2013/12/09

Winter Chess IM 8th and 9th rounds


Winter Chess IM December 参加者とオーガナイザーたち

昨日は休んでしましましたが、マヨルカの大会最後の更新です。7日、8日の2日間で最後の8,9R が行われ、マヨルカ1週間の全日程が終了しました。私は最終的に、3勝2敗4ドローという戦績で3位に終わっています。今回の遠征最後の大会としては、まずまずの結果だったと思います。それではいつも通り、8R が行われた7日の昼の様子から、お届けしようと思います。


マヨルカに到着して1週間、結局、天気が悪かったのは初日ぐらいでした。良く晴れた土曜日、テニスコートはテニスを楽しむ人たちで埋まっています。こちらのテニスコート前のバス停から、いつも通りパルマに向かいます。


パルマ最大の名所であるカテドラル近くには、観光用の馬車を多く見かけます。こちらは1頭ですが、2頭で引いている馬車もあります。料金が高くなるんでしょうかね。


以前、カテドラルに来た際は気づきませんでしたが、この日はいくつかのお土産屋さんが周囲に出店していました。その中で面白いと思ったのはこちら。2ユーロで、好きな名前をカラフルに描いてもらえます。文字に使われるのはマヨルカの動物たちや植物、太陽など。真ん中はMALLORCA と描かれていますね。

この後、今日こそはカテドラルに入ろうと思いましたが、なぜかこの日もお休み! 土曜日の営業時間はチェックしていたはずなのに、おかしいですね... 他にも、なんで開いてないんだろう、と困惑するお客さんと少し話をしながら、仕方なくホテルに戻ることにしました。8R は重要な、IM Ivanov のとゲームが待っています。

Ivanov, J (IM, BUL, 2368) - Kojima, S (FM, JPN, 2351)
Winter Chess IM (8)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 g6



正直、こちらは一番指されるのが嫌なムーブオーダーでした。4. d4 Bg4!? を久々に指そうと研究していましたが、この手順ではうまくいきません。(ノビサドでは、このポジションで4... Bg4 と指しましたが、この手はあまり良くありません。) 仕方なく、そろそろ指すのをやめようと思っていた4... g6 のラインに再び頼ることを決めます。

5. d4 Bg7 6. Bd3 O-O 7. O-O dxc4 8. Bxc4 Nbd7


今年の1月に最後に指したきりの、dxc4-Nbd7 を再び導入します。7... Bg4 が最も人気がありますが、韓国でGM Barbosa に敗れていますし、あまり好みのポジションになりません。

9. Bb3 Nb6 10. h3 a5!?



ここでイスタンブールのGM Nyback 戦と手を変えます。クイーンサイドでスペースを取りつつ、白のポーンの形を崩せればと考えました。

11. Re1 Nfd5! 12. a3 Be6


試合後に、ここは12... Nxc3 13. bxc3 c5 のほうが良いのではないかと指摘されました。確かにそうしたGrunfeld 型にするのはメインのアイディアでしたが、a2-g8 のダイアゴナルにビショップが残るうえ、黒の白マスビショップを出す良い位置がないことを嫌いました。本譜で私が計算外だったのは、白のbファイルからのプレッシャーがあまりに強力であることです!

13. e4 Nxc3 14. bxc3 Bxb3 15. Qxb3 c5 16. Rb1! Nd7 17. e5!



これは非常に強力な1手でした。白マスビショップが残っていれば、e6 のマスを抑えているうえ、d5 のマスが弱くなるので、白のe4-e5 はさほど気になりません。しかし、ここではe5-e6 のポーンブレイクと、Bc1-Bg5 が強力です。私はこの時点ですでに、ポーンを諦めることを決めました。

17... e6 18. Bg5 Qc8 19. Qxb7 Rb8 20. Qxc8?!


これは私にとって予想外でした。白としては勝つチャンスを多く残すには、クイーンを残しておくべきでしょう。20. Qe4!+- ならば、白はポーンアップに加えて、大きなポジショナルアドバンテージがありそうです。

20... Rfxc8 21. Be7 Bf8! 22. Bxf8 Kxf8 23. Nd2 Rxb1 24. Rxb1 cxd4 25. cxd4 Rc2



私はこれで、黒のカンウタープレーは十分なのではないかと思いました。白はまだポーンが多いですが、aポーン、dポーンがターゲットになるので、黒は十分にこれを取り返すチャンスがありそうです。しかし、Ivavov の手の作り方は非常に実戦的で感心しました。

26. Ne4 Rc4 27. Rb5! Rxd4 28. Nf6! a4


白はポーンを返しますが、f6 にナイトを置くことで、私の頭を悩ませます。検討戦でも、これを取るのはあまり黒にとって良くなさそうだと結論を出しています。28... Nxf6 29. exf6 Ke8 30. Rxa5 Rf4 31. g3!? Rxf6 32. f4! こうしてルークを閉じ込めてしまうと、ルークの働きの差で白のアドバンテージは勝ちに十分なのではないかと思えてきます。

