2013/10/22

CAISSA 2013 October IM 4th round - A Matter of Technique -


21日の午前中、Meszaros とのゲームをドローで終えてからは、久々にケチケメートの町をぶらぶらしてみることに。しばらくして郵便局を見つけたので入ってみると、アンダンテ近くにあるブダペストの郵便局よりも、広いうえに様々な物販がされていることに驚きます。


こちらで販売されていたのは、ざっと見ただけでもお菓子、文房具、石鹸、DVD、本などなど。本当に郵便局なのか首をかしげたくなります(笑) 一か所で色々と買い物ができるようにという、田舎の工夫なのかもしれませんね。

それでは21日午後の試合解説へ。相手は昨年6月以来の対戦となるCAISSA のオーガナイザー、IM Erdely Tamas です。レイティングを上げるためにも、ここは勝っておかなければいけません。

Erdely, T (IM, HUN, 2144) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
CAISSA 2013 October IM (4)

1. Nf3 d5 2. c4 c6 3. b3 dxc4! 4. bxc4 e5!



d7-d5, c7-c6 型のEnglish で、白が早々にb2-b3 からフィアンケットを組もうとした場合、どう対応するべきかは私の何年かの研究課題でした。いくつものセットアップをチェックする中で、最も黒が指しやすいと感じたのがこのe7-e5 を突いてポーンストラクチャーを全く別のものにしてしまう変化です。Qd8-Qd4 からのダブルアタックがあるため、白のは当然ながらe5 のポーンを取ることができません。

5. Qc2 Nd7 6. Bb2 Bd6 7. g3 Ngf6 8. Bg2 O-O 9. O-O Re8 10. Nc3 Nc5!


この形での黒の大きなポイントとして、c5 がナイトの跳ぶマスとして、非常に使いやすいことが挙げられます。d2-d4 があるため、c5 のマスは純粋なアウトポストではありませんが、もし白がそのようにポーンを伸ばしてきた場合は、eポーンと交換したうえで、c4 のポーンを孤立させることができます。(なおかつ、c5 が今度こそ、正真正銘のアウトポストに!)

11. d3 Bf5 12. Nd2 Qe7 13. Nce4?!



この手を問題ないと見越したうえでの、Qd8-Qe7 でした。恐らくTamas の狙いはピースをいくつか捌いてドローに持ち込むことだったのでしょうが、ここではうまくいきません。かつて野口さんとの全日本で似たポーンストラクチャーになったことがありましたが、ここでは白はダブルポーンと孤立ポーンを両方抱えるため、黒が悪いはずはないでしょう。13. Rfd1!? ぐらいでとりあえず様子を見ておくべきだったと思います。

13... Nfxe4 14. Nxe4 Nxe4 15. Bxe4 Bxe4 16. dxe4 Rad8 17. Rad1 Bc5


3組のピースを交換した結果、黒がやや指しやすいポジションになったと判断できます。黒にはクイーンサイドポーンマジョリティがあり、ここからどのようにピースを捌いても、チャンスのあるエンドゲームを迎えられそうです。

18. e3 f6 19. h4 Qe6!?



19... Rxd1 20. Rxd1 Rd8 といきなりルークを交換してしまうのもあり得る選択肢でしたが、特に焦る必要もないので相手キングに多少揺さぶりをかけてみることにします。

20. Kg2 Qg4 21. a4 a5!?


一般的に同色ビショップエンディングが見込まれるポジションで、お互いのビショップと同じ色にポーンを置くのはあまり柔軟な手ではないでしょう。しかし、ここではクイーンサイドのポーンをc6, b6, a5 に固定しても、黒のポーンが狙われることはなく、b7-b5 からのブレイクも、Kd6-Kc5-Kxc4( or Kb4) とキングが入るチャンスも損なわれません。 むしろ、b7 のポーンへのアタックを気にしなくてよくなる分、黒としては形が良いと判断できそうです。

22. Bc3 b6 23. Bb2 Kf7 24. f3 Qe6



ここは難しい判断ですが、白はf2-f3 と突いてきました。これが来なかった場合は、h7-h5, Kf7-Ke7 から、本譜と同じようにルークを交換しにいったでしょう。

