2018/10/10

First Saturday GM October 2018 R3


First Saturday 3Rは、ベトナムの若武者、Nguyen Van Thanh との対戦です。今年はずいぶん長くブダペストに滞在しているようで、FS でのプレーを続けていました。今月は2つ負け越しスタートですので、私としてもここで叩いておきたい相手です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350)
First Saturday GM October 2018 (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. O-O a6 7. dxc5 Bxc5 8. Qxd8+ Kxd8 9. Ne5 Ke7 10. Be2 Nbd7 11. Nc4 Ne4!?



QGA のメインをラインを指すのは、いつ以来か思い出せないほど久しぶりです。新しく研究していたクイーン交換の変化は、リスクを減らしポジショナルプレーとエンドゲームで戦うという意思の表れです。

12. Nbd2 Ndf6 13. Nb3 Ba7 14. f3!


e3 のポーンは多少弱くなりますが、十分にフォローできると思っていました。それよりも黒が手数をかけたナイトを追い払い、捌いてしまうほうがメリットがあります。

14... Nd6 15. Nxd6 Kxd6 16. Bd2 Nd5 17. Rfd1 Ke7 18. Kf2 Bd7 19. Bc4! Nb6 20. Bd3?!



しかし、ここで正確に指せませんでした。Bd2-Bb4+ はいかにもな手ですが、後でNb6-Nd5 と戻られる手で困るかと思い、ゆっくりe3-e4 を目指す作戦を取りました。ところが、ここでは白マスビショップを諦めるアイディアで白が大きく優勢です。20. Bb4+! Ke8 21. Na5!+/- このナイトの跳び込みは様々なタイミングで考え、実際に指してもいるのですが、このタイミングだけはなぜかすっぽりと頭から抜けており、ビショップを取らせるのは21. Rac1 ばかり考えていました。b4 にビショップ、c4 にナイトの組み合わせは絶好ですので、黒はナイトビショップ交換ができません。そうであるならば、h8 のルークの連携を切るBd2-Bb4+ が働いていることは明らかです。

20... Rhc8 21. Na5 Nd5 22. Ke2 b6 23. Nc4 b5 24. Ne5 Be8 25. f4


私が見落としていたのは、e3-e4 に対してBa7-Bd4! という切り返しがあることです。そのため、e3-e4 を急ぐことはせず、ナイトの戻るマスを作って作戦の立て直しを図ります。25. Bxh7!? Bb8 26. Ng4 f5 27. e4! Nf4+ 28. Bxf4 Bxf4 29. exf5 Rc2+ 30. Kf1 exf5 31. Bxf5 Rxb2 という変化もありそうですが、かなり読むのは難しそうです。

25... f6 26. Nf3 Bg6 27. e4?!



白マスビショップを交換すると、c2 のマスを弱めて黒ルークの侵入を気にしなければいけないと思いましたが、27. Bxg6 hxg6 28. Rac1+/= くらいでシンプルに進めて良かったでしょう。白マスビショップを交換したほうが、e4 もターゲットになりづらく、本譜のような展開を避けられました。

27... Nb6 28. Bb4+ Ke8! 29. Rac1 Na4 30. Bb1!? Nc5


ここで相手からドローオファーがきましたが、最近は強気にいくチェスが板についてきていますので、ここは蹴って勝負です。30... Nxb2 31. Rxc8+ Rxc8 32. Rd6+/= は白がポーンを取りかえして指しやすいでしょう。

31. Rd6?!



しかし、オファーを蹴って指した手がイマイチでした。6段目はいかにも良さそうなルークの場所ですが、次の相手の手が見えていません。31. f5! exf5 32. exf5 Bf7 33. b3+/= くらいで白OKです。

31... a5!


この手が成立するとは、とても驚きました。a5 もe6 も白は取ることができず、完全に作戦の立て直しです。

32. Bd2


32. Bxa5 Ke7 33. Rd4 Nd3 34. Bb4+ Nxb4 35. Rxc8 Rxc8 36. Rxb4 Rb8 は怪しいですが、ダブルビショップを持つ黒はポーンを差し出しても大丈夫でしょう。

32... Ke7 33. e5 Bxb1 34. Rxb1 Ne4 35. Ra6 Nxd2 36. exf6+ gxf6 37. Nxd2 Bd4



白はビショップナイトの交換を許しましたが、これでルークを交換したうえでさらに先手が取れるのであれば、大きな問題はありません。ポジションはイコールでも、もう一勝負できると感じました。37... a4 38. Ne4=

38. Rxa8 Rxa8 39. Nb3 Bb6 40. Rc1 Kd6 41. Rd1+ Kc6 42. Nd4+


ここは迷わずビショップを返してもらい、ルークエンディングで戦います。

42... Bxd4 43. Rxd4 e5!?



