Vezerkepzo最終戦は午前中からだったため、ブログを書く余裕がなく、最後の2試合はまとめてお届けします。最後はGM Mirzoev とGM Nagy との連戦でした。
Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2420)
Vezerkepzo GM December 2021 (8)
1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Be7 4. Nc3 Nf6 5. Bf4 O-O 6. e3 Nbd7 7. a3 dxc4!?
ほとんど7... c5 一択だと思っていたので、この珍しい手のチョイスは驚きました。似た形を指されたことはあるので、その経験を活かしたセットアップを考えます。 Vezerkepzo GM December 2021 (8)
8. Bxc4 Nb6 9. Bd3 Nbd5 10. O-O!?
10. Be5 のようにビショップを躱す手もありえますが、f4 のビショップは取られてもe5 のマスが強化されるうえ、eファイルが使いやすくなることから問題無い交換とも考えられます。
10... Nxf4 11. exf4 b6 12. Qe2 Bb7 13. Rfd1!?
これは新しい手だったようですが、私としてc、d、eファイルの3つのファイルにヘビーピースを1つずつ配置するのが良い形に思えたので、ルークはc1、d1 に決めます。13... Bd6 14. Ne5! Nd5 15. Nxd5 Bxd5 16. g3 g6 17. Rac1
白が黒マスビショップを失ったもしっかり戦えると考えるポイントは、黒のc7ポーン、およびc6 のマスの弱さにあります。本譜は当然それを利用する手ですが、17. Be4 と早めに白マスビショップ交換を迫るほうが分かりやすかったかもしれません。
17... Bxe5 18. dxe5!?
ここで黒はビショップを返してきますが、これを何で取り返すか非常に迷いました。単純に考えればダブルポーンを消すfポーンで取り返すべきなのかもしれませんが、d4 のバックワードポーンが残ることと、f4-f5 ブレイクのチャンスが消えることを気にして本譜を選びました。18... Qe7 19. Be4 c6 20. h4 h5 21. f5!?
これは私が期待していたブレイクだったのですが、思ったよりも効果的ではなく、e5 を弱めてしまうなどのデメリットもありました。
21... exf5 22. Bxd5 cxd5 23. Rxd5 Rad8 24. Rcd1 Rxd5 25. Rxd5 f4!
私の仕掛けをそっくりそのまま逆でやったきたような感じで、意外と困ります。白はどこかが孤立ポーンになりそうなので、一番問題無い形が何かを考えます。26. g4?!
26. Kg2 fxg3 27. Kxg3!= とキングを積極的に前進させ、h4 ポーンの守りに使うアイディアは気づきませんでした。
26... Qe6! 27. Rd4 hxg4 28. Rxf4 f5! 29. Rc4 Rf7 30. Rc3 Re7 31. Re3 Kg7 32. Qc2 Rd7 33. Re1 a5 34. Qc1!
26手目付近の黒のアイディアはなるほどと唸るもので、e5 はパスポーンながら少し守りづらい弱い存在になってしまいました。それでも持ち時間ギリギリの中で上手くe5 を支え、c1-h6 のダイアゴナルを抑えて反撃を作れそうな形にしました。しかし、ここから時間の増える40手目までに問題がありました。34... Rf7 35. Qg5 Qe7 36. Qxe7?!
クイーン交換自体は問題無いと言えば無いのですが、より正確なプレーが求められるために疑問をつけておきます。36. Qf4! Qxh4 37. e6 Re7 38. Qd4+ Qf6 39. Qxb6= とクイーン交換を避けるほうが簡単で、h4 を落としても別のポーンが取り返せて白は問題ありませんでした。h4 のポーンのためにクイーン交換がマストだと思い込んだのは1つの反省点です。
36... Rxe7 37. Kg2 Kf7 38. Kg3?!
R2 同様の難しいルークエンディングでミスが出ました。この自然に見えるキングの前進は失敗で、代わりにポーンを交換しておくのが好手でした。38. f3! gxf3+ 39. Kxf3 Re8 (39... Ke6 40. Rg1 Kxe5 41. Rxg6 Rh7 42. Rxb6 Rxh4 43. Rb5+ Kd4 44. Rxa5 Rh3+ 45. Kf4 Rb3=) 40. Kf4 Rh8 41. e6+ Kf6 42. h5! gxh5 43. e7 Re8 44. Re5 Rxe7 45. Rxf5+ Kg6 46. Rb5 Re6 47. Kg3= 少し難しいですが、これで互角でした。本譜を見ると分かるのですが、黒のfファイルのダブルポーンよりも、白のf2 のバックワードポーンのほうが狙われやすく、しかも落ちると黒に2コネクテッドパスポーンを作られてしまう大きな負担の駒でした。これを捌くのが良いアイディアだと言われればもちろん納得しますが、時間の少ない中ではキングが上がるほうを先に考えてしまいます。38... Ke6 39. Kf4?
