バンコクの最終戦、私はペアリングを見てなんとも言えない複雑な気持ちになりました。9R はタイのFM Teerapabpaisit Wisuwat に黒。彼とは三度目の対戦となります。
Wisuwat の立場は日本で言う私に近く、タイで貴重なFM タイトルを持つプレーヤーであり、もちろんタイのトッププレーヤーの1人です。8年前のトリノオリンピアードで彼と対戦し、その年のベスト3に入る好ゲームを制した私は、オリンピアード後半戦で調子を取り戻すきっかけを得ましたが、逆にGM に勝つなどして飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼は、貴重なIM ノームのチャンスを失ったのでした。
彼とはその後、良い友人となり、2008年のBCCO 最終戦ではドロー。今年は2人のIM に勝つ活躍を見せるWisuwat は、この試合がまさか久々のIM ノーム勝負掛けのラウンドかとも思われましたが、残念なことに平均レイティングが少しばかり足りていません。試合前に彼とこの話をしたところ、ノームは気にしておらず、ベストタイ賞獲得のため、1/2 ポイントが必要なのだとのことでした。
Teerapabpaisit, W (FM, THA, 2250) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
Bangkok Chess Club Open 2014 (9)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Be7 13. Ne4 Nxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qe2 Qd5 16. c4 Qe4 17. Qxe4 Nxe4 18. Be3 f5
ドローにしたいという彼の希望を蹴って、私は勝負する気満々でゲームをスタートさせました。この変化を実戦で指すのは久々ですが、私の研究していた望み通りの展開が続きます。
19. Nd2 Nf6 20. f3 b5 21. b3 a5
ここは
21... Kf7 と迷いましたが、
b2-b3 という形を見て、黒から
a7-a5-a4 と伸ばしにいける好形だと判断しました。このプランを止める白の手はないと思って仕掛けたわけですが、彼は長考の末、私の予想していない手を返してきました。
22. a4!
今度は私が長考に沈む番です。30分のリードをすべて使い切った末、私は間違ったプランを選択しました。
22... bxa4?!
試合後にWisuwat が指摘したのは、
22... Kf7! 23. Kc2 Rhd8 からゆっくりやれば、黒が指しやすいだろうとのこと。間違いありません。こちらのプランと比較したうえで、有効ではない本譜のa4 取りをチョイスしてしまったのは、すべて私の未熟さによるものでしょう。
23. bxa4 Rb8 24. Kc2 Rb4 25. Rb1 Rxa4 26. Rb8+ Bd8 27. Rhb1!?
私が読み落としていたのはこの手で、
27. Kb3?! Rb4 28. Rxb4 axb4 29. Kxb4 Be7+ 30. Kc3 Kf7 ならば、h5 をアタックしている黒が先にクイーンサイドにルークを回し、優位に立つことができたでしょう。本譜の手が入れば、h5 を取らせても8段目にルークがいたままなので、c6 をアタックしてパスポーンを直ちに作れるチャンスが白に残ります。
そしてWisuwat はこの手でドローオファーをしてきました。私はさんざん考えましたが、
27... Rb4 からルークを1枚交換しても、ポーンの代償は十分にあり、むしろ黒が難しいポジションだと考えました。対戦相手が友人であることは全く関係なく、ここでオファーされたのならば受けるべきだとの判断は、かなり迷った末に決めたのでした。
1/2-1/2
試合後は2週間ぶりとなる、モーチットのウィークエンドマーケットへ。会場ではぐれた南條くんも、私に遅れてマーケットに来ていたようです。写真は日本では珍しいであろうタイの果物、ランブータン。
ひもで吊るされているのは、タイのスポーツであり、足を使うバレーボールのような球技、セパタクローのボールです。確認はしませんでしたが、おそらくこちらはお土産用の工芸品でしょう。球技用のはもっと堅いものだと、ドーハでセパタクロー日本代表選手たちから教わりました。
マンゴーとココナッツのアイスクリームは、ココナッツの果肉も味わえるココナッツ皮が器になっています。35バーツでした。
4時前に会場に戻り、クロージングセレモニーに出席します。タイのダンスを披露してくれた女性陣は、プロのダンサーではなく、ホテルのスタッフだという話ですが、本当でしょうか(笑) にわかには信じられません。
2100未満のプレーヤーのみ参加できるチャレンジャークラスでは、先日のラピッド大会に続き、フィリピンのNouri Alekhine がベストジュニアを獲得しました。
ベストタイは当然、Wisuwat です! レイティングを25近く挙げる活躍をし、久々にタイ国内ランキングNo.1 に返り咲くでしょう。
そしてオープンクラスは、スペイン最強のGM Vallejo Pons が7.5P で優勝です。前回はGustafsson にタイブレークで敗れたので、念願の初優勝だと本人からコメントがありました。
1st Place Vallejo Pons Francisco (GM, ESP, 2693)
2nd Place Barbosa Oliver (GM, PHI, 2580)
3rd Place Gustafsson Jan (GM, GER, 2634)
4th Place Liu Qingnan (IM, CHN 2500)
5th Place Socko Bartosz (GM, POL, 2635)
入賞者だけでなく、150名のプレーヤーと運営スタッフたちの皆さん、8日間本当にお疲れ様でした! このブログの読者の皆さんにも、長くタイシリーズにお付き合いいただいたこと、とても感謝しています。ランタ島とバンコクでの一か月弱の試合を終え、私は21日の朝、日本に帰国することになります。日本の皆さんとも、久々にお会いできることを楽しみにしていますね。
Bangkok Chess Club Open 2014 Schedule and Results
04/12 15:30 R1 Holming, P (SWE, 2002) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
0-1
04/13 09:00 R2 Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Peng, X (CHN, 2193)
1-0
04/13 15:30 R3 Shukin, A (RUS, 2174) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
0-1
04/14 14:00 R4 Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Atalik, S (GM, TUR, 2562)
0-1
04/15 14:00 R5 Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Kulkarni, B (WGM, IND, 2246)
1/2-1/2
04/16 14:00 R6 Diaz, C (PHI, 2246) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
0-1
04/17 14:00 R7 Sardana R (AUS, 2320) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
1/2-1/2
04/18 14:00 R8 Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Rohan, A (IND, 2154)
1/2-1/2
04/19 09:00 R9 Teerapabpaisit, W (FM, THA, 2250) - Kojima, S (FM, JPN, 2361)
1/2-1/2
04/12 15:30 R1 Vinay, K (IND, 1980) - Nanjo, R (CM, JPN, 2321)
0-1
04/13 09:00 R2 Nanjo, R (CM, JPN, 2321) - Shukin, A (RUS, 2175)
0-1
04/13 15:30 R3 Swati, M (WFM, IND, 2046) - Nanjo, R (CM, JPN, 2321)
0-1
04/14 14:00 R4 Nanjo, R (CM, JPN, 2321) - Peng, X (CHN, 2193)
1/2-1/2
04/15 14:00 R5 Xu X (CHN, 2101) - Nanjo, R (CM, JPN, 2321)
1-0
04/16 14:00 R6 Nanjo, R (CM, JPN, 2321) - Lam D (HKG, 2111)
1-0
04/17 14:00 R7 Griffiths P (ENG, 2196) - Nanjo, R (CM, JPN, 2321)
0-1
04/18 14:00 R8 Nanjo, R (CM, JPN, 2321) - Sauravh, K (IND, 2196)
1-0
04/19 09:00 R9 Nolte, R (IM, PHI, 2417) - Nanjo, R (CM, JPN, 2321)
1-0