2013/10/31

Serbian Night 2nd and 3rd rounds - Blunder Bomb -


10月末日、30日31日は両方2試合ずつ、計4試合をこなします。ラウンドロビン前半の山となるこの日、初日に引き続いてセルビアのマスターたちを相手に試合が始まります。

Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402)
Memorijal Milja Vujovic" GM (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 O-O 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 c6 11. Be3 a5 12. Qc2 h5!?



見たことはありますが、多少珍しいアイディアでしょう。将来的にh5-h4 から白のキングサイドを崩す狙うを含みますが、このタイミングで仕掛けるのが有効かは疑問に思えます。以下、白は自然なセットアップで優勢を築きます。

13. Rad1 Qe7 14. Rfe1 Ne5 15. b3 Qf8 16. f4 Ned7 17. Nf3


以前のKID の記事でも書いた記憶がありますが、私はd1,e1 にルーク、c2 にクイーンを置き、そのうえでf2-f4 を突くのが白のベストセットアップと信じて疑っていません。黒の窮屈なスペースで、なんとか駒を捌くアイディアをひねり出さなければいけないでしょう。

17... Nh7 18. Bf2 Bf6



この手はなるほどと思いました。g7 のマスをクイーンのために空けておき、a1-h8 のダイアゴナルを完全に抑えることで白のスペースに対抗しようとします。しかし、d6 のポーンの守りがなくなるのが難点です。

19. Rd3 Qg7 20. Red1 Ndf8 21. Na4!?


センターポーンとの交換にはなりますが、これで十分に大きなアドバンテージが得られると確信し、この手を指す決断を下します。

21... Rxe4 22. Nb6 Rb8 23. Nxc8 Rxc8 24. Ng5! Ree8 25. Ne4 Be7 26. Nxd6 Bxd6 27. Rxd6+-



白はダブルビショップのうえ、センターのオープンファイルをダブルルークでコントロールする最高のポジションに到達しました。これならば、誰が相手でもドローにはできないと思い、久々の2400撃破に向けてゲームを続けます。

27... Re6 28. Bd4?!


黒のカウンタープレーを軽視し、a1-h8 のダイアゴナルを抑えることにこだわりすぎました。単純にビショップでa5 のポーンを狙うぐらいで十分に見えます。

28... Qh6 29. Rxe6 Nxe6 30. Bb2 h4!



当然、黒はどこからか反撃を作らなければいけません。白はここから崩壊しそうな黒マスのポーンをうまくカバーしながら、アタックを続ける方法を模索します。

31. Qc3 Nhf8 32. Rf1 hxg3 33. f5!


ダブルビショップを持つ白は、とにかくラインを開いて勝負です。ルークはセンターを離れましたが、代わりに相手キングに近いfファイルに回って十分な働きをしているはずです。

33... gxf5 34. Rxf5 Ng6 35. Rxf7?



私の残り時間は5分。ハンガリーの試合の持ち時間ならば、残り5手を安全に乗り切って勝負にいけますが、ここノビサドでの試合は、40手以降の追加時間がありません! 思い切って指したつもりのルークサクリファイスはリスキーで、安全にg3 のポーンを取り去っておくべきでした。35. Qxg3! Nef4 36. Qe3!+/-

35... Ngf4?!


ゲームのポイントとなるブランダーの応酬が始まります。f7 のポーンが消えて黒キングの守りは危うそうに見えますが、実はすぐのスレットはありません。35... Rd8! からバックランクをすぐに狙うのが黒のベストムーブでした。

36. Rf6 Ne2+ 37. Kh1 Rd8?



指されてから、なるほど! と思いましたが、完全にはったりでした。もちろんバックランクに侵入されてからのメイトがあるため、クイーンを取ることはできませんが、(ちょっと難しいですが、考えてみてください。) 白にはディフェンスとアタックを兼ねた非常にうまい手があります。

38. Qe1?


何を思ってこの手を指したのか... 38. Qc2! N2d4 (38... Qd2 39. Rg6+! Kh7 40. Rg7+ Kh6 41. Qh7#) 39. Rxh6 Nxc2 40. Rh8+ Kf7 41. Rxd8 Nxd8 42. Be4 Ne3 43. Bd4 Nd1 44. Kg2+- このダブルビショップ + 1ポーン vs ダブルナイトのエンドゲームは、順当にいけば白が勝てそうです。

38... Qd2! 39. Rg6+ Kh7 40. Qf1 N6f4?



もう互いに時間切迫で、めちゃくちゃな手が飛び交います。40... Qxb2! 41. Rxe6 Nf4! ならば、白はかなり厳しいでしょう。e6 のナイトを取ればOK だと試合中は読んでいました。

41. Be4?


41. Rg7+! Kh6 42. Rg4 Qd1! 43. Be5 Nh5=/+ これだと黒やや良しですが、まだ難解なポジションであることは間違いありません。

41... Qe3??



