2013/09/24

CAISSA 2013 September IM 3rd round - Strategical Domination -


ケチケメートも秋の装いに移り変わりつつあります。

早くも1/3 が終わる3日目です。Bye を入れて13R あったFirst Saturday に比べれば、やはり大会のテンポは早く感じますね。オーストラリアのBird, A に白を持ち、今日こそ勝ちたい一戦を迎えます。

Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Bird, A (AUS, 2203)
CAISSA 2013 September IM (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. Ne5!?



相手がa6 Slav を指すことは事前の研究でわかっていたので、この新しいラインを試してみることにします。

6... Nbd7 6. Bf4 Nh5!? 7. e3!?


ここは悩んだ末、ダブルビショップよりも展開を優先して勝負します。QGD でも、このようにf4 のビショップを取らせるアイディアは、いくつかのラインで存在します。

7... Nxf4 8. exf4 Nxe5 9. fxe5 e6 10. c5!?



将来的にdxc4-b5-Bb7-c5 とクイーンサイドを組まれてしまうと、展開のリードだけで対抗できるか自信がありませんでした。そこでポジションを閉じ、白マスビショップを抑え込むことと、b6 にナイトの飛び込むチャンスを作ることで勝負しようと決断します。

10... b6 11. b4 a5 12. Na4!


クイーンサイドを開こうとポーンを伸ばすのは黒のスタンダードのプランですが、ナイトがすでに盤上から消えているため、b6 のマスを抑えることができません。ややNc3-Na4-Nb6 に対する警戒が薄かったように思えます。

12...bxc5 13. bxc5 Be7 14. Bd3 O-O 15. O-O Ba6?!


一般的にこのようなポーンストラクチャーでは、白マスビショップは働きが悪いため、このように交換しにいくべきでしょう。しかし、ここで白マスビショップを消してしまうと、b7 のマスのコントロールが消えるため、bファイルを抑えた白が簡単にクイーンサイドから侵入するチャンスを作れてしまいます。

16. Rb1 Bxd3 17. Qxd3+/-



この後、白はb6 のマスを軸にクイーンサイドを完全にコントロールし、戦略的にはすでに勝勢です。

17... Ra7 18. Rb6 Qa8 19. Rfb1 Rc8 20. R1b3 g6 21. g3


黒からはカウンタープレーのチャンスがないため、早い段階でバックランクメイトを消す、キングのポジションを改善するなどの工夫を入れてから、クイーンサイドでの決定的な手の作り方を考えます。

21... Kg7 22. h4 h5 23. Qb1 Rac7 24. Qf1 Ra7 25. Kg2 Bd8 26. Qd3 Be7!?



試合中、b6 のルークはとられても、白の優位は揺るがないだろうと思っていました。しかし、今考え直してみると、具体的な勝ちのプランがよく分かりません。26... Bxb6 27. cxb6 (27. Nxb6!? Qb7 28. Nxc8 Qxc8 29. Rb6+/- これでもbファイルのコントロールで、白は優位をキープできています。) 27... Rb7 28. Nc5 Rcb8 29. Nxb7 Rxb7 30. a4 Rb8 31. Rb2 Qb7 32. Qc3 Ra8 33. Qc2 Ra6 34. Qc5 Ra8 35. Kf3 Ra6


Analysis Diagram 1

コンピュータは白勝勢評価ですが、ずっと黒に待たれた場合、どのように突破を図るのかが具体的には見えません。またこのポジションは考え直してみようと思います。

27. Rb2 Bd8?! 28. R6b3! Bc7 29. Nb6! Bxb6 30. Rxb6?


ここはひどい判断ミスでした。ナイトとビショップを交換するアイディアはOK です。しかし上記の変化のように、ルークを1つ交換した上でb6 にパスポーンを作る形は白勝ちが明らかではないですが、2つのルーク盤上に残していれば、cポーンとaポーンを狙うことで、白はすぐに突破を図ることができました。30. cxb6 Rb7 31. Rc3!+-

30... Kg8 31. a4 Kg7 32. Qf3 Rac7 33. Qf6+ Kh7 34. Kf3



最初はキングを適当な位置に置いたうえで、g3-g4 からキングサイドを開いて簡単に勝ちだと思っていました。しかし、このgファイルにルークを置くディフェンスがあるため、白もキングとルークの位置を決めるのが難しくなります。依然黒からはカウンタープレーがないため、丁寧に理想的な形をここから考えます。

34... Rg8 35. Kg2 Ra7 36. R2b3 Qe8? 37. Kg1?


37. Rb7! Rxb7 38. Rxb7 Rf8 39. Re7+- ここは7段目に侵入して簡単に勝ちでした。もちろんこのようなミスの可能性もあると考えていましたが、これを見落とすとはひどい...

37... Qd7 38. Rb2 Qc7 39. Kf1 Rc8 40. f3 Qe7!?


