたものばかりを見るので、こうした光景は新鮮です。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お疲れさまです。 最後の図面がなんか怪しいみたいです・・

Shinya_Kojima さんのコメント...

ご指摘ありがとうございます。修正してきました~。

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