前日にクロアチアのBalazeka に敗れたことで、9月のFS でのIM ノーム獲得はなくなりました。それによるショックはさほどないのですが、ここ数日は試合でしか外出しない日が続いていたため、たまには気分転換に外に出ることにしました。目指すは、戻ってきてまだ一度も見ていないドナウ川です。
ところがドナウの一歩手前、お土産屋の並ぶヴァーチ通りにて、ハンガリー衣装を着たお姉さんに店に寄るよう声をかけられます。本当ならば一刻も早くドナウのきらめきを見たいところでしたが、声をかけられたのであれば仕方ありません。チェスセットの並ぶ馴染みの地下のショップへと足を運びます。
こちらのショップではハンガリーの手作りチェスセットを販売しており、デザインは前に見に来た時と変わっていました。こいつは結構いかついですね(笑)
予期せぬ寄り道がありましたが、なんとか久々のドナウに到着です。川沿いに歩きつつ、アンダンテや試合会場のあるペスト側から、ブダ側の街並みや、ゲッレールトの丘、王宮などを見てきました。15日には懐かしの日本人学校での運動会に誘われているので、近いうちにブダ側にも渡ることになりそうです。それでは棋譜解説へ。この日は初のチェコ人との対戦です。
前回、IV League での大山くんのとの試合では不発に終わりましたが、今回もこの3... a6 を試します。(3... Nf6 とどちらを指すかは迷った末に盤上で決めましたが)この手のアイディアは、メインラインの3... Bg4 4. h3 Bh5?! 5. exd5 cxd5 6. Bb5+ Nc6 7. g4 Bg6 8. Ne5!+/= と比較し、白がBf1-Bb5 と指す狙いを先に防いでおくことにあります。
白から早々にセンターのテンションを崩してくれれば、黒はc6-c5 からのブレイクがやりやすくなります。
指された瞬間はまさかと思いましたが、f3 をクイーンで守りつつ、ロングキャスリングの準備を整えようということなのでしょう。しかし、c3 のナイトを放置したままなので、French Winawer の形にして戦うアイディアを思いつき、実行してみることにしました。
c3 のポーンを固定して、長期的なターゲットにできるようにします。
すぐにクイーンサイドから仕掛けるプランも考えましたが、その場合、白はポーンを捨てて若干の代償があると思いました。そこで先にhファイルを開いておき、多少なりとも相手キングにプレッシャーをかけられるようにしておきます。12... Qa5 13. Bd2 Qa4 14. O-O Bxc2 15. Ne1
この辺りで弱気ドローオファーも考えましたが、今回はそれがことごとくうまくいっていないうえ、日本から妥協するなとも言われているので、この試合は気合で勝ちにいくことにします。cファイルを開くことは、白のダブルポーンを解消させてしまったとしても、黒にメリットがあるはずです。
私が最も恐れいたのは、f4-f5 からのブレイクですが、このタイミングでは、そこまで大きな痛手にはならなそうです。18. f4 cxd4 19. f5 Bh7=
コンピュータは単純にcファイルを取って黒優勢との評価を下しますが、私はクイーンを交換しての安全な作戦をチョイスします。19... Rc8 20. f4 Rc3-/+
少し席を立って戻ると、この不可思議な手が指されていました。クイーン交換後も私がメインで考えていたのは、f2-f4-f5 です。22. f4 Be4!= 白マスビショップの行く場所は少し困るように見えますが、d5 のマスが空けば、そこはナイトが次に飛ぶ絶好のマスとなります。
23... f6 24. exf6 gxf6 25. Bf4+ Kc6= と指しても、白はナイトの行き場に困っていますが、あまりダブルビショップを持つ白に、ポジションを開かせたくはありませんでした。ここは大人しくルークを一度避け、Ne7-Nc6, Re8-Rb8 を狙います。白はこうされては苦しいので、本譜のようにダブルビショップを諦めるしかないでしょう。
このf4 をアタックする手が見えたため、g4-g5 から固められることがわかっても、安心してf7-f5 を指すことができました。そしてここからは、再びクイーンサイドに注目します。
互いにポーンを取り合ってパスポーンを作りましたが、より進んでいるうえに孤立ではないパスポーンを持つ黒が優勢なのは疑いようがありません。
バッドビショップも解消し、いよいよ優勢に確信が持てるようになりました。しかし、ここからの勝ちのプランに自信が持てず、なぜか余計なことをごちゃごちゃ考えてしまいました。
34... c3! 35. Rb7+ Ke8 36. Rxe7+ Kxe7 37. Nb4 Kd7 38. a5 Kc7 -/+ e4 のナイトは脅かされる心配がないため、6段目まではとっととポーンを突き進めておくべきでした。私はhファイルからの侵入を見せることで確実にルークを交換できると読みましたが、白はその間にaポーンを5段目まで進めることができるのが厄介です。
