2021/12/08

First Saturday GM December 2021 R4

前半の山場であるGM3連戦もようやく終わりを迎えました。David Berczes は兄のIM Csaba Berczes とともにブダペストのノームトーナメント常連です。今回初対戦となるDavid との試合は予想外の展開を迎えました。

Berczes, D (GM, HUN, 2453) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
First Saturday GM December 2021 (4)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Nc3 Nf6 4. Bb5 Bb4

オープニングはまさかのFour Knights でした。ほとんど準備していなかったため、一番記憶がしっかりしている対照型のラインを選ぶことにします。

5. O-O O-O 6. d3 Bxc3 7. bxc3 d6 8. Bg5 Qe7 9. Re1 a6!?


ギリシャの Nikolaos Ntirlis が自身の著書で勧めているのがこの手で、一度ビショップを退くか交換するか催促しておくことで、古くからあるビショップを白がキープするラインに入らせません。9... Nd8 10. d4 Ne6 11. Bc1 c6 12. Bf1 と2つのビショップが初期位置に戻るのが特徴的で、これは白をもって指したことがあります。

10. Bxc6 bxc6 11. Nd2 h6 12. Bh4 Be6 13. Nf1 Rfb8 14. d4 g5

鬱陶しいピンをここで外しておき、Nf6-Nd7-Ng6 の組み替えを考えます。1. e4 e5 ではg3 に退いたビショップは別のダイアゴナルへのスイッチに手間がかかり、柔軟ではないというのが多くのラインでの考え方です。

15. Bg3 Nd7 16. Ne3 Qf6 17. f3


David は驚くことにこの17手目で大長考に入り、残り時間は5分を切っていました。黒のほうがキングサイドを攻めつつ、隙あらばbファイルからの侵入を狙うプランが分かりやすいと思います。

17... h5 18. Bf2 Nf8 19. d5 cxd5 20. exd5 Bc8!?

ここは3種類のビショップの逃げ場のどこもありえると思いましたが、a6 を一時的でも守っておき、Nf8-Nd7 と戻る可能性も視野に入れてd7 のマスを空けておくことにしました。

21. c4 Nd7 22. Nf1 Qg6! 23. c5 Rb2!


良い感じでc2 をアタックする形を作ることができ、黒は満足です。e3 のナイトをはがすことができれば、c2 を守り切るのは大変になるでしょう。

24. cxd6 cxd6 25. Ne3 Rab8 26. Qd2 Nf6 27. Qa5 g4! 28. Kh1 Kh7!

クイーンサイドでも侵入しつつ、キングサイドを突破するアイディアを決行して黒は上手く攻めています。キングをgファイルから避けておけば、将来的にgxf3 とポーンを交換してgファイルを開きやすくなると考えました。

29. Bh4 Ng8


ここは本譜と同じナイトをf5 に切り替えるアイディアでも、29... Ne8! のほうが良かったかもしれません。一時的にc7 への白クイーンの侵入を防ぎつつ、Ne8-Ng7, f7-f5 も考えられます。本譜でもナイトをf5 に運ぶか、それともf7-f5-f4 とするか迷いましたが、後者のプランの場合、ナイトがg7 にいたほうが7段目を守って黒キングは安全です。

30. fxg4 hxg4 31. Rf1 Nh6! 32. Qa3 Nf5!

このナイトはこの試合大いに働いてくれて、行ったり来たりしながら8手かけて白のディフェンスの要であるe3 のナイトを消すことに成功しました。異色ビショップではありますが、ヘビーピースもまだ残っており、c2 を落として白キングに迫るビジョンが見えてきました。

33. Nxf5 Bxf5 34. Rac1 Rxc2 35. Rxc2 Bxc2 36. Be7 Be4!?


私もほぼ時間が無くなってきた状況で、36... Rb6 のような消極的なディフェンスの手は指したくなく、d6 を捨てても早く白キングを攻められるようにしました。このアイディア自体は良かったのですが、この後事件が起こります。

