4日目の今日から、会場ではチェス書籍の販売が始まりました。試合中は当然読んではいけませんが、それ以外の時間であればプレーヤーは中身を好きにチェックすることができます。私もすでに気になるものをピックアップしているので、早速拝見してみようと思います。
こちらはハンガリーのチェス雑誌です。ハンガリーの女子トッププレーヤー、GM Hoang Thanh Trang が表紙を飾ります。日本でもこれぐらいチェスがポピュラーになれば、女子プレーヤーが特集されたりするでしょうか(笑)
Queen's Gambit Declined Semi-Tarrasch! 近年の流行であることは知っていましたが、自分の試合で出現したことはこれまで一度もなく、研究も最低限でした。ポイントとなる手だけは知っていたので、それを頭に置いたうえで、どのようなセットアップにするかを考えます。
本譜が最もスタンダードな手ですが、 11. Rc1!? と指して、 Bf1-Bd3-Bb1 と素早くビショップを組み替えられるようにするアイディアもあるようです。
私はこの試合、オープンファイルは抑えずにセンターで対抗し、さらにはクイーンを早い段階でキングサイドに振ってダイナミックに戦おうと考えました。
ここでビショップをどちらに退くかは、白にとって大きな作戦の分かれ目です。 16. Bd3!? ( かつてこのラインを紹介してくれた馬場さんからは、このようにビショップを退いたのち、 d4-d5 からポーンを突き捨てて、 e4-e5 と突くプランがあることを教わりました。しかし、そのアイディアが効果的に働く形なのか自信が持てず、ビショップは b3-f7 のダイアゴナルをキープすることに決めます。) 16... Rc3?! 17. d5! exd5 18. e5! Qc7 19. Nd4 a6 20. Nf5!+/-
17... Rfd8 18. e5 Nd5 19. Ng5 h6 20. Ne4 は私の考えていた変化で、黒にd5 のアウトポストを与えますが、白もナイトを好位置にマヌーバリングし、黒キングへのチャンスを作ることでバランスは取れているでしょう。
この試合は早めに仕掛けず、センターのブレイクはキープしようと思ったのが大きな作戦ミスでした。次に黒にルークをまわされては、 d4-d5 と突くチャンスは失われてしまうため、白が仕掛けるべきタイミングはここしかありませんでした。 18. d5! exd5 19. e5 Ne4 20. Bxd5 Bxd5 21. Rxd5 Nc3 22. Rd4 Rfd8 23. Rg4 と進めば、白は特に大きな問題を抱えないまま、両者にチャンスのある展開を続けられたでしょう。
黒の1つの武器は、クイーンサイドのポーンマジョリティです。黒はこれを押し進めることで将来的にパスポーンを作るチャンスを拡大し、さらにはcファイルからの侵入を見せておきます。
私は黒のプランは a7-a5 から、2つのポーンを押し進めてくるのだと勘違いしていました。黒はシンプルにc3 のマスを抑え、 Rc8-Rc3 と侵入することを狙います。これにより、ルークを1つ交換できれば、白の将来的なキングサイドアタックのチャンスは激減しますし、交換を避けられても2つのルークをcファイルに重ねられれば満足でしょう。 b5-b4 を見て、私は初めてゆっくり指している場合でないことを悟ります。
このポーンを突く手はd5 に永久的な弱点を作ると同時に、d4 のポーンを固定してしまうので良くないことは重々承知の上でした。しかし、これ以外に黒のクイーンサイドに抵抗する方法がわからず、リスクを背負って仕掛けることにします。
23... Rxe3?! 24. fxe3 Nd5 25. Qe4 g6 26. Rf2 ならば、まだ黒がやや指しやすいとは思いますが、白はダブルポーンによってd4 を守り、開いたfファイルから黒キングへの攻撃のチャンスを作ることができます。
最も白にとって厳しいのは、 24... f5! 25. Re1 (25. exf6 Nxf6 26. Re5 (26. Re3? Qc7+!-+ これはc2 のビショップが落ちるのでだめです。) 26... Bxf3 27. gxf3 Rxf3-+ こちらも見事にポーンが落ちたうえ、何も代償がありません。) 25... Rdc8-/+ と進める変化です。本譜と比較しても、白はキングサイドでの攻撃のチャンスを作れていません。
26. Bb3 と最初は指すつもりでしたが、 Nd5-Ne7-Nf5 のマヌーバリングがあることに気づき、b1-h7 のダイアゴナルは抑えたままにすることにします。
