2014/01/31

Zurich Chess Challenge 2014 - The Top of the World -


以前から話題に上がっていたスイス、チューリッヒのトーナメントがいよいよ開幕しました。豪華すぎる参加者は、いずれも2700後半から2800台で、Carlsen, Aronian, Anand, Caruana, Nakamura, Gelfand の6名です。Carlsen とAnand 以外は、終わったばかりのオランダ、Tata Steel Masters Group と同じメンバーですね。

私の注目は、今年最初の公式戦となるCarlsen がいかなるプレーを見せるか、そしてTata で圧倒的な強さを見せたAronian が対抗馬となりうるかです。昨夜の1R は、そんな2人が白番で勝利を収めましたが、特にCarlsen のプレーには驚かされました。

Carlsen, M (GM, NOR, 2872) - Gelfand, B (GM, ISR, 2777)
Zurich Chess Challenge 2014 (1)

1. c4 g6 2. d4 Nf6 3. Nf3 Bg7 4. g3 c6 5. Bg2 d5 6. Qa4!?



このFianchetto Grunfeld で、黒がc6-d5 とセンターポーンを支える形はクラシカルでありながら、白が何を指すか迷う変化です。私は昨年、韓国でNbd2, チェコでcxd5-Ne5 のラインを試してましたが、世界チャンピオンのCarlsen は一風変わったアイディアを採用します。

6... O-O 7. O-O Nfd7 8. Qc2 Nf6 9. Bf4 Bf5 10. Qb3 Qb6 11. Nbd2 Ne4 12. e3 Qxb3 13. axb3 Na6


a7 のポーンを一時的に守りつつ、b4 のマスへの飛び込むを狙うこの手はありそうに見えましたが...

14. cxd5 cxd5 15. g4!!



私が昨夜帰宅し、ライブの前にFacebook をチェックしていると、元世界チャンピオン Rustam Kasimdzhanov がこの手について触れていました。この手は一体何事なのかと目を疑いましたが、丁寧に先まで読んでみると非常に優れたアイディアであることが分かります。

15... Bxg4 16. Nxe4 dxe4 17. Nd2 f5 18. f3!


一時的に1ポーンを捨てても、白マスビショップの利きを通し、b7 にプレッシャーをかける作戦です。うーん、ここまで難ししいと題材としてふさわしくないですが、前回のテーマと合わせて、次回のレクチャーで使いたい(笑)

18... e5



Chess News の解説ではこの手が悪いことになっていますが、こう指したい気持ちはわかります。18... exf3 19. Nxf3 と進んだ形では、次にNf3-Ne5 と跳ばれ、e5 のアウトポストを抑えられたうえで、h1-a8, h2-b8 のダイアゴナル両方が、白の支配下に置かれることになります。捨てたポーンを取り返し、白が明らかな優勢になるのも、時間の問題でしょう。

19. dxe5 exf3 20. Nxf3 Rae8 21. Ra5!


ルークはオープンファイルから出陣し、縦と横の利きを広く持つものです。

21... Nb4 22. Nd4 b6 23. Rxa7 Bxe5 24. Bh6 Rf6 25. h3 Bh5 26. Nc2!!+/-



ふーむと唸りつつ、きちんと考えたのは今日になってからです。26... Nxc2 27. Bd5+ Rfe6 28. Rc1!+- があるのがポイントでした。7段目を抑えられている黒は、もう1つのルークを8段目に突入されてはメイトになってしまうため、ナイトが避けるとe6 を取られた際、ルークで取り返すことができません。もちろん、黒はc2 のナイトを取らなくても、b4 のナイトが消されてはBg2-Bd5 を食らうことになるため、すでに苦しい状況です。

26... g5 27. Bxg5 Rg6 28. Rxf5 h6 29. Bxh6 Rxh6 30. Nxb4 Bxb2 31. Nd5 Kh8 32. Rb7 Bd1 33. b4 Rg8 34. Ne7 Rd8 35. Be4 Bf6 36. Rxb6 Kg7 37. Rf2 1-0


あとは順当にポーンを攫っていったCarlsen が、無事に勝利を収めました。Carlsen が世界チャンピオンになって初めての公式戦は、一昨年の世界チャンピオン挑戦者、Gelfand を全く寄せ付けない内容でした。

もちろん、大会はまだ始まったばかり。初戦でAronian に負けたAnand の巻き返しを期待するファンも多いでしょう。Tata Steel が終わったばかりですが、再びライブにかじりつく夜が増えそうです。

Zurich Chess Challenge 2014

2014/01/29

R.I.P. GM Gyula Sax


Sean にコーチングを行うGM Sax, 2013年9月のケチケメート

今月は私にとって信じられない、悲しいニュースが続きます。私が2012年と2013年の2年間中、ハンガリーに滞在した約1年の期間で、対戦したGM は6人、Sax, Groszpeter, Ilincic, Fogarasi, Seres, Gordon というメンバーです。そのうちの1人、ハンガリーの元代表GM Sax が亡くなったと、今日の昼に複数の友人から情報が届きました。昨日、ブログで久々に彼の名前を出したのは、何か虫の知らせだったのでしょうか。オリンピアードにハンガリー代表として10回参加し、1978年には祖国を世界一に導いた名プレーヤーは、まだ62歳でした。

2週間ほど前に、GM Gashimov が亡くなった時もショックでしたが、彼とは直接面識があったわけではありません。しかし、Sax とは一昨年、ケチケメートで2度対戦し、その後の検討でも丁寧にチェスを教えてもらいました。Leko, Almasi, Polgar といった現代のトップのプレーヤーを除けば、ハンガリーのマスターでは憧れの存在でした。昨年9月にインドネシアのライバルであるSean のコーチとして、ケチケメートで再会した時も、私のことを覚えていてくれて、とても嬉しかったです。60歳を超えても、プレーヤーとして、コーチとして、若い人プレーヤーたちとチェスの交流を続けるというのは、私の思い描く1つの理想の姿です。