まだまだ悪手が尽きません! 41... Qxb2! (私は試合中、これで負けを覚悟していました。有効なディスカバードアタックはどこにも存在しません。) 42. Rg4+ (42. Rd6+ Kg7 43. Rxd8 g2+ 44. Bxg2 Ng3+-+ ルークを取れば、哀れクイーンがお亡くなりです。) 42... Kh8 43. Rh4+ Kg7 44. Rg4+ Kf7 45. Rxf4+ Nxf4 46. Qxf4+ Ke7-+

42. Re6+ Kg8 43. Re7??


多分、この最後のブランダーは対戦相手も相当驚いたと思います。試合後にSinisa にクイーンを取れるだろうと指摘されました。いや、まさかそんなチャンスを逃すはずが... と思いましたが、本当でした。43. Bh7+ Kxh7 44. Rxe3 g2+ 45. Qxg2 Nxg2 46. Kxg2 Rd2 47. Be5 Rxa2 48. Kf3+/= この少しだけ良いエンドゲームが勝てるのかは分かりませんが、少なくとも負けはありえません。こんな簡単なディスカバードチェックが見えないとは、相当冷静ではなかったのでしょう。

43... Qf2!-+ 44. Rg7+ Kf8 45. Bg2 Qxg2+ 0-1



敗者とは最後にミスをした者だという格言の通り、最後に私が力尽きました。捩じり合いに弱いのは長い課題でしたが、まさかこれを落とすとは。意気消沈して部屋に戻り、頭を多少冷やしてから次の試合に向かいます。

Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal Milja Vujovic" GM (3)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 c5 6. Be3 1/2-1/2



GM グループの3R は、すべてが短手数ドロー。セルビアまで来て良くないことはわかっていましたが、あの負けの後では勘弁してもらいたいと思います。しかし、2R で勝って勢いに乗るかと思われたStankovic が、自分からオファーしてきたのは意外でした。

R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402) 0-1
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362)
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436)


試合後、Stankovic と少し話をし、2R の敗戦について慰められました。Sredojevic にはオープニングに詳しくないが、タクティクスとプラクティカルな手を作る実力が高いとのこと。はい、確かに盤上で見せてもらいました。27手目の時点で私が黒を持っていれば、多少格下が相手でも逆転は難しいでしょう。そういったポジションでも、しっかりと指し続けることができるプレーヤーを、本当に強いと呼ぶのかもしれませんね。

今日は人生で初の、ボスニアヘルッツェゴビナのプレーヤーと対戦です! 彼女は女子のナショナルチームメンバーで、非常にトリッキーな指しまわしをしますが、実力は本物です。Rudakov 戦と併せて、この2200台との連戦で白星を得られなければ、ラウンドロビンは苦しい結果に終わるでしょう。頑張ってポイントを取ってきます!


3R が一瞬で終わったので、日の沈んだばかりのノビサド中心街をぶらぶら。マリアの名聖堂の反対に並ぶのは、ライトアップされた市庁舎です。


夜のマリアの名聖堂はこんな感じ。前日と全く同じアングルですが、やはり昼と夜では雰囲気が違います。今大会の記事はSerbian Night というタイトルでまとめた為(とくに意味はありませんw)、こうした夜の写真もアップしておけなければいけませんね。


晩御飯はパラチンタ。デザートではなく、これだけです! ハンガリーのパラチンタよりもサイズが大きく、より日本のクレープに近いですね。これで150ディナール(130円ぐらい) でした。


2013/10/30

Serbian Night 1st round - Novi Sad Sightseeing -


ノビサドで迎える初めての朝は、半袖でも問題ない程の陽気と快晴でした。

ノビサド生活2日目。せっかく午前中は時間があるので、周囲を観光しようと朝8時に起きました。(アラームに起こされたのか、長谷川さんに起こされたのか...) まずはメールとFacebook をチェックし、シャワーを済ませてから出かけようと思いましたが、なんとシャワーが温かくならない! 仕方がないので、シャワーを浴びずに外に出ます。最初は現在地と周囲の地理、両替のレートなどを調べにいきます。


ノビサド中心街の名所の1つ、マリアの名聖堂

昨夜、Sinisa に案内された部屋は、ノビサド中心街にかなり近いところに位置します。徒歩一分で到達するのがこちら、マリアの名聖堂。ちなみに英語でThe Name of Mary Church なので、マリアの"名聖堂”ではなく、"マリアの名"聖堂です。これに気づいたとき、ちょっと笑ってしまいました。単にマリア聖堂でも良いと思うんですけどね。


セルビアは、さすが元チェス大国ユーゴスラヴィアから分裂した国だけあり、チェスの本がきちんと本屋に並んでいます。内容はセルビア語ですべて書かれていたため、読むことはできませんでしたが、初心者用の教科書はなかなかしっかり作られており、時間とお金に余裕があれば、残り5日間のどこかで買いに来ようかと思います。


軽く周辺の地理がわかってきたので、一度両替用のお金を取りに部屋に戻ります。ちなみにこちらが、部屋のロフトにある私のベッドです。で、でかい...(笑) この時点ではルームメイトは到着していませんが、彼は1階に滞在するのでプライバシーはほぼ守られており、共用なのはバス、トイレ、冷蔵庫、キッチンくらいです。これで1泊12ユーロとは、なかなかサービスが良いですね。


再び外に出て、いくつかの両替所でレートをチェックし、これなら悪くないだろうと4000フォリントを替えましたが、レートよりも手数料がひどい! 予定より少額のセルビアンディナールしか手に入りませんでしたが、もともと物価の安い国です。さほど気にしないでおこうと、まずはブランチにピザを購入。1切れが160ディナール(140円ぐらい) だと、少しハンガリーより高いかなと思いましたが、サイズが大きかったです! 普通は1/8 カットだと思いますが、ノビサドは1/4 カットが普通のようでした。起きてまずピザ? という気もしますが、数時間元気に歩き回るためには、これぐらいがっつり食べる必要があるでしょう。


お腹を膨らませてから、再び地図とにらめっっこを始め、ドナウ川がどちらにあるのかを考えます。多少迷いながらも、なんとか懐かしのドナウに到着。海に面していないハンガリーやセルビアにとっては、ドナウのような巨大な河川は、かつて重要な水源だったのでしょう。この日目指すのは、ドナウを渡った先にあるペトロヴァラディン要塞です。


