今夜はラスベガスで素晴らしいパフォーマンスを残した唐堂くんから、North American Open 2013 のレポートが届いたので、そちらを公開致します。このレポートを見て興味を持たれた方は、11か月半後のアメリカ行きを検討してみてください!
早くも昨年のことになりますが、12月26日から29日にかけてラスベガスのBally’s Hotel で行われたNorth American Open 2013 に吉村さんと二人で参加してきました。二人とも二年前に続き、二回目のラスベガス遠征でした。その様子について、簡単ではありますが、レポートしたいと思います。
North American Open ではOpen、U2300、U2100、U1900、U1700、U1500、U1250 と、7つのセクションに分けられていて、その中でもOpen セクションとU2300 セクションだけFIDE レートがつきます。私のUSCF のレートは2053 ですが、せっかく海外まで来たので、FIDE レートがつくU2300 セクションに吉村さんとともに参戦しました。
今回もそれぞれのセクションの参加者が100人をゆうに超えていました。二年前と変わらず、アメリカの大会のスケールの大きさは、やはり凄いものでした。会場では幅広い年齢層、人種の人が集まっていて、日本の大会では味わえない雰囲気があり、いつか日本の大会でもこれくらい人を集められたらなと思いました。
今大会のスケジュールは以下のようになっていました。
12/26 18:15 R1
12/27 12:00 R2 18:15 R3
12/28 12:00 R4 18:15 R5
12/29 10:00 R6 16:00 R7
このように4日で7ラウンドをこなす日程でしたので、1日目は夕方から始まる1試合のみでしたが、2日目から4日目までは、午前に1試合、夕方に1試合でした。タイムコントロールは40手120分+30分(Delay10秒)とあまり慣れないものでしたので、タイムパニックに陥る試合もありました。夕方の試合が18:15と遅くから始まることもあり、終わるのは深夜12時近くになるケースがほとんどでした。また、午前の試合が長引くと、休憩時間が5~10分だけで次の試合に臨むこともありました。さらにその次の試合も長引いてしまうと、約12時間連続で試合することもあり得ました。今回のような持ち時間が長い大会は久しぶりでしたので、1試合するだけでかなりの疲労を感じていました。そのため夕方の試合はほとんどへとへとの状態で臨むことになっていました。世界では持ち時間が長い大会の方が多いので、これから体力もつけないといけないなと思いました。
それでは今回の戦績について振り返ります。
R1 Tang Tang(2053) 0.5-0.5 Daniel Ming He(2206) Benko’s Opening
R2 Udit Iyengar(2232) 0.5-0.5 Tang Tang(2053) Queen’s gambit declined
R3 Tang Tang(2053) 1-0 Ron Perez(2202) Neo-Gruenfeld
R4 Renard Anderson(FM,2256) 0-1 Tang Tang(2053) Caro-Kann,Advanced variation
R5 Tang Tang(2053) 0.5-0.5 Roland Feng(2274) Trompowsky attack
R6 Joshua Sheng(2260) 0-1 Tang Tang(2053) Caro-Kann,Anti-anti-Caro-Kann defense
R7 Tang Tang(2053) 0-1 Nicholas Rosenthal(2230) Benko’s Opening
3勝3分1敗の4.5/7ポイントで89人中17位でした。大会と通して調子がよく、盤全体をよく見えていましたので、良かったです。しかし最後のラウンドでは勝てば2位タイ、ドローでも4位タイになれるチャンスであっただけに、敗戦は悔しすぎました。おそらくここまで悔しがったのは初めてです。そのうえ、ひそかに狙っていた無敗記録も途絶え、賞金も…(泣)それでも、負けた試合も含め、どの試合も面白かったので、今回の収穫は相当大きかったです。
それでは自分の試合の中から一つだけ紹介したいと思います。海外でFM と初めて当たりました。
Caro-Kannでいきます。
実戦でCaro-Kann,Advanced Variation になるのは初めてです。ここはいったん5... Be4 にしてf3 を突かせて、g3 のマスを弱めるべきでした。
試合後、Anderson さんはこの手がダメだと言っていました。このポーン突きは特に意味がなく、一手損したことになります。普通に9.Qd3 などの方が良さそうです。
トイレから戻ってきてこの手が指されていたので、びっくりしました。そして冷静に時間をかけて読むと、黒が優勢になることを確信しました。17. Kf1! Rxh5 18. Rxh5 Qc4+ 19. Kg2 Nxh5 20. Qxh5 Qxc1 とすれば、ピースのアクティブさで、やや白が良いと思います。
もうすでに黒が大きく優勢であると試合中に感じました。ここでクイーンでdポーンを守らせつつ、dポーンの周りをくるっと回して交換を狙います。
g6 を突くことで働きの悪い黒マスビショップを活用させ、さらにキングサイドにルークを回します。
ここでクイーン交換に成功し、黒は圧倒的にポーンが多く、そしてキングの位置も良いので、あとは一本道です。
最後はe6取れないうえ、ナイト逃げればg3落ちるので、白はここでリザインしました。