私と対戦中のSax, 2012年12月のケチケメート

これからも私がチェスを中心にして生きていく以上、今後も多くのマスターと関わりを持ち、こうした体験も数多くすることになるでしょう。Sax の死については、これからハンガリーの友人たちから詳しい情報が入ると思いますので、なるべく早めに心の整理をつけたいと思います。ハンガリーが生んだ偉大なプレーヤーの、ご冥福をお祈り致します。

Sax, G (GM, HUN) - Sveshnikov, E (GM, LAT)
Hastings 1977 (4)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 Nf6 4. Nc3 Nd4 5. e5 Nxb5 6. Nxb5 Nd5 7. O-O a6 8. c4 Nb6 9. Nc3 d5 10. d4 e6 11. Bg5 Qd7 12. cxd5 Nxd5 13. Nxd5 Qxd5 14. dxc5 Bxc5 15. Qc2 O-O 16. Rfd1 Qc6 17. Rac1 Ba7 18. Qd2 Qb6 19. Bf6 h6 20. Qf4 Qxb2 21. Qg4 Qxf2+ 22. Kh1 g6 23. Qb4!!


23... Bb6 24. Rd2 Qe3 25. Rc3 a5 26. Qxf8+ Kxf8 27. Rxe3 1-0


Gyula Sax, Chessgames
Chess Olympiad 1978, OlyimpBase

2014/01/28

Caro-Kann Classical Move by Move Vol.3

Caro-Kann Classical Main Line with 7... Nd7


Vol.2 を公開した直後、Twitter にて、この連載ってMove by Move じゃないよね(笑) と指摘を受けました。確かにその通り、最初の2回は導入であり、Vol.2 に至っては、Classical Variation ですらありませんでした。そこで、Vol.3 の今回はタイトルに偽りのない記事にしつつ、Vol.4 からの細かいアイディア紹介への繋ぎとしようと思います。

1. e4 c6



Vol.2 で書いた通り、私がCaro-Kann Defence の研究を始めたのは2010年の春のこと。黒はe4,d4 と白が並べるであろうポーンを崩すべく、c7-c6 のポーンを、次のd7-d5 の支えとします。白のe4 のポーンを崩そうというのは、French Defence とアイディアが同じですが、Caro-Kann のメリットとしては、白マスビショップをポーンストラクチャーの外で使えるチャンスを残していることが挙げられます。

2. d4 d5 3. Nc3


e4 のポーンをナイトで支えるのは、最も自然なアイディアに見えますが、最近は3. e5 と突き越すAdvanced Variation の人気が非常に伸びており、こちらがメインラインと言えるほどの割合になっているかもしれません。ちなみにAdvanced Variation については、この連載で特に解説するつもりはないので、タグから検索して私の過去のゲームをご覧下さい。Caro-Kann タグも増えてきたので、近いうちにVariation ごとにタグ分けをし直そうと思います。

3... dxe4 4. Nxe4 Bf5



この手をもって、Classical Variation に突入します。黒はビショップをポーンストラクチャーの外に展開しつつ、ナイトをアタックしてテンポを稼ぎます。私はこのように悪い位置にピースを残さないオープニングを最近は黒で好んで使いますが(1... d4 にはClassical Slav)、こうしたビショップを早めに展開するオープニングの弱点としては、ビショップがナイトやポーンによって狙われる可能性があることが挙げられるでしょう。それでも、Caro-Kann Classical のような堅いポーンストラクチャー(d5 とe4 を交換したうえで、c6, e6 にポーンを置く形) では、白のダブルビショップはさほど働かないというのが、Caro-Kann Player の共通見解です。(私の最近のゲームでは、チェコでのGrove, M とのゲームが参考にしやすいかと思います。)

ちなみに私は、このClassical Variation に絶大の信頼を寄せており、公式戦での勝率は他のオープニングと比べても群を抜いて高くなっています。私のデータベースで記録が残っている試合では、黒番で27勝4敗8ドローで、FIDE 公式戦に絞っても14勝1敗8ドローです。私に勝った4人は、馬場さん、井上さん、吉村先輩、そして元ドイツ代表のGM Luther ですね。これらは全て2011年の春以前のゲームですので、ここ3年近くはCaro-Kann Classical で負けていないことになります。(こう書くと、近いうちに負ける予感がしますw)

5. Ng3



白はナイトを逃がしつつ、ビショップをアタックすることでテンポを得ます。5. Nc5!? という珍しい手は、白で1回、黒で1回指したことがありますが、黒は5... b6!? でも、5... e5!? でも、さほど問題ないだろうというのが私の意見です。GM Sax とのゲームは、私にとって思い出深い2つ目のIM ノーム獲得のCAISSA でした。

5... Bg6 6. h4


この手は中学1年生の頃に初めて勉強しましたが、当初は深い意味まで理解していませんでした。次にh4-h5 までポーンを突いてビショップを捕獲できれば、白としてはもちろん楽な展開ですが、6. h4 はそんなセコイだけの手ではありません(笑) h5 まで伸ばしたポーンは、黒がショートキャスリングした際には、キングサイドを攻める重要な武器となり、クイーンサイドにキャスリングした際は、黒がgポーンを突きにくくする狙いがあります。(意外と後者は分かりにくい狙いでしょう。)

