10月末日、30日31日は両方2試合ずつ、計4試合をこなします。ラウンドロビン前半の山となるこの日、初日に引き続いてセルビアのマスターたちを相手に試合が始まります。
見たことはありますが、多少珍しいアイディアでしょう。将来的にh5-h4 から白のキングサイドを崩す狙うを含みますが、このタイミングで仕掛けるのが有効かは疑問に思えます。以下、白は自然なセットアップで優勢を築きます。
以前のKID の記事でも書いた記憶がありますが、私はd1,e1 にルーク、c2 にクイーンを置き、そのうえでf2-f4 を突くのが白のベストセットアップと信じて疑っていません。黒の窮屈なスペースで、なんとか駒を捌くアイディアをひねり出さなければいけないでしょう。
この手はなるほどと思いました。g7 のマスをクイーンのために空けておき、a1-h8 のダイアゴナルを完全に抑えることで白のスペースに対抗しようとします。しかし、d6 のポーンの守りがなくなるのが難点です。
センターポーンとの交換にはなりますが、これで十分に大きなアドバンテージが得られると確信し、この手を指す決断を下します。
白はダブルビショップのうえ、センターのオープンファイルをダブルルークでコントロールする最高のポジションに到達しました。これならば、誰が相手でもドローにはできないと思い、久々の2400撃破に向けてゲームを続けます。
黒のカウンタープレーを軽視し、a1-h8 のダイアゴナルを抑えることにこだわりすぎました。単純にビショップでa5 のポーンを狙うぐらいで十分に見えます。
当然、黒はどこからか反撃を作らなければいけません。白はここから崩壊しそうな黒マスのポーンをうまくカバーしながら、アタックを続ける方法を模索します。
ダブルビショップを持つ白は、とにかくラインを開いて勝負です。ルークはセンターを離れましたが、代わりに相手キングに近いfファイルに回って十分な働きをしているはずです。
私の残り時間は5分。ハンガリーの試合の持ち時間ならば、残り5手を安全に乗り切って勝負にいけますが、ここノビサドでの試合は、40手以降の追加時間がありません! 思い切って指したつもりのルークサクリファイスはリスキーで、安全にg3 のポーンを取り去っておくべきでした。35. Qxg3! Nef4 36. Qe3!+/-
ゲームのポイントとなるブランダーの応酬が始まります。f7 のポーンが消えて黒キングの守りは危うそうに見えますが、実はすぐのスレットはありません。35... Rd8! からバックランクをすぐに狙うのが黒のベストムーブでした。
指されてから、なるほど! と思いましたが、完全にはったりでした。もちろんバックランクに侵入されてからのメイトがあるため、クイーンを取ることはできませんが、(ちょっと難しいですが、考えてみてください。) 白にはディフェンスとアタックを兼ねた非常にうまい手があります。
何を思ってこの手を指したのか... 38. Qc2! N2d4 (38... Qd2 39. Rg6+! Kh7 40. Rg7+ Kh6 41. Qh7#) 39. Rxh6 Nxc2 40. Rh8+ Kf7 41. Rxd8 Nxd8 42. Be4 Ne3 43. Bd4 Nd1 44. Kg2+- このダブルビショップ + 1ポーン vs ダブルナイトのエンドゲームは、順当にいけば白が勝てそうです。
もう互いに時間切迫で、めちゃくちゃな手が飛び交います。40... Qxb2! 41. Rxe6 Nf4! ならば、白はかなり厳しいでしょう。e6 のナイトを取ればOK だと試合中は読んでいました。
41. Rg7+! Kh6 42. Rg4 Qd1! 43. Be5 Nh5=/+ これだと黒やや良しですが、まだ難解なポジションであることは間違いありません。
まだまだ悪手が尽きません! 41... Qxb2! (私は試合中、これで負けを覚悟していました。有効なディスカバードアタックはどこにも存在しません。) 42. Rg4+ (42. Rd6+ Kg7 43. Rxd8 g2+ 44. Bxg2 Ng3+-+ ルークを取れば、哀れクイーンがお亡くなりです。) 42... Kh8 43. Rh4+ Kg7 44. Rg4+ Kf7 45. Rxf4+ Nxf4 46. Qxf4+ Ke7-+
多分、この最後のブランダーは対戦相手も相当驚いたと思います。試合後にSinisa にクイーンを取れるだろうと指摘されました。いや、まさかそんなチャンスを逃すはずが... と思いましたが、本当でした。43. Bh7+ Kxh7 44. Rxe3 g2+ 45. Qxg2 Nxg2 46. Kxg2 Rd2 47. Be5 Rxa2 48. Kf3+/= この少しだけ良いエンドゲームが勝てるのかは分かりませんが、少なくとも負けはありえません。こんな簡単なディスカバードチェックが見えないとは、相当冷静ではなかったのでしょう。
敗者とは最後にミスをした者だという格言の通り、最後に私が力尽きました。捩じり合いに弱いのは長い課題でしたが、まさかこれを落とすとは。意気消沈して部屋に戻り、頭を多少冷やしてから次の試合に向かいます。
GM グループの3R は、すべてが短手数ドロー。セルビアまで来て良くないことはわかっていましたが、あの負けの後では勘弁してもらいたいと思います。しかし、2R で勝って勢いに乗るかと思われたStankovic が、自分からオファーしてきたのは意外でした。
R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402) 0-1
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362)
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436)
試合後、Stankovic と少し話をし、2R の敗戦について慰められました。Sredojevic にはオープニングに詳しくないが、タクティクスとプラクティカルな手を作る実力が高いとのこと。はい、確かに盤上で見せてもらいました。27手目の時点で私が黒を持っていれば、多少格下が相手でも逆転は難しいでしょう。そういったポジションでも、しっかりと指し続けることができるプレーヤーを、本当に強いと呼ぶのかもしれませんね。
今日は人生で初の、ボスニアヘルッツェゴビナのプレーヤーと対戦です! 彼女は女子のナショナルチームメンバーで、非常にトリッキーな指しまわしをしますが、実力は本物です。Rudakov 戦と併せて、この2200台との連戦で白星を得られなければ、ラウンドロビンは苦しい結果に終わるでしょう。頑張ってポイントを取ってきます!