ドナウを渡り、要塞の頂上を目指しますが、選んだルートが悪かったのか道が長い! 車やバスで上って行く人を尻目に、意地でも徒歩で進んでいきます。この日はおそらく25度近い陽気で、10月も終わりだというのに汗だくに... 前夜にはArthur も、最近の陽気は異常だと言っていました。


長い道のりの末、なんとかペトロヴァラディン要塞の頂上に到着です。ここからはドナウ川、およびノビサド中心街を眺めることができました。上ってくるのに苦労はしましたが、初戦が始まる前のこの日しか、ゆっくりここに来る機会はなかったでしょう。来た甲斐は十分にありました。頂上付近のお土産屋をいくつか覗きながら、ポストカードを2枚購入して部屋に戻ります。

部屋に戻ってから試合の準備と昼寝を済ませ、午後4時頃になって会場を見に行くかと思った矢先、部屋のドアがノックされました。ようやく到着したルームメイトは、FM B グループに参加する、セルビアの青年、Milan Putnik です。6か月前に駒の動かし方を覚え、今回が2回目の大会だという彼ですが、つい先日行われた1回目の大会では、2100台からドローを取ったそうです。なかなか将来有望ですね。


Milan の準備が整うのを待ち、徒歩3分ほどの試合会場に向かいます。試合開始予定ギリギリの滑り込みでしたが、ちょうど開会の挨拶をSinisa が行っているところでした。大会名になっているMilja Vujovic は、旧ユーゴのIM で、Sinisa もお世話になった偉大なチェスプレーヤー、チェスコーチだったそうです。


会場で用意されていたチェスセットは、なかなか質の良いものが多かったです。その中で「お、これは?」と思ったのがこちら。机にボードが彫り込まれたチェスセットです。そしてたまたま、GM グループの私の試合がこのテーブルにヒット! 初戦の対戦相手は私と最もレイティング近い、セルビアのIM Bodiroga です。

Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal "Milja Vujovic" GM (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 g6 5. Nf3 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6 8. a4 a5 9. b3 Ne4!?



このナイトを交換するアイディアは少し気に入りました。スペースの狭い黒は、多少駒を捌いたほうが楽にプレーできるはずです。

10. Bb2 Bf5


最初は10... Nxc3 11. Bxc3 Bg4 12. h3 Bxf3 13. Bxf3 e6 14. Qd2+/= と指そうと思っていましたが、ダブルビショップをそう簡単に放棄しなくても良いだろうと思い直し、普段はあまり指さないBc8-Bf5 を指して様子を見ることにします。

11. Nd2?! Nxc3 12. Bxc3 Na6!



白の11手目は少し不自然に思えます。このナイトはd2 からどこにも行く場所がなく、f3 にいずれ戻るしかないでしょう。その間に黒は満足な形でピースを捌き、b4 にできたマスを狙います。

13. Rc1 Nb4 14. Bxb4 axb4


こう取るしかないだろうなと思いつつ、b4 に残ったポーンが弱点になるのかならないのか、それが私の中ではっきりしません。(それでも、Na6-Nb4 と入る以外に有効なプランがわかりませんでした。)

15. cxd5



cファイルをどうするかというのは、ここからのゲームの方針を大きく左右します。15. c5 e5 16. Nf3 f6=/+ は私の読みの1つでしたが、これならばセンターの厚みとダブルビショップで、b4 の弱さを補って余りあるでしょう。

15... cxd5 16. Nf3 Qd6?!


Kamsky のゲームなどを見る中で、ここがクイーンのベストスクウェア(もし置けるならば) と信じて疑っていませんでした。16... Rc8! 17. Rxc8 (17. Qd2 Qa5! (試合中、a5 に出てどうするのかと思っていましたが、これならばc3 のマスに利くので、Rc8-Rc3 のアイディアが使えるようになります!) 18. Bd3 Be6 19. Rxc8 Rxc8 20. Rc1 Rc3=/+) 17... Qxc8 18. Bd3 Bg4 19. h3 Bxf3 20. Qxf3 Qc3 21. Qd1 Rc8=/+ 確かにこれならば、cファイルを握った黒が指しやすいのは間違いありません。

17. Qd2 Rfc8 18. h3 h5 19. Rfd1= 1/2-1/2



黒はダブルビショップですが、あまりそれを生かせるようなポジションでもなく、b4 の弱点も気になります。ここでのオファーは受けても問題ないだろうと判断し、初戦をここで切り上げました。

R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402)
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362)
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436)


ひとまず、分かっている7R までのペアリングを公開しておきます。黒が多いリストを引いてしまったのは残念ですが、こればかりは運ですのでどうしようもありません。勝てるゲームを、しっかり勝つだけです。この7人との対戦での目標は、2つ勝ち越しとしておきましょう。3つ勝ち越しならば上出来で、ノームはほぼ問題ないと言えそうです。明日はセルビアの2400コンビ、Sredojevic とStankovic に挑みます。(彼らは初戦、何事もなくドローにしていました。)


試合後にMilan と夕飯に出かけると、路上ペインターを発見。周囲はシンナー臭かったですが、集まった人たちは興味深そうに出来上がる絵を眺めていました。500ディナールで左のような絵が手に入るのであれば、1枚買ってみても良さそうですね。


Milan には、ピザとアイスクリームのうまい店があるんだと案内され、昼と同じ店にやってきました(笑) 私は美味しい物なら、連続でもほとんど飽きないので問題ありません。彼もここに来たがっていたようですしね。お楽しみは、ピザの後のアイスクリームです。


