2018/10/16

First Saturday GM October 2018 R8


8Rの相手はアゼルバイジャンのShahaliyev です。彼はここまで2勝5ドローで、トップを走るSindarov にドロー、Mirzoev に唯一土をつけたプレーヤーです。かなりの強敵と覚悟して挑んだラウンドでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
First Saturday GM October 2018 (8)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 Bb4 5. Bg5 Nbd7



5... h6 の人気に押され、しばらく遭遇することのなかった手ですが、こちらも立派なRogozin のメインラインです。長く対策が決まっていませんでしたが、最近流行の兆しを見せている新ラインを実戦投入します。

6. cxd5 exd5 7. Qc2 c5 8. g3!?


8. e3 Qa5 9. Bd3 c4 と進むことが多いですが、あえてキングサイドでフィアンケットを組み、d5 のポーンを攻撃できるようにします。

8... Qa5 9. Bg2 Ne4 10. Bd2 Bxc3!?



ここで調べていた実戦を外れました。10... Nxd2 11. Nxd2 cxd4 12. Nxd5 O-O 13. a3 Bxd2+ 14. Qxd2 Qxd2+ 15. Kxd2 Nc5 16. Rad1+/= はBacrot によって指されており、少し白が指しやすいと思います。

11. bxc3 c4 12. O-O O-O 13. Be1?!


ここでどうするか、とても悩みました。この形はカペルで指したCaro-Kann Panov の形と白黒逆でよく似ており、その際も私はビショップを退く悪い手を指しました。その試合とは違い、黒のナイトの位置が違うこと、色がそもそも違うので早いことから、白はダブルビショップをキープしてゆっくりe4 のナイトを消す余裕があると思いましたが、すぐにナイトをぶつけるほうがシンプルです。13. Ng5! Nxg5 (13... Nxd2?? 14. Qxh7#) 14. Bxg5+/- これで白はビショップのペアをキープしたうえで、展開の早さもd5 への攻撃チャンスもあります。恥ずかしながら、上記のメイト筋に気付いておらず、ビショップを取られるのを勿体ないと思ってしまいました...

13... Nb6 14. Nd2 Nd6!?



14... Qxc3 15. Bxe4 Qxa1 16. Bxh7+ Kh8 17. Nf3 Bh3 18. Ng5! Bxf1 19. Bc3 Qxc3 20. Qxc3 Bxe2 21. Bf5 はとても怪しい変化ですが、互いに指せそうです。

15. f3 Bf5


この手をノータイムで指され、驚きました。これから白がe2-e4 とポーンを伸ばそうとするのに対し、ビショップは単ににターゲットになると思っていたためです。しかし、実際にはg6 に下がるマスが確保できているため、ビショップがe4 のポーンをピンにした状態で長くターゲットにできます。これには少し困りましたが、いまさらe2-e4 を指さないわけにはいかないため、先まで少し考え、相手の誘いに乗ることにします。

16. e4 Bg6 17. g4!



これが大切な手で、ここを突いておくことでBe1-Bg3 のチャンスを作りつつ、黒のf7-f5 をストップしておきます。

17... dxe4 18. Nxe4


18. fxe4!? Nd5 19. Bg3! Ne3 20. Qb2 Nxf1 21. Rxf1 こうしてあえてエクスチェンジを捨て、厚いセンターとダブルビショップ、g6 のビショップの抑え込みで代償を図ることもできたとコンピュータは指摘します。私はNb6-Nd5 を恐れ、ポーンをセンターに並べる形をあえて取りませんでしたが、これはこれでd2 のマスが空き、白が面白く指せそうです。

18... Nd5 19. Qd2



19. Bd2 Rae8 20. Rae1 もありそうですが、厄介なピンは早めに外し、e4 のナイトを自由にすることを優先しました。

19... Rad8 20. Bh4!?


念願叶って黒マスビショップがアクティブになり、白がはっきりと盛り返してきました。ここはルークが避ける1手に見えますが、相手はここで長考に入ります。私ももちろん相手が何を読んでいるのかを察し、その複雑な変化を可能な限り考えます。

20... Nxe4!