29. Ra5 h5??



私はこのポジションで20分近くの時間を消費し、ベストの手を模索しました。a4 のポーンが落ちるのはもはや仕方ないので、どうすれば最もドローのチャンスがあるルークエンディングに持ち込めるかを考えます。29... Nxf6? 30. exf6 Ke8 31. Ra8+ Kd7 32. Rf8 Rd3 33. Rxf7+ Ke8 34. Rxh7 Rxa3 35. Re7+ Kf8 36. Rxe6 Kf7 37. Ra6+- このように、キングサイドのポーンを崩壊させるのはだめでしょう。ベストは29... Kg7! 30. Nxd7 Rxd7 31. Rxa4 Rd1+ 32. Kh2 g5! と指すことで、白がaポーン1つで勝ちに十分なのかは疑問なところです。私もこの形をイメージしていましたが、キングをg7 に上げるよりも、h5 にポーンを伸ばしている形のほうが良いのではないかと勘違いし、本譜の手を指してしましました。白の次の手は全く頭にありませんでした。

30. Ra8+ 1-0


次にRa8-Rd8 からナイトが落ちるため、ここで試合を諦めました。20分近く考えてブランダーを指し、直後の1手を見てリザインしたのは初めてのことかもしれません。大切にしなければいけないラウンドで、ひどい内容でした。続いて最終戦へ。

Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Mascro March, P (IM, ESP, 2426)
Winter Chess IM (9)

1. Nf3 Nf6 2. c4 b6 3. g3 Bb7 4. Bg2 c5 5. O-O g6 6. Nc3 Bg7 7. d4 cxd4 8. Qxd4 O-O!?



この変化を初めて研究し、実戦で指したのは5年10か月前、北千住での杉本さんとのゲームです。10月のFS でGM Gordon が指したように、黒はキャスリングを遅らせて白にBc1-Be3 を指させることで、本譜より1テンポ稼ぐのがオーソドックスなアイディアです。しかし、このポジションを改めて考え、その1テンポ得はあまり重要でない気もしてきました。

9. Qh4 d6 10. Rd1 Nbd7 11. Bh6 Rc8 12. b3 Rc5!


e3 にビショップがいなければ、c5 のマスを利用することができるのがポイントです。これに対して私は、大胆なダイレクトアタックで応戦します。

13. Ng5! Bxg2 14. Kxg2 a6 15. a4 Re8



なかなか難しいポジションになりました。白は黒のキング前にピースを集めますが、強固なディフェンスを突破するためには、あともう一歩足りていません。次にBg7-Bh8 を許すのは面倒なので、ここまでキープしてきたビショップ交換は、ここがベストのタイミングでしょう。

16. Bxg7 Kxg7 17. b4 Qa8+!


これは私が過小評価していた手で、c8 に退く前にa8 にクイーンを移動させておけば、d8 に比べてクイーンの働きは格段に向上します。

18. Kg1 Rcc8 19. Nd5 h6 20. Nf3 Nxd5



試合中、c4 のポーンをすぐに狙われたらどうするか悩んでいましたが、シンプルにナイトを退けば問題なさそうです。20... Qc6 21. Ne3= 本譜ではポーンストラクチャーが変わり、d5 にポーンが来たことで、なんとかc6 のマスを使えないかと考えましたが、それは現実的に難しい注文だったようです。

21. cxd5 Nf6 22. Qd4 Qb7 23. Rac1 Rc7 24. Rxc7 Qxc7 25. Qd3! Qb7 26. e4 e6!


これは嫌な反撃でした。この1手さえなければ、白は念願だったNf3-Nd4-Nc6 を実現させますが、eファイルからの突破と、d5 へのアタックがそれを妨害します。

27. dxe6 Rxe6 28. Nd2 Nxe4 29. Nxe4 Qxe4 30. Qxe4 Rxe4 31. Rxd6 Rxb4 32. a5 bxa5 33. Rxa6



まさかの展開ですが、前日のIvanov, J 戦で考えたルークエンディングと、ほぼ同様のポジションになりました。白はルークで黒のパスポーンを抑え、ドローを求めて戦います。

33... a4 34. h4 g5 35. h5!?