アイスクリームと銘打っていましたが、実際にはソフトクリームでした。カップに注いだソフトクリームに4種類のトッピングを入れて混ぜ、最後にソースをかけます。このサイズで130ディナールとは、なかなか満足なデザートでした。


2013/10/29

Serbian Night Arrival and Tournament Information


夜のノビサド駅

長い列車の旅を終え、セルビア北部の町、ノビサドに到着しました。今日からこの町で6日間、9R の変則形式トーナメントが開催されます。今大会の情報をについては、写真とともに長い昨日1日を振り返りながら、ご説明していこうと思います。


ノビサド行きの列車は、アンダンテから20分ほどのブダペスト東駅(Keleti) から、13時頃に出発します。前日にチケットを購入したので、当日慌てなくても大丈夫... と思っていた私が甘かったです(笑) プラハからブダペストへの到着便が遅れて、何番ホームに列車が止まるか分からず、さらには乗ってみてもどこの座席が自由席なのかわからず、オロオロするばかりです。何度か降りて乗ってを繰り返した末、ようやくこれで間違いないと確信し、列車が出たのは定刻から20分遅れのことでした。


こちらがブダペスト - ノビサドの往復チケットです。購入日から1ヶ月有効で、7380フォリント、24.6ユーロでした。長い長い6時間の列車の旅の中、車内での切符チェック、パスポートコントロールは問題なくパスできました。旅のお供の3冊の小説を読みながら、なるべく遅れずにノビサドにつくことを祈ります。


ノビサド駅に到着したのは、予定より50分遅れの午後8時近くです。オーガナイザーのSinisa とは7時半に近くにホテルで待ち合わせ! 30分ぐらいなら大丈夫だろうと思いながらも、若干不安なまま待ち合わせ場所に向かいました。列車は料金が安い分、ダイヤが乱れるという噂は本当でしたね...


GM Sinisa Drazic

オーガナイザーのGM Sinisa Drazic は、遅れた私をきちんと待っていてくれました! 合流してすぐに部屋に案内してもらい、荷物を置いた後は隣の部屋のIM Abolianinと、Sinisa の家に行くことに。そちらではセルビアの蒸留酒、ラキアによる乾杯とともに、色々な話をしてきました。2人は日本人がセルビアのトーナメントに来ることが珍しいかったため、私に質問攻めです(笑) (Abolianin は日本人と話すこと自体が初めてだと言っていました。) 写真はAnand が2000年にFIDE世界チャンピオンになる直前、彼と優勝争いをしたときトーナメントのトロフィーだそうです。

ここで一旦、昨日の流れを一時中断し、今日からノビサドで始まる、Memorijal "Milja Vujovic" について、形式を振り返っておきましょう。大会のエントリーリストは以下の通りで、このメンバーを8人4グループに分けて、7R ラウンドロビンからスタートです。ラウンドロビンが終わった後は、グループを解体して残り2試合をスイス式で行います。Sinisa によれば、4名はまだリストに入っていませんが、きちんと32名を集めているそうです。


私が所属するのは、最も平均レイティングが高い上のクラスで、Sinisa からは、メンバーは以下の通りだと事前に伝えられています。今月のFS に比べれば平均レイティングは多少落ちますが、それでも今まで経験してきたトーナメントの中で、レベルが高いほうであることは間違いありません。

Dobrov Vladimir 2528 , GM , Russia
Kostic Vladimir G 2436 , GM , Serbia
Stankovic Milos 2408 , Serbia
Sredojevic Ivan 2402 , FM , Serbia
Bodiroga Predrag 2387 , IM , Serbia
Kojima Shinya 2344 , FM , Japan
Dimitrijevic Aleksandra 2263 , WFM , Bosnia-Hercegovina
Rudakov Aleksandar 2262 , Russia
Average: 2378


これを見ると、懐かしい彼らの名前がありますね(笑) 彼らとブダペストで写真を撮ったのはつい1ヶ月前のことですが、10月は大変な試合も多かったので、すでに大昔のことのように思えます。Rudakov は10月の更新でレイティングを60 上げており、これから計算される9月分のCAISSA でも、+24 が確定しています。(私からの勝利が大きいことは言うまでもありません!)


Rudakov, Dobrov と、Polgar Chess Festival にて

そしてRudakov は、日曜日まで行われていた別の大会で、1つ目のIM ノームを獲得したとIM Abolianin から話を聞きました。宿に戻ってからChess Results で調べると、以下の大会を発見です。これを見るに、Rudakov はノーム獲得ばかりでなく、GM 2人を抑えて優勝じゃないですか... Rudakov は完全に2200台のプレーヤーではありませんね。GM Dobrov のコーチングの賜物でしょう。



ベルギーのIM Arthur Abolianin と

Sinisa の家を出た後は、近くのセルビアンレストランに連れて行ってもらいました。ここでも上に書いたようなRudakov の活躍の話や、私のコーチであるMisha の話、日本でのチェスの現状など、様々な話ができました。面白かったのは、ロシアのチェススクールにコーチングの勉強に行かないかという誘いです。そこではロシアのGM Bareev が講師を務め、正式なディプロマがゲットできるとのこと。Arthur はかつて、そこでチェスコーチとしての資格を得たそうです。私は目前のIM タイトル獲得で手一杯なので、すぐには考える余裕がないですが、将来的にはこうした場所で勉強して見るのも良いでしょうね。


セルビア風ケバブをいただきながら、マスターたちの話は続きます。Arthur はロシア人でありながら、結婚して現在はベルギーのブリュッセルに住んでいるとのこと。彼はMemorijal "Milja Vujovic" には参加せず、今日のバスでブダペストに渡り、そこから飛行機でベルギーに帰るそうです。そこで驚いたのは、バスでならばノビサドからブダペストまでたった2時間だということ! 今日は6時間かけてブダペストから来たと言うと「冗談だろう?」との反応でした。やはり多少高くても、バスを利用するのが常識なんですかね...

