左から2位のGM Palac, 1位のGM Valsecchi, 3位のBick
11日間のウィーン滞在中に行われたVienna Open も一昨日最終戦が行われ、無事に閉幕しました。最終戦、イタリアのGM Valsecchi が、0.5P リードで逃げ切りを図るアメリカのBick Gabriel を破り、7.5/9 での単独優勝を決めました。伏兵Bick が上位者を複数破る波乱を起こしたことで、最後まで優勝争いが分からない面白い大会でした。入賞者の皆さん、おめでとうございます!
1st Place Valsecchi Alessio (GM, ITA, 2494) 7.5/9
2nd Place Palac Mladen (GM, CRO, 2551) 7/9
3rd Place Bick Gabriel (USA, 2375) 7/9
Vienna Open 2019 Final Standings
Valsecchi は前半戦、私との試合も含めて白で下に3連続ドローでした。やや調子は上がっていないのかと思いきや、私との試合以降は3連勝での逆転優勝です。まだ若いですし、これからも伸びるGM でしょう。またオリンピアードで再会できることを楽しみにしています。アメリカのBick も、IM タイトルを跳ばしてGM タイトルを取りそうなので、今後も要注目のプレーヤーですね。続いて私の試合解説へ移ります。
Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Suta, A (SLO, 2268)
Vienna Open 2019 (9)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 Nbd7 7. a3 c5 8. cxd5 exd5?!
この
6... Nbd7 の変化に対しては、昨年のモンテネグロから
7. a3 を試していますが、8手目の時点ですでに試合がほとんどありません。通常黒は、
8... Nxd5 9. Nxd5 exd5 10. dxc5 Nxc5 と進め、早めにf6 のマスをビショップのために空けておきます。
9. dxc5 Nxc5 10. Be2 Be6 11. O-O Rc8 12. Rc1 Nfe4 13. Be5!
基本通りのプレーで、e5, d4 の重要な2マスを抑えます。この黒マスビショップは、交換してしまって何ら問題はありません。
13... Bf6 14. Bxf6 Qxf6 15. Nd4 Nxc3 16. Rxc3 Ne4 17. Rxc8 Rxc8 18. Bd3
cファイルを一時的に明け渡しても、c2 のマスさえがっちり守っておけば怖いことは無いでしょう。それよりもマイナーピース交換が進めば、d4 のアウトポストを抑えるナイトを黒は消しづらくなり、白としては楽なプレーができるようになります。d4 のナイトさえキープできるのであれば、ナイトvs ビショップの勝負にしても良いでしょう。
18... Nd6 19. Qb1 g6 20. Rd1
ここは少し迷いましたが、cファイルではなくdファイルにルークを回します。ルーク交換はいつでもできるため、一度dファイルにルークを置いておき、d5 へプレッシャーをかける作戦です。
20... Bg4 21. Rd2 Qd8 22. h3 Bd7 23. Ne2!
d4 のマスはナイトにとって絶好の位置ですが、ずっとここにいてはd5 へのプレッシャーが不十分です。タイミングを見てナイトをc3, もしくはf4 に切り替え、黒の最も目立つ弱点を攻めにいきます。
23... Rc5 24. Nf4 Qc8 25. Rc2
試合中は、ここでルークを交換してもd5 への攻撃は十分早く、黒にとって負担になるものだと考えました。代わりに
25. Rd1 とルークを退き、d5 へのプレッシャーを残しておきつつ、c1 を守るアイディアもあったようです。
25... Rxc2 26. Bxc2 Be6 27. Qd1 Qc5 28. Bb3 Nc4 29. Qc2 Qb6 30. Qc3
私が試合を決めにいくために必要だと思ったのは、d5 へのアタックに加えてもう1つ、
a1-h8 の黒マスダイアゴナルの利用です。b2 のポーンへの反撃を抑えつつ、黒キングに目を向けます。
30... Qd6 31. Qf6 b5 32. h4!
