4試合目が行われた昨日は、試合前にハンガリーのチェス連盟へと足を運んできました。ここでは27日からXII. Karácsonyi Open が開催されており、後ほど最終戦が行われます。試合の時間が私の参加しているVezerkepzo と被っているので、試合間の会場の様子だけを見てきました。連盟の壁にはハンガリーチームの功績が記されており、88年テッサロニキオリンピアードで、ポルガー3姉妹のいたハンガリー女子チームが金メダルを獲得したことはよく知られています。
さぁこの日はレイティングトップのGM Pechac との対戦です。スロバキアのマスターともこの10年で何度か対戦経験はあり、最も印象深かったのは元スロバキアNo.1 でアルメニアに移籍した、GM Movsesian との試合でしょう。Pechac はMovsesianクラスではないにせよ、2600近いレイティングを持つ強豪です。
この手は研究していたものでしたが、私の手持ちのデータベースでは実戦で指された記録が見つかりませんでした。e6 のポーンを弱める代わりにビショップの利きを遮っておき、さらにビショップの下がるマスを決めさせておきます。
12. a3 Bxd2+ 13. Qxd2 Qxd2+ 14. Kxd2 bxc5 15. b4 cxd4 16. exd4 Bb7= が研究で、f7-f6 が入ってなければ有効なbポーンの突き捨てが、さほど良いアイディアではなくなります。本譜のポーン取りは素直なリアクションで、ここからどうするか考えます。
13. bxa7 cxd4 14. a3 dxe3 (14... Bxd2+ 15. Qxd2 Qxd2+ 16. Kxd2 d3 Pachec は試合後にこれが嫌だったと教えてくれました。しかし、17. f3! Ke7 18. fxe4 Rxa7 19. Bg3+- くらいで白は良さそうです。) 15. axb4 exd2+ 16. Qxd2 Qxa7 17. Qd6!+/- これらの変化が白良しであるならば、a7 を取らせるのはやりすぎだったかもしれません。
この辺りの指し方はこのゲームの中でもかなり難しかったです。本譜はBb5-Bc6 をあらかじめ躱しておくと同時に、7段目、特にc7 を守るアイディアです。しかし、これで本譜のように進んで黒の対応が遅いのであればコンピュータの提案を受け入れるしかありません。17... Bb7!? 18. Bxd7 Kxd7 19. dxc5 bxc5 20. Rxc5 Rhc8 21. Rxc8 (21. Rhc1 Rxc5 22. Rxc5 e5!) 21... Rxc8 22. Rc1 Bc6 このように進んだ局面で、ある程度のポーンの代償があるというのが驚きの指摘です。a、bファイルに2コネクテッドパスポーンを作られていますが、簡単には進めることができず、さらにはe6-e5 とした際に白の黒マスビショップをある程度無力化できます。しかし、c5 を早々に捨てるのは人間の感覚ではかなり抵抗があると思います。
この手は黒マスを弱めてしまい、g3 のビショップを強くしてしまうのであまり指したい手ではありませんが、e4 を守るために仕方ありません。ここからNd7-Nf6-Nd5 を目指しつつ、途中で白マスビショップの交換を迫れば黒は戦えると考えていました。しかし、そんな私の甘い考えは次の手で打ち砕かれました。
g7 を取らせている間にc7 のマスにルークを回して1ポーンダウンの異色ビショップエンディングを考えましたが、誘いには乗ってきません。白は極力キングやポーンの位置を改善してからg7 を取るでしょうし、黒がそれを嫌ってg7-g6 と突けば、Ke3-Kf4-Kg5-Kh6 とキングが突き進むルートが生まれます。白には焦る理由がありません。
hポーンがどんどん進んでくるシンプルなアイディアに対抗する方法がありません。30... b5 31. h6 g6 32. Rxg6! は綺麗な決め手です。e5 のビショップはh8 のプロモーションのマスだけでなく、黒ルークが下がりたいb8 までも抑えています。
12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271)
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216)
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings
+4 Aditya
+2 Pechac +1 Mihok、Nagy
+-0 Ajay、Avinash
-1 Leszko
-2 Kojima、Sahithi
-3 Trost
Aditya が全く止まらず、この日はAjay を黒で粉砕して4連勝となりました。GM も全員勝っています。私もどこかで浮上のきっかけをつかみたいものです。
さぁこの日はレイティングトップのGM Pechac との対戦です。スロバキアのマスターともこの10年で何度か対戦経験はあり、最も印象深かったのは元スロバキアNo.1 でアルメニアに移籍した、GM Movsesian との試合でしょう。Pechac はMovsesianクラスではないにせよ、2600近いレイティングを持つ強豪です。
Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 (4)
1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 c6 5. Bg5 Nbd7 6. e3 Qa5 7. Nd2 Bb4 8. Rc1 Ne4 9. Ncxe4 dxe4 10. c5 f6!?
