2014/01/31

Zurich Chess Challenge 2014 - The Top of the World -


以前から話題に上がっていたスイス、チューリッヒのトーナメントがいよいよ開幕しました。豪華すぎる参加者は、いずれも2700後半から2800台で、Carlsen, Aronian, Anand, Caruana, Nakamura, Gelfand の6名です。Carlsen とAnand 以外は、終わったばかりのオランダ、Tata Steel Masters Group と同じメンバーですね。

私の注目は、今年最初の公式戦となるCarlsen がいかなるプレーを見せるか、そしてTata で圧倒的な強さを見せたAronian が対抗馬となりうるかです。昨夜の1R は、そんな2人が白番で勝利を収めましたが、特にCarlsen のプレーには驚かされました。

Carlsen, M (GM, NOR, 2872) - Gelfand, B (GM, ISR, 2777)
Zurich Chess Challenge 2014 (1)

1. c4 g6 2. d4 Nf6 3. Nf3 Bg7 4. g3 c6 5. Bg2 d5 6. Qa4!?



このFianchetto Grunfeld で、黒がc6-d5 とセンターポーンを支える形はクラシカルでありながら、白が何を指すか迷う変化です。私は昨年、韓国でNbd2, チェコでcxd5-Ne5 のラインを試してましたが、世界チャンピオンのCarlsen は一風変わったアイディアを採用します。

6... O-O 7. O-O Nfd7 8. Qc2 Nf6 9. Bf4 Bf5 10. Qb3 Qb6 11. Nbd2 Ne4 12. e3 Qxb3 13. axb3 Na6


a7 のポーンを一時的に守りつつ、b4 のマスへの飛び込むを狙うこの手はありそうに見えましたが...

14. cxd5 cxd5 15. g4!!



私が昨夜帰宅し、ライブの前にFacebook をチェックしていると、元世界チャンピオン Rustam Kasimdzhanov がこの手について触れていました。この手は一体何事なのかと目を疑いましたが、丁寧に先まで読んでみると非常に優れたアイディアであることが分かります。

15... Bxg4 16. Nxe4 dxe4 17. Nd2 f5 18. f3!


一時的に1ポーンを捨てても、白マスビショップの利きを通し、b7 にプレッシャーをかける作戦です。うーん、ここまで難ししいと題材としてふさわしくないですが、前回のテーマと合わせて、次回のレクチャーで使いたい(笑)

18... e5



Chess News の解説ではこの手が悪いことになっていますが、こう指したい気持ちはわかります。18... exf3 19. Nxf3 と進んだ形では、次にNf3-Ne5 と跳ばれ、e5 のアウトポストを抑えられたうえで、h1-a8, h2-b8 のダイアゴナル両方が、白の支配下に置かれることになります。捨てたポーンを取り返し、白が明らかな優勢になるのも、時間の問題でしょう。

19. dxe5 exf3 20. Nxf3 Rae8 21. Ra5!


ルークはオープンファイルから出陣し、縦と横の利きを広く持つものです。

21... Nb4 22. Nd4 b6 23. Rxa7 Bxe5 24. Bh6 Rf6 25. h3 Bh5 26. Nc2!!+/-



ふーむと唸りつつ、きちんと考えたのは今日になってからです。26... Nxc2 27. Bd5+ Rfe6 28. Rc1!+- があるのがポイントでした。7段目を抑えられている黒は、もう1つのルークを8段目に突入されてはメイトになってしまうため、ナイトが避けるとe6 を取られた際、ルークで取り返すことができません。もちろん、黒はc2 のナイトを取らなくても、b4 のナイトが消されてはBg2-Bd5 を食らうことになるため、すでに苦しい状況です。

26... g5 27. Bxg5 Rg6 28. Rxf5 h6 29. Bxh6 Rxh6 30. Nxb4 Bxb2 31. Nd5 Kh8 32. Rb7 Bd1 33. b4 Rg8 34. Ne7 Rd8 35. Be4 Bf6 36. Rxb6 Kg7 37. Rf2 1-0


あとは順当にポーンを攫っていったCarlsen が、無事に勝利を収めました。Carlsen が世界チャンピオンになって初めての公式戦は、一昨年の世界チャンピオン挑戦者、Gelfand を全く寄せ付けない内容でした。

もちろん、大会はまだ始まったばかり。初戦でAronian に負けたAnand の巻き返しを期待するファンも多いでしょう。Tata Steel が終わったばかりですが、再びライブにかじりつく夜が増えそうです。

Zurich Chess Challenge 2014

2 件のコメント:

R.T さんのコメント...

6.Qb3と比較した場合、6.Qa4 独自のアイディアは何になるのでしょうか?
OPの詳細を追う趣旨で無いのはわかりますが、疑問を書き込みます。
ぱっと見で、共通アイディアとして
1.c4をクイーンで取替す位置に展開する(d1がRの展開候補として増える)
2. 6.Qc2だと黒は手順に...Bf5が指せる。

何となく、6.Qb3だと、...Qb6とされたら局面の良し悪しを別にして、柔軟性が無くなる事(展開が決る)。
くらいかなぁと思いましたが。6.Qa4だと、6...0-0 7.0-0 Nbd7 に対して、8.cxd5を急かされる?本譜だと7...Nfd7ですか。分からん。

お互いに、まだ差が付く段階じゃない、という事なのかな。

Shinya_Kojima さんのコメント...

コメント遅くなりました。

6. Qa4 の特徴は難しいですが、黒からすぐにQd8-Qb6 とクイーン交換をせかすようなアイディアを避けるのは、確かにありそうですね。(実際、本譜ではそのような流れになりましたが) 6...dxc4 とポーンを取るようであれば、クイーンで取り返すしかないので、6. Qb3 と同じ形になって6. Qa4 の独自性は消えそうです。

個人的には、あんまりオープニングの細かいアイディアをつっこみすぎなくても良いのではないかと思ってます(笑)

コメントを投稿

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.