ルークが避ける手ははっきり黒が悪く、黒はエクスチェンジを捨てて勝負するしかありません。20... Rd7? 21. Nc5! Rc7 22. Bg3! Rd8 23. Rae1+/-

21. fxe4 Qxc3 22. Qxc3 Nxc3 23. Bxd8 Rxd8


これがお互いにしっかり読んでたどり着いたポジションで、黒はエクスチェンジを捨てたことで白のセンターポーンを崩し、クイーンサイドにパスポーンを作っています。さらにd4, e4 のどちらかが落ちることが確定しているなか、落ち着いてベストのディフェンスを見つけることができました。

24. Rfe1 Rxd4 25. Rac1! Nxa2 26. Rcd1!



黒のバックランクが弱いことを利用し、ルークを交換してテンポを得る。これしか白が黒のパスポーンに対抗する方法はありません。

26... Rxd1 27. Rxd1 h6


検討戦ではMirozev も加わり、27... h5 が良かったのではないかと意見が出ましたが、これにも白に絶妙なアイディアがありました。28. gxh5! Bxh5 29. Ra1 Nc3 30. Rxa7 b5 31. Rb7 Ne2+ 32. Kf2 c3 33. Rb8+ Kh7 34. e5! これが見つけづらい手で、白はBf3-Be4+ の狙いを作ることで、黒に簡単にcポーンを伸ばさせません。h5 に移動したビショップがe2 のマスを守り、ナイトが素早くc1 を抑えられると思われたこの変化も、白はディフェンスできます。ただし、これを正確に読むのはとても難しいですね。

28. Ra1 Nc3 29. Rxa7 b5 30. Ra8+ Kh7 31. Rb8 Nxe4



ここで黒はbポーンを諦めました。この時点で負けがないことが分かり、安心して指すことができるようになりました。しかし、勝てるかどうかは別問題です。

32. Bxe4 Bxe4 33. Rxb5 Kg6


ここで相手からドローオファー。もちろんドローポジションですが、私には受ける理由がないため、とことんやることにします。

34. Rc5 Bd3 35. Kf2 Kf6 36. Ke3 g5 37. Kd4 Kg6 38. Re5 h5!



ドローを目指す側は、なるべくポーンを交換する。基本通りのプレーですね。

39. h3 hxg4 40. hxg4 f5 41. gxf5+ Bxf5 42. Kxc4 Bh3


完全にポーンを消され、さらにドロー模様が濃厚ですが、どのように最後までやるのか確認したく、付き合ってもらうことにしました。

43. Kd4 Kh5 44. Ke3 Kg4 45. Ra5 Bg2 46. Rc5 Ba8 47. Kf2 Kf4 48. Rc8 Be4 49. Rf8+ Kg4 50. Rg8 Kf4 51. Rf8+ Kg4 52. Ke3 Bg2 53. Kd4 Kg3 54. Ke5 g4 55. Kf5 Bf3 56. Kg5 Be2 57. Rf4 Bf3 58. Ra4 Bd1 59. Ra3+ Bf3 60. Rb3 Kf2 61. Kf4 Be2



かなり頑張って押し込んできましたが、gポーンがあるためディフェンスは簡単です。

62. Rb2 g3 63. Rxe2+ Kxe2 64. Kxg3 1/2-1/2


今大会、負けなしでここまできていたShahaliyev に、あわよくば土をつけようと意気込んでいましたが、それもかないませんでした。しかし、なかなか面白いゲームだったと思います。彼はこれほどの実力を持ちながら、今大会で初めてのIMノーム獲得だそうです。


8Rに臨む12歳のSindarov(右)

そしてこの後、Mirzoev とは最終戦をドローで合意し、今月のFirst Saturday の全試合を終えました。この日はSindarov もManush とドローで、5つ勝ち越しを決めました。Mirzoev は1つ目のGMノーム、Sindarov は3つ目のGMノームでGMタイトル獲得、Shahaliyev は1つ目のIMノームとノームラッシュの今大会でした。Sindarov は今年GMを獲得したPraggnanandhaa の記録を5日間更新し、12歳10か月8日で、Karjakin に次ぐ世界第2位の若さでのGMタイトル獲得となりました。なんともすごいプレーヤーと居合わせてしまったものです。

10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350) 1/2-1/2
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1-0
10/11 Rest Day
10/12 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539) 0-1
10/13 R6 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/14 R7 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376) 1/2-1/2
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2

First Saturday GM October 2018 Standings

+5 Sindarov, Mirzoev
+2 Shahaliyev, Plat
+-0 Manush
-1 Kojima
-2 Nguyen, Czebe
-4 Tran
-5 Ilincic

バツミに続く最初のGMトーナメントが幕を閉じ、次は20日からモンテネグロでのGMトーナメントに挑みます。またそちらの情報も早めに出しますので、引き続き応援をよろしくお願い致します。

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