また話をトーナメントに戻しましょう。私が所属するグループはGM 2人、IM 1人を擁しているため、IM ノームに必要なマスター数の条件は満たしています。何ポイントでIM ノーム獲得になるかは8,9R の当たり次第ですが、おそらく3つ勝ち越し、6ポイントだと予想します。(Sinisa は5.5P でもいけるのではないかと言っていましたが)

とりあえず何ポイント取るにせよ、ここが2344 というレイティングで計算される最後の大会になります。レイティングは上がれば上がるほど、勝っても上がりにくく、また負けると下がりやすくなります。この大会のレイティング計算は12月頭に回されますが、そこでなるべく大きなプラスを得られるよう、そして3つか4つ目のノームを獲得し、今後ノームに頭を悩まされることがなくなるよう、頑張って好成績を収めていきたいと思います。初日は午後4時30集合なので、3時間後からのスタートとなります! (ハンガリーやセルビアでは、10月27日にサマータイムが終わり、日本との時差は8時間になっています。)

2013/10/28

Sicilian Paradise - Tournament Information -

先日、ザコパネのトーナメントをどうするかという記事をアップしたばかりですが、25日の夜にどうするかを全て決めました。アグリジェントのトーナメントオーガナイザーから返事を貰ったので、11月前半はイタリアのシチリア島に行きます。すでに航空券とホテルは予約しました。バイバイ、ポーランド!

11/08-10 の3日間で6試合の大会が開かれるのは、シチリア島のアグリジェントという場所です。私はこれまで一度も聞いたことがなかった地名であるため、どんな場所なのか調べてみると...


シチリア島のこの辺りでした。ちなみにFacebook 上でアグリジェントの情報を求めたところ、去年の秋にアンダンテでお世話になったご夫婦から、以前アグリジェントに行ったよ~と反応を貰っています。私が現地に到着する一足先に、アグリジェントがどんな場所かチェックしてみたい方は、こちらのブログ記事をご覧ください。他の場所の記事も、とっても面白いですよ。

World Mover 夫婦でポレポレ

私がアグリジェントに向かうためには、ブダペストからローマ経由でカターニアの空港に飛び、それからバスでの移動となります。大会前日、11月7日の朝にブダペストを出るので、現地には同日夕方に到着予定です。大会オーガナイザーのCarmero 氏とは、メールとFacebook でやり取りをしており、大会の情報も少しずつ分かってきています。

Tournament Name : 6° Festival Internazionale "I Dioscuri" - Memorial Filippo Vetro -
Tournament Period: 2013/11/08-10
Tournament System: Swiss System 6R
Tournament Place and Accommodation : Hotel Akrabello
Prize: 1st 500€, 2nd 350€
Entry Fee : GM, IM Free, Other Players 50€

会場となるHotel Akrabello は、若干アグリジェントの中心地から離れているため、他の安いホステルから通うのは断念。同ホテルを4泊予約しました。1泊30€台の宿というのは、日本人の感覚ではさほどでもないでしょうが、ハンガリー価格に慣れすぎた私には高く見えます... ロンドンのホステルでも、20€でしたかね。今回は近辺に手ごろな宿泊場所がないので、仕方がありません。

この大会は公式なHP はないようですが、代わりにFacebook ページがあり、そこで上記のものも含め、いくつかの情報を確認できました。アグリジェントなんてシチリア島の端まで、そんなにGM も来ないだろうと思っていましたが...


Latvian GM Miezis (2550) 大会Facebook ページより

なんだかオリンピアードでよく見かける顔ですねぇ。ラトビア代表のGM Miezis ですよ! 他にもチェコからGM Rausis が来るようで、多少なりGM, IM も参加しそうです。それでも私でリスト10番内には入ると思うので、十分入賞を狙っていきます。

イタリアのトーナメントは2006年のトリノオリンピアード以来、実に7年半ぶりです。この時は遊びすぎて日本にいる馬場さんからお叱りを食らったり、チームメイトの皆が他の町に遊びに行った休憩日に、1人で引きこもって研究していたり、大会後にタイの代表たちと焼きそばを食べに行ったり、よくわからない思い出ばかりでした(笑) 思えば、これが初めてのオリンピアードだったんですね。私も若かったです。7年半でレイティングは300上げていますので、その成果をきっちりと示せるような大会にしてこようと思います。目指すは、明日から始まるノビサドと合わせてレイティング2400到達です!

2013/10/27

CAISSA 2013 October IM 9th round - A Sicilian Type Position -


野生のきのこ発見!

CAISSA 最終日のこの日、9月同様にIM Sarosi に白を持って戦います。すでに前日のSean 戦勝利でレイティングプラスを確定させていますが、最後を勝てば+16.5、ドローで+9、負ければ+1.5 なので、この日の結果次第でプラスの幅は大幅変動します。もちろん、ここまで来て負けるわけにはいきません。

Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272)
CAISSA 2013 October IM (9)

1. Nf3 b5!?



これはまさかのSt. George になる予感(笑) 1. e4 a6!? や、1. d4 a6!? から入る手順が多いですかね。

2. e4 a6 3. d4 Bb7 4. Bd3 e6 5. a4!?