クイーンを交換することは、キングサイドの危険性を減らし、クイーンサイドのポーンマジョリティを生かせる展開になるため、黒としては正しい戦略でしょう。私もそれはわかっていましたが、クイーン交換を避けることはできません。27. Qh5? Qa5! (a2 のポーンを狙うだけなく、隠れたタクティクスが存在ます!) 28. Bb3? Nf6!-+
このようにナイトをc5 のマスまで運べば、多少は対抗できると最初は考えました。しかし、d5 のアウトポストとd4 のポーンの弱さ、そしてクイーンサイドのポーンマジョリティ全てを補って戦うのには、ナイト1つでは荷が重すぎました。
ここは30... Ne7! からf5 に飛ばれるほうが、白としては厳しかったかもしれません。
Rudakov のチェスは非常に丁寧かつ正確です。ここで白マスビショップを交換しておけば、白のaポーンを狙うのはさらにたやすくなります。
もちろんこのように2つ目のルークを侵入させても黒が勝てますが、よりシンプルなのは先にf2 を取っておく変化でした。35... Rxf2 36. Rb1 Nd5 37. Nc5 Rfxa2-+ こうしておけば、本譜のNb7-Nc5-Nd3 のディフェンスがなくなり、黒は即ポーンアップでした。
ナイトをうまく運んでf2 は守りましたが、d4 のポーンも弱いため、やはり苦しい展開が続きます。37... Rxf2? 38. Nd3! Rfd2 39. Nxb4 Nxb4 40. Rxb4 g6 41. Rb8+ Kg7 42. Rb7 こう進めば、白は最も大きな問題を解決し、やや劣勢ながらもゲームを続けられるでしょう。
ようやく時間が増えましたが、はたして白はどのように、黒のパスポーンに対処すれば良いでしょうか。41. Rb1 Rxf3+ 42. gxf3 Kd8-+ これでも完全にジリ貧です。もちろん本譜でも苦しいことは承知していましたが、Rudakov がどのように手を作るか注目すべくゲームを続けます。
彼の答えはルークを2つとも交換するというシンプルなもの! こうしてみれば明らかですが、このような単純なナイトエンディングの経験が皆無である私にとって、こうしてピースを捌いて簡単に勝ちという確信は、黒を持ってもすぐに出てこなかったでしょう。
黒のキングは、ベストのスクウェアに到達しました。b2 or b1 を死守し続けなければならない白にとって、あとはキングサイドのポーンが崩壊するのを待つのみです。
First Saturday では後半で崩れたRudakov ですが、今大会はここまで3.5/4 と最高のスタートを切っており、最もノームに近い位置にいます。もう1人の強豪、Sean は2.5/4 とあまり振るわず、ノーム獲得にはもうほとんどポイントを落とせない状況です。私もこの面子ならばノームを取れる可能性高いと書いたのは、つい1週間前であるような気がするんですけどね...
9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357 1/2-1/2
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203 1/2-1/2
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209 0-1
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265
9/29 15:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357
試合後には、再びAdam, Sean と3人で食事へ。2日前の晩にAdam が、でかい肉を食べさせる店があると教えてくれたので、そちらに足を運んでみました。バーバリアンと名付けられたメニューは、噂通りの巨大な肉塊がメインで、その大きさに思わず苦笑してしまうほどです。そしてこの夜も真面目な話半分、おふざけ半分で(詳しくはとても書けませんが、Sean は相当ダメな15歳ですw)、チェスプレーヤーたちの夜は更けていくのでした。
こちらはハンガリーのチェス雑誌です。ハンガリーの女子トッププレーヤー、GM Hoang Thanh Trang が表紙を飾ります。日本でもこれぐらいチェスがポピュラーになれば、女子プレーヤーが特集されたりするでしょうか(笑)
Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Rudakov, A (RUS, 2209)
CAISSA 2013 September IM (4)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c5 5. cxd5 Nxd5!?
