2018/10/28

Third Saturday GM October 2018 R8


モンテネグロのThird Saturday は8R で、ともに3つ勝ち越ししているトルコのIM Atakisi との直接対決を迎えます。今大会の優勝の行方を決めるだけでなく、勝ったほうがGMノームにわずかに望みを繋げられるだけに、互いに大きな意味を持つ一戦です。

Atakisi, U (IM, TUR, 2394) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Third Saturday GM October 2018 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nh3



Atakisi は今大会、Manush 相手にCaro-Kann Exchange を試していましたが、互いに勝ちを狙うこのラウンドは、違う変化になることも予想していました。この変化に対しても、Nakamura が使った新しいアイディアを用意しています。

6... Nd7!? 7. Bc4 Ngf6 8. Nf4 Qc7


白のh2-h4 に対してe7-e5 を返せるようにするため、e7-e6 をキープするのが黒のアイディアです。

9. Qe2 Nb6



9... e6 10. Bxe6 fxe6 11. Nxe6 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 13. c3 Bd6 は黒が指せますが、相手の狙い通りといった感じでしょう。Nd7-Nb6-Nbd5 はよくある安全策で、オリンピアード中にMisha とチェックしていました。

10. Bb3 a5 11. a4 Nbd5 12. Nxg6


12. Nxd5 Nxd5 13. O-O e6 14. f4 O-O-O= が私の読んでいた変化で、黒は大丈夫でしょう。本譜でも白はダブルビショップを持つ代わりに、いくつかのポーンをさらに突かなければいけなくなり、ピースの展開の早さで黒は問題ないと思っていました。

12... hxg6 13. c3 e6 14. h4 Bd6 15. Ne4 Nxe4 16. Qxe4 O-O-O 17. Bg5 Be7



黒マスビショップを交換し、いよいよナイトvs. ビショップの構図となります。黒のナイトはd5 がかなり良いマスで、b4 に潜り込めるためにc3-c4 を恐れる必要がありません。これこそ、早い段階でa7-a5 を突き、白にa2-a4 を突かせた狙いです。

18. Bxe7 Qxe7 19. O-O-O g5! 20. hxg5


ここは難しい判断ですが、黒のクイーンをアクティブにさせないために、20. h5 Rh6= もあったと思います。将来的に白がg2-g4 を突くようであれば、f4 がナイトにとって絶好のアウトポストとなります。

20... Qxg5+ 21. Kb1 Nf6 22. Qf3 Qg4



これでクイーンを交換すれば、ナイトのほうがビショップよりも柔軟性があり、キングサイドのポーンを狙って黒が良いと思いました。しかし、Atakisi は私の読んでいなかったアイディアでポーンを守ります。

23. Rxh8 Rxh8 24. Qxg4 Nxg4 25. Rd3 Nf6


25... Rh1+ 26. Ka2 (26. Kc2 Kd7! 27. Rg3 Rh4! e3 がチェックになるのがポイントです。) 26... Nf6 27. Rg3 Rh7 細かな差かもしれませんが、こうして白キングをセンターから遠ざけておくのも手でした。

26. Rg3 Rh7 27. Bc2 g6 28. Kc1 Kd7



キングでf6 のナイトを守れるようにしておけば、Rg3-Rf3 も怖くありません。これでルークが自由になり、潜り込んでチャンスを作りにいけます。

29. Rg5 b6 30. Kd2 Nd5 31. Be4 Rh1 32. Rg3 Ra1 33. Bc2 Rg1 34. Be4 Nf6 35. Bf3?


ここでどうしてAtakisi が読み間違いをしたのかは不思議です。このビショップの位置では、ポーンを守ることができません。35. Bc2 Ke7=/+ で黒は考えなおしです。

35... Rb1! 36. Kc2 Rf1 37. Rh3 Rxf2+



こうしてポーンを取り、俄然勝つ気が湧いてきました。相手のルークの反撃を極力抑え込み、キングサイドのポーンマジョリティを活かしてエンドゲームで勝つ方法を考えます。

38. Kb3 g5!


時間が増える直前、早めにgポーンを伸ばしてビショップを脅かすのが良いアイディアだと気付きました。ビショップが不安定になれば、g2 のポーンは風前の灯火です。

39. Rh6 Nd5 40. Rh7 Kd6!



40手目で落ち着いてこの手を指せたことも、自分としては嬉しいポイントです。白はビショップがピンになり、g5-g4 を食らってしまうため、f7 を取ることができません。

41. Rg7 f6 42. Bxd5 exd5!


42... cxd5 43. g3 Rg2 44. Rb7 Kc6 45. Re7 Re2 でも黒有利ですが、gポーンを取るのが遅れてしまいます。なるべく相手に反撃のチャンスを与えぬポーンストラクチャーを目指します。

43. g4 Rf4 44. Rf7 c5!



