2019/08/21

Vienna Open 2019 R5


ウィーンは日本ほどのうだる暑さではないですが、それでも日中は汗ばむ陽気です。そんな中でも昼食を求めて昼過ぎには外へ。Volkstheater 出口で売られているホットドッグはこの大きさ! 妻の手が完全に隠れて見えません。


ヘルデンプラッツの無料水飲み場は、空のペットボトルを手にした観光客、ウィーン市民で列ができます。この日は少ししか水を持ってきていなかったので、助かりました。昨日までは近場のヘルデンプラッツ近辺の散策のみで、公共交通機関を使った移動は初日以降していません。試合が17時開始だとしても、あまり遠くまでの観光は難しいので、今日以降もどうするか悩むところですね。

さて、R5 の相手はオーストリア若手の強豪、Blohberger です。私もオリンピアードで2回対戦したヨーロッパの強豪国、オーストリアのU18 ランキング1位ですので、将来は代表入りも期待されているでしょう。彼の試合を調べて手堅いQueen's Gambit Ragozin でくることは分かっていましたが、早々に準備を外されました。

Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Blohberger, F (IM, AUT, 2467)
Vienna Open 2019 (5)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 Nc6!?



この手はAsian Continental のブリッツ大会で、フィリピンのFM に指されてひどい負け方をした変化です。メインラインの8... dxc4 9. Bxc4 c5 に対して、こちらもじりじりと人気が上がってきているようです。

9. cxd5 exd5 10. Be2


試合後の検討で白が早々にビショップを返してもらった場合、10. a3 Bxc3+ 11. Rxc3 Ne7! と進むことを教えてもらいました。c7 のポーンを欲張って取ると、Ne7-Nc6 からルークがトラップされてしまいます。

10... Rd8 11. O-O Bf8 12. Na4 Bd6 13. Nc5 Ne7



c6 にナイトが上がる形は何度か指されたことがありますが、この理想的ではない位置のナイトをいつ、どうやって組み替えるかが黒のポイントになります。本譜では、黒は手数をかけてもビショップでc7 を守り、ナイトを組み替えます。すぐナイトを退く代わりに、13... a5 として白のb2-b4 を遅らせるのは私からの提案です。

14. b4 a5 15. b5 b6 16. Nd3 Ng6 17. a4 Qe7 18. Rc3 f6 19. Qc2 Qf7 20. Rc1 Be6 21. g3!


白が動くとすれば、ナイトをf4 に運んでピース交換を進めることだと思いました。g2-g3 はその準備で、黒は白マスが多少弱くなるのを避けられません。

21... Rd7 22. Nf4! Nxf4 23. exf4



検討では23. gxf4 Bg4! 24. Ng5 fxg5 25. Bxg4 gxf4 と進む変化を指摘されました。gポーンで取るアイディアは考えていませんでしたが、この流れであれば黒はエクスチェンジの代償がありそうです。

23... Re7 24. Bd3


白のアドバンテージは、b1-h7 のダイアゴナルコントロールと、f5, g6 の白マスの弱さです。24. Nh4 g5 25. Ng6 Ree8 26. Bh5 Qg7 27. f5+/= とナイトを先に跳ばす変化もありましたが、g6 から次のマスが無いのはやや不満で、本譜の流れでも私は満足です。

24... g5 25. fxg5 hxg5


25... fxg5 26. Ne5 Bxe5 27. dxe5 Rf8 28. Rc6+/= こうしてe5 のマスを活用できれば、白にはまた違ったアドバンテージが生まれます。

26. Bg6 Qg7 27. Re3! Bg4 28. Qc6?!



この試合、初めての白の緩手でした。白はルークをeファイルに重ねる単純ながら強力なプランがあり、これにどう対応するかがこの局面のポイントでした。ビショップが避ける手はd5 が弱くなり、それを突くにはクイーンが跳びこむ手がシンプルだと思っていましたが、正解は別にあります。28. Qb3! Rd8 29. Be4!+/- これがd5 を攻める最も効果的な手順で、黒は代償なくポーンを失います。

28... Rd8 29. Qxd5+ Kf8 30. Bf5


指した後でブランダーだったかと焦りましたが、他の手のほうがひどく、これしかありません。30. Bb1? Rxe3 31. fxe3 Qe7 32. Rf1 Qxe3+=/+, 30. Be4 Be6! 31. Qc6 Bf4! 32. Qc3 Bxe3 33. fxe3 e3 を取られるようであれば、はっきり黒良しになり、エクスチェンジを捨てる変化も白は嬉しくないでしょう。

30... Bh5?