ルークエンディングにおいては、なるべくポーンを交換しておいたほうがディフェンス側にとって良いとは言いますが、ここはh6 にターゲットとなるポーンを残すほうが、黒が手を作りにくいのではないかと考えました。

35... g4 36. Kg2 Rc4 37. Kg1 Rc1+ 38. Kg2 Ra1



黒はh6 のポーンをと取られるわけにはいかないため、ひとまずキングがg7 から動けません。そこでaポーンを進めることにいしますが、a1 はルークにとって良いマスとは言えないでしょう。(最終的なa2-a1 を妨害しているため) とは言え、ここしかルークの位置はありません。

39. Kh2 a3 40. Kg2 a2 41. Kh2


ここからは白はひたすら待ちに入ります。黒ができる唯一のプランは、どこかでa2 を捨ててh5 を取るしかありませんが、片側だけに3対2のポーンが残る形のルークエンディングは、理論的にドローのはずです。

41... Kf8 42. Ra7 Ke8 43. Kg2 Kd8 44. Ra3 Kd7 45. Ra6 Kc7 46. Ra8 Kb7 47. Ra3 Kb6 48. Ra8 f6 49. Ra3 Kc5 50. Ra8 f5 51. Rc8+ Kd4 52. Rd8+ Ke5 53. Ra8



白は黒キングがb3 に寄った時点で後ろからチェックを始めても十分です。a2 のポーンによっても無駄な黒は、いよいよh5 を取りに行きます。

53... Kf6 54. Ra6+! Kg5 55. Ra5! Rb1 56. Rxa2 Rb3!


黒がチャンスを残すにはベストの手でしょう。56... Kxh5 57. f3! ならば、ドローは明らかです。私は3対2のルークエンディングで、f2 のポーンが抑え込まれていても問題なくドローに出来るのかを考えましたが、ゲーム中は結論が出ず、とにかくベストのプランを探します。

57. Ra8 Kxh5 58. Rg8!



私の考えたベストのディフェンスプランは、ルークをgファイルに回すことでキングをカットオフしてしまうことです!

58... Rf3 59. Rg7 Rc3 60. Rg8 Rc1 61. Rg7 Rc4 62. Rg8 f4 63. gxf4 Rxf4 64. Rg7 Kh4


私はキングが上がるプランは恐れていませんでした。しかし、64... Rf5 65. Kg3 でもドローになるでしょう。

65. Rg6 h5 66. Rg8 Ra4 67. Rg7 Ra5 68. Rg8 Rg5 69. Rxg5!



g,h ポーン、そしてキングの動かせるマスがない以上、黒がポジションの改善をするならばルーク交換しかありえないように見えますが、このポーンエンディングはドローです。

69... Kxg5 70. f3 Kf4 71. fxg4 hxg4 72. Kf2 g3+ 73. Kg2 Kg4 74. Kg1 Kf3 75. Kf1 g2+ 76. Kg1 Kg3 1/2-1/2


知識と経験のあるプレーヤーにとってはさほどでもないかもしれませんが、私にとってはタフなルークエンディングでした。最後のステールメイトのポジションも、基礎中の基礎ではありながら、実際に指すのはかなり久しぶりでした。8R の負けは悔しいですが、最終戦をこうして強豪IM 相手にしっかり締められたので、良しとしましょう。


12/02 20:30 R1 Cubas Pons, J (FM, ESP, 2284) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1-0
12/03 20:30 R2 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Sorm, D (FM, CZE, 2303) 1/2-1/2
12/04 10:00 R3 Cuadras Avellana, J (FM, ESP, 2318) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1/2-1/2
12/04 20:30 R4 Dave, D (WIM, IND, 2182) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 0-1
12/05 20:30 R5 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Merry, A (FM, ENG, 2326) 1-0
12/06 10:00 R6 Cruz Lledo, P (FM, ESP, 2298) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1/2-1/2
12/06 20:30 R7 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Rodriguez Lopez, R (IM, ESP, 2244) 1-0
12/07 20:30 R8 Ivanov, J (IM, BUL, 2368) - Kojima, S (FM, JPN, 2351) 1-0
12/08 10:00 R9 Kojima, S (FM, JPN, 2351) - Mascaro March, P (IM, ESP, 2426) 1/2-1/2


ルームメイトのPablo は結局後半4試合を全てドローで乗り切り、今大会唯一のIM ノーム獲得者となりました。他の参加者と相部屋のトーナメントというのは初めてでしたが、彼のような気さくな青年(まだ少年というべきか)と一緒だったことは、私にとって幸運だったでしょう。Pablo おめでとう! またどこかのトーナメントで会いましょう。


試合後は、再びパルマへ。スペイン広場前にはスケート場が広がっています。スケート場を見るのは昨年のロンドン以来、実際に滑ったのは、もう何年前のことかも思い出せません。


今朝になってようやく、マヨルカのカテドラル内に入ることができました。これまで見てきたどの聖堂よりも巨大で、ステンドグラスから差し込む光は幻想的です。スペインの天才建築家、ガウディーの偉業はこうして今もスペイン国内で生き続けています。


1週間、お世話になったマヨルカの空と海ともお別れです。次になる目的地であるバルセロナにこれから飛び、金曜の午前中にいよいよ、日本に帰国します! 皆さんと、また日本でお会いできることを楽しみにしています。

2 件のコメント:

R.T さんのコメント...

そろそろ本腰入れてルックエンディングを勉強する時か・・・。
ITSUYARUNO? →

Shinya_Kojima さんのコメント...

今でしょ!

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