2013/09/12

FS 2013 September IM 5th and 6th rounds - Dynamic And Static -


今大会2回ある、1日2戦の日がやってきました。午前のラウンドはイングランドのFM, Mark Lyell、この1年ではCaro-Kann で2勝している相手です。今回はAdvanced Variation を外し、もう1つのメインであるPanov Botvinnik でくるだろうという予感が、見事に的中しました。

Lyell, M (FM, ENG, 2220) - Kojima, S (FM, JPN, 2357)
First Saturday 2013 September IM (5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Bg5 Ne4!?



Panov 対策は再び5... Nc6 に戻し、先月発見した新ラインを試します。

7. cxd5 Nxc3 8. bxc3 Qxd5 9. Nf3 Bg4 10. Qb3!?N


Lyell はこの手を盤上で発見したのでしょう。非常に実戦的だと思います。10. Be3 e5! 11. Be2 exd4 12. O-O Be7 13. h3 Rd8!?=

10... O-O-O 11. Bc4 Qe4+ 12. Kf1?



この手を見て、この試合は何としても勝たなくてはいけないと思いました。さすがにこのポーンサクリファイスはやりすぎです。12. Be2 Bxf3 13. gxf3 Qf5=

12... Bxf3 13. gxf3 Qxf3 14. Rg1 Na5! 15. Qb5 Nxc4 16. Qxc4+ Kb8


黒はポーンを取ったうえ、ビショップも取り返します。あとは黒マスビショップの展開さえ完了すれば、全く問題なく優勢でしょう。

17. Rg3 Qh1+ 18. Rg1 Qxh2?!



コンピュータも最初はこの手をベストと評価しますが、人間の感覚からすれば、ポーンをさらにとってオープンファイルを作ることは、展開の遅れている黒にとって良い作戦とは言えません。ここはもっと慎重に指すべきでした。18... Qd5! 19. Bf4+ Ka8 20. Qc7 Qd7 21. Qa5 b6-/+ もちろんこれも読んだのですが、ポーンを取った後の白のカウンタープレーを過小評価していました。

19. Qxf7 Qh3+ 20. Ke2 Qxc3 21. Rgc1! Qb2+ 22. Ke1 Qb4+ 23. Kf1?!


23. Bd2! Qxd4 24. Bf4+ Ka8 25. Rd1 Qc3+ 26. Ke2 Qc2+ 27. Ke1 Qc3+= このように進めば、黒はビショップを出す暇がなく、ドローで満足するしかなかったでしょう。

23... Qb5+ 24. Qc4 Qd7!?



当然、最初はクイーンを交換することをメインに考えていましたが、7段目、8段目へのルークの侵入がどうしても気になり、クイーンを残して戦うことにしました。24... Qxc4+ 25. Rxc4 b6! 26. Rac1 h6 27. Bf4+ Kb7 28. Rc7+ Ka6 29. Be5 このポジションの評価は非常に難しいでしょう。

25. Rab1 b6 26. d5! Qxd5?


これはさすがにやりすぎでした。しかし、7段目へのルークの侵入が気になり、ここはもうポーンを取るしかないとなぜか思い込んでいました。26... Kb7!? (これが面白いディフェンスで、あらかじめb8-h2 のダイアゴナルからよけることでチェックを外しておきます。) 27. a4 h6 28. Bf4 Qh3+

27. Qc7+ Ka8 28. Rd1! Qh1+ 29. Ke2 Qe4+ 30. Be3 Rb8 31. Rd8 Qb7 32. Rxb8+ Qxb8 33. Qc6+



これで白は、パペチュアルチェックによるドロー以上が確定します。私は黒マスビショップをどこで出せばよかったのかと頭をかしげていましたが、ゲームはまだ完全に終わったわけではありません!

33... Qb7 34. Qe8+ Qb8 35. Qc6+?! Qb7 36. Qe8+ Qb8 37. Qd7?!


37. Qa4!!+- 私たちはお互い、この手を完全に見落としていました。b6 取りをスレットにすると、黒には完全にディフェンスが存在しません。e3 に退いたビショップも、ここにきて最高の位置にいると言えます。

37... e5 38. Qd5+?



38. Qa4! 最後のチャンスでした。

38... Qb7 39. Qd8+ Qb8 40. Qd5+ Qb7 41. Qd8+ Qb8 1/2-1/2


3連勝中のMark にも勝てないようであれば、もはや勝てるところはありません。むぅ... 続いて午後のゲームへ。


Photo by Asada

Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Balazeka, M (FM, CRO, 2312)
First Saturday 2013 September IM (6)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 b6!?



