1か月ぶりのIVL は、常連メンバー7名によるラウンドロビンで、昨日開催されました。色々と検討し甲斐のあるポジションも出てきたので、私の試合だけでなく、そちらも今日はご紹介しようと思います。
エクスチェンジアップで黒勝ちかと思われたゲームでしたが、野口さんがセンターの2コネクテッドパスポーンを過小評価し、ここまで進むことを許してしまったせいで、白にチャンスが生まれています。
昨日の検討戦では気づいていませんでしたが、白がドローを確保するためには、この手で十分です。1. Bg6!? Kd7 2. Kd5 Re3 3. e6+ Rxe6 4. Bf5 a3 5. Bxe6+ Kd8= でもドローになるでしょう。dポーンの最終マスは黒マスなので、黒キングはそこをブロックしていれば、白マスビショップに追い出される心配はありません。対する白も、ビショップとキングでそれぞれaポーン、gポーンに間に合うため、お互いに勝つ方法はないでしょう。
ここでキングを上げてしまうと、黒のgポーンをキングで止めることができず、白の負けになってしまいます。代わりに2. Bg8! g4 3. Bf7!! この手は検討戦で私たちが見落としていたオンリームーブで、上記の変化同様に、e8 のマスをビショップで抑えるのがポイントです。(代わりに 3. Ke5?? Rxe6+! 4. Bxe6 g3-+ は、やはり白キングが間に合わず、黒勝ちです。) 3... Rxe6 4. Bxe6 g3 5. Ke3= これならば、白キングはgポーンを止めるのに間に合っています。
白はキングが上がりすぎてしまったことで、a,g ポーンの両方を止めることができません。続けるとしても、4. Bb1 g4 でゲームオーバーです。私もチェコで体験しましたが、ルーク vs. ビショップ+パスポーンのエンドゲームは、正確に読むのが大変難しいものですね。このゲームは、今回のIVL 参加者全員にとって良い勉強になったでしょう。
続いて私の試合へ。午前中の2試合目で、絶好調の唐堂くんに敗れた私は、優勝を目指すためには午後の3試合を1つも落とすわけにはいきません。
イタリアで私が敗れた、ラトビアのGM Miezis の得意ラインを使ってみます。French Exchange, もしくはQGA に分類されるであろうオープニングですが、塩見さんにここで緩手が出て、白に小さなチャンスが生まれます。
これで白は1ポーンアップ。黒がどうやってポーンを取り戻すべきか、正しい手が見つけづらいポジションです。
21... Qf6! 22. Rb1 Re8! という手順を、試合後に塩見さんに指摘しました。こうしてe3 をポーンで取り返させれば、黒は失ったポーンを取り返すチャンスを、十分に得られるでしょう。
23... Rxc5? 24. b4! Re5 25. Qxb7 Qd5 26. Qxa6+- ならば、2ポーンアップとなった白が順当に勝つでしょう。23... Qxc5!? 24. Qxb7+/- も、やはりポーンアップで白優勢ですが、本譜よりこちらのほうが良いのかもしれません。
ここは26... g6 のほうがまだ粘れます。少し難しいですが、ルークを交換したクイーンエンディングは白勝ちです。
ちなみにここは、30. c6 bxc6 31. b6 Qb4 32. Qc8+ Kh7 33. Qc7!+- でも白勝ちです。本譜同様に、b8-h2 のダイアゴナルを抑えたうえで、早いパスポーンを作るのがポイントです。
クイーンエンディングにおいて重要なことは、有利な側はパペチュアルチェックを防ぎつつ、決定打となるパスポーンを作ることです。次にQe5-Qc7 を止めることのできない黒に、粘る手段はもはや残されていません。
私はこの後、4R で3連勝中だった野口さんに勝ち、最終戦でも井上さんに勝って、4勝1敗となりました。一方で私に勝った唐堂くんは4連勝までいったものの、最終戦で苦手にしている野口さんに負け。3人が4勝1敗で並び、タイブレークで決着をつける三つ巴の展開となりました。
井上さんがタイブレークを取り仕切り、まずはタイブレークブリッツの対戦表を決めます。チェストーナメントで圧倒的なくじ運の悪さを誇る私が、あみだくじでシードを引いたことには少し驚きました(笑) 他の2人にはかなり文句を言われましたが、こう決まった以上は仕方ありません。ドローならば色を変えて再試合を行うというルールで、タイブレークがスタートです。
直前の5R で、野口さんに黒を持って敗れている唐堂くんは、待望の白を引いての大事な勝負です。中盤、対称なポーンストラクチャーからポジションを開きにいきましたが、野口さんはこれをうまく受け、最後はセンターのパスポーンを押し進めて勝ち。唐堂くんに対して相性の良さを再び見せつけました。