私にとって1つ印象的だったのは、篠田くんが初めて全日本選手権に出場し、唯一の白星となった桑田くんとのゲームです。キングの位置は忘れましたが、以下のようなポーンストラクチャーで桑田くんは大きな勘違いをして、勝負は一瞬で決しました。


Reference Diagram

1... g6?? 2. g5! 1-0

ブレイクスルーが決まり、白の勝ちです。桑田くんはどうか知りませんが、私はこのゲームでh5 のポーンの強さを再確認したのでした。

6... h6 7. Nf3 Nd7



私が白番で適当なCaro-Kann の研究しかしていなかった中学3年生当時、Caro-Kann Classical をメインの武器としている桑田くんが、夏の柏オープンで神戸の岡田さんと試合をしました。そのゲームは6... e6 7. Ne5 Bh7 と進み、白がナイトをセンターに運ぶ1テンポを得している(h4-h5 を省いているという点で) ので、e5 を先に守る6... Nd7 がベターなんだと、桑田くんは岡田さんに説明されたそうです。その説明自体は間違いではないですが、現在はこのナイトを敢えて早く跳ばせておき、それを捌きにいく、6... e6 もよく指されています。先日のAnand - Carlsen のマッチでは、Carlsen がこのラインを採用したことで驚いた人も多かったでしょう。

7... e6 8. Ne5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 Nd7 11. f4 Bb4+ 12. c3 Be7 13. Bd2 Ngf6 14. O-O-O O-O 15. Ne4 Nxe4 16. Qxe4 Nxe5 17. fxe5 Qd5 18. Qxd5 cxd5 19. h5 b5 20. Rh3 a5 21. Rf1 Rac8 22. Rg3 Kh7 23. Rgf3 Kg8 24. Rg3 Kh7 25. Rgf3 Kg8 1/2-1/2 Anand,V (2775) - Carlsen,M (2870)/Chennai IND 2013

私もこの7... e6 には多少の興味がありますが、先述の通り7... Nd7 で十分な勝率を誇っているために、さほど真剣に研究しようという気には今のところなっていません。それでも、いずれはこちらのラインも使うようになるかもしれませんね。

8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6



白としては、b1-h7 のダイアゴナルを抑える強力なビショップを交換しにいき、テンポ良くクイーンをd3 に上げるのは良いアイディアでしょう。このポジションだけ見れば、白はピースの展開で勝っていますが、黒はc6, e6 の堅いポーンストラクチャーであるため、多少の展開の遅れは気にしなくても大丈夫です。

11. Bd2


白はh5 までポーンを進めているため、クイーンサイドにキャスリングするのが自然です。そうなると問題となるのは、最後のマイナーピースである黒マスビショップをどこに展開するかですが、ここはf4 も有力な選択肢です。11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 (12... Qc7!? ならば、Vol.1 で紹介した、黒がクイーンサイドにキャスリングするラインになります。) 13. c3 Be7 14. c4 Qc7 白にcポーンを突かせるこのラインは、今回の連載後半で扱います。

11... Ngf6 12. O-O-O Be7



ようやくVol.3 の終着となる、このポジションに到着しました。この形は、7... Nd7 からショートキャスリングを目指すCaro-Kann Player には、お馴染みすぎるポジションで、ここから白黒の様々なアイディアと思惑が交錯し、ゲームが動き出すことになります。次の白の代表的な手は、13. Ne4, 13. Kb1, 13. Qe2 の3種類ですが、Vol.4 からは、これらラインを個別に解説するよりも、その中に隠れるお互いのアイディアをゆっくりと紹介していこうと思います。

Vol.4 に続く

2014/01/26

The Highest Level Training In Japan In January 2014


3局目の羽生-南條戦は、この組み合わせで初のドローでした。

今日は一か月ぶりに羽生さんとのトレーニングでした。今年最初は少し趣向を変え、数名を呼んで複数で集まります。私が連絡を取ったのは、南條くん、弘平くん、そしてピノーさんの3人です。私は午前中に用事が入ったため、昼食から合流しました。

午後は軽くブリッツを数局してから、いつも通りのラピッドです。私は初戦で羽生さんに負け、2戦目で弘平くんに勝ちでした。羽生さんとのルークエンディングはもう少し考えてみたいので、今日は弘平くんとの試合を公開しておきます。

Yamada, K - Kojima, S
Training (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 a5 9. e3 g6!?



オープニングは最近色々と試していますが、黒番の1.d4 対策はやはりSlav が一番しっくりきます。

10. Be2 Bg7 11. O-O O-O 12. Bf3 Nfd7! 13. Nxd7 Qxd7 14. Qb3 Nc8!? 15. d5 Nd6 16. Re1


白は黒マスビショップを利用するために、16. e4 Bg4 17. Bxg4 Qxg4 18. Be3 ぐらいが自然なのではないかと、検討で指摘をしました。

16... cxd5 17. Nxd5 Rad8!? 18. Nb6 Qe6! 19. Qxe6 Bxe6 20. Nd5 Rd7=/+



e3-e4 がいつ来るかとひやひやしたポジションもありましたが、クイーンを交換してようやく一息つきます。b3, c4 のマスとb2 のポーンが弱い白は、まだ指しづらいポジションが続くでしょう。

21. e4 Nc4 22. Bg5 f6 23. Bf4 Nxb2 24. Nb6 Rd4 25. Be3 Rdd8 26. Bc5 Rfe8 27. Be2 Nd3! 28. Bxd3 Rxd3 29. Rad1 Rxd1 30. Rxd1 Kf7


d7 のマスはビショップで抑えているので、白ルークの侵入はありません。そこで黒はキングでe7 のポーンを守り、e8 のルークを自由にします。

31. Nd5 Rc8! 32. Bb6 Rc4!-+



白はa5 のポーンを狙いましたが、黒は4段目のダブルアタックで逆にポーンを多くかすめ取り、勝勢となります。

33. Bxa5 Rxa4 34. Bd8 Rxe4 35. f3 Ra4 36. Nc7 Bc8 37. Nb5 f5 38. Rc1 Bd7 39. Nc7 Bc6 40. Re1 Ra1 0-1


最後はルークを交換すれば、黒は問題なく2ポーンアップで勝てるでしょう。若干自信のないポジションもありましたが、検討と解析では黒にミスはほとんど見られなかったと思います。