Semi-Slav のAnti-Meran は羽生さんとのトレーニングも含め、かなりの高勝率を誇っていますが、この手は初体験です。dxc4-b5 とするメインのMeran に比べて派手さはありませんが、将来的に黒はc6-c5 から白マスビショップをアクティブに使うことを画策します。

7. Bd3 Bb7 8. O-O Be7 9. Rd1 Qc7 10. b3 O-O 11. Bb2 Rac8 12. Rac1 h6 13. Qe2!?


クイーンを中央に振り、一手待ってからe3-e4 を実行に移します。

13... Qb8!? 14. e4 dxe4 15. Nxe4 c5!?



これは黒の問題を分かりやすく解決します。15... Nxe4 16. Qxe4 Nf6 17. Qe2 Rfd8 18. c5!+/= というのが、このラインでの白のメインの作戦です。 本譜のようにセンターを素早く開いても白がやや優勢ですが、上記のラインのように白マスビショップの問題がないため、指しやすいのではないでしょうか。

16. Ne5!?


この手は白にアドバンテージをもたらさないとわかりつつ、リスクの低い展開を選びました。16. dxc5! Nxe4 17. Bxe4 Nxc5 18. Bc2+/=

16... Bxe4 17. Nxd7



17. Bxe4 Nxe5 18. dxe5 Nxe4 19. Qxe4 Rfd8= これが最初の私の読みで、これだけ駒を捌けばドローは堅いでしょう。しかし、黒の16... Bxe4 を見て、白が優勢になるのではないと思い、作戦を変更することを決めました。

17... Bxd3 18. Nxf6+ Bxf6 19. Rxd3 Rfd8 20. Rcd1


指した直後に20. d5!? もあるかと思いましたが、相手の次の手がくるまで、いや、これで白優勢のはずだと考えをまとめました。白にはクイーンサイドポーンマジョリティがあり、どのようにここからピースを捌いても、白にのみ勝ちのチャンスがあるゲーム展開になると読んだのです。ところが次の彼の一手は、そんな私の構想を完全に打ち砕くものでした。

20... b5!!



はっきり言えば、愕然としました。このようにポーンを崩されては、クイーンサイドの白のポーンはターゲットにしかなりません。

21. dxc5?


ここで冷静になれば、まだ勝負はわからなかったでしょう。ここが勝負どころだとは承知していながら、正しい手が見つけられませんでした。21. h3! bxc4 22. bxc4 Qb4 (この手を読み、黒が良いと判断しましたが、白には以下のような返しがあります。) 23. Rb3! Qa4 24. Ra3! Qb4 25. Rb3=

21... Rxd3 22. Rxd3 bxc4 23. Re3



試合後に、なぜ23. Rg3 と指さなかったのかと彼に尋ねられました。当然私もそれが頭にありましたが、23. Rg3 c3! 24. Ba3 (24. Bxc3 Rxc5-/+ (ここにきて痛いバックランクの弱さ!)) 24... Bd4 25. Rd3 e5-/+ このように進めば、黒の優勢は明らかです。本譜では涙をのんで1ポーンを捨てますが、その後がひどすぎました。

23... Bxb2 24. Qxb2 Rxc5 25. Rg3??


今思えば、なぜこの一手を挟んだのか... 25. h3 cxb3 26. axb3 こうして1ポーンダウンを耐えるほかありません。

25... c3!-+ 26. Qc2 Qd6 27. Rd3?? Qxd3 0-1



c3 にパスポーンが突き刺さっては、もう粘るのは難しいですが、それにしても最後のブランダーもひどいものです。前半6試合ですでにノームのチャンスが消滅したので、残り6戦は多少気楽に指そうと思います。(もちろん真剣です!)13日の金曜日が私の休憩日ですので、今日はその前、最後の試合です。初めてのチェコ人相手にどのようなチェスになるか、40年以上の経験を持つマスターに勉強させてもらおうと思います。

9/07 14:30 FM Kojima Shinya 2357 - IM Szalanczy Emil 2261 1-0
9/08 16:00 Verstraeten Rein 2298 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/09 16:00 IM Szeberenyi Adam 2320 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/10 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Sean Winshand Cuhendi 2338 1/2-1/2
9/11 10:00 FM Lyell Mark 2220 - FM Kojima Shinya 2357 1/2-1/2
9/11 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Blazeka Matej 2312 0-1
9/12 16:00 IM Pribyl Josef 2314 - FM Kojima Shinya 2357
9/13 Bye
9/14 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Fayard Alain 2259
9/15 16:00 Rudakov Aleksandr 2209 - FM Kojima Shinya 2357
9/16 10:00 FM Kojima Shinya 2357 - Dokuchaev Andrey 2239
9/16 16:00 IM Farago Sandor 2254 - FM Kojima Shinya 2357
9/17 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - Moeldner Juergen 2273


この日は雨のブダペスト。夏ももう終わりです。


夕飯は北海道から来た大学生とチェスをしながら。

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