次にg3-g4 そしてQf6-Qg5 でようやくチャンスが作れるか、と思ったところでクイーン交換のオファー。クイーン交換後のエンドゲームは白勝ちのはずですが、このままではじり貧だと判断したのでしょう。

41. Qxe7 Rxe7 42. Ra6?!



さて、ここから怪しいダブルルークエンディングの始まりです。検討戦では、このポジションで手がおかしいと指摘されました。まずはキングサイドでの相手のカンウタープレーのチャンスをつぶしておくべきです。42. f4! Ra7 43. Rb7 Rca8 44. Ke2 Kg7 45. Kd3 Kf8 46. Rxa7 Rxa7 47. Rb6 Rc7 48. Kc3+- ここまで指してから、次にaポーンを落としにいけば、何の問題もなく白勝ちでした。

42... g5 43. hxg5 Kg6 44. Kf2 Kxg5 45. Ke3


ここはポーンを取る前にキングが上がる手かと思いましたが、45. Rxa5 f6 46. f4+ Kf5 47. exf6 Kxf6 48. Ra6+- と指すほうがシンプルだったでしょうか。こうしてみると、白キングが目指すべきマスはe3 ではなくf3 であるように見えます。

45... f6 46. exf6 Kxf6 47. Rbb6 Rec7 48. Rxa5 e5 49. Raa6 Kf5 50. a5 e4 51. Rb2?



この手がますますゲームを怪しくします。51. fxe4+! dxe4 52. Rb1 Kg4 53. Rh1! Rh8 54. Rb6 Kxg3 55. Rg1+! Kh3 56. Rg6+- g4 にマスを作る手は、g3 のポーンを落とすリスクがあると判断しましたが、しっかりディフェンスしつつa,c ファイルのパスポーンを使えば、白のほうがプロモーションのチャンスは早く作れます。このような点を丁寧に考えることができないのが、私のエンドゲームがまだ未熟な点でしょう。

51... Re7 52. Rab6 Rg8! 53. Rg2!?


ここは非常に難しいところです。hポーンを狙う手もありそうですが、すべて捌いた後のエンドゲームが勝てるかどうかはよくわかりません。53. Rh2!? Rxg3 54. Rxh5+ Kg6 55. Rxd5! (このポーン取りは見えませんでした!) 55... Rxf3+ 56. Ke2 Re6 57. a6 Ra3 58. Rd6 Rxd6 59. cxd6 Kf6 60. Rxc6 Ke6 61. d5+ Kd7 62. Rb6 Kc8 63. d7+ Kxd7 64.Rg6 Kc7 65. d6+ Kc6 66. Rh6


Analysis Diagram 2

また面倒なルークエンディングが出現しました。この後白はツークツワンクでe4 のポーンを取れそうですが、黒もルークを7段目に戻すといったディフェンスがあるので、ドローのチャンスもありそうです。

53... exf3+ 54. Kxf3 Re4?


後から振り返ればお粗末なミスですが、ゲーム中はありえる一手だと思っていました。54... Rg4 55. Rh2 Kg5 56. Rd2+/-

55. Rb4?



簡単な勝ちを見落とし、黒にドローチャンスを与えてしまいます。55. a6! Rxd4 56. a7 Rd3+ 57. Ke2 Ra3 58. Rb8+- Oh...

55... Rge8!?


試合後に私から指摘した最もシンプルなドローのプランは、55... h4! 56. a6 h3 57. Rh2 Rf8! (この手を彼は見つけられなかったようで、単純ですが効果的なメイトスレットになります。) 58. Rxh3 Kg5+ 59. Kg2 Re2+=

56. Ra4?!


56. Rf2!? Re3+ 57. Kg2+ Kg4! 58. Rf4+ Kg5 59. Ra4 (検討では別の手で白のチャンスが残るのではないかと話し合いましたが、コンピュータは巧みなルークのマヌーバリングによるドローを示します。) 59... Rb8! 60. Rf7 (60. a6 Rbb3 61. a7 Rxg3+ 62. Kf2 Kxf4 $1 63. a8=Q Rb2+= なんとクイーンを作らせてもルークを取ればパペチュアル!) 60... Rb2+ 61. Rf2 Rbb3 62. Kh2 Ra3 63. Ra2 Re2+ 64. Rxe2 Rxa4= ルークが3段目に2つ突入し、aファイルに回ることでaポーンを止めるディフェンスがありました。これは見つけるのが難しいため、実戦的には本譜の56. Ra4?! ではなく、56. Rf2!? を指すべきだったでしょう。

56... Re3+ 57. Kf2 Kg4!



痛恨の見落とし! これでh3 のマスを抑えられてしまったため、ドローに甘んじるほかありません。

58. a6


58. Ra1 R3e4 59. a6 Rxd4 60. Kf1 Rde4=

58... Rf3+ 59. Kg1 Re1+ 60. Kh2 Rff1 61. Rga2 Rh1+ 62. Kg2 h4 63. gxh4 Rhg1+ 64. Kf2 Rgf1+ 1/2-1/2



これまでもハンガリーでは、ここからドロー? ここから勝ち? ここから負け? といったゲームを多く繰り返してきましたが、今回もまた凹むドローです。まだまだ指し手がパリッとしませんが、今日のRudakov 戦こそと信じてプレーを続けていこうと思います。

9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357 1/2-1/2
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203 1/2-1/2
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265
9/29 15:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357


Photo by Sean

インドネシアのSean とは、一緒に食事をするのがケチケメートでの習慣になりつつあります。初挑戦のトルティーヤは大変おいしかったですし、前日以上に色々と面白い話を聞けて、こちらは大満足。あとは試合結果ですねぇ...


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