試合後にふと隣を見ると、すごいポジションの検討をしています(笑)

今回の集まりは日本チャンピオンクラスの実力者ばかりで、誰がどういう結果になっても、おかしくはなかったでしょう。IVL よりも、さらにレベルは高かったと思います。他のプレーヤーのブリッツやラピッド、そして検討戦を見るのも大変勉強になりました。羽生さんにはお忙しい中、トレーニングをしようと声をかけてもらい、大変感謝しています。こうしたトレーニングの場は、今後も継続していきたいですね。

最近は他の場所でもプレーヤーが積極的に声を掛け合い、週末にトレーニングの機会を作っているようで、皆さんのチェスに対する熱心さには私も驚かされます。オリンピアードも半年後に迫り、メンバーも決まりつつありますので、私も気合を入れてチェスの勉強を続けていきたいですね。2月は東京での大会はありませんが、全日本選手権の予選がスタートしますので、権利獲得を目指して各地に足を運ばれる方は、頑張ってきてください!


トレーニング後は南條くん、弘平くんとの88年トリオで、横浜の沖縄料理へ。2年前に断念した20人前の特盛ゴーヤチャンプルーは、店員さんの警告と弘平くんの冷静な判断により、注文をキャンセルされました(笑) 写真はテビチ(豚足) の炙り焼きです。

2014/01/25

Saturday Lecture on February 8th 2014


Aronian - Karjakin, 76th Tata Steel Masters (9)
White to Play

今日は5か月ぶりに池上でレクチャーを行ってきました。5か月ぶりにお会いする方も、初めて参加してくださった方も、皆さん、ご参加ありがとうございました。次回のレクチャーはもう2週間後に迫っていますので、早速次のレクチャーの内容をお伝えします。

【日時】 2014年2月8日(土) 10:00~12:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 An Active Play
【テーマ詳細】

夏からのポーンシリーズ3回が終わったので、2月はもう少し違ったテーマでお話ししようと思います。私はチェスで勝つためには、アクティブに指すことが一つの重要なポイントだと考えています。では、アクティブな指し方とパッシブな指し方は何が違うのか、どうすればアクティブ指すことができるのか、なぜ、それが重要なのかといったことをお話ししようと思います。序盤を乗り切っても、中盤でどういった指し方をして良いか分からず、あまり試合に勝てないという方には、特に受けていただきたいテーマのレクチャーです。

【参加費】 午後のサタデートーナメント参加者は午前、午後合わせて1500円、レクチャーのみは1000円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

それでは皆さん、2月のレクチャーも、また池上でよろしくお願い致します。レクチャーだけでなく、午後の試合をされる方も頑張ってください!

2014/01/24

Who Is the Successor of the Indian Emperor?


GM Harikrishna, Pentala, Photo by Fred Lucas, from Tata Steel 2012

インドのGM として最も知名度があるのは、現在もAnand で間違いはないでしょう。昨年、世界チャンピオンの座をCarlsen に奪われはしたものの、インド皇帝の座は揺るぎないものだと思います。先日、Carlsen への挑戦者を決めるCandidate に名乗りを上げたので、世界チャンピオンに返り咲く気も満々なのでしょうね。もう一度、このマッチを見たいと思うチェスファンも多いのではないかと思います。

ところで、そんなインドの皇帝、Anand の後を継ぐであろう、インドのNo.2 と言えば誰でしょうか。私が国際大会に頻繁に参加するようになった2006年以降、Anand はあまりインド代表として姿を現しませんでした。その代わりにインド代表を背負い、中国と熾烈な争いを繰り広げてきたのが、GM Sasikiran とGM Harikrishna の2人です。2007年頃にはSasikiran が2700に到達してSofia に呼ばれ、Topalov と優勝を争うようなこともありましたが、現在は相方のHarikrishna のほうが、少し上だという認識が強いように思います。

私がHarikrishna を初めて意識したのは、2006年ドーハアジア大会のことです。Sasikiran, Koneru と組んだ彼が、中国との直接対決を制し、チーム戦でインドを金メダルに導いたのは非常に印象的でした。その後もマカオ、北京などで彼の姿を見かけないことはなく、世界チャンピオンであるためにインド代表に入らないAnand の穴を埋め、よくプレーをしています。ここ数年での彼の活躍の場はアジアに留まらず、私が参加した2011年のCappelle la Grande で優勝、翌年のTata Steel ではB グループで優勝し、上位グループ入りの権利を獲得しています。


イスタンブールオリンピアードのインド男子代表。左から、Sasikiran とHarikrishna

2年目となるTata Steel Masters グループ(かつては、Aグループという名前でした) の今年、Harikrishna は参加者12人中、下から3番目のリストにも関わらず、昨夜までで5/9 と健闘しています。初参加の昨年も1つ勝ち越しでのフィニッシュでしたので、彼にとってオランダのTata Steel は、相性の良い大会だと自信を持って言えるよう、今夜から残り2戦もしっかりと乗り切ってほしいですね。トロムソでも、交流の機会を持ちたいところです。

Naiditsch, A (GM, GER, 2718) - Harikrishna, P (GM, IND, 2706)
76th Tata Steel Masters (9)

1. d4 Nf6 2. Nc3 d5 3. Bf4 Bf5 4. f3 e6 5. Qd2 Be7 6. O-O-O Nc6 7. Qe1 Bg6 8. Nh3 O-O 9. Nf2 Nh5 10. Be3 Nb4 11. Rd2 c5 12. g4 Nf6 13. h4 Nd7 14. f4 Bf6!