私の好きなアイディアです。早めにクイーンサイドから崩す手を入れておくことで、b5-b4 を突かせ、c4 のマスを使えるようにしておきます。

5... b4 6. O-O c5 7. dxc5!?



7. Nbd2 とナイトを展開する手もあると思いますが、私はc5 に来たビショップをターゲットにするプランをメインに考えます。(e4-e5, Nd2-Ne4 など)

7... Bxc5 8. Nbd2 d6 9. Nc4 Ne7 10. Ng5!?


黒は白のe4-e5 を警戒してセットアップを決めますが、f6 にナイトが来なかったことを見た私は、少し早めにキングサイドで仕掛けることを決めます。

10... Ng6 11. Qh5 Nd7 12. Kh1?



ところがこれが緩手でした。黒のNd7-Nf6 のディフェンスが来る前に、白はさらなるアタックを仕掛けなければアドバンテージをキープできません。12. e5! Bd5! (12... Ndxe5? 13. Nxe5 dxe5 14. Nxe6+/- 白マスビショップのダイアゴナルを開いたことで、このタクティクスが生まれるのがポイントです。) 13. exd6 13... Nf6 14. Qe2 Bxd6 15. g3+/= 確かにこれならば、白の指しやすいポジションが続きそうです。

12... Nf6 13. Qe2 O-O 14. f4 h6!


地味な一手ですが、ここでナイトを追い返すのが非常に良いアイディアです。最初はf2-f4 突けたことで満足しようと思っていましたが、ナイトを退こうとしてそう簡単ではないことに気づきます。それでも、白はナイトを退くほかありません!

15. Nf3


15. e5? hxg5! 16. Bxg6 fxg6 17. exf6 Qxf6-+, 15. Nxe6? fxe6 16. e5 Nh4!-+ これらの変化では、白は戦えません。

15... d5?!



この手は一般的には有効ですが、このポジションに限って言えば、白にとってありがたいと思っていました。15... Bxe4! 16. Bxe4 Nxe4 17. Qxe4 d5 18. Qe2 dxc4 19. Qxc4 Qd6=/+ このようにピースを2組捌いたうえで、白のセンターポーンを破壊するのが黒としてはベストでしょう。勝負はまだここからですが、白のアドバンテージは完全に消え、黒が指しやすいことは明らかです。

16. exd5 exd5 17. Nce5 Nxe5 18. fxe5?!


黒から緩手を貰い、まだまだ勝負はわからないだろうとなったポジションで、再び私の判断ミスです。冷静に考えれば、ラインを開くよりも長期的なターゲット(e5 の孤立ポーン) を作らないほうが重要であることに気づきそうですが、この時は恥ずかしながら、どちらで取り返すのがベターなのか分かりませんでした。18. Nxe5 Qc7 19. Be3 Ne4=

18... Ne4 19. a5 f6?!



fファイルを開くことは黒のプラスになりそうですが、白の最大の弱点である孤立ポーンを解消させてしまうことにもあります。19... Re8 20. Be3 Qc7=/+

20. Be3 Qc7!?


指された瞬間、何かの間違いかと思いましたが、先まで読んでいくと意外と難しいことがわかります。全部読み切ってはいませんでしたが、他にここからどう指すべきなのかわからず、自分の感覚を信じてピース交換を進めます。

21. Bxe4 dxe4 22. Qc4+ Rf7!



黒の最も分かりやすいディフェンスです。c7 のクイーンを守っておくことで、次のBxe3 を有効なスレットにします。22... Kh8? 23. Nh4! Rfc8 24. Qe6!! Bxe3 25. exf6 Bd4 26. f7 Rf8 27. Rad1 Bxb2 28. Rd7+- こちらの変化は難しいですが、Nh4-Ng6 は間違いなく、白のプラスになると信じていました。

23. e6! exf3


23... Re7!? 24. Qxc5 exf3 25. gxf3 Qxc5 26. Bxc5 Rxe6 27. Bxb4 Re2 28. Rac1 Rd8 と指しても黒はポーンの代償がありそうですが、本譜のように安全に指してももちろんOK です。

24. exf7+ Qxf7 25. Qxf7+ Kxf7 26. Rxf3!=



13年で2000局近い対局をこなしていても、まだまだ不思議な手が自分のゲームに登場します。Bxe3fxg2 がダブルスレットになっている白は、このオンリームーブでエクスチェンジを返し、ドローで満足するしかないでしょう。26. Rfe1? fxg2+ 27. Kg1 Bf8-/+

26... Bxf3 27. Bxc5 Be4 28. Bxb4 1/2-1/2


この異色ビショップで決着がつくことはありえないでしょう。ドローで合意して、ブダペストへの帰路につきます。この日行われた、Sean - Vamos, Minko - Lyell の結果は、アンダンテに戻ってからSean に連絡を取って聞きました。

10/19 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Farkas, T (IM, SRB, 2257) 1/2-1/2
10/20 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - FM Lyell, M (FM, ENG, 2259) 1-0
10/21 09:00 Meszaros, A (IM, HUN, 2299) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/21 15:00 Erdely, T (IM, HUN, 2144) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/22 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Hajnal, Z (IM, HUN 2346) 1/2-1/2
10/23 15:00 Vamos, V (HUN, 2175) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Minko, V (FM, RUS, 2312) 1/2-1/2
10/25 15:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/26 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272) 1/2-1/2

+3 Kojima, Minko, Lyell
+2 Hajnal
+-0Sarosi
-1 Vamos, Meszaros,
-2 Farkas
-3 Erdely,
-4 Sean