この手は研究していたものでしたが、私の手持ちのデータベースでは実戦で指された記録が見つかりませんでした。e6 のポーンを弱める代わりにビショップの利きを遮っておき、さらにビショップの下がるマスを決めさせておきます。 Vezerkepzo GM Christmas 2021 (4)
11. Bh4 b6 12. cxb6!
12. a3 Bxd2+ 13. Qxd2 Qxd2+ 14. Kxd2 bxc5 15. b4 cxd4 16. exd4 Bb7= が研究で、f7-f6 が入ってなければ有効なbポーンの突き捨てが、さほど良いアイディアではなくなります。本譜のポーン取りは素直なリアクションで、ここからどうするか考えます。
12... c5?!
面白いかと思ったポーン伸ばしでしたが、一度ポーンを取り返しておくほうがシンプルだったかもしれません。12... axb6 13. a3 Bxd2+ 14. Qxd2 Qxd2+ 15. Kxd2 Bb7 16. Bg3+/= これでも白がやや優勢ですが、黒も手堅く指せそうです。13. a3!?
13. bxa7 cxd4 14. a3 dxe3 (14... Bxd2+ 15. Qxd2 Qxd2+ 16. Kxd2 d3 Pachec は試合後にこれが嫌だったと教えてくれました。しかし、17. f3! Ke7 18. fxe4 Rxa7 19. Bg3+- くらいで白は良さそうです。) 15. axb4 exd2+ 16. Qxd2 Qxa7 17. Qd6!+/- これらの変化が白良しであるならば、a7 を取らせるのはやりすぎだったかもしれません。
13... Bxd2+ 14. Qxd2 axb6 15. Bg3 Qxd2+
試合後に黒からのクイーン交換はミスだったのではないかと指摘されましたが、私としてはクイーンを残した状態でキングをe7 に動かす手はリスクが高いと感じました。15... Ke7 16. Rc3!+/- ならば白はクイーン交換を拒否して大きく有利だと思います。16. Kxd2 Ke7 17. Bb5 Ra7?!
この辺りの指し方はこのゲームの中でもかなり難しかったです。本譜はBb5-Bc6 をあらかじめ躱しておくと同時に、7段目、特にc7 を守るアイディアです。しかし、これで本譜のように進んで黒の対応が遅いのであればコンピュータの提案を受け入れるしかありません。17... Bb7!? 18. Bxd7 Kxd7 19. dxc5 bxc5 20. Rxc5 Rhc8 21. Rxc8 (21. Rhc1 Rxc5 22. Rxc5 e5!) 21... Rxc8 22. Rc1 Bc6 このように進んだ局面で、ある程度のポーンの代償があるというのが驚きの指摘です。a、bファイルに2コネクテッドパスポーンを作られていますが、簡単には進めることができず、さらにはe6-e5 とした際に白の黒マスビショップをある程度無力化できます。しかし、c5 を早々に捨てるのは人間の感覚ではかなり抵抗があると思います。