続くファイナルは、野口さんと私の対戦です。シードのために黒を再び持った私ですが、野口さんにはかなり相性が良いので、さほど問題ないと思っていました。しかし、ゲームが始まるとKIA ですぐに黒がボコボコとなり、15手程ですでに手の施しようがなくなります(笑) それでもなんとか粘っていると、野口さんのポーンが落ち、ピースが落ち、数手で大逆転となりました。お互いにどうしてこうなったのか首をかしげますが、ブリッツとはそういうものかもしれません。かくして5回目のIVL、タイブレークを制した私が優勝と確定しました。
大会後の打ち上げには、馬場さんと南條くん、そしてこれからロンドンに発つ佐野さんが合流しました。佐野さんとは最後に会う機会になりそうなので、写真を撮っておけば良かったと少し後悔... 12月には2年ぶりのLondon Chess Classic Open Class への参加も検討しますので、オリンピアード後に募集をかけるかもしれません。
高いレベルのトレーニングを目的としたIVL も、昨年の7月から始まってすぐに5回開催となりました。井上さんと相談して、今後は少し違った形式での開催も考えています。はっきりとしたことは決まっていませんが、こちらもお楽しみに。それではIVL メンバーの皆さん、次回もよろしくお願い致します。
エクスチェンジアップで黒勝ちかと思われたゲームでしたが、野口さんがセンターの2コネクテッドパスポーンを過小評価し、ここまで進むことを許してしまったせいで、白にチャンスが生まれています。
1. e6!?
昨日の検討戦では気づいていませんでしたが、白がドローを確保するためには、この手で十分です。1. Bg6!? Kd7 2. Kd5 Re3 3. e6+ Rxe6 4. Bf5 a3 5. Bxe6+ Kd8= でもドローになるでしょう。dポーンの最終マスは黒マスなので、黒キングはそこをブロックしていれば、白マスビショップに追い出される心配はありません。対する白も、ビショップとキングでそれぞれaポーン、gポーンに間に合うため、お互いに勝つ方法はないでしょう。
1... Rf6 2. Ke5??
ここでキングを上げてしまうと、黒のgポーンをキングで止めることができず、白の負けになってしまいます。代わりに2. Bg8! g4 3. Bf7!! この手は検討戦で私たちが見落としていたオンリームーブで、上記の変化同様に、e8 のマスをビショップで抑えるのがポイントです。(代わりに 3. Ke5?? Rxe6+! 4. Bxe6 g3-+ は、やはり白キングが間に合わず、黒勝ちです。) 3... Rxe6 4. Bxe6 g3 5. Ke3= これならば、白キングはgポーンを止めるのに間に合っています。
2... Rxe6+! 3. Kxe6 a3 0-1
白はキングが上がりすぎてしまったことで、a,g ポーンの両方を止めることができません。続けるとしても、4. Bb1 g4 でゲームオーバーです。私もチェコで体験しましたが、ルーク vs. ビショップ+パスポーンのエンドゲームは、正確に読むのが大変難しいものですね。このゲームは、今回のIVL 参加者全員にとって良い勉強になったでしょう。
続いて私の試合へ。午前中の2試合目で、絶好調の唐堂くんに敗れた私は、優勝を目指すためには午後の3試合を1つも落とすわけにはいきません。
Kojima, S - Shiomi, R
5th IVL (3)
1. c4 e6 2. e4 d5 3. exd5 exd5 4. d4 Nf6 5. Nc3 Be7 6. Nf3 O-O 7. Be2 dxc4 8. Bxc4 Nbd7 9. h3 a6 10. a4 Nb6 11. Bb3 Nbd5 12. O-O h6 13. Re1 Be6 14. Ne5 c5?!
5th IVL (3)
イタリアで私が敗れた、ラトビアのGM Miezis の得意ラインを使ってみます。French Exchange, もしくはQGA に分類されるであろうオープニングですが、塩見さんにここで緩手が出て、白に小さなチャンスが生まれます。
15. Ng6! Re8 16. Nxd5 Bxd5 17. Bxd5 Nxd5 18. Nxe7+ Rxe7 19. dxc5
これで白は1ポーンアップ。黒がどうやってポーンを取り戻すべきか、正しい手が見つけづらいポジションです。
19... Rxe1+ 20. Qxe1 Rc8 21. Be3 Nxe3?!