なんとMinko はLyell に敗れたようです。私が見て居た限りでは、序盤でMinko が優勢になりましたが、Mark がじりじりと追い上げ、優劣不明になっていました。このゲーム勝ったというのは、若いロシア人にノームを簡単に取らせてなるものかという、ベテランMark の意地なのでしょう。10月のFS はマイナスでしたが、CAISSA では、彼はずいぶんレイティングを上げそうです。一方、リーダーだったMinko は、この大会でのノームはお預け。また次の大会で3つ目のノームを狙うことになります。

Sarosi 戦をドローにした私は、結局勝ち越し3、レイティング+9 で一足早く大会を終えています。現時点でのライブレイティングは2364 まで来たので、2400まではあと36上げる必要があります。来月中にここまで到達するチャンスがあるかどうかは、次のノビサドでの結果次第となるでしょう。1年4か月ぶりのセルビアには、明日の昼の列車で向かい、明後日夕方から試合スタートとなります!


ケチケメートから戻ってきて一夜明けた今日、朝9時にお寿司屋さんから電話を貰い、焼肉パーティーに招待されました(笑) 焼肉のほかにも、押し寿司や卵焼き、ほうれんそうのお浸しなどもあり、なかなか豪華なブランチとなりました。

2013/10/26

CAISSA 2013 October IM 8th round - An Incorrect Sacrifice -


最近、ケチケメートの町中ではこの子たちをよく見かけます。

10月のCAISSA もいよいよ終わりが近づいてきました。9月に落とした分のレイティングは10月前半のFS でほぼ取り戻しましたが、さらなるレイティングプラスを求めるためには、CAISSA 最後の2戦の結果が大切です。この日の8R は、3連勝中のSean との5度目の対戦となります。

Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
CAISSA 2013 October IM (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. Bd3!?



h4-h5 を挟まない変化は、多少珍しいですがあり得ます。メインと比べて白のメリットは、黒がキャスリングした後のg2-g4-g5 が強力になったり、h5 のポーンがエンドゲームで弱点にならないことが挙げられそうです。一方で、黒からh6-h5 と突ける可能性が残っているので、g4 のマスが弱いとも考えられるでしょう。

8... Bxd3 9. Qxd3 e6 10. Bd2 Ngf6 11. O-O-O Be7 12. Kb1 Qb6 13. Rhe1 c5!?


h4-h5 を突いていないことを除けば、2週間前のSean とのゲームと流れは同じでしたが、ここで私が新しいアイディアを投入します。前回の対戦で彼が採用した、Ng3-Nf5-Nxh6 というサクリファイスを警戒し、キャスリングをさらに遅らせて先にセンターを崩しにいきます。

14. d5!?



このようなポーンサクリファイスは他のラインでは見たことがありますが、このタイミングで成立するかは判断が難しいでしょう。黒は形を崩されないために、このポーンを取る一手です。

14... Nxd5 15. c4 N5f6 16. Bf4 O-O!


どちら側にもキャスリングできるポジションですが、b8-h2 のダイアゴナルを抑えられているクイーンサイドより、キングサイドにキャスリングすべきでしょう。

17. Nf5 Rfe8 18. Nxh6+?



黒はセンターへの反撃を十分に作ったうえでキャスリングを済ませているため、このタイミングでのサクリファイスは不発に終わるでしょう。最近のゲームをチェックする限り、Sean はとにかくよく駒を捨てており、試合後に私は、ノームの獲得とさらに強くなることを目指すならば、もっとソリッドなスタイルも学ばなければいけないと彼にアドバイスしています。18. Nxe7+! Rxe7 19. Qc2 Ree8 このような大人しい展開を白は選ぶべきで、働きの良い黒マスビショップの力で1ポーンの代償を求めるのがベストです。

18... gxh6 19. Bxh6 Rad8!?


19... Ng4! 20. Qe4 Ndf6-+ という変化がコンピュータの指摘でしたが、私はまだ使えていないピースをゲームに参加させる手が、最も自然だと常々考えています。

20. Qd2 Ne5?!



ところが、ここから不正確なディフェンスに走り始めました。20... Ng4! 21. Bg5 Ndf6-+ がやはり正しく、白はピースの代償をどこに求めるか難しくなります。私はNd7-Ne5-Ng6 でgファイルに蓋をするのが良いディフェンスだと考えていましたが、h4-h5 に対する読みが不十分でした。

21. Qg5+ Ng6 22. h5?!


指された直後は、なるほどルーク交換を挟まずに突くのかと思いましたが、今度はSean の不正確な一手でした。22. Rxd8 Qxd8! 23. h5 Qd3+ 24. Ka1 Nxh5! (20... Ne5 を指す前には、24... Ne4? と指すつもりでしたが、クイーンをg4 ではなく、c1 の方向へ引かれると困ったことになります。) 25. Qxh5 Qxc4=/+ これで黒はポーンアップで優勢をキープできていますが、いうまでもなくピースを捨て返す理由がありません!

22... Ne4?