CAISSA 2013 September IM (4)
Queen's Gambit Declined Semi-Tarrasch! 近年の流行であることは知っていましたが、自分の試合で出現したことはこれまで一度もなく、研究も最低限でした。ポイントとなる手だけは知っていたので、それを頭に置いたうえで、どのようなセットアップにするかを考えます。
6. e4 Nxc3 7. bxc3 cxd4 8. cxd4 Bb4+ 9. Bd2 Bxd2+ 10. Qxd2 O-O 11. Bc4
本譜が最もスタンダードな手ですが、 11. Rc1!? と指して、 Bf1-Bd3-Bb1 と素早くビショップを組み替えられるようにするアイディアもあるようです。
11... Nd7 12. O-O b6 13. Rfe1 Bb7 14. Rad1 Nf6 15. Qf4
私はこの試合、オープンファイルは抑えずにセンターで対抗し、さらにはクイーンを早い段階でキングサイドに振ってダイナミックに戦おうと考えました。
15... Rc8 16. Bb3!?
ここでビショップをどちらに退くかは、白にとって大きな作戦の分かれ目です。 16. Bd3!? ( かつてこのラインを紹介してくれた馬場さんからは、このようにビショップを退いたのち、 d4-d5 からポーンを突き捨てて、 e4-e5 と突くプランがあることを教わりました。しかし、そのアイディアが効果的に働く形なのか自信が持てず、ビショップは b3-f7 のダイアゴナルをキープすることに決めます。) 16... Rc3?! 17. d5! exd5 18. e5! Qc7 19. Nd4 a6 20. Nf5!+/-
16... Qc7 17. Qh4 h6!
17... Rfd8 18. e5 Nd5 19. Ng5 h6 20. Ne4 は私の考えていた変化で、黒にd5 のアウトポストを与えますが、白もナイトを好位置にマヌーバリングし、黒キングへのチャンスを作ることでバランスは取れているでしょう。
18. h3?!
この試合は早めに仕掛けず、センターのブレイクはキープしようと思ったのが大きな作戦ミスでした。次に黒にルークをまわされては、 d4-d5 と突くチャンスは失われてしまうため、白が仕掛けるべきタイミングはここしかありませんでした。 18. d5! exd5 19. e5 Ne4 20. Bxd5 Bxd5 21. Rxd5 Nc3 22. Rd4 Rfd8 23. Rg4 と進めば、白は特に大きな問題を抱えないまま、両者にチャンスのある展開を続けられたでしょう。
18... Rfd8! 19. Rd2 b5!
黒の1つの武器は、クイーンサイドのポーンマジョリティです。黒はこれを押し進めることで将来的にパスポーンを作るチャンスを拡大し、さらにはcファイルからの侵入を見せておきます。
20. Re3 Qb6 21. Kh2 b4!
私は黒のプランは a7-a5 から、2つのポーンを押し進めてくるのだと勘違いしていました。黒はシンプルにc3 のマスを抑え、 Rc8-Rc3 と侵入することを狙います。これにより、ルークを1つ交換できれば、白の将来的なキングサイドアタックのチャンスは激減しますし、交換を避けられても2つのルークをcファイルに重ねられれば満足でしょう。 b5-b4 を見て、私は初めてゆっくり指している場合でないことを悟ります。
22. Bc2 Rc3 23. e5?!
このポーンを突く手はd5 に永久的な弱点を作ると同時に、d4 のポーンを固定してしまうので良くないことは重々承知の上でした。しかし、これ以外に黒のクイーンサイドに抵抗する方法がわからず、リスクを背負って仕掛けることにします。
23... Nd5!
23... Rxe3?! 24. fxe3 Nd5 25. Qe4 g6 26. Rf2 ならば、まだ黒がやや指しやすいとは思いますが、白はダブルポーンによってd4 を守り、開いたfファイルから黒キングへの攻撃のチャンスを作ることができます。
24. Re4 Rdc8?!
最も白にとって厳しいのは、 24... f5! 25. Re1 (25. exf6 Nxf6 26. Re5 (26. Re3? Qc7+!-+ これはc2 のビショップが落ちるのでだめです。) 26... Bxf3 27. gxf3 Rxf3-+ こちらも見事にポーンが落ちたうえ、何も代償がありません。) 25... Rdc8-/+ と進める変化です。本譜と比較しても、白はキングサイドでの攻撃のチャンスを作れていません。
25. Rg4 Kf8 26. Ne1
26. Bb3 と最初は指すつもりでしたが、 Nd5-Ne7-Nf5 のマヌーバリングがあることに気づき、b1-h7 のダイアゴナルは抑えたままにすることにします。
26... Qd8! 27. Qxd8+
クイーンを交換することは、キングサイドの危険性を減らし、クイーンサイドのポーンマジョリティを生かせる展開になるため、黒としては正しい戦略でしょう。私もそれはわかっていましたが、クイーン交換を避けることはできません。27. Qh5? Qa5! (a2 のポーンを狙うだけなく、隠れたタクティクスが存在ます!) 28. Bb3? Nf6!-+
27... Rxd8 28. Nd3
このようにナイトをc5 のマスまで運べば、多少は対抗できると最初は考えました。しかし、d5 のアウトポストとd4 のポーンの弱さ、そしてクイーンサイドのポーンマジョリティ全てを補って戦うのには、ナイト1つでは荷が重すぎました。
28... Bc6 29. Bb3 a5 30. Nc5 Nc7!?
