一昨日、立川チェスクラブ主催のチェスイベントに顔を出してきました。午前中から午後の早い時間に開催されていた学生大会は、仕事の都合で間に合わなかったため、午後のGM Wang Hao 同時対局からの見学です。Wang Hao とは2016年のIsle of Man の大会で対戦していて縁があり、今年久々の再会となりました。久々に見るWang Hao は20面をゆっくりと回りながら、どのポジションも確実にアドバンテージを広げていました。
見ていてなるほどと思ったのはこのゲームです。夕食の席でこのポジションについてWang Hao に尋ねると、直前の15... Qd7 が緩い手で、15... Rc8 16. Nc6 ならば白はわずかアドバンテージだったということです。
16. Qc6! Rfc8 17. Qxd7 Nxd7 18. b3!+/-
こうしてクイーンを交換していまい、b2-b3 からc4 のマスを抑えれば、次のNa5-Nc4 がd6 へのプレッシャーを増やすアイディアとして厳しくなります。実際のゲームの進行は、このc4 のナイトをビショップで取ったものの、白がその後でRh1-Rg1-Rg2-Rd2 とルークを振って再びセンターポーンへプレッシャーをかけ、丁寧なポジショナルプレーとエンドゲームテクニックで危なげなく勝ちました。この試合含め、今回の同時対局は白を持ったWang Hao の20戦全勝で幕を閉じています。
夕飯の席ではWang Hao と色々な話をさせてもらいました。彼は中国語、英語の他に日本語も高いレベルでできます。基本的な会話は当然として、日本語のメニューも読むことができるようでした。英語でも話をしましたが、日本語にもきちんと日本語で返してくれたため、とても話はしやすかったです。私が聞いて印象的だったのは、中国の若いプレーヤーたちについて。私たち日本のプレーヤーからすれば、中国の若いプレーヤーは2400-2600の層が非常に厚く、成長著しいように見えますが、Wang Hao からすれば彼らはまだまだとのこと。確かに冷静に考えてみると、Wang Hao のレベルからすれば、Wei Yi 以降、2700のレベルまで到達し、中国代表の枠を争えるような若手が出てこないのは、不満なのかもしれません。日本から見れば、中国の若いプレーヤーはIM, GM タイトルを簡単に取り、人材も豊富に見えますが、トップにいる彼からすれば、それだけでは満足な状態ではないということでしょう。日本も私がジュニアだった頃に比べれば、若く強いプレーヤーは増えましたが、まだ2300-2400のレベルに到達して、日本でトップの座を争うというレベルではありません。中国と日本でレベルの差はあれど、同じような話なのかもしれないと感じました。
Wang Hao はこの20年で来日したGM の中では、Maxime Vachier- Lagrave やNaiditschと肩を並べる世界トップクラスの強豪ですが、それを感じさせぬフランクさで、色々と楽しい話を聞かせてくれました。夕食で最初に隣の席を貰った私はしばらくして中村くんたちと席替えをし、彼らも様々なチェスに関する質問をぶつけられたようです。多くの質問に快く答えてくれたWang Hao、そして彼を招待してくれたシンランさんには深く感謝しています。Wang Hao の残りの日本滞在が彼にとって良いものであることを願うと同時に、また再会できる機会を楽しみにしています。
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