これは怪しいと思いました。パスポーンをセンターに作るだけでなく、キングサイドで将来的にパスポーンを作られるリスクも白は考えなければいけません。このルークエンディングはイコールながら正確に指すのは黒のほうが難しく、チャンスがあるのではないかと思いました。43... Rg8=

44. fxe5 fxe5 45. Rh4 Ra7 46. g4 Kd5 47. Kd3 Rf7 48. Ke3 Rc7 49. g5 Rc2


黒は少し感がて、即ポーンを取りあう展開を選びましたが、私は1手待ってクイーンサイドのポーンを伸ばしておくほうが黒に得なのではないかと考えていました。49... b4 50. b3 Rc3+ 51. Kd2 Rc7= ならば、互いに進展を作れずにドローでしょう。

50. Rxh7 Rxb2 51. h4 Rg2!



なるほどと思いました。a2 まで取っているようであれば、白のパスポーンが早いという私の読みは合っており、黒はこうして早めに後ろからgポーンを止めるしかありません。51... Rxa2? 52. h5! Rg2 53. Rg7! これが私の思い描いた局面で、gポーンを前からルークで守ったうえで、hポーンを突くアイディアが強力です。 53... a4 54. h6 a3 55. h7 Rh2 56. g6+-

52. Kf3 Rg1 53. Rg7 e4+!


eポーンは白キングから近く、止められやすそうですが、白キングがg,hポーン方面にいけばプロモーションのチャンスができ、eファイルでブロックすればhポーンの守りが無くなります。白はキングをどちらに向けるか悩むところです。

54. Kf4 Rf1+ 55. Kg3 Ke6 56. Kg2 Rf8?!



ここはどうしたことでしょう。後ろまで下がるのはパッシブなディフェンスで、56... Rf4 57. Rb7= のほうがシンプルです。

57. Rc7 Kf5?!


この辺りで黒に不正確な手が続き、白にチャンスは生まれ始めました。57... b4 58. g6 Kf6 59. h5 Kg5 60. Rc5+ Kh6 61. Rxa5 e3 62. Re5 Rf2+ 63. Kg3 Rxa2= ならばリスクなくドローです。

58. Kg3 Re8 59. Rc5+ Kg6 60. Rxb5 e3 61. Rb6+ Kf5?



この手は完全に予想しておらず、とても驚きました。確かになるべくgポーンから離れたくない気持ちも分かりますが、ここは離れても問題なくドローです。61... Kg7 62. Rb1 Kg6 63. Kf3 Kh5 64. Rg1 e2 65. Kf2 Kxh4= 本譜ではf6 でのチェックがあるため、黒キングはルークの利きを邪魔してしまう悪い位置にいかざるを得なくなり、白に勝ちのチャンスが出ます。

62. Rf6+?!


この手でも勝ちですが、もっとわかりやすく簡単なのは、62. Kf3! とする手でした。Rb6-Rf6+ で黒キングをeファイルにいかせることができるため、黒はeポーンを進められません! 63... Rh8 63. Rf6+ Ke5 64. Rh6!+- これでhポーンを守り、e3 を取れば完全に白勝ちでした。

62... Ke4 63. h5?


相手のミスを落ち着いて捉え、ルークを捨ててもキングサイドの2コネクテッドパスポーンで勝てることに気付いたところまでは良かったです。問題はg,hポーンのどちらから伸ばすべきかということです。私の勘違いはいくつかあり、例えば相手キングから遠いポーンから突いたほうが良いと思ったこと(そういうケースもあります)、gポーンを伸ばすとしても、どうせhポーンも伸ばすので、確実に進めるポーンから突いておくべきだと思ったこと、そしてなによりも、どちらを突いても勝ちだと思ったことです。残り時間が2分でなければ分かりませんでしたが、この試合中には相手の次の手は全く見えていませんでした。63. g6! Kd3 64. Rf1 e2 65. Re1 Kd2 66. Rxe2+ Kxe2 67. h5+- これでルークを捨ててもプロモーションが確実にできる白の勝ちです。

63... Re5!



通常であればKg3-Kg4 として何もないルークの上がりですが、白キングはe3-e2Kg3-Kf2 としなければいけないため、4段目に上がることができません。これで勝ちの目は消えました。ここで慌てたままであれば、ズルズルと負けてもおかしくないですが、残り時間1分でなんとかドローの筋を見つけました。

64. g6 Rxh5 65. Re6+ Kd3 66. g7 Rg5+ 67. Kf3 Rxg7 68. Rxe3+


ここで私からドローオファーしました。余談ですが、オリンピアードでは妻がこうしたルークエンディングをやっていましたね。

68... Kc4 69. Ke2 Rd7 70. Rb3 Rd5 71. Rh3 Kb4 72. Rg3 a4 73. Rd3 Rh5 74. Kd1 Rh2 75. a3+ Kc4 76. Rg3 Ra2 77. Kc1 1/2-1/2



10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350) 1/2-1/2
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/11 Rest Day
10/12 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539)
10/13 R6 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/14 R7 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)

First Saturday GM October 2018 Standings

+2 Sindarov, Shahaliyev
+1 Mirzoev, Plat
+-0 Kojima, Czebe, Manush
-2 Tran, Nguyen, Ilincic

この日はSindarov がPlat を、Shahaliyev がMirzoev を破って勝ち越し勢の順位が入れ替わっています。すでに勝ち越し、負け越しの差が開きつつあるので、上のグループに入れるように早く2勝目を挙げたいですね。ちなみにCzebe との試合は木曜日から日曜日に変更になり、木曜日が久々の休日になりました。


会場にはコーヒーとお菓子だけでなく、水も置かれるようになりました。これは私にとってありがたいです。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

Nguyen Van Thanhって、2009年のZone選手権で当たってるな。(負けたけど。。。)
今はもうそんなに若いとは言えないけど、当時は高校生くらいだったわけね。

Shinya_Kojima さんのコメント...

そうでしたか。ベトナムはトップは安定していますが、少し下の代表争いは今後もどうなるかわかりませんからね。今の2300台たちも、2400後半まで伸びてくるかもしれません。

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