時間が増えた直後、ラッキーなミスが相手から飛び出しました。正直、この時点で単純にルークを交換された場合、勝ち切れるか自信はありませんでした。42. Rxh8! Rxh8 43. Ra3! (5段目までポーンが進んでいるため、このようにルークのサポートを得られれば、十分に反撃の材料となります。) 43... c3 44. Ra1 (44. Ra2 Nd2 45. Nb4 Nf3+ 46. Kg2 Nxd4=/+) 44... Nd2 45. Rc1 Ra8 46. Nc7 Rxa5 47. Rxc3 Ke7 これでコンピュータはやや黒良し評価ですが、f4, d4 といったポーンをしっかり狙えるのかは疑問です。
指されて1分ほど考え、全く抵抗になっていない駄目なアイディアであることに気が付きました。30分の増えた猶予があるため、間違いなく勝ちであると読み切り、決着をつけます。
彼が見ていなかったのはこの手でしょう。ナイト、ルーク、パスポーンによる芸術的なコンビネーションです! 白はプロモーションを止めるためには、ルークを捨てざるをえません。
1970年代には、Spassky, Tal, Bronstein, Taimanov らとも対戦経験のあるベテランマスターでしたが、この試合はなんとか私に軍配が上がりました。70歳を目前にした高齢でありながら、こうしたプレーができるということには本当に感服します。私たちは果たしていつまで、現役でプレーできますかね(笑)
9/07 14:30 FM Kojima Shinya 2357 - IM Szalanczy Emil 2261 1-0
9/08 16:00 Verstraeten Rein 2298 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/09 16:00 IM Szeberenyi Adam 2320 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/10 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Sean Winshand Cuhendi 2338 1/2-1/2
9/11 10:00 FM Lyell Mark 2220 - FM Kojima Shinya 2357 1/2-1/2
9/11 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Blazeka Matej 2312 0-1
9/12 16:00 IM Pribyl Josef 2314 - FM Kojima Shinya 2357 0-1
9/13 Bye
9/14 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Fayard Alain 2259
9/15 16:00 Rudakov Aleksandr 2209 - FM Kojima Shinya 2357
9/16 10:00 FM Kojima Shinya 2357 - Dokuchaev Andrey 2239
9/16 16:00 IM Farago Sandor 2254 - FM Kojima Shinya 2357
9/17 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - Moeldner Juergen 2273
First Saturday 2013 September IM
さて、今日13日は私がbye の日です。少したまった仕事を片しつつ、試合も少し見学に行き、夜には友人のコンサートに行くつもりです。日本では今週末、チーム選手権が開催されますので、お互い、チェスを楽しむ週末になると良いですね!
ところがドナウの一歩手前、お土産屋の並ぶヴァーチ通りにて、ハンガリー衣装を着たお姉さんに店に寄るよう声をかけられます。本当ならば一刻も早くドナウのきらめきを見たいところでしたが、声をかけられたのであれば仕方ありません。チェスセットの並ぶ馴染みの地下のショップへと足を運びます。
こちらのショップではハンガリーの手作りチェスセットを販売しており、デザインは前に見に来た時と変わっていました。こいつは結構いかついですね(笑)
予期せぬ寄り道がありましたが、なんとか久々のドナウに到着です。川沿いに歩きつつ、アンダンテや試合会場のあるペスト側から、ブダ側の街並みや、ゲッレールトの丘、王宮などを見てきました。15日には懐かしの日本人学校での運動会に誘われているので、近いうちにブダ側にも渡ることになりそうです。それでは棋譜解説へ。この日は初のチェコ人との対戦です。
Pribyl, J (IM, CZE, 2314) - Kojima, S (FM, JPN, 2357)
First Saturday 2013 September IM (7)
1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 a6!?