15. Qd1 Nb6 16. dxc5 Bxc3 17. cxb6 axb6 18. bxc3 Nxa2+ 19. Kb2 Qd6 0-1


・Tata Steel 2014 Live Page

2014/01/22

FIDE Official Tournaments in August 2014 進捗状況

数日前の記事で扱った8月の大会情報に多少の進捗がありましたので、今日はそちらをご報告しようと思います。

Tromso Chess Olympiad at Tromso, Norway, 2014.8.01 - 8.14
40手90分+30分+1手30秒, 11R



まずオリンピアードの男子日本代表は、私と南條くんとAlex、そして三ツ矢さんがメンバーに確定しました。三ツ矢さんについてはつい先程、本人から参加すると連絡があり、他の2人についてはチェス協会に確認したことですので、間違いないでしょう。南條くんとAlex はイスタンブールに引き続き、三ツ矢さんは初の代表として、ノルウェーでもよろしくお願いします。

そして三ツ矢さんに権利が下りている以上、当然のことではありますが、渡辺暁さんも代表権を持っています。4名が確定した以上、後は暁さんが参加の意思を固めれば、男子代表の5名が全員決まりとなります。男子メンバーは今月中に確定する可能性も十分にありそうですね。

一方で女子代表で確定しているのは、橋本あづみさんただ一人です。彼女は早くからオリンピアード参加への意欲を見せていましたし、この1年間、日本の女子プレーヤーとして最も成長した1人で間違いないでしょう。初のオリンピアード代表ですが、全く文句のつけようがない人材ですので、ノルウェーでの活躍を楽しみにしています。

他の女子代表は男子に比べて情報が少ないのですが、昨年の女子チャンピオン、内田さんが権利を蹴ったことで、その分が6位の長谷川さんに繰り下がりました。長谷川さんが参加するかどうかは... まぁ例の人次第でしょう(笑) イスタンブールでも女子チームの中心だった彼女には、ノルウェーでもプレーしてほしいと個人的には考えています。

また、前回書いたスケジュールについてですが、オーガナイザーから返信があり、8月1日にオープニングセレモニー、2日に第1R、14日に最終戦とクロージングセレモニーだと判明しました。つまり7月31日に日本を出て、8月15日に現地を出るスケジュールになりそうです。その他の情報は確定次第、HP に反映されるそうです。オリンピアードについては以上です。

Japan League at Kamata Tokyo, Japan, 2014.8.09 - 8.12
40手90分+30分+1手30秒, 7R



ジャパンリーグの日程は、上記の通りで確定ではないそうで、いつも通りのお盆の時期に設定したら、オリンピアードと被ってしまったそうです。日程はまだずらせるそうなので、他のスケジュールのほうが良いか、リサーチしておいてね~と協会に頼まれました。これって私の仕事なんですかね(笑) できるならば、海外からもマスターを呼びたい国の最も重要なFIDE トーナメントを、オリンピアードと被せるのはあまり良くないと思いますが、翌週でもオリンピアード帰国直後、さらに翌週だと女子選手権と被ります。どうしたものか少し考えて、今月中に自分なりの答えを出したいところです。

World University Chess Championships at Katowice, Poland 2014.8.18 - 8.24



ポーランドの大学生世界選手権もつい先日、日本から参加するメンバーが確定しました。男子は小林くん、杉田くん、岸川くんの3名、女子は荒井さん、福谷さん、柴田さんの3名です。現1年生が3名というフレッシュなメンバーですが、リーダー(?)の小林くんを中心に半年間、トレーニングに励んでくれるでしょう。私も時間があればお手伝いしようと思います。

ちなみに選手に届いた通知には役員のことも書いてありましたが、実際にはこれはなしです。6名でポーランドに行ってらっしゃい!

2014/01/20

5th IV League Tournament Report


1か月ぶりのIVL は、常連メンバー7名によるラウンドロビンで、昨日開催されました。色々と検討し甲斐のあるポジションも出てきたので、私の試合だけでなく、そちらも今日はご紹介しようと思います。


Yoshimura, K - Noguchi, K
5th IVL (1)

エクスチェンジアップで黒勝ちかと思われたゲームでしたが、野口さんがセンターの2コネクテッドパスポーンを過小評価し、ここまで進むことを許してしまったせいで、白にチャンスが生まれています。

1. e6!?


昨日の検討戦では気づいていませんでしたが、白がドローを確保するためには、この手で十分です。1. Bg6!? Kd7 2. Kd5 Re3 3. e6+ Rxe6 4. Bf5 a3 5. Bxe6+ Kd8= でもドローになるでしょう。dポーンの最終マスは黒マスなので、黒キングはそこをブロックしていれば、白マスビショップに追い出される心配はありません。対する白も、ビショップとキングでそれぞれaポーン、gポーンに間に合うため、お互いに勝つ方法はないでしょう。

1... Rf6 2. Ke5??


