2013/09/22

CAISSA 2013 September IM 1st round - Tied King -


7か月ぶりにここ、ケチケメートの地に降り立ちました。今年の2月、最終戦で勝てばほぼIM タイトルが手に入るという試合をドローにし、非常に悔しい思いをしました。今月から何回連続になるかわかりませんが、またここで私のノームチャレンジがスタートします。参加者は予定通り10名で、9R 中、7ポイントでノーム獲得となります。それでは早速、初戦のゲームへ。

Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Lyell, M (FM, ENG, 2220)
CAISSA 2013 September IM (1)

1. Nf3 f5 2. d4 Nf6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. O-O O-O 6. c4 d6 7. Nc3 e6!?



初めて目にする手ですが、調べてみると近年GM レベルでも人気があり、しかも黒の勝率が悪くないようです。アイディアは1手使っても、白からのd4-d5 をストップしておき、ゆっくりとe6-e5 からのブレイクを狙うということでしょう。

8. b3 Ne4 9. Bb2 Nxc3 10. Bxc3 Nc6 11. b4!


簡単にe6-e5 を許しては面白くないため、ナイトを一度、e5 に利くマスから追い返しておきます。

11... Qe7 12. b5 Nd8 13. Qb3 Nf7 14. Rad1?!



しばらくe6-e5 は来ないだろうと高をくくり、ゆっくり指そうとしたのが失敗でした。試合後に一人で並べていて、e2-e4 を素早く狙うプランがベストであることに気が付きます。14. Rfe1! e5 15. dxe5 Nxe5 (15... dxe5 16. Bb4!+/- この串刺しが、本譜で黒がe6-e5 と指せないと判断した理由です。) 16. Nxe5 Bxe5 17. Bd5+ Kh8 18. f4 Bxc3 19. Qxc3+ Qg7 20. Qxg7+ Kxg7 21. e4+/- このような形は、戦略的にすでに白勝ちです。このイメージからも、ルークを先に回すのはdファイルではなく、eファイルでした。

14... Re8!?


この手で少し困ってしまいます。dxe5 のアイディアが生まれた黒は、次に遠慮なくe6-e5 と突いて白マスビショップをアクティブに働かせることができます。

15. Qb2?!


15. Rfe1 e5 16. dxe5 dxe5 17. e4 f4 18. gxf4 exf4 19. Bb4 Qe6 20. e5+/= このような乱れたポーンストラクチャーで戦うのを嫌いましたが、本譜のようにc4 のポーンを弱めるのは完全に間違いでした。

15... e5 16. dxe5 dxe5 17. Ne1 a6!?



ルークをaファイルから活用するのは、実戦的に良いアイディアだと思います。この時点ですでに白にはアドアンテージがなくなっていることを悟りました。

18. a4 axb5 19. axb5 Ra4?!


しかし、若干これが緩手です。19... Nd6! 20. Bd5+ Be6 21. Bb4 Qf7 22. Bxd6 cxd6=/+ と進めば、やや黒にチャンスがありそうです。

20. Bd5?!



なかなかこの辺りは、正確な手を見つけるのが難しいです。20. Nc2! Rxc4 21. Ne3 Ra4 22. Nd5 Qc5 23. Bb4 Rxb4 24. Qxb4 Qxb4 25. Nxb4 e4 26. f3+/= これならば、黒がエクスチェンジを捨てた代償は不十分で、白が優勢になるでしょう。c4 を捨てるとのは、なかなか思い切れませんでした。

20... Be6 21. Nc2 Bxd5 22. cxd5 Nd6?!


22... Qc5!-/+ ここでこの手を指されていたら、相当苦しかったと思います。白はb5, d5 のポーンがバラバラになってしまったので、黒はシンプルにそれらにプレッシャーをかければ大きく優勢でしょう。

23. Ra1 Re4!? 24. e3 f4!?



f5-f4-f3 は少し時間がかかるので、これを誘うつもりでe2-e3 を突いてみました。実際にはこれがゲームの命運を分けることになります。

25. Bb4 f3 26. Rfc1 Rc4!


e4 にいったルークはやや行き場に困っていましたが、ここでcファイルに戻るのが好手です。ここでも一見捕まりそうに見えますが...?

27. Qb3 Qd7! 28. Kh1


28. Bxd6? Rxc2! は次にQd7-Qh3 と飛び込んで黒勝ちです。

28... Qh3!



この手を見た直後は、b5 のポーンを取られるほうが面倒だと思っていましたが、私の予想していたよりずっと、キングサイドのアタックチャンスは豊富でした!

29. Rg1 Ne4!


この手を指される直前になってようやく、Ne4-Nf6-Ng4 が即ゲームオーバーであることに気が付きます。

30. Raf1 Rxc2?!



最も黒にとって簡単なのは、30... Nf6! 31. Qxc4 Ng4 32. d6+ Kh8 33. Qxg4 Qxg4 34. dxc7 Qc4 35. Rc1 Qxc7-/+ として、ルーク+ピースとクイーンを交換してしまうラインでしょう。c7 まで進んだポーンは武器になるかと読んでいましたが、すぐに盤上から姿を消す運命でした。

31. d6+ Kh8 32. d7??