First Saturday 2013 September IM (7)
前回、IV League での大山くんのとの試合では不発に終わりましたが、今回もこの3... a6 を試します。(3... Nf6 とどちらを指すかは迷った末に盤上で決めましたが)この手のアイディアは、メインラインの3... Bg4 4. h3 Bh5?! 5. exd5 cxd5 6. Bb5+ Nc6 7. g4 Bg6 8. Ne5!+/= と比較し、白がBf1-Bb5 と指す狙いを先に防いでおくことにあります。
4. d4 Bg4 5. h3 Bh5 6. e5!?
白から早々にセンターのテンションを崩してくれれば、黒はc6-c5 からのブレイクがやりやすくなります。
6... e6 7. Be3 Nd7 8. Qe2!?
指された瞬間はまさかと思いましたが、f3 をクイーンで守りつつ、ロングキャスリングの準備を整えようということなのでしょう。しかし、c3 のナイトを放置したままなので、French Winawer の形にして戦うアイディアを思いつき、実行してみることにしました。
7... Bb4 9. a3 Bxc3+ 10. bxc3 b5!?
c3 のポーンを固定して、長期的なターゲットにできるようにします。
11. g4 Bg6 12. Bg2 h5!?
すぐにクイーンサイドから仕掛けるプランも考えましたが、その場合、白はポーンを捨てて若干の代償があると思いました。そこで先にhファイルを開いておき、多少なりとも相手キングにプレッシャーをかけられるようにしておきます。12... Qa5 13. Bd2 Qa4 14. O-O Bxc2 15. Ne1
13. O-O hxg4 14. hxg4 Qa5 15. Bd2 Qa4 16. Ne1 Ne7 17. Bg5 c5
この辺りで弱気ドローオファーも考えましたが、今回はそれがことごとくうまくいっていないうえ、日本から妥協するなとも言われているので、この試合は気合で勝ちにいくことにします。cファイルを開くことは、白のダブルポーンを解消させてしまったとしても、黒にメリットがあるはずです。
18. Be3
私が最も恐れいたのは、f4-f5 からのブレイクですが、このタイミングでは、そこまで大きな痛手にはならなそうです。18. f4 cxd4 19. f5 Bh7=
18... cxd4 19. cxd4 Qc4!?
コンピュータは単純にcファイルを取って黒優勢との評価を下しますが、私はクイーンを交換しての安全な作戦をチョイスします。19... Rc8 20. f4 Rc3-/+
20. Qxc4 bxc4 21. Rb1 O-O-O 22. f3?!
少し席を立って戻ると、この不可思議な手が指されていました。クイーン交換後も私がメインで考えていたのは、f2-f4-f5 です。22. f4 Be4!= 白マスビショップの行く場所は少し困るように見えますが、d5 のマスが空けば、そこはナイトが次に飛ぶ絶好のマスとなります。
22... Kc7! 23. Bg5 Rde8!
23... f6 24. exf6 gxf6 25. Bf4+ Kc6= と指しても、白はナイトの行き場に困っていますが、あまりダブルビショップを持つ白に、ポジションを開かせたくはありませんでした。ここは大人しくルークを一度避け、Ne7-Nc6, Re8-Rb8 を狙います。白はこうされては苦しいので、本譜のようにダブルビショップを諦めるしかないでしょう。
24. Bxe7 Rxe7 25. f4 f5! 26. g5 Rh4!?
このf4 をアタックする手が見えたため、g4-g5 から固められることがわかっても、安心してf7-f5 を指すことができました。そしてここからは、再びクイーンサイドに注目します。
27. c3 Nb6! 28. Nc2 Na4 29. Nb4 Nxc3 30. Nxa6+ Kd7
互いにポーンを取り合ってパスポーンを作りましたが、より進んでいるうえに孤立ではないパスポーンを持つ黒が優勢なのは疑いようがありません。
31. Rb2 Bh5! 32. Bf3 Bxf3 33. Rxf3 Ne4-/+
バッドビショップも解消し、いよいよ優勢に確信が持てるようになりました。しかし、ここからの勝ちのプランに自信が持てず、なぜか余計なことをごちゃごちゃ考えてしまいました。
34. a4 Re8?!
34... c3! 35. Rb7+ Ke8 36. Rxe7+ Kxe7 37. Nb4 Kd7 38. a5 Kc7 -/+ e4 のナイトは脅かされる心配がないため、6段目まではとっととポーンを突き進めておくべきでした。私はhファイルからの侵入を見せることで確実にルークを交換できると読みましたが、白はその間にaポーンを5段目まで進めることができるのが厄介です。
35. a5 Reh8 36. Rb7+ Kd8 37. Rb8+ Kd7 38. Rb7+ Kd8 39. Rb8+ Ke7 40. Rb7+ Kf8 41. Rb8+ Kf7 42. g6+?