ここは相手が時間切迫で、正しい手を逃がしました。30... Rxe3! 31. fxe3 Qe7! これがe3 を狙いつつ、d8 を守る素晴らしいアイディアです。 32. Bxg4! (32. Qe4? Qxe4! (32... Bxf5 33. Qxf5 Qxe3+ 34. Kg2 Qxc1 35. Qxf6+ Ke8 36. Qe6+ Be7 37. Qg8+ Kd7 38. Qd5+= このパペチュアルチェックは検討で確認しました。) 33. Bxe4 Re8-/+) 32... Qxe3+ 33. Kg2 Qxc1 34. Qf5!


Analysis Diagram

この手を検討で見逃しました。c2 のマスを抑えておけば、黒クイーンがチェックからディフェンスに戻れません。34... Qb2+ 35. Kh3 Kg7 36. Bh5 Rf8 37. Qg6+ Kh8 38. Qh6+= これでドローというのがお互いのベストです。28. Qc6 以降、互いがベストの手を指してこの変化に落ち着くため、やはりd5 をクイーンで取っても、白にアドバンテージはありませんでした。

31. Rce1 Rde8 32. Be6?!


ここはビショップでeファイルに蓋をし、a2-g8のダイアゴナルを抑え込んでしまうのが、黒のピースを窮屈にする良いアイディアだと思ってしまいました。代わりに32. Rxe7 Rxe7 33. Qa8+! この手を見落としたのが悔やまれます。 33... Be8 34. Rxe7 Kxe7 (34... Qxe7 35. Bg6+-) 35. h4!+/- こうしてルークを捌いてしまえば、白に十分勝ちのチャンスのあるエンドゲームでした。

32... Bf4!



g7 の狭い位置にいるクイーンが、まさかこんな手のサポートをするとは... 残り時間30秒で相手はよく見つけます。

33. R3e2 Bd6 34. Re3?!


ここで試合を続けて勝負にいくか悩みました。34. Kg2! Bb4 35. Rh1! Bf7 36. Bxf7 Qxf7 37. Qxf7+ Kxf7 38. Rc2+/= キングでナイトを守る手は見えていましたが、e2 のルークが一時的に浮き、eファイルのピンが負担になると思ってしまいました。実際にはe6 のビショップをアタックするアイディアは無く、白は1つのルークをeファイルから遠ざけても大丈夫です。

34... Bf4 35. R3e2 Bd6 36. Re3 1/2-1/2



序盤中盤の構想は上手くいき、アドバンテージを取ったはずでしたが、2つの勝負所が難しく、そこを間違えてドローに落ち着きました。勝てなかったのは悔しいですが、色々と勉強になるゲームで良かったです。

8/17 15:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Lytvynets, D (UKR, 2117) 1-0
8/18 10:00 R2 Kokoszczynski, J (POL, 2198) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 1/2-1/2
8/18 17:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Makynovskiy, R (AIM, UKR, 2178) 1-0
8/19 17:00 R4 Steindl, J (AUT, 2277) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 0-1
8/20 17:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Blohberger, F (IM, AUT, 2467) 1/2-1/2
8/21 17:00 R6 Valsecchi, A (GM, ITA, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2390)
8/22 17:00 R7
8/23 17:00 R8
8/24 10:00 R9

Vienna Open 2019 R6 Pairings
Vienna Open 2019 R6 Live Games

後半のR6 でようやくGM との対戦です! イタリアのGM Valsecchi は今回初めて聞く名前ですが、イタリア代表としてすでにオリンピアードでもプレーしているようです。残り4試合、なるべく上と当たるためにも、この大事な試合も負けずに乗り切りたいと思います。

Bクラスに参加している妻も、初戦負けの後は3連勝とドローで、ライブレイティングがベストを更新しました。残り4試合では少し厳しいかもしれませんが、1800を目指して頑張ってもらいたいですね。

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