黒キングにさらにとどめのプレッシャーをかけにいく存在がhポーンです。h6 まで伸びれば、g7 でのメイトが黒にとっては受けづらくなります。
32... Qc6? 33. Bxc4!
どこでビショップナイト交換をするか、29手目以降常に悩んできましたが、ここまで引き延ばしてベストのタイミングで行えました。ここで焦って
33. h5? とすると
33... Nd2! から
Nd2-Nxb3 と、
Qc6-Qc1, Nd2-Nf1+ の反撃があり、面倒です。そこでナイトを消してしまい、黒の反撃をシャットアウトしてしまいます。
33... dxc4 34. h5 Bd7 35. Qd4!
当然白はクイーン交換を避け、黒キングへのアタックを残します。
35... gxh5 36. Nd5! Kf8 37. Qh8# 1-0
全く無駄なくメイトに仕上げ、最終戦を白星で締めくくりました。メイトを避けても、e7, f6 の2つのマスでのナイトフォークがあるので、白の勝ちです。海外トーナメントでの無敗フィニッシュは実に久々でした。
8/17 15:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Lytvynets, D (UKR, 2117)
1-0
8/18 10:00 R2 Kokoszczynski, J (POL, 2198) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 1/2-1/2
8/18 17:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Makynovskiy, R (AIM, UKR, 2178)
1-0
8/19 17:00 R4 Steindl, J (AUT, 2277) - Kojima, S (IM, JPN, 2390)
0-1
8/20 17:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Blohberger, F (IM, AUT, 2467)
1/2-1/2
8/21 17:00 R6 Valsecchi, A (GM, ITA, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2390)
1/2-1/2
8/22 17:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Diermair, A (GM, AUT, 2473)
1/2-1/2
8/23 17:00 R8 Bakhmatsky, V (IM, UKR, 2442) - Kojima, S (IM, JPN, 2390)
1/2-1/2
8/24 10:00 R9 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Suta, A (SLO, 2268)
1-0
最終順位はメンツを考えれば上出来の17位で、レイティングも中国、台湾、東京で6月から落とした分を取り戻し、2400に復帰します。こっそり大会前、目標は20位以内と言ってたのが叶って嬉しいですね。さらには久々にIM ノームに届くパフォーマンスが出せましたので、これが安定して出せればレイティングも2400中盤へ、そしてGM ノーム獲得も手が届くのではないかと思っています。
今回、上記の通りに負けなしで9試合を乗り切り、自分の目指している負けない手堅いチェスが形になりつつあるのではないかと思っています。ただし、有利なポジションでプランが分からず、勝ちを逃しているゲームも少なくないので、その点は反省してもっと勝ちのチャンスを増やせるようにしていかなければいません。
一方でBクラスに出場していた妻も、最後は勝ち、ドロー、ドローの5.5/9 フィニッシュで、自身のベストレイティングを大きく更新します。下1人、上8人という厳しい当たりで2つ勝ち越しは、こちらも上出来と言えるでしょう。また2人で次のトーナメントも頑張ろうと思います。応援してくださった皆さん、ありがとうございました!
ウィーン最後の夕飯はスペアリブの人気店へ。ウィーンのお店で出されるスペアリブは、どこもその大きさに驚かされます。そしてすでに焼き上げられらブロック肉を皿に盛ってくるだけなので、飲み物より早く席に届きます(笑)
夕飯後は予約していたコンサートのため、地下鉄を乗り継いでシェーンブルン宮殿へ。途中、工事区間があって予想より遅い到着になってしまいましたが、それでも20時の閉園前に宮殿を見ることができました。次回訪れた際は、奥に広がる広大な庭園も回りたいですね。
シェーンブルンのコンサートはオペラあり、バレエありと豪華なものでした。公演中はシャッターが切れないのでその様子がお見せ出来ませんが、公演前の会場の写真だけでも、その豪華さと雰囲気が多少はお伝えできると思います。照明も落とす点けるだけでなく、場面に合わせて様々な光のグラデーションを奏でていました。