3R が一瞬で終わったので、日の沈んだばかりのノビサド中心街をぶらぶら。マリアの名聖堂の反対に並ぶのは、ライトアップされた市庁舎です。
夜のマリアの名聖堂はこんな感じ。前日と全く同じアングルですが、やはり昼と夜では雰囲気が違います。今大会の記事はSerbian Night というタイトルでまとめた為(とくに意味はありませんw)、こうした夜の写真もアップしておけなければいけませんね。
晩御飯はパラチンタ。デザートではなく、これだけです! ハンガリーのパラチンタよりもサイズが大きく、より日本のクレープに近いですね。これで150ディナール(130円ぐらい) でした。
Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402)
Memorijal Milja Vujovic" GM (2)
1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 O-O 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 c6 11. Be3 a5 12. Qc2 h5!?
Memorijal Milja Vujovic" GM (2)
見たことはありますが、多少珍しいアイディアでしょう。将来的にh5-h4 から白のキングサイドを崩す狙うを含みますが、このタイミングで仕掛けるのが有効かは疑問に思えます。以下、白は自然なセットアップで優勢を築きます。
13. Rad1 Qe7 14. Rfe1 Ne5 15. b3 Qf8 16. f4 Ned7 17. Nf3
以前のKID の記事でも書いた記憶がありますが、私はd1,e1 にルーク、c2 にクイーンを置き、そのうえでf2-f4 を突くのが白のベストセットアップと信じて疑っていません。黒の窮屈なスペースで、なんとか駒を捌くアイディアをひねり出さなければいけないでしょう。
17... Nh7 18. Bf2 Bf6
この手はなるほどと思いました。g7 のマスをクイーンのために空けておき、a1-h8 のダイアゴナルを完全に抑えることで白のスペースに対抗しようとします。しかし、d6 のポーンの守りがなくなるのが難点です。
19. Rd3 Qg7 20. Red1 Ndf8 21. Na4!?
センターポーンとの交換にはなりますが、これで十分に大きなアドバンテージが得られると確信し、この手を指す決断を下します。
21... Rxe4 22. Nb6 Rb8 23. Nxc8 Rxc8 24. Ng5! Ree8 25. Ne4 Be7 26. Nxd6 Bxd6 27. Rxd6+-
白はダブルビショップのうえ、センターのオープンファイルをダブルルークでコントロールする最高のポジションに到達しました。これならば、誰が相手でもドローにはできないと思い、久々の2400撃破に向けてゲームを続けます。
27... Re6 28. Bd4?!
黒のカウンタープレーを軽視し、a1-h8 のダイアゴナルを抑えることにこだわりすぎました。単純にビショップでa5 のポーンを狙うぐらいで十分に見えます。
28... Qh6 29. Rxe6 Nxe6 30. Bb2 h4!
当然、黒はどこからか反撃を作らなければいけません。白はここから崩壊しそうな黒マスのポーンをうまくカバーしながら、アタックを続ける方法を模索します。
31. Qc3 Nhf8 32. Rf1 hxg3 33. f5!
ダブルビショップを持つ白は、とにかくラインを開いて勝負です。ルークはセンターを離れましたが、代わりに相手キングに近いfファイルに回って十分な働きをしているはずです。
33... gxf5 34. Rxf5 Ng6 35. Rxf7?
私の残り時間は5分。ハンガリーの試合の持ち時間ならば、残り5手を安全に乗り切って勝負にいけますが、ここノビサドでの試合は、40手以降の追加時間がありません! 思い切って指したつもりのルークサクリファイスはリスキーで、安全にg3 のポーンを取り去っておくべきでした。35. Qxg3! Nef4 36. Qe3!+/-
35... Ngf4?!
