ノビサド生活2日目。せっかく午前中は時間があるので、周囲を観光しようと朝8時に起きました。(アラームに起こされたのか、長谷川さんに起こされたのか...) まずはメールとFacebook をチェックし、シャワーを済ませてから出かけようと思いましたが、なんとシャワーが温かくならない! 仕方がないので、シャワーを浴びずに外に出ます。最初は現在地と周囲の地理、両替のレートなどを調べにいきます。
昨夜、Sinisa に案内された部屋は、ノビサド中心街にかなり近いところに位置します。徒歩一分で到達するのがこちら、マリアの名聖堂。ちなみに英語でThe Name of Mary Church なので、マリアの"名聖堂”ではなく、"マリアの名"聖堂です。これに気づいたとき、ちょっと笑ってしまいました。単にマリア聖堂でも良いと思うんですけどね。
セルビアは、さすが元チェス大国ユーゴスラヴィアから分裂した国だけあり、チェスの本がきちんと本屋に並んでいます。内容はセルビア語ですべて書かれていたため、読むことはできませんでしたが、初心者用の教科書はなかなかしっかり作られており、時間とお金に余裕があれば、残り5日間のどこかで買いに来ようかと思います。
軽く周辺の地理がわかってきたので、一度両替用のお金を取りに部屋に戻ります。ちなみにこちらが、部屋のロフトにある私のベッドです。で、でかい...(笑) この時点ではルームメイトは到着していませんが、彼は1階に滞在するのでプライバシーはほぼ守られており、共用なのはバス、トイレ、冷蔵庫、キッチンくらいです。これで1泊12ユーロとは、なかなかサービスが良いですね。
再び外に出て、いくつかの両替所でレートをチェックし、これなら悪くないだろうと4000フォリントを替えましたが、レートよりも手数料がひどい! 予定より少額のセルビアンディナールしか手に入りませんでしたが、もともと物価の安い国です。さほど気にしないでおこうと、まずはブランチにピザを購入。1切れが160ディナール(140円ぐらい) だと、少しハンガリーより高いかなと思いましたが、サイズが大きかったです! 普通は1/8 カットだと思いますが、ノビサドは1/4 カットが普通のようでした。起きてまずピザ? という気もしますが、数時間元気に歩き回るためには、これぐらいがっつり食べる必要があるでしょう。
お腹を膨らませてから、再び地図とにらめっっこを始め、ドナウ川がどちらにあるのかを考えます。多少迷いながらも、なんとか懐かしのドナウに到着。海に面していないハンガリーやセルビアにとっては、ドナウのような巨大な河川は、かつて重要な水源だったのでしょう。この日目指すのは、ドナウを渡った先にあるペトロヴァラディン要塞です。
ドナウを渡り、要塞の頂上を目指しますが、選んだルートが悪かったのか道が長い! 車やバスで上って行く人を尻目に、意地でも徒歩で進んでいきます。この日はおそらく25度近い陽気で、10月も終わりだというのに汗だくに... 前夜にはArthur も、最近の陽気は異常だと言っていました。
長い道のりの末、なんとかペトロヴァラディン要塞の頂上に到着です。ここからはドナウ川、およびノビサド中心街を眺めることができました。上ってくるのに苦労はしましたが、初戦が始まる前のこの日しか、ゆっくりここに来る機会はなかったでしょう。来た甲斐は十分にありました。頂上付近のお土産屋をいくつか覗きながら、ポストカードを2枚購入して部屋に戻ります。
部屋に戻ってから試合の準備と昼寝を済ませ、午後4時頃になって会場を見に行くかと思った矢先、部屋のドアがノックされました。ようやく到着したルームメイトは、FM B グループに参加する、セルビアの青年、Milan Putnik です。6か月前に駒の動かし方を覚え、今回が2回目の大会だという彼ですが、つい先日行われた1回目の大会では、2100台からドローを取ったそうです。なかなか将来有望ですね。
Milan の準備が整うのを待ち、徒歩3分ほどの試合会場に向かいます。試合開始予定ギリギリの滑り込みでしたが、ちょうど開会の挨拶をSinisa が行っているところでした。大会名になっているMilja Vujovic は、旧ユーゴのIM で、Sinisa もお世話になった偉大なチェスプレーヤー、チェスコーチだったそうです。
会場で用意されていたチェスセットは、なかなか質の良いものが多かったです。その中で「お、これは?」と思ったのがこちら。机にボードが彫り込まれたチェスセットです。そしてたまたま、GM グループの私の試合がこのテーブルにヒット! 初戦の対戦相手は私と最もレイティング近い、セルビアのIM Bodiroga です。
Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal "Milja Vujovic" GM (1)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 g6 5. Nf3 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6 8. a4 a5 9. b3 Ne4!?