ここは30... Ne7! からf5 に飛ばれるほうが、白としては厳しかったかもしれません。
31. Rd1 Bd5!
Rudakov のチェスは非常に丁寧かつ正確です。ここで白マスビショップを交換しておけば、白のaポーンを狙うのはさらにたやすくなります。
32. Rg3 Bxb3 33. Nxb3 Rc2! 34. Nxa5 Ra8 35. Nb7 Raxa2?!
もちろんこのように2つ目のルークを侵入させても黒が勝てますが、よりシンプルなのは先にf2 を取っておく変化でした。35... Rxf2 36. Rb1 Nd5 37. Nc5 Rfxa2-+ こうしておけば、本譜のNb7-Nc5-Nd3 のディフェンスがなくなり、黒は即ポーンアップでした。
36. Rb1 Nd5 37. Nc5 Rc4!-+
ナイトをうまく運んでf2 は守りましたが、d4 のポーンも弱いため、やはり苦しい展開が続きます。37... Rxf2? 38. Nd3! Rfd2 39. Nxb4 Nxb4 40. Rxb4 g6 41. Rb8+ Kg7 42. Rb7 こう進めば、白は最も大きな問題を解決し、やや劣勢ながらもゲームを続けられるでしょう。
38. Rf3 Ke7 39. Rd1 Rc3! 40. Kg3 Raa3! 41. Rdd3
ようやく時間が増えましたが、はたして白はどのように、黒のパスポーンに対処すれば良いでしょうか。41. Rb1 Rxf3+ 42. gxf3 Kd8-+ これでも完全にジリ貧です。もちろん本譜でも苦しいことは承知していましたが、Rudakov がどのように手を作るか注目すべくゲームを続けます。
41... Rxd3! 42. Rxd3 Rxd3+! 43. Nxd3 Kd7-+
彼の答えはルークを2つとも交換するというシンプルなもの! こうしてみれば明らかですが、このような単純なナイトエンディングの経験が皆無である私にとって、こうしてピースを捌いて簡単に勝ちという確信は、黒を持ってもすぐに出てこなかったでしょう。
44. Kf3 Kc6 45. Ke2 Kb5 46. Nb2 b3 47. g3 Kb4 48. Kd2 Ka3 49. Kc1 Ka2 50. Nd1 Ka1
黒のキングは、ベストのスクウェアに到達しました。b2 or b1 を死守し続けなければならない白にとって、あとはキングサイドのポーンが崩壊するのを待つのみです。
51. f4 g6 52. Nb2 Nc3 53. Nc4 Nb5 54. d5 exd5 55. Nb2 Nc3 0-1
First Saturday では後半で崩れたRudakov ですが、今大会はここまで3.5/4 と最高のスタートを切っており、最もノームに近い位置にいます。もう1人の強豪、Sean は2.5/4 とあまり振るわず、ノーム獲得にはもうほとんどポイントを落とせない状況です。私もこの面子ならばノームを取れる可能性高いと書いたのは、つい1週間前であるような気がするんですけどね...
9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357 1/2-1/2
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203 1/2-1/2
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209 0-1
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265
9/29 15:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357
試合後には、再びAdam, Sean と3人で食事へ。2日前の晩にAdam が、でかい肉を食べさせる店があると教えてくれたので、そちらに足を運んでみました。バーバリアンと名付けられたメニューは、噂通りの巨大な肉塊がメインで、その大きさに思わず苦笑してしまうほどです。そしてこの夜も真面目な話半分、おふざけ半分で(詳しくはとても書けませんが、Sean は相当ダメな15歳ですw)、チェスプレーヤーたちの夜は更けていくのでした。
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