37. Bxd6 Rd8?

36手目の時点でルークを避けるならこのマスで良いだろうと思っていました。私の作戦はe5 も取らせてd5 をルークで取り返し、テンポを得てd2 にルークを潜り込ませるチャンスを探すことです。しかし、ルークはすでに十分働いているオープンファイルにいてバックランクメイトの狙いなども作っているため、dファイルに避けると攻めが遅くなってしまいます。37... Rc8! 38. Bc5 (38. Bxe5? Rc2 39. Rg1 Bxg2+ 40. Rxg2 Qe4 41. Qg3 Rc1+ 42. Qe1 Rxe1#) 38... Bxd5-+ こうしてc2 への侵入を狙いつつ、d5 はビショップで取り返せば黒の勝勢でした。d5 のビショップはf7 を守っているのがポイントで、白が手を作りづらくなります。37... Rb5!? も面白い手で、38. Bxe5?? Qf5!-+ という手があるためにe5 が取られません。いずれにせよ、まだオープンファイルではないdファイルにルークを振ったのはこの試合一番の失敗でした。

38. Bxe5 Rxd5?? 39. Qe7??


さらに大事件です。私は39. Bc3 くらいでd2 への侵入を防いでくるものと思っていましたが、David はf7 への攻撃を作ってきました。しかしこれが大ブランダーで、代わりに39. Qf8!+- ならばメイトスレットが生まれ、白の勝ちになります。試合中はお互いにそんなことは気づかず、時間が無くなる間際の最後の攻防が続きます。

39... Bxg2+! 40. Kxg2 Qe4+?

計算ミスがないことをぎりぎりまで確認し、40手目を指して時間を増やした私はドローで満足しました。本当は勝ちをふいにするブランダーであるはずの39. Qe7 を、短時間で見つけるなんて凄いななどと思っていたのです。しかし、最後の最後は私のひどいミスで、クイーンの代わりにルークでチェックしていれば勝ちだったのです! 40... Rd2+! 41. Kg3 Qd3+! 42. Kxg4 Qe4+! 43. Kh5 Rxh2+!-+
Analysis Diagram

e5 のビショップがピンになっているため、h2 を取れるところまで読めませんでした。時間の増える40手目前後は一番油断できないですね。

41. Kg1 Qe3+ 42. Kh1 Qe4+ 43. Kg1 Qe3+ 1/2-1/2


前日同様、パペチュアルチェックでドローです。試合直後は36... Be4 で勝ちを逃したかと思いましたが、その後でしたね。時間が無い中でも落ち着いて読めるよう鍛え直しが必要です。それでも黒が3回あり、GM3連戦もあった最初の4試合を負けなしで乗り切れたのはきちんと評価して次の試合に向かおうと思います。

12/4 Girinath, P.D.S (IM, IND, 2335) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/5 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Pap, M (GM, SRB, 2373) 1/2-1/2
12/6 Seres, L (GM, HUN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/7 Berczes, D (GM, HUN, 2453) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/8 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)
12/9 Rest Day
12/10 Souhardo, B (IM, IND, 2354) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
12/11 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Nagy, G (GM, HUN, 2527)
12/12 Rest Day
12/13 Pasztor, B (FM, HUN, 2347) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
12/14 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Nitish, B (FM, IND, 2464)

First Saturday GM December 2021 Standings

+1 Nagy、Berczes、Avinash、Girinath
+-0 Nitish、Kojima
-1 Seres、Pap、Souhardo、Pasztor

4日目はNagy がトップを走るGirinath を止める初勝利。若いAvinash がSeres に勝ち、他はドローでした。先月GMノームを獲得したNitish は私と同じ4連続ドローで、GMトーナメントが簡単ではないことが分かります。次の対戦相手のAvinash はGMに連勝と勢いがあるので、白番でしっかり止めてきたいと思います。
ライトアップされた綺麗な建物ですが、中身はスーパーマーケットです。外で食べても良いのですが、素敵なキッチン付きのアパートを借りているので少し自炊を続けてみようと思います。

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