これで、海外FMと初顔合わせで初勝利を挙げることができました!この勝利は大きな自信となりました。そして全7ラウンドの対戦相手が皆レート2200台でしたので、U2300セクションに出て良かったと思います。
また、今大会で一番感じたのは、様々なプレイヤーと対戦することは大きな力になることです。アグレッシブにどんどん駒をきって攻めてくる人もいれば、手堅く守りを固めてカウンターを狙う人もいました。そのうえ皆読みの精度が高くて手ごわかったです。どんなタイプのプレイヤーに対しても優位に試合を運べられるようにさらにトレーニングしないとな、と心から思いました。さらに、これからは毎年少なくとも一回は海外の大会に参加して、その大会での目標を決め、年々その目標に向けてチェスを精進していきます。国内でもビッグイベントで本気で賞を狙っていきたいと思います。
最後に、今年4月から大学生になります。皆さん引き続き大学生唐堂をよろしくお願いします。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
早くも昨年のことになりますが、12月26日から29日にかけてラスベガスのBally’s Hotel で行われたNorth American Open 2013 に吉村さんと二人で参加してきました。二人とも二年前に続き、二回目のラスベガス遠征でした。その様子について、簡単ではありますが、レポートしたいと思います。
North American Open ではOpen、U2300、U2100、U1900、U1700、U1500、U1250 と、7つのセクションに分けられていて、その中でもOpen セクションとU2300 セクションだけFIDE レートがつきます。私のUSCF のレートは2053 ですが、せっかく海外まで来たので、FIDE レートがつくU2300 セクションに吉村さんとともに参戦しました。
今回もそれぞれのセクションの参加者が100人をゆうに超えていました。二年前と変わらず、アメリカの大会のスケールの大きさは、やはり凄いものでした。会場では幅広い年齢層、人種の人が集まっていて、日本の大会では味わえない雰囲気があり、いつか日本の大会でもこれくらい人を集められたらなと思いました。
今大会のスケジュールは以下のようになっていました。
12/26 18:15 R1
12/27 12:00 R2 18:15 R3
12/28 12:00 R4 18:15 R5
12/29 10:00 R6 16:00 R7
このように4日で7ラウンドをこなす日程でしたので、1日目は夕方から始まる1試合のみでしたが、2日目から4日目までは、午前に1試合、夕方に1試合でした。タイムコントロールは40手120分+30分(Delay10秒)とあまり慣れないものでしたので、タイムパニックに陥る試合もありました。夕方の試合が18:15と遅くから始まることもあり、終わるのは深夜12時近くになるケースがほとんどでした。また、午前の試合が長引くと、休憩時間が5~10分だけで次の試合に臨むこともありました。さらにその次の試合も長引いてしまうと、約12時間連続で試合することもあり得ました。今回のような持ち時間が長い大会は久しぶりでしたので、1試合するだけでかなりの疲労を感じていました。そのため夕方の試合はほとんどへとへとの状態で臨むことになっていました。世界では持ち時間が長い大会の方が多いので、これから体力もつけないといけないなと思いました。
それでは今回の戦績について振り返ります。
R1 Tang Tang(2053) 0.5-0.5 Daniel Ming He(2206) Benko’s Opening
R2 Udit Iyengar(2232) 0.5-0.5 Tang Tang(2053) Queen’s gambit declined
R3 Tang Tang(2053) 1-0 Ron Perez(2202) Neo-Gruenfeld
R4 Renard Anderson(FM,2256) 0-1 Tang Tang(2053) Caro-Kann,Advanced variation
R5 Tang Tang(2053) 0.5-0.5 Roland Feng(2274) Trompowsky attack
R6 Joshua Sheng(2260) 0-1 Tang Tang(2053) Caro-Kann,Anti-anti-Caro-Kann defense
R7 Tang Tang(2053) 0-1 Nicholas Rosenthal(2230) Benko’s Opening
3勝3分1敗の4.5/7ポイントで89人中17位でした。大会と通して調子がよく、盤全体をよく見えていましたので、良かったです。しかし最後のラウンドでは勝てば2位タイ、ドローでも4位タイになれるチャンスであっただけに、敗戦は悔しすぎました。おそらくここまで悔しがったのは初めてです。そのうえ、ひそかに狙っていた無敗記録も途絶え、賞金も…(泣)それでも、負けた試合も含め、どの試合も面白かったので、今回の収穫は相当大きかったです。
それでは自分の試合の中から一つだけ紹介したいと思います。海外でFM と初めて当たりました。
Renard A(FM, USA, 2256(FIDE2209)) - Tang, T (JPN, 2053(FIDE1974))
North American Open 2013(4)
1. e4 c6
North American Open 2013(4)
Caro-Kannでいきます。
2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 h6 5. g4 Bh7?!