オンリームーブだと思って指した手が、メイト見落としのブランダーでした。32. Qxc2! Nf6 33. d7 Rf8 (33... Qxd7 34. Qc4= ならば、本譜と同じ。) 34. Qc4 Ng4 35. Qxg4 Qxg4 36. Bxf8 Qxd7 37. Bxg7+ Kxg7 38. Rc1 h5!


Analysis Diagram 1

キング周りの弱さとf2 のポーンの弱点により、黒優勢であることは間違いないと思いますが、自分で黒をもって間違いなく勝てるかと聞かれると、自信はありません。39. Rc5 Kf6! 40. Rgc1 h4 41. gxh4 Qh3 42. Rg1 Qxh4 43. Rg3 Qe4 44. Rxc7 Qb1+ 45. Rg1 Qxb5-/+

32... Qxd7??


痛恨のメイト見落とし。これでゲームは怪しくなります。32... Nxg3+!! 33. Rxg3 Qxf1+ 34. Rg1 Qxg1+ 35. Kxg1 Rc1++-

33. Qxc2 Nf6



なんと白が駒得になりました。ただし、ここから多少ピースを捌けば、黒のアタックチh3ャンスは完全に消滅すると思い込んだのは、楽観的過ぎました。

34. Qc4 e4 35. Bc3?


私の残り時間はあと4分。安全に行くならばこの手だろうと、さほど時間をかけずにこの手を選んだのが大失敗でした。しかし、どれほどの残り時間があれば、このポジションでの最善手を見つけられたでしょうか。

a) 35. Rd1? Ng4! (f2 をナイトで単純に取ればメイトになるのが、この形でのキモです!) 36. Rdf1 Re5!-+
2) 35. Rc1? Qh3! 36. Qf7 Re5!-/+ やはり、これもうまくいきません。

c) 35. Ra1!! (試合後、これ以外は白が良くならないとコンピュータが評価し、最初は理解不能でした。しかし、丁寧に1人で駒を並べて考え、上記の変化を見つけたことで、ようやくこのポジションの本質が見えてきました。) 26... Ng4 (26... Qh3? 27. Qf7! (ルークがa1 にいると、Re8-Re5 が指せないのがポイント!) 27... Rc8 28. Bc3 Rf8 29. Qxc7+- ) 36. Ra2


Analysis Diagram 2

このようにf2 のポーンの守りを、縦から横に切り替え、ルークをアクティブに使えるようにするのが白の正しいアイディアでした。しかし、g7-a1 のダイアゴナルがある以上、35. Ra1!! とはなかなか指しづらいでしょう。36... Qf5 37. Bc3 Nxh2! 38. Bxg7+ Kxg7 39. Qxc7+ Kg8 40. Qf4 Qe6 41. Rc2+/=

35... Ng4! 36. Bxg7+ Kxg7



恥ずかしながら、このポジションに到達しても、まだ私は白にチャンスがあると思っていました。

37. Qc3+


ここはクイーンを交換してしまおうかとも思いましたが、それもやはりうまくいきません。37. Qd4+ Qxd4 38. exd4 Re6 39. h3 g5!-+ (この難解なアイディアを、Lyell が時間の少ない中、見つけられたかは疑問ですが...)

37... Kh6 38. Qc5 b6 39. Qc6 Qxc6 40. bxc6 Re5-+



時間の増える40手目、私は自分の手を指して一安心しましたが、Lyell もギリギリまで考え、この手を指しました。私は増えた30分で読みを再開しますが、すでにポジションが終わっていることに気づくのに、さほど時間は必要ありません。クイーンを交換してしまえば、h2-h3 から簡単に追い返せると思ったナイトが、Re5-Rh5 を絡めることによって、g4 に居残ることになります。こうなっては、f2 のポーンをアタックされている白はひとたまりもありません。

41. h4 Rd5 42. Ra1 Nxf2+ 43. Kh2 Ng4+ 44. Kh3 Nxe3


白は仕方なくf2,e3 を捨てますが、完全にゲームオーバーです。

45. Rge1 Nc2 46. Red1 Rxd1 47. Rxd1 f2 48. g4 Ne3 49. g5+ Kh5 50. Rg1 fxg1=R 0-1



当然、ステールメイトになるはずもなく、ここでリザイン。痛い初戦の負けですが、非常に勉強させてもらいました。Lyell は2200台前半までレイティングを落としていますが、鋭いアタックのセンスを持ち、これまでIM ノームを2つ獲得しています。昨年の5月から負けがなかったとは言え、やはり侮れない相手でした。

9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265
9/29 15:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357

今日はHungarian Team Championship の試合があるため、私とMeszaros のゲームは16:30 スタートです。このベテランIM とはここまで2勝1敗。さすがにダブルブッキングで負けたくはありません。黒を持ちますが、なんとかここで勝って、ふりだしに戻したいところです。


ブダペスト-ケチケメートのチケットがこっそり値上げしていました。インフレの波はこんなところにまで...


ケチケメートのシンボル的な学校。7か月前に見た時と比べて、てっぺんが塗り替えられているような(笑)


隣は空いていますので、大会中遊びに来たい人はいつでもどうぞ~。

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