時間が増えた直後、ラッキーなミスが相手から飛び出しました。正直、この時点で単純にルークを交換された場合、勝ち切れるか自信はありませんでした。42. Rxh8! Rxh8 43. Ra3! (5段目までポーンが進んでいるため、このようにルークのサポートを得られれば、十分に反撃の材料となります。) 43... c3 44. Ra1 (44. Ra2 Nd2 45. Nb4 Nf3+ 46. Kg2 Nxd4=/+) 44... Nd2 45. Rc1 Ra8 46. Nc7 Rxa5 47. Rxc3 Ke7 これでコンピュータはやや黒良し評価ですが、f4, d4 といったポーンをしっかり狙えるのかは疑問です。
42... Kxg6 43. Rxh8 Rxh8 44. Nc7?
指されて1分ほど考え、全く抵抗になっていない駄目なアイディアであることに気が付きました。30分の増えた猶予があるため、間違いなく勝ちであると読み切り、決着をつけます。
44... Rc8 45. Nxe6 c3 46. Rf1 Ng3!
彼が見ていなかったのはこの手でしょう。ナイト、ルーク、パスポーンによる芸術的なコンビネーションです! 白はプロモーションを止めるためには、ルークを捨てざるをえません。
47. Ra1 c2 48. Kg2 Ne2 49. Nc5 c1=Q 50. Rxc1 Nxc1 51. a6 Ra8 0-1
1970年代には、Spassky, Tal, Bronstein, Taimanov らとも対戦経験のあるベテランマスターでしたが、この試合はなんとか私に軍配が上がりました。70歳を目前にした高齢でありながら、こうしたプレーができるということには本当に感服します。私たちは果たしていつまで、現役でプレーできますかね(笑)
9/07 14:30 FM Kojima Shinya 2357 - IM Szalanczy Emil 2261 1-0
9/08 16:00 Verstraeten Rein 2298 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/09 16:00 IM Szeberenyi Adam 2320 - FM Kojima Shinya 2357 1-0
9/10 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Sean Winshand Cuhendi 2338 1/2-1/2
9/11 10:00 FM Lyell Mark 2220 - FM Kojima Shinya 2357 1/2-1/2
9/11 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Blazeka Matej 2312 0-1
9/12 16:00 IM Pribyl Josef 2314 - FM Kojima Shinya 2357 0-1
9/13 Bye
9/14 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - FM Fayard Alain 2259
9/15 16:00 Rudakov Aleksandr 2209 - FM Kojima Shinya 2357
9/16 10:00 FM Kojima Shinya 2357 - Dokuchaev Andrey 2239
9/16 16:00 IM Farago Sandor 2254 - FM Kojima Shinya 2357
9/17 16:00 FM Kojima Shinya 2357 - Moeldner Juergen 2273
First Saturday 2013 September IM
さて、今日13日は私がbye の日です。少したまった仕事を片しつつ、試合も少し見学に行き、夜には友人のコンサートに行くつもりです。日本では今週末、チーム選手権が開催されますので、お互い、チェスを楽しむ週末になると良いですね!
4 件のコメント:
お疲れさまです。「ハンガリーにチェスをしに来ている怪しい日本人がいるらしい」とか ひそかに有名人になっているんでしょうか・・謎 (何語で声をかけてきたのでしょう・・)
レスリングの大会が16日から始まるそうです。吉田沙保里さんは19日に試合です。ハンガリー語が読めないので どうやったらチケット買えるとかまるでわかりません・・汗 気がむいたらいかがでしょう・・
日本レスリング協会のページ
http://www.japan-wrestling.jp/2013/09/14/38989/
国際レスリング連盟のページ
http://www.fila-official.com/index.php?lang=en
会場
http://en.budapestarena.hu/html/megkozelithetoseg-budapest_sportarena_megkozelitese.html
ブタペストでは、チェスセットはどこでも売っていますからね。私に声をかけたのは、たまたまですよ(笑)
昨日の演奏会でも、レスリングの話は出ていましたよ。19日はオフですので、少し調べてみますかね(≧∇≦)
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