ゲームのポイントとなるブランダーの応酬が始まります。f7 のポーンが消えて黒キングの守りは危うそうに見えますが、実はすぐのスレットはありません。35... Rd8! からバックランクをすぐに狙うのが黒のベストムーブでした。
36. Rf6 Ne2+ 37. Kh1 Rd8?
指されてから、なるほど! と思いましたが、完全にはったりでした。もちろんバックランクに侵入されてからのメイトがあるため、クイーンを取ることはできませんが、(ちょっと難しいですが、考えてみてください。) 白にはディフェンスとアタックを兼ねた非常にうまい手があります。
38. Qe1?
何を思ってこの手を指したのか... 38. Qc2! N2d4 (38... Qd2 39. Rg6+! Kh7 40. Rg7+ Kh6 41. Qh7#) 39. Rxh6 Nxc2 40. Rh8+ Kf7 41. Rxd8 Nxd8 42. Be4 Ne3 43. Bd4 Nd1 44. Kg2+- このダブルビショップ + 1ポーン vs ダブルナイトのエンドゲームは、順当にいけば白が勝てそうです。
38... Qd2! 39. Rg6+ Kh7 40. Qf1 N6f4?
もう互いに時間切迫で、めちゃくちゃな手が飛び交います。40... Qxb2! 41. Rxe6 Nf4! ならば、白はかなり厳しいでしょう。e6 のナイトを取ればOK だと試合中は読んでいました。
41. Be4?
41. Rg7+! Kh6 42. Rg4 Qd1! 43. Be5 Nh5=/+ これだと黒やや良しですが、まだ難解なポジションであることは間違いありません。
41... Qe3??
まだまだ悪手が尽きません! 41... Qxb2! (私は試合中、これで負けを覚悟していました。有効なディスカバードアタックはどこにも存在しません。) 42. Rg4+ (42. Rd6+ Kg7 43. Rxd8 g2+ 44. Bxg2 Ng3+-+ ルークを取れば、哀れクイーンがお亡くなりです。) 42... Kh8 43. Rh4+ Kg7 44. Rg4+ Kf7 45. Rxf4+ Nxf4 46. Qxf4+ Ke7-+
42. Re6+ Kg8 43. Re7??
多分、この最後のブランダーは対戦相手も相当驚いたと思います。試合後にSinisa にクイーンを取れるだろうと指摘されました。いや、まさかそんなチャンスを逃すはずが... と思いましたが、本当でした。43. Bh7+ Kxh7 44. Rxe3 g2+ 45. Qxg2 Nxg2 46. Kxg2 Rd2 47. Be5 Rxa2 48. Kf3+/= この少しだけ良いエンドゲームが勝てるのかは分かりませんが、少なくとも負けはありえません。こんな簡単なディスカバードチェックが見えないとは、相当冷静ではなかったのでしょう。
43... Qf2!-+ 44. Rg7+ Kf8 45. Bg2 Qxg2+ 0-1
敗者とは最後にミスをした者だという格言の通り、最後に私が力尽きました。捩じり合いに弱いのは長い課題でしたが、まさかこれを落とすとは。意気消沈して部屋に戻り、頭を多少冷やしてから次の試合に向かいます。
Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal Milja Vujovic" GM (3)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 c5 6. Be3 1/2-1/2
Memorijal Milja Vujovic" GM (3)
GM グループの3R は、すべてが短手数ドロー。セルビアまで来て良くないことはわかっていましたが、あの負けの後では勘弁してもらいたいと思います。しかし、2R で勝って勢いに乗るかと思われたStankovic が、自分からオファーしてきたのは意外でした。
R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402) 0-1
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362)
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436)
試合後、Stankovic と少し話をし、2R の敗戦について慰められました。Sredojevic にはオープニングに詳しくないが、タクティクスとプラクティカルな手を作る実力が高いとのこと。はい、確かに盤上で見せてもらいました。27手目の時点で私が黒を持っていれば、多少格下が相手でも逆転は難しいでしょう。そういったポジションでも、しっかりと指し続けることができるプレーヤーを、本当に強いと呼ぶのかもしれませんね。
今日は人生で初の、ボスニアヘルッツェゴビナのプレーヤーと対戦です! 彼女は女子のナショナルチームメンバーで、非常にトリッキーな指しまわしをしますが、実力は本物です。Rudakov 戦と併せて、この2200台との連戦で白星を得られなければ、ラウンドロビンは苦しい結果に終わるでしょう。頑張ってポイントを取ってきます!
3R が一瞬で終わったので、日の沈んだばかりのノビサド中心街をぶらぶら。マリアの名聖堂の反対に並ぶのは、ライトアップされた市庁舎です。
夜のマリアの名聖堂はこんな感じ。前日と全く同じアングルですが、やはり昼と夜では雰囲気が違います。今大会の記事はSerbian Night というタイトルでまとめた為(とくに意味はありませんw)、こうした夜の写真もアップしておけなければいけませんね。
晩御飯はパラチンタ。デザートではなく、これだけです! ハンガリーのパラチンタよりもサイズが大きく、より日本のクレープに近いですね。これで150ディナール(130円ぐらい) でした。