39. f3! gxf3 40. Kxf3 Rh7 41. Rg1 Rh6 42. Kg3 Kxe5 43. Rc1 Kd5 44. Rc8 上記のように1手早くf2-f3 を実行すべきですが、それでもドローのための最後のポーン付きのチャンスがここでした。
39... Rd7 40. Re2 Rd3-+
時間こそ増えましたが、白はe5、f2、h4 とバラバラの負担になるポーンが多く、すでに厳しい状況です。クイーンを交換した時点では黒キングにe6 をブロックさせ、Kg2-Kg3-Kf4-Kg5-Kxg6 などとキングでポーンを狙って2つ目のパスポーンを作る狙いがあれば十分くらいに思っていたのが、スピードが足りずに甘かったです。41. Kg5 Rh3 42. Kxg6
42. Rc2 a4!-+ (42... Kxe5? 43. Re2+! Kd4 44. Kxg6=) 持ち時間も増え、余裕ができたMirzoev は間違えないでしょうが、まだこちらに期待するほうが実戦的にはチャンスがあったかもしれません。
42... Rxh4 43. Kg5 Rh2 44. Kf4 Rh3 45. Kg5 Rf3 46. Kh4 Rd3 47. Kg5 Rd5 48. Kf4 Rc5 49. Re3 Rc2 50. f3 Rf2 51. Kg3 Rxf3+ 52. Rxf3 gxf3 53. Kxf3 Kxe5 54. Ke3 a4 0-1
Mirzoev は最終戦もこれを勝つのかという互角のエンドゲームを勝ち切り、連勝で3つ勝ち越しになりました。レイティングは落としてはいても、経験豊富なGM のテクニックを見せてもらいました。続いて最終戦へ。
Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
Vezerkepzo GM December 2021 (9)
1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 e6 5. d4 Nbd7 6. Be2!?
ちょっと指されると嫌な手がきました。Shankland がChessable のコースで勧めているSemi-Slav 対策で、今年GMタイトルを獲得したMishra もこれをブダペストで使っていました。 Vezerkepzo GM December 2021 (9)
6... Bd6
6... dxc4 7. a4! Bd6 8. Nd2! 0-0 9. Nxc4 Bc7 10. b3! というアイディアがあるため、c4 を取る手は保留しておきます。
7. b3 O-O 8. O-O b6 9. Bb2 Bb7 10. Bd3
こうしてビショップを1手かけてd3 に組みなおしてもOK というのが、近年流行している面白いアイディアです。私は10. Qc2 も白で調べていますが、クイーンの位置を決めずに黒のルークの配置によってアイディアを細かく変えていくのが、この変化のさらなるポイントです。10... Re8 11. Rc1 Qe7 12. Qe2
Nagy はここでクイーンをe2 に決めてきましたが、これはShankland が勧める後のNc3-Ne2-Ng3 ができなくなるため、多少ありがたいと思いました。
12... Rad8 13. Rfd1 c5 14. cxd5 exd5 15. Bf5 Ne4!
f5 かb5 かどちらかにビショップは跳び込んでくると思いましたが、f5 であればこの手で十分です。センターポーンを弱めないようにしつつ、多少ピースを捌きます。16. dxc5 Nxc3 17. Bxc3 bxc5 18. Ba5 1/2-1/2
18手目は黒からのd5-d4 を躱しておく手ですが、Nagy はこれと同時にドローオファーしてきました。ルークを一度躱してからd5-d4 を武器に勝負することも考えましたが、白はいくつかそれを防ぐアイディアがあり、局面は互角だと思ったためにこれを受けて試合を終わらせました。大会を通せば4つ負け越しとこれまでのGMトーナメントでワーストなのですが、一番厳しいと思っていた最終戦を負けずに済んだのでひとまず胸をなでおろしました。
12/15 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Nitish, B (FM, IND, 2464) 1/2-1/2
12/16 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Girinath, P.D.S (IM, IND, 2335) 0-1
12/17 Ajay, K (IND, 2401) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/18 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391) 1/2-1/2
12/19 Aditya, V P (IND, 2281) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/20 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Varga, Z (GM, HUN, 2387) 1-0
12/21 Pasti, A (FM, HUN, 2377) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/22 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2420) 0-1
12/23 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
Vezerkepzo GM December 2021 Standings
+3 Nagy、Mirzoev
+2 Avinash、Pasti(2人ともIMノームを獲得)
+1 Varga、
+-0 Nitish、
-1 Aditya
-3 Ajay、Girinath
-4 Kojima
レイティングを稼いだのは2人のGMと(Nagy は+3 でもマイナス)10代のプレーヤーたちでした。6試合終了時点で残り3連勝がIMノーム獲得に必要だったPasti Aron は、見事にその難しい条件を達成しました。私も若いプレーヤーたちの勢いのある指し回しを見習って、次の大会はまた切り替えて頑張ろうと思います。 今回の大会中、Chess Evolution の本を安価に手に入れることができました。これらも試合の合間に読み進めていこうと思います。 こちらはハンガリーでポピュラーな、石鹸と柑橘類を合わせた飾りです。基本的には吊るして香りを楽しむものだと思います。多くの店が閉まるクリスマス当日には、またクリスマスマーケットに足を運ぶことになるでしょう。日本の皆さんも楽しいクリスマスをお過ごしください。Merry Christmas!
0 件のコメント:
コメントを投稿