ここでキングを上げてしまうと、黒のgポーンをキングで止めることができず、白の負けになってしまいます。代わりに2. Bg8! g4 3. Bf7!! この手は検討戦で私たちが見落としていたオンリームーブで、上記の変化同様に、e8 のマスをビショップで抑えるのがポイントです。(代わりに 3. Ke5?? Rxe6+! 4. Bxe6 g3-+ は、やはり白キングが間に合わず、黒勝ちです。) 3... Rxe6 4. Bxe6 g3 5. Ke3= これならば、白キングはgポーンを止めるのに間に合っています。

2... Rxe6+! 3. Kxe6 a3 0-1



白はキングが上がりすぎてしまったことで、a,g ポーンの両方を止めることができません。続けるとしても、4. Bb1 g4 でゲームオーバーです。私もチェコで体験しましたが、ルーク vs. ビショップ+パスポーンのエンドゲームは、正確に読むのが大変難しいものですね。このゲームは、今回のIVL 参加者全員にとって良い勉強になったでしょう。


昼食の席では、全員でこのポジションについてアイディアを出し合っています。

続いて私の試合へ。午前中の2試合目で、絶好調の唐堂くんに敗れた私は、優勝を目指すためには午後の3試合を1つも落とすわけにはいきません。

Kojima, S - Shiomi, R
5th IVL (3)

1. c4 e6 2. e4 d5 3. exd5 exd5 4. d4 Nf6 5. Nc3 Be7 6. Nf3 O-O 7. Be2 dxc4 8. Bxc4 Nbd7 9. h3 a6 10. a4 Nb6 11. Bb3 Nbd5 12. O-O h6 13. Re1 Be6 14. Ne5 c5?!



イタリアで私が敗れた、ラトビアのGM Miezis の得意ラインを使ってみます。French Exchange, もしくはQGA に分類されるであろうオープニングですが、塩見さんにここで緩手が出て、白に小さなチャンスが生まれます。

15. Ng6! Re8 16. Nxd5 Bxd5 17. Bxd5 Nxd5 18. Nxe7+ Rxe7 19. dxc5


これで白は1ポーンアップ。黒がどうやってポーンを取り戻すべきか、正しい手が見つけづらいポジションです。

19... Rxe1+ 20. Qxe1 Rc8 21. Be3 Nxe3?!



21... Qf6! 22. Rb1 Re8! という手順を、試合後に塩見さんに指摘しました。こうしてe3 をポーンで取り返させれば、黒は失ったポーンを取り返すチャンスを、十分に得られるでしょう。

22. Qxe3 Qa5 23. Qe4! Rb8


23... Rxc5? 24. b4! Re5 25. Qxb7 Qd5 26. Qxa6+- ならば、2ポーンアップとなった白が順当に勝つでしょう。23... Qxc5!? 24. Qxb7+/- も、やはりポーンアップで白優勢ですが、本譜よりこちらのほうが良いのかもしれません。

24. b4 Qc7 25. Rd1 a5 26. Qf5 Rd8?



ここは26... g6 のほうがまだ粘れます。少し難しいですが、ルークを交換したクイーンエンディングは白勝ちです。

27. Rxd8+ Qxd8 28. b5! Qd1+ 29. Kh2 Qxa4 30. b6!


ちなみにここは、30. c6 bxc6 31. b6 Qb4 32. Qc8+ Kh7 33. Qc7!+- でも白勝ちです。本譜同様に、b8-h2 のダイアゴナルを抑えたうえで、早いパスポーンを作るのがポイントです。

30... Qc6 31. Qe5!



クイーンエンディングにおいて重要なことは、有利な側はパペチュアルチェックを防ぎつつ、決定打となるパスポーンを作ることです。次にQe5-Qc7 を止めることのできない黒に、粘る手段はもはや残されていません。

31... a4 32. Qc7 Qf6 33. c6 1-0


私はこの後、4R で3連勝中だった野口さんに勝ち、最終戦でも井上さんに勝って、4勝1敗となりました。一方で私に勝った唐堂くんは4連勝までいったものの、最終戦で苦手にしている野口さんに負け。3人が4勝1敗で並び、タイブレークで決着をつける三つ巴の展開となりました。


井上さんがタイブレークを取り仕切り、まずはタイブレークブリッツの対戦表を決めます。チェストーナメントで圧倒的なくじ運の悪さを誇る私が、あみだくじでシードを引いたことには少し驚きました(笑) 他の2人にはかなり文句を言われましたが、こう決まった以上は仕方ありません。ドローならば色を変えて再試合を行うというルールで、タイブレークがスタートです。


直前の5R で、野口さんに黒を持って敗れている唐堂くんは、待望の白を引いての大事な勝負です。中盤、対称なポーンストラクチャーからポジションを開きにいきましたが、野口さんはこれをうまく受け、最後はセンターのパスポーンを押し進めて勝ち。唐堂くんに対して相性の良さを再び見せつけました。


続くファイナルは、野口さんと私の対戦です。シードのために黒を再び持った私ですが、野口さんにはかなり相性が良いので、さほど問題ないと思っていました。しかし、ゲームが始まるとKIA ですぐに黒がボコボコとなり、15手程ですでに手の施しようがなくなります(笑) それでもなんとか粘っていると、野口さんのポーンが落ち、ピースが落ち、数手で大逆転となりました。お互いにどうしてこうなったのか首をかしげますが、ブリッツとはそういうものかもしれません。かくして5回目のIVL、タイブレークを制した私が優勝と確定しました。

1st-3rd Place 小島慎也, 野口恒治, 唐堂 4/5
4th Place 中村龍二 2/5
5th Place 塩見亮 1/5
6th Place 吉村謙治&井上祥ペア 0/5


大会後の打ち上げには、馬場さんと南條くん、そしてこれからロンドンに発つ佐野さんが合流しました。佐野さんとは最後に会う機会になりそうなので、写真を撮っておけば良かったと少し後悔... 12月には2年ぶりのLondon Chess Classic Open Class への参加も検討しますので、オリンピアード後に募集をかけるかもしれません。