25. Bc1 Ke7 26. g4 Rxd1!?


ここは26... h5 から白キング前を崩しにいくことも考えましたが、キングサイドは無視してクイーンサイドだけでもシンプルに手厚が作れると読みました。

27. Rxd1 Rd8 28. Rxd8 Kxd8 29. h5 Kc7 30. Qd3 Qd6 31. Qxd6+?



クイーンを交換した同色ビショップエンディングにした場合、白にドローチャンスがあるのかどうかは丁寧に読まなければいけません。(まさかTamas も白が優勢だと判断したわけではないでしょう...) 結論から言えばこのエンドゲームは白にとって絶望的です。31. Qc2 g6 32. hxg6 hxg6 33. Kg3 Bb4=/+ と進めた場合、ビショップの働きとポーンの形で黒の優勢は明らかですが、黒勝ちを決定づけるようなプランはすぐには見えないでしょう。

31... Bxd6!-+


e5 のポーンをビショップで守る形にしておき、(f3-f4 と指された場合に、ビショップでポーンを取り返して強制交換を狙う。) キングはb6 のマスから進軍して決着をつけにいきます。ちなみに英語の解説では、よっぽどのミスがない限り、勝敗がはっきりしたこのようなポジションは、The rest is a matter of technique. (後は技術の問題である)と書かれることが多いかと思います。もちろん、ここではきちんと同色ビショップエンディングについて考えましょう。

32. Kf2 b5! 33. cxb5 cxb5 34. axb5 Kb6



クイーンサイドにできたアウトサイドパスポーンは、黒の勝ちを決定づける重要なファクターです。

35. Ke2 Kxb5 36. Kd3 a4 37. Kc3 Bb4+! 38. Kc2


c4 へのキングの侵入を許さないで戦うのかと思っていましたが、いずれにせよ白はディフェンスを続けることができません。38. Kd3 a3 39. f4 h6 40. f5 a2 41. Bb2 Bc5-+

38... Kc4 39. Bb2 a3 40. Ba1 h6!



g4-g5 からe5 のポーンを崩されないようにする大切な一手です。これを入れなければ、g4-g5, h5-h6 からブレイクスルーを許してしまう危険性があります。

41. f4 Bd6! 0-1


これでツークツワンクとなった白は、ここでリザイン。fファイルを固めた後は、Bd6-Bc5 と戻り、e3 のポーンをかすめ取って勝負ありです。Tamas もかつては2400台だったプレーヤーですが、現在は2300台を相手にするのも厳しそうです。ここまでMinko, Sean, 私に3敗を喫しています。

10/19 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Farkas, T (IM, SRB, 2257) 1/2-1/2
10/20 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - FM Lyell, M (FM, ENG, 2259) 1-0
10/21 09:00 Meszaros, A (IM, HUN, 2299) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/21 15:00 Erdely, T (IM, HUN, 2144) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/22 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Hajnal, Z (IM, HUN 2346)
10/23 15:00 Vamos, V (HUN, 2175) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Minko, V (FM, RUS, 2312)
10/25 15:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/26 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272)


ようやく印刷された星取表が現れました。こなした試合数は違いますが、今日勝った私とMinko が、+2 で勝ち越し数ではトップタイ。Sean はMinko とHajnal に負けて、苦しい期間が長引いています。頑張れブラザー。

ところでWarning の左端に出ている数字は(拡大して見てください)、それぞれのプレーヤーのレイティングから算出した期待値なのでしょう。これによれば、私は2つ勝ち越しでもレイティング微増のようです。すると5つ勝ち越しならば、7.5×3 で23 も上がることになりますが、これは本当でしょうか... ちょっとやる気が出てきますね。

今日はここまで白で2ドローのHajnal と、8か月ぶりの対戦です。ここを勝てば5つ勝ち越しが楽になりますが、勝ちを狙うならば何を指すべききか。色々と工夫し甲斐のあるラウンドになりそうです。

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