18. Bc6! cxd4?
ここも迷った末に白のポーンを孤立にしましたが、開いたcファイルとKd2-Ke3-Kf4 とキングの上がるルートを作らせてしまったデメリットのほうが大きかったです。最初に考えた18... Rd8? 19. Bxe4 cxd4 20. Rc7! dxe3+ 21. Kxe3 Rxc7 22. Bxc7 Rh8 23. Rd1+- は厳しいと思い、本譜を選びました。代わりに18... f5 19. Rc3 Ba6 20. Rhc1+/= くらいで耐えるほうが良いアイディアでした。19. exd4 Rd8 20. Ke3 f5
この手は黒マスを弱めてしまい、g3 のビショップを強くしてしまうのであまり指したい手ではありませんが、e4 を守るために仕方ありません。ここからNd7-Nf6-Nd5 を目指しつつ、途中で白マスビショップの交換を迫れば黒は戦えると考えていました。しかし、そんな私の甘い考えは次の手で打ち砕かれました。
21. Bxd7!!
ダブルビショップを諦めたうえ、異色にしても白のアドバンテージは決定的なものであるというのがPachac の考えです。検討でも白のDomination で黒は厳しいと彼は述べていました。黒はc7 への侵入こそしばらく防げますが、駒の位置を改善する方法が無く立ち往生してしまいます。21... Kxd7 22. Be5! Ba6 23. h4!
g7 を取らせている間にc7 のマスにルークを回して1ポーンダウンの異色ビショップエンディングを考えましたが、誘いには乗ってきません。白は極力キングやポーンの位置を改善してからg7 を取るでしょうし、黒がそれを嫌ってg7-g6 と突けば、Ke3-Kf4-Kg5-Kh6 とキングが突き進むルートが生まれます。白には焦る理由がありません。
23... Rc8 24. Rxc8 Kxc8 25. Rc1+ Kd8
本譜は6段目に入られてポーンがすぐ落ちましたが、そうでなくともc7 を守り続けなければいけない黒は厳しい状況です。25... Kd7 26. Kf4!+-26. Rc6 Rb7 27. Rxe6 Bb5 28. Rd6+ Ke7 29. Kf4 Bd3 30. h5 h6
hポーンがどんどん進んでくるシンプルなアイディアに対抗する方法がありません。30... b5 31. h6 g6 32. Rxg6! は綺麗な決め手です。e5 のビショップはh8 のプロモーションのマスだけでなく、黒ルークが下がりたいb8 までも抑えています。
31. Rc6 Kf7 32. d5 b5 33. Rg6 Kf8 34. d6 1-0
難しいタクティクスを使わずとも、ピースの働きの差で相手を圧倒する、私が理想とするようなチェスでした。この遠征中は多くの負けがありますが、完敗だと思ったのは今回が初めてです。スロバキアNo.1 Pachac は予想以上の強さでした。12/26 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Aditya, V P (IND, 2281) 0-1
12/27 15:00 Leszko, B (FM, HUN, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
12/28 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Ajay, K (IM, IND, 2401) 1/2-1/2
12/29 15:00 Pechac, J (GM, SVK, 2584) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/30 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Trost, E (CM, SWE, 2271)
12/31 11:00 Mihok, O (GM, HUN, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/01 Rest Day
01/02 15:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Sahithi, V (WFM, IND, 2216)
01/03 15:00 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
01/04 10:00 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391)
Vezerkepzo GM Christmas 2021 Standings
+4 Aditya
+2 Pechac +1 Mihok、Nagy
+-0 Ajay、Avinash
-1 Leszko
-2 Kojima、Sahithi
-3 Trost
Aditya が全く止まらず、この日はAjay を黒で粉砕して4連勝となりました。GM も全員勝っています。私もどこかで浮上のきっかけをつかみたいものです。
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