高いレベルのトレーニングを目的としたIVL も、昨年の7月から始まってすぐに5回開催となりました。井上さんと相談して、今後は少し違った形式での開催も考えています。はっきりとしたことは決まっていませんが、こちらもお楽しみに。それではIVL メンバーの皆さん、次回もよろしくお願い致します。

2014/01/18

FIDE Official Tournaments in August 2014

今年の8月は、私たちにとって楽しみなFIDE トーナメントが満載です。おそらく、まだあまり知られていないトーナメントもありますので、今日は夏に開催される3大会をご紹介しようと思います。

Tromso Chess Olympiad at Tromso, Norway, 2014.8.01 - 8.14
40手90分+30分+1手30秒, 11R



今年の夏、チェス界で最大のイベントと言えば、2年に一度開催されるチェスオリンピアードで間違いありません。ノルウェーの首都、オスロから国内便で2時間ほど、北極圏に位置する町、トロムソが戦いの舞台です。昨年はこの地でワールドカップが開催され、ロシアのクラムニクが優勝したことも、まだ記憶に新しいでしょう。アナンドを破り、世界チャンピオンとなったカールセンも、ノルウェー代表として参加予定と聞いています。オリンピアードは今回も、大いに盛り上がりそうですね。

そして日本代表としては、私と南條くんが参加するのはほぼ間違いありませんが、他はまだはっきりとした情報が伝わってきていません。女子は数日前に参加の意思が問われ、こちらも調整中のことです。ちなみに...

アナンドが来るなら行く!


という選手がいたので、私がインドのGM に連絡を取ったところ、インドの代表メンバーはまだ確定しておらず、アナンドも参加するかどうか、まだわからないそうです。連絡をくれたGM Harikrishna には感謝致します。(オランダで試合中のところ、すみませんでした...) 2006年のトリノ以降、3大会連続でオリンピアードには出場していないアナンドですが、世界チャンピオンから陥落したこともあり、今年はノルウェーに来る可能性もあるでしょう。

また、今年のオリンピアードは、8月1日から14日までの開催だということはわかっていますが、その他の詳しいスケジュールが公開されていません。これについて、私はノルウェーのオーガナイザーやミーシャにメールを送りましたが、まだ返答はない状態です。31日に日本を出るフライトであることは間違いないと思いますが、早めにこの辺りもはっきりさせたいですね。私もドレスデン以降、オリンピアードでは目立った活躍をしていないので、今年こそはと気合を入れて臨みたいと思います。

Japan League at Kamata Tokyo, Japan, 2014.8.09 - 8.12
40手90分+30分+1手30秒, 7R



写真は昨年のJapan League から、Kojima - Ikeda の対戦です。

こちらは昨日スケジュールを確認していて、驚きました。日本国内で最大のFIDE トーナメント、ジャパンリーグの開催時期がオリンピアードと被っています。これについては、今日JCA に確認を取ろうとしましたが、1日中電話は通じず。スケジュールを確認し忘れてうっかり被せてしまったのか、ここしか会場が取れないので致し方ないと考えているのか。いずれにせよ、私たちオリンピアードメンバーにはなんらかの説明が欲しいところです。国内最強のメンバーがジャパンリーグに不在というのは、なんとも寂しいですからね。

World University Chess Championships at Katowice, Poland 2014.8.18 - 8.24



ポーランドで8月中旬から開催されるのは、大学生の世界選手権です。この数年で日本からは、2008年のロシア大会に私と内田さん、2012年のポルトガル大会に篠田くんと尚広くんが参加しています。学生選手権を終えたばかりの日本の大学生たちには、学生チェス連盟からこの大会への誘いが出され、現在メンバーを調整中です。すでに参加を決意しているメンバーもいるようですので、声をかけられているメンバーはお互いに連絡を取り合い、参加するかどうかを検討してみてください。過去の参加者である、私や篠田くんにも気軽に相談してくれてOK です。

この大会は年によって運営も参加メンバーも違うので、あまり参考にはならないかもしれませんが、少しだけ2008年の話をします。ロシアのノヴォクズネツクで開催された2008年の大会では、男子セクションは人数が少ないものの、非常にレベルが高かったです。Lysyj, Igor, Smirnov, Pavel, Bocharov, Dmitry といった、お前ら大学生だったのかよ! とつっこみたくなるほど、名のあるGM がロシアの男子代表でした。レイティング2200程度だった私ですらbye を食らい、ギリギリで最下位を逃れる苦しい戦いでした。(ポルトガルでは、もう少しレベルは下がったようです。)


豪華なオープニングセレモニー


Brazilian Pair


試合前の一コマ。中央は中国のGM Zhou Jianchao


レストデイには必ず開催地の観光ツアーがあるでしょう。

それでも、同年代の世界のプレーヤーたちとの交流は楽しかったですし、今でも付き合いのあるメンバーも複数います。(その時に友達になったブラジルのMekhitarian は、そろそろブラジル代表に入るでしょう。) 他の大会は来年以降も参加のチャンスがありますが、World University Chess Championships は今年しか参加できないかもしれませんので、大学生たちには思い切ってチャレンジしてもらいたいですね。エントリーの締め切りはすぐですが、トレーニングの期間は、まだ7か月もありますよ!