これで余裕勝ちだろうと甘く見た試合中の私にドロップキック。22... Rxd1+! 23. Rxd1 Ne4 24. Qc1 Bf6-+ ならば、完全に攻守がが逆転し、ピースアップの黒が勝勢であることは明らかでした。上記の変化のように、d8 でルークを交換する変化はQb6-Qd8-Qd3 というマヌーバリングが可能になるため、黒にとってありがたいと思っていたのが大きな間違いでした。

23. Rxd8! Nc3+?!


なかなか正確な手がわかりません。23... Rxd8 24. Qe3 (24. Qc1? Bf6 25. hxg6 Nc3+ 26. Kc2 Nxa2 27. Qa1 Nb4+ 28. Kb1 Nd3-+) 24... Bf6 25. Qb3 Qxb3 26. axb3 Kh7 27. hxg6+ Kxh6 28. Rxe4 Kxg6=/+ これで黒はマテリアルイコールながらやや優勢です。しかし、ピースを貰った直後のことを思い返せば、おかしなゲーム展開にしています。

24. Ka1?



試合中、この手は当然だろうと両者ともに考えていました。しかし、これが白の決定的なミスで、ここから黒は正確に指し続けて勝勢まで持っていけます。24. Kc2! (人間の感覚ではこのようにキングが上がる手は難しいですが、本譜の流れを見ればこうするしかありえませんでした。) 24... Rxd8 25. Qe3 Nxa2 26. hxg6 Nb4+ 27. Kb1 Qa6 28. gxf7+ Kxf7 29. Ne5+ Ke8 30. Qa3 こうなれば勝負はどちらに転ぶか分かりません。

24... Rxd8 25. Qc1


23... Nc3+ を指してこのポジションをイメージした段階では、どちらかのナイトを諦めて形勢はアンクリアーだろうと読んでいました。しかし、ちょっと待てちょっと待てと私の頭で何者かが囁き、丁寧に読みを進める中で、勝ちのタクティクスを発見することに成功しました。

25... Na4!



自分の読みに落ち度がないことを祈りつつ、この手をチョイスします。c1 に退いたクイーンは満足にb2 を守っているようにも見えますが...

26. Qc2


26. hxg6 Bf6 27. gxf7+ Kxf7 28. Re2 (28. Ne5+ Bxe5 29. Rxe5 Rd1!-+) 28... Nxb2! 29. Rxb2 Qxb2+ 30. Qxb2 Rd1+ 31. Bc1 Rxc1#


Analysis Diagram

このポジションが見えた瞬間、チェスとは複雑なものだと改めて実感しました。

26... Bf6 27. Bc1 Nf4!-+



まさかのピース生還で、黒の勝勢が明らかになりました。ここまで導くのにだいぶ持ち時間を削りましたが、後はキングの安全性に気を付けながら、丁寧に指していけば問題ないと自分に言い聞かせて試合を進めます。

28. Ne5


28. Qxa4 Nd3! があるのがこのポジションの大きなポイントで、黒は再び決定的なマテリアルアドバンテージを得ることになります。

28... Qb4! 29. Re4 Nxh5



29... Bxe5 30. Rxe5 Nd3 31. a3 Qb6 32. Rg5+ Kh8-+ でも勝ちになりそうですが、b2 へのアタックとディフェンスを考慮し、ビショップは盤上に残しておくことにしました。

30. a3 Qa5 31. Ng4 Bg7


31... Bxb2+ 32. Bxb2 Rd2-+ ここは読み落としですが、大きな問題はないでしょう。

32. Nh6+ Kf8 33. g4 Nxb2!



これで白キング前にディフェンスを完全崩壊させ、ゲームオーバーです。

34. Ka2


34. Bxb2 Qxa3+ 35. Kb1 Rd1+!-+

34... Nd3 35. Bd2 Nb4+ 0-1



試合後には、Tamas にSean は一体どうしたのかと聞かれました。確かに、彼は今大会ですでに5敗、10月だけで9敗を喫しています。9月のFS, CAISSA の優勝者も、泥沼のスランプから抜け出すのは簡単ではないようです。

一方で私はIM Farkas から以来となる、ハンガリーでの同一カード4連勝となりました! 2300台からこの記録は自身初となります。私であれば、GM が相手であっても同じプレーヤーに連敗は嫌な気分になりますが、(フランスのGM Mathiew Cornette に連敗中です。) Sean はどこ吹く風といった具合で、来月ブダペストで一緒に誕生日を祝おうと約束しています。インドネシアの悩める天才児も、来月でようやく16歳を迎えます。

10/19 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Farkas, T (IM, SRB, 2257) 1/2-1/2
10/20 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - FM Lyell, M (FM, ENG, 2259) 1-0
10/21 09:00 Meszaros, A (IM, HUN, 2299) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/21 15:00 Erdely, T (IM, HUN, 2144) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/22 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Hajnal, Z (IM, HUN 2346) 1/2-1/2
10/23 15:00 Vamos, V (HUN, 2175) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Minko, V (FM, RUS, 2312) 1/2-1/2
10/25 15:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/26 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272)

+4 Minko
+3 Kojima
+2 Hajnal, Lyell
+-0Sarosi
-1 Vamos, Meszaros,
-2 Farkas
-3 Erdely,
-4 Sean

昨日のVamos - Minko は、Minko が余裕の勝利。予想できた結果とはいえ、Vamos にはもう少し意地を見せてほしかったです。Minko は今日、驚きのダブルヘッダーで、Hajnal, Lyell を迎え撃ちます。この記事が更新される頃には終わっているであろう、午前中のHajnal 戦はあっさりドローにして、Mark との勝負にノームの行方を託すと思うのですが、どうなるでしょうか...


この時期、ハロウィン飾りとクリスマス飾りが両方並ぶ不思議な光景が見られます。こちらの花屋はクリスマス寄りのようですね。オレンジのリース、ちょっと欲しいなぁ...


中央広場には、このようなチェスボードの描かれたテーブルが並んでいます。昨日は日中、23度と結構暖かかったのですが、それでも外で指してる人は見当たりませんでした。昨年の夏には何人か見かけたんですけどね。

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