実戦でCaro-Kann,Advanced Variation になるのは初めてです。ここはいったん5... Be4 にしてf3 を突かせて、g3 のマスを弱めるべきでした。
6. e6 fxe6 7. Bd3 Nf6 8. Bxh7 Rxh7 9. h5?
試合後、Anderson さんはこの手がダメだと言っていました。このポーン突きは特に意味がなく、一手損したことになります。普通に9.Qd3 などの方が良さそうです。
9…c5 10. c3 cxd4 11. cxd4 Nc6 12. Nf3 Qd6 13. Qd3 e5 14. Qg6+ Kd8 15. g5 hxg5 16. Nxg5 Qb4+ 17. Bd2?
トイレから戻ってきてこの手が指されていたので、びっくりしました。そして冷静に時間をかけて読むと、黒が優勢になることを確信しました。17. Kf1! Rxh5 18. Rxh5 Qc4+ 19. Kg2 Nxh5 20. Qxh5 Qxc1 とすれば、ピースのアクティブさで、やや白が良いと思います。
17…Qxb2 18. Nxh7 Nxh7 19. Qxh7 Qxa1 20. O-O Qxd4 21. Qf5 Ke8 22. Qg6+ Kd7 23. Re1 Qc5
もうすでに黒が大きく優勢であると試合中に感じました。ここでクイーンでdポーンを守らせつつ、dポーンの周りをくるっと回して交換を狙います。
24. Qf7 Qd6 25. Bc3 Qe6 26. Qf3 g6!
g6 を突くことで働きの悪い黒マスビショップを活用させ、さらにキングサイドにルークを回します。
27. Qg3 gxh5 28. Bxe5 Qg4
ここでクイーン交換に成功し、黒は圧倒的にポーンが多く、そしてキングの位置も良いので、あとは一本道です。
29. Nd2 Qxg3+ 30. fxg3 e6 31. Nf3 Bd6 32. Bxd6 Kxd6 33. Ng5 Rg8 0-1
最後はe6取れないうえ、ナイト逃げればg3落ちるので、白はここでリザインしました。
これで、海外FMと初顔合わせで初勝利を挙げることができました!この勝利は大きな自信となりました。そして全7ラウンドの対戦相手が皆レート2200台でしたので、U2300セクションに出て良かったと思います。
また、今大会で一番感じたのは、様々なプレイヤーと対戦することは大きな力になることです。アグレッシブにどんどん駒をきって攻めてくる人もいれば、手堅く守りを固めてカウンターを狙う人もいました。そのうえ皆読みの精度が高くて手ごわかったです。どんなタイプのプレイヤーに対しても優位に試合を運べられるようにさらにトレーニングしないとな、と心から思いました。さらに、これからは毎年少なくとも一回は海外の大会に参加して、その大会での目標を決め、年々その目標に向けてチェスを精進していきます。国内でもビッグイベントで本気で賞を狙っていきたいと思います。
最後に、今年4月から大学生になります。皆さん引き続き大学生唐堂をよろしくお願いします。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
2 件のコメント:
小島さんは年末はポーランドに行くのでしょうか・・・?▼o・~・o▼汗
記事の大会のURLは こちらのようです
http://chesstournamentservices.com/cca/north-american-open/
そうですね。ポーランドは有力候補です。
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