2014/01/17

5th IV League Tournament Information


写真は1st IVL のときのものです。

今週末の日曜日、19日に開催される第5回のIVL も、だいたいの詳細が決まりました。帰国直後の前回は、私が4勝1ドローで優勝したにもかかわらず、良いゲームがあまりなかったために棋譜の公開はなしでした。今回は事前に棋譜を公開してほしいというリクエストも届いていますので、きっちりと良いプレーをしたうえで、3回目の優勝を狙っていこうと思います。1月のメンバーは以下の通りで、今回は五十音順でリストを決めるという変則式です。

1. 井上祥 & 吉村謙治 (それぞれ予定があるため、交代で計5試合を指します)
2. 小島慎也
3. 塩見亮
4. 唐堂
5. 中村龍二
6. 野口恒治

今回はこのメンバーでの、5R ラウンドロビン、持ち時間は25分+1手10秒加算です。私の注目は第2回、第3回優勝の野口さんと、最近成長著しい唐堂くんが、どういったプレーを見せるかです。もちろん、日本チャンピオン経験者の2人も侮れない相手でしょう。私以外のメンバーは、今年の指し初めとなる大会ですので、2014年のスタートとして、皆さん良いプレーができるよう期待しています。

2014/01/16

マンガで覚える図解チェスの基本 New Design Version


2011年の秋に土屋書店から出版された、私監修のチェス書籍が、昨年末にカバーデザインが変更となったことをお知らせ致します。私の元にも本日、土屋書店から献本が届きました。個人的には、以前の黄色中心のカバーよりも、こちらのほうがお気に入りです。書店で見かけた際は、是非手にとってご覧ください。中身は以前のものと変更はなく、漫画を交えて子供にも分かりやすく解説した入門書です。

久々にこれをご紹介することになったのは、昨年末の学生選手権で、この書籍に私のサインを入れて参加者への賞品にしたいと、学生チェス連盟の小林くんから声をかけられたことがきっかけです。そこで初版のものから、デザインが変更されたことを知りました。タイミングとしてちょうど良かったのはたまたまだと思いますが、私の本を学生への賞品にしようと考えてくれた小林くんには、大変感謝しています。

また、学生選手権の会場、ないしは別の場所でこの本を見かけ、カバーの駒の名前にミスがあることに気づいた方もいると思います。先日、こちらのミスについても土屋書店に確認を取ったところ、すでに修正をして正しいものを流通させているそうです。ミスのあるカバーを手にしてしまった人は、どうかご容赦下さい。中身については、初版出版前に私が目を皿のようにして、ミスがないようチェックを済ませています。

マンガで覚える図解チェスの基本 Amazon 購入ページ


(申し訳ないですが、Amazon で購入した場合、旧カバーと新カバーのどちらが届くか、確認が取れていません。)

2014/01/15

Caro-Kann Classical Move by Move Vol.2

Introduction 2


大学時代に1. e4 から1. Nf3 に切り替え、English 型や1. d4 メインラインの勉強を数年した私が、再び1. e4 に戻ってきたのは、2010年の頭のことです。そんな私が対Sicilian を中心に、新しいレパートリーを構築しようとしていて行き当ったのは、Caro-Kann に対してどの変化を指すか、ということです。高校時代には、Main Line, Exchange, Advanced Variation など、いくつかの変化を使ってきましたが、2010年に試そうと思ったのが、Panov Botvinnik です。

Kojima, S (FM, JPN, 2312) - Shen, S (CHN, 2386)
Thailand Open Chess Championship 2010 (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 g6!?



c7-c6, d7-d5 から、白マスビショップを早めに展開する準備をするCaro-Kann は、意外とキングサイドフィアンケットとの相性が良いものです。Panov Botvinnik の5手目は、5... e6, 5... Nc6 が他にポピュラーな変化で、どれも特徴があって面白いでしょう。

6. cxd5!?


6. Qb3 がメインラインかつ、白が唯一アドバンテージを取れる変化だという意見もありますが、私は当時、d4 のポーンを多少弱めても分かりやすい変化を選ぶことにしていました。

6... Nxd5 7. Bc4 Nb6 8. Bb3 Bg7 9. Nf3 Nc6



私がPanov を選んでいたことには、IQP ポジションの理解を深めるためという理由があります。他のオープニングのレパートリーは、Sicilian Alapin, French Tarrasch であり、どれもがIQP ポジションになりやすい変化です。ちなみにこのポジションは、Sicilian Alapin からでも派生しうるでしょう。1. e4 c5 2. c3 g6 3. Nf3 Bg7 4. d4 cxd4 5. cxd4 d5 6. exd5 Nf6 7. Nc3 Nxd5 8. Bc4 Nb6 9. Bb3 Nc6

10. d5 Na5 11. Be3 O-O 12. O-O Bg4 13. h3 Bxf3 14. Qxf3 Nbc4 15. Rfe1!?


黒はナイトをうまく使ってb2 を攻めますが、白はe7 のポーンをアタックすることでバランスを取ります。(狙いは次に、Be3-Bg5) このような開いたeファイルを使うのは、IQP での一つの有効な手の作り方です。

15... Nxe3!? 16. Qxe3 Nxb3 17. axb3 Bxc3 18. bxc3 Qxd5 1/2-1/2



黒はすべてのマイナーピースを交換し、ドローをチョイスしてきました。c3-c4 からb3 を守り、次にe7 を取れば形勢はイコールでしょう。私はここでドローを受け、試合を終わらせました。

私はこのゲーム後、Panov を諦めたわけでも、1. e4 を諦めたわけでもありません。ただ純粋にCaro-Kann に対して、どのように指すべきかという疑問を膨らませたのです。そんな疑問を解決するために、黒番でのCaro-Kann の研究を始めたわけですが、まさかそれがCaro-Kann の世界にどっぷりとはまるきっかけになるとは、思ってもいませんでした(笑) Vol.2 は導入の後半ということで、タイトルのClassical とは違う変化の試合をご紹介しましたが、Vol.3 からは、メインのClassical の解説を本格的に始めようと思います。

Vol.3 に続く。

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