Memorijal "Milja Vujovic" GM (1)
このナイトを交換するアイディアは少し気に入りました。スペースの狭い黒は、多少駒を捌いたほうが楽にプレーできるはずです。
10. Bb2 Bf5
最初は10... Nxc3 11. Bxc3 Bg4 12. h3 Bxf3 13. Bxf3 e6 14. Qd2+/= と指そうと思っていましたが、ダブルビショップをそう簡単に放棄しなくても良いだろうと思い直し、普段はあまり指さないBc8-Bf5 を指して様子を見ることにします。
11. Nd2?! Nxc3 12. Bxc3 Na6!
白の11手目は少し不自然に思えます。このナイトはd2 からどこにも行く場所がなく、f3 にいずれ戻るしかないでしょう。その間に黒は満足な形でピースを捌き、b4 にできたマスを狙います。
13. Rc1 Nb4 14. Bxb4 axb4
こう取るしかないだろうなと思いつつ、b4 に残ったポーンが弱点になるのかならないのか、それが私の中ではっきりしません。(それでも、Na6-Nb4 と入る以外に有効なプランがわかりませんでした。)
15. cxd5
cファイルをどうするかというのは、ここからのゲームの方針を大きく左右します。15. c5 e5 16. Nf3 f6=/+ は私の読みの1つでしたが、これならばセンターの厚みとダブルビショップで、b4 の弱さを補って余りあるでしょう。
15... cxd5 16. Nf3 Qd6?!
Kamsky のゲームなどを見る中で、ここがクイーンのベストスクウェア(もし置けるならば) と信じて疑っていませんでした。16... Rc8! 17. Rxc8 (17. Qd2 Qa5! (試合中、a5 に出てどうするのかと思っていましたが、これならばc3 のマスに利くので、Rc8-Rc3 のアイディアが使えるようになります!) 18. Bd3 Be6 19. Rxc8 Rxc8 20. Rc1 Rc3=/+) 17... Qxc8 18. Bd3 Bg4 19. h3 Bxf3 20. Qxf3 Qc3 21. Qd1 Rc8=/+ 確かにこれならば、cファイルを握った黒が指しやすいのは間違いありません。
17. Qd2 Rfc8 18. h3 h5 19. Rfd1= 1/2-1/2
黒はダブルビショップですが、あまりそれを生かせるようなポジションでもなく、b4 の弱点も気になります。ここでのオファーは受けても問題ないだろうと判断し、初戦をここで切り上げました。
R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402)
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362)
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436)
ひとまず、分かっている7R までのペアリングを公開しておきます。黒が多いリストを引いてしまったのは残念ですが、こればかりは運ですのでどうしようもありません。勝てるゲームを、しっかり勝つだけです。この7人との対戦での目標は、2つ勝ち越しとしておきましょう。3つ勝ち越しならば上出来で、ノームはほぼ問題ないと言えそうです。明日はセルビアの2400コンビ、Sredojevic とStankovic に挑みます。(彼らは初戦、何事もなくドローにしていました。)
試合後にMilan と夕飯に出かけると、路上ペインターを発見。周囲はシンナー臭かったですが、集まった人たちは興味深そうに出来上がる絵を眺めていました。500ディナールで左のような絵が手に入るのであれば、1枚買ってみても良さそうですね。
Milan には、ピザとアイスクリームのうまい店があるんだと案内され、昼と同じ店にやってきました(笑) 私は美味しい物なら、連続でもほとんど飽きないので問題ありません。彼もここに来たがっていたようですしね。お楽しみは、ピザの後のアイスクリームです。
アイスクリームと銘打っていましたが、実際にはソフトクリームでした。カップに注いだソフトクリームに4種類のトッピングを入れて混ぜ、最後にソースをかけます。このサイズで130ディナールとは、なかなか満足なデザートでした。
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