ここも6段目にポーンが並んだままだと、白ルークにまとめて狙われてしまうため、ポーンを進めて捌いてしまいます。

45. Rb7 Kc6 46. Rf7 cxd4 47. cxd4 Kd6?!


試合後、Atakisi からはどうしてd4 を取らなかったのかと聞かれました。すぐには意味が分かりませんでしたが、47... Rxd4! 48. Rxf6+ Kc5-+ ならば次にg4 も取って2ポーンアップになり、黒が簡単に勝ちです。fポーンを残し、2コネクテッドパスポーンで勝負することばかり考えていました。

48. Rb7 Rxg4 49. Rxb6+ Ke7 50. Ra6 Rxd4 51. Rxa5 g4 52. Ra7+ Kf8 53. Rc7



53. a5 g3 54. Ra8+ Kg7 55. Ra7+ Kh6 56. Ra8 f5 57. Rg8 Rg4 58. Rxg4 fxg4 59. a6 g2 60. a7 g1=Q 61. a8=Q Qe3+ 62. Ka2 d4-+ このクイーンエンディングも、黒はさらにプロモーションしそうなポーンを2つ持つため、なんとか勝てそうです。

53... Rc4! 54. Rd7 g3 55. Rxd5 Rc1?!


試合中はこれで決まったと思いました。アイディアは相手に1段目にルークを退かせないようにしつつプロモーションをサポートし、いざというときにはRc1-Ra1 で相手のポーンを止めることです。しかし、基本通りにルークはパスポーンの後ろに回るが正解でした。55... Rg4! 56. Rd1 Ke7! この手をきちんと考えていませんでした。8段目にルークを退けるようにしておけば、相手のパスポーンは怖くありません。57. a5 f5 58. a6 f4 59. a7 Rg8 60. Rg1 Ra8 61. Kc4 Rxa7 62. Kd4 Kf6 63. Ke4 Kg5-+ こうしてコネクテッドパスポーンをある程度進めたうえで、相手のパスポーンを取ってしまえば黒は楽に勝ちです。

56. Rd2?



私もこれしかなく、黒の勝ちは揺るがないと思っていました。しかし、First Saturday のNguyen戦のエンドゲーム同様、相手のルークの動きに見落としがあります。56. Rd8+! Ke7 (56... Kg7? 57. Rd3! これでチェックを絡めるアイディアが生まれるため、白はルークをgファイルに振ることができます。) 57. Rg8 Rg1 58. a5 Kf7 59. Rg4 f5 60. Rg5 Kf6 61. Rg8 f4 62. Ka2 Rd1 63. b4 Rd6 64. Kb3 Kf7 65. Rg4 f3 66. Rf4+ Rf6 67. Rxf6+ Kxf6 68. a6 f2 69. a7 f1=Q 70. a8=Q Qd3+ 71. Ka4 Qc2+ 72. Kb5 g2 73. Qh8+ Kg5 74. Qd8+ Kf4 75. Qd6+ Kf3 76. Qf6+ Ke2 77. Qe7+ Kd2 78. Qg5+ Kd1 79. Qd5+ Kc1 80. Qd4 Qe2+ 81. Kb6 Qf1 82. Qc3+ Kd1 83. Qd4+ Kc2 84. Qe4+ Kc3 85. Qe5+ Kxb4-+ 長い手順でクイーンエンディングは勝ちになりそうですが、黒が大変なのは明らかです。お互いにこうした変化があるのは全く見えていませんでした。

56... f5 57. a5 f4 58. Rd4 g2


ここはもう、ルークを貰って十分に勝ちです。黒キングはクイーンサイドに近く、白のパスポーンを止めに行くことが可能です。

59. Rxf4+ Ke7 60. Rg4 g1=Q 61. Rxg1 Rxg1 62. Ka4 Rg5!



最も分かりやすく、5段目でカットオフして白キングを上がれなくしておきます。

63. a6 Kd7 64. a7 Rg8 65. Kb5 Kc7 66. Ka6 Rg6+ 67. Kb5 Kb7 0-1


このトップ争いを制し、私が4つ勝ち越しの単独トップに立ちました。そしてGMノームの条件である5つ勝ち越しに、これであと一歩です。最終戦はいつもより早い日本時間17時開始ですので、夜には結果をお知らせできると思います。場合によっては、ブログも夜に2回目の更新をします。

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347) 1/2-1/2
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)

Third Saturday GM October 2018

+4 Kojima
+2 Miljković, Atakisi
+1 Nikčević, Manush
-1 Kargin, Gungl,
-2 Kotronias, Der Manuelian
-4 Rabrenović

それでは最終戦に行ってきます! 良い報告ができるように頑張ります。

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