21... Qf6! 22. Rb1 Re8! という手順を、試合後に塩見さんに指摘しました。こうしてe3 をポーンで取り返させれば、黒は失ったポーンを取り返すチャンスを、十分に得られるでしょう。
22. Qxe3 Qa5 23. Qe4! Rb8
23... Rxc5? 24. b4! Re5 25. Qxb7 Qd5 26. Qxa6+- ならば、2ポーンアップとなった白が順当に勝つでしょう。23... Qxc5!? 24. Qxb7+/- も、やはりポーンアップで白優勢ですが、本譜よりこちらのほうが良いのかもしれません。
24. b4 Qc7 25. Rd1 a5 26. Qf5 Rd8?
ここは26... g6 のほうがまだ粘れます。少し難しいですが、ルークを交換したクイーンエンディングは白勝ちです。
27. Rxd8+ Qxd8 28. b5! Qd1+ 29. Kh2 Qxa4 30. b6!
ちなみにここは、30. c6 bxc6 31. b6 Qb4 32. Qc8+ Kh7 33. Qc7!+- でも白勝ちです。本譜同様に、b8-h2 のダイアゴナルを抑えたうえで、早いパスポーンを作るのがポイントです。
30... Qc6 31. Qe5!
クイーンエンディングにおいて重要なことは、有利な側はパペチュアルチェックを防ぎつつ、決定打となるパスポーンを作ることです。次にQe5-Qc7 を止めることのできない黒に、粘る手段はもはや残されていません。
31... a4 32. Qc7 Qf6 33. c6 1-0
私はこの後、4R で3連勝中だった野口さんに勝ち、最終戦でも井上さんに勝って、4勝1敗となりました。一方で私に勝った唐堂くんは4連勝までいったものの、最終戦で苦手にしている野口さんに負け。3人が4勝1敗で並び、タイブレークで決着をつける三つ巴の展開となりました。
井上さんがタイブレークを取り仕切り、まずはタイブレークブリッツの対戦表を決めます。チェストーナメントで圧倒的なくじ運の悪さを誇る私が、あみだくじでシードを引いたことには少し驚きました(笑) 他の2人にはかなり文句を言われましたが、こう決まった以上は仕方ありません。ドローならば色を変えて再試合を行うというルールで、タイブレークがスタートです。
直前の5R で、野口さんに黒を持って敗れている唐堂くんは、待望の白を引いての大事な勝負です。中盤、対称なポーンストラクチャーからポジションを開きにいきましたが、野口さんはこれをうまく受け、最後はセンターのパスポーンを押し進めて勝ち。唐堂くんに対して相性の良さを再び見せつけました。
続くファイナルは、野口さんと私の対戦です。シードのために黒を再び持った私ですが、野口さんにはかなり相性が良いので、さほど問題ないと思っていました。しかし、ゲームが始まるとKIA ですぐに黒がボコボコとなり、15手程ですでに手の施しようがなくなります(笑) それでもなんとか粘っていると、野口さんのポーンが落ち、ピースが落ち、数手で大逆転となりました。お互いにどうしてこうなったのか首をかしげますが、ブリッツとはそういうものかもしれません。かくして5回目のIVL、タイブレークを制した私が優勝と確定しました。
1st-3rd Place 小島慎也, 野口恒治, 唐堂 4/5
4th Place 中村龍二 2/5
5th Place 塩見亮 1/5
6th Place 吉村謙治&井上祥ペア 0/5
4th Place 中村龍二 2/5
5th Place 塩見亮 1/5
6th Place 吉村謙治&井上祥ペア 0/5
大会後の打ち上げには、馬場さんと南條くん、そしてこれからロンドンに発つ佐野さんが合流しました。佐野さんとは最後に会う機会になりそうなので、写真を撮っておけば良かったと少し後悔... 12月には2年ぶりのLondon Chess Classic Open Class への参加も検討しますので、オリンピアード後に募集をかけるかもしれません。
高いレベルのトレーニングを目的としたIVL も、昨年の7月から始まってすぐに5回開催となりました。井上さんと相談して、今後は少し違った形式での開催も考えています。はっきりとしたことは決まっていませんが、こちらもお楽しみに。それではIVL メンバーの皆さん、次回もよろしくお願い致します。
2 件のコメント:
はじめまして小嶋慎也さん、私は日本通信チェス協会の者です。
このブログ、いつも読ませていただいていました
小嶋さんのチェスの記事、とても勉強になります♪
そしてチェスでのご活躍 日本のチェスプレイヤーとしてはとても誇らしく思います
小嶋さんの3つのIMノームに刺激を受けました☆
日本人初のIMまで後少しですね!
私は日本通信チェス協会でGMを目指しています・・何年かかるかわかりませんが^_^;
これからもご活躍に期待しております
頑張ってください!
kingshuu さん
コメント、ありがとうございます。そう言っていただけると、私もこれまで頑張ってきた甲斐がありますし、今後の励みにもなります! 通信チェスのタイトル獲得も大変だと思いますが、お互いに頑張りましょう〜。
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