2013/12/30

GM Heberla vs. FM Habu - Exchange Sacrifice -

すでにご存じの方も多いかと思いますが、現在ポーランドで行われている大会で、羽生さんが7年ぶりにGM から白星を挙げました。羽生さんは2面同時対局では、2011年にGM Vachier-Lagrave, 2012年にGM Short と、2700クラスのGM たちから連続でドローを取っていますが、やはりFIDE 公式戦での対GM戦勝利は特別なものです。そのため、今日はそちらのゲームを取り上げ、私なりの解説をつけようと思います。この記事を書くにあたり、棋譜を送ってくださったdecomoon さんに、深く感謝致します。

Heberla, B (GM, POL, 2561) - Habu, Y (FM, JPN, 2404)
XXIV International Chess Festival Craco (3)

1. c4 e6 2. Nc3 d5 3. e3 Nf6 4. Nf3 c6 5. b3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bb2 b6 8. cxd5 exd5 9. Nxd5!?



ポーランドの国内ランキング15位、GM Heberla は序盤早々に勝負を仕掛けます。このようなピースサクリファイスからルークを取りに行く形は、羽生さんの名前を世界のチェス界で一躍有名にした、GM Peter Wells とのゲームを彷彿とさせます。

9... cxd5 10. Qc6 Qc7 11. Qxa8 O-O


余談ですが、私がこの辺りのポジションを見て「羽生さんが速攻でエクスチェンジサクリファイスした」とツイートしたことが、将棋ファンの間で話題になったとこのこと。確かにチェス用語を知らない人にとっては、羽生さんがどんな必殺技を出したのかと気になるところでしょう(笑) 長谷川さん、わざわざ教えてくださり、ありがとうございます。

12. Rc1 Nc5 13. b4?!



この重要なポジションで、単純にピースを取ろうとするこの手が緩手であるように思えます。私が観戦していて考えた手順は、13. Bxf6! Nd3+ (13... gxf6 14. Qxd5 Nd3+ 15. Qxd3 Qxc1+ 16. Ke2 Rd8 このポジションは白がエクスチェンジアップですが、キングの位置が危なく、h1 のルークがすぐには使えないので、評価は難しそうです。) 14. Bxd3 Qxc1+ 15. Ke2 Qxh1 16. Qxd5 gxf6 17. Qxd6 Qxg2 18. Qxf6+/=


Analysis Diagram

というものです。こうして逆に白がエクスチェンジサクリファイスをし返す(正確に言えば、2回のエクスチェンジサクリファイスをし返す!) ことで、ポジションは少し落ち着き、白がやや指しやすいのではないかと思います。

13... Bd7 14. Qxf8+ Kxf8 15. Be2 Qb8 16. bxc5 bxc5


黒は結局、ナイトとルークを取らせる代わりにクイーンを取り、マテリアルを2ルーク vs. クイーンとします。この時点では黒のアクティブなクイーンと、センターに並んだポーンの力でやや黒が指しやすそうにも見えますが、まだまだ勝負はここからです。

17. Ba1 c4!?



ここは判断の難しいところ。白マスビショップを抑え込む代わりに、d4 にマスを作らせてしまいます。ここからしばらくは、優劣が大きく傾くことなく大人しくゲームが進んでいきます。

18. O-O Bf5 19. h3 Ba3 20. Rce1 Nd7 21. Nd4 Be4 22. Bg4 Nc5 23. Bf5 g6 24. Bxe4 Nxe4 25. Rb1 Qc8 26. Rfd1 Bc5 27. Nf3 Bb6 28. Bd4 Bxd4 29. Nxd4 Qa6 30. Rb2 Qf6 31. Rb8+ Kg7 32. Nf3?



ビショップを2組交換し、大人しい展開が続いていましたが、ここは白に大きなミスが出ました。この後の展開を見ると、すでに白は時間切迫だったんでしょうかね。代わりに32. f3 Nxd2 33. Rb2! (33. Rxd2? Qe5!-+) 33... c3 34. Rc2 Nc4 35. Rxc3= ならば、ドローが順当な結果でしょう。

32... g5!


d2 とf2 に弱点があり、これをナイトで狙っている黒は、重要なディフェンダーであるf3 のナイトをどかすため、自身のキング前のポーンを進めます!

33. d3 cxd3 34. Rb3 h5! 35. Rf1 g4 36. hxg4 hxg4 37. Nd4 d2



こうして7段目に強力なパスポーンを残した黒は、白の2ルークの動きを縛ります。

38. f3 g3 39. Rd1 Kh7 40. fxe4??


観客からすれば、なぜそんな手を指したのだろう? と首をかしげる1手が、GM のゲームでも飛び出します。ようやく持ち時間が増える40手目、痛恨のブランダーで勝負は幕を閉じました。

40... Qf2+ 0-1



次に41... Qe1+ として、チェックメイトです。序盤のエクスチェンジサクリファイスの派手さに目がいきがちですが、マテリアルを戻してから、崩れずに丁寧にチャンスを待ったことが、この白星の一番の要因でしょう。羽生さん、おめでとうございます!

この後、4R ではウクライナのGM Malaniuk に逆にエクスチェンジサクリファイスをされて負け。しかし、棋譜の途中に疑問な点が多く、本当に正しいのか自信がありません。こちらは確認後、機会があれば公開をしようと思います。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ドローになったゲームを見たらキングとキングが激突してますからね・・▽o・~・o▽汗

匿名 さんのコメント...

現在5pで首位のBernadskiy, Vitaliyは19歳のウクライナのIMみたいですよ▼o・~・o▼今年はずいぶんとお騒がせいたしましたm(_ _)m 来年も海外でのご活躍とグルメ写真を期待しております▼o・~・o▼

Shinya_Kojima さんのコメント...

こちらこそ、たくさんのコメントありがとうございましたm(_ _)m
来年も頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!

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