2014/04/07

Caro-Kann Classical Move by Move Vol.6


1ヶ月以上更新するタイミングがなかったので、久々のCaro-Kann Classical シリーズです。今回からは、黒の典型的なポーンのブレイクについて扱います。取り上げる順番は、最も代表的なc6-c5 からを考えていましたが、少し予定を変更し、b7-b5 のアイディアからご紹介しておきます。

Caro-Kann Classical のショートキャスリングラインにおいては、クイーンサイドからのカウンタープレーは勝負をしかけるために必要なもの。白がc4 にポーンをすでにおいている場合と置いていない場合では少し勝手が違いますが、b7-b5 の狙いは以下のようにまとめることができます。

(1) c4 のポーンを崩す(もしくはc4 のマスを抑えておく)ことによって、d5 をアウトポストにする。
(2) bファイル、もしくはcファイルをオープンファイルにし、白キングへの攻撃のチャンスを作る。(両方オープンファイルになれば言うことなし。)

それでは早速、いくつかの実戦例から、こうしたアイディアをチェックしてみましょう。

Lee T H, B (HKG, 1964) - Kojima, S (FM, JPN, 2329)
Thailand Open Chess Championship (1)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 13. c3 Be7 14. c4 Qc7 15. O-O-O Ngf6 16. Kb1 O-O 17. Ne4 Rfd8!? 18. Bc3 b5!



私は基本的に、c2-c4Bd2-Bc3 のセットアップは、あまり黒にとって脅威だとは感じません。黒マスビショップはc1-h6 のダイアゴナルを睨んでいるほうが怖いですし、c3 の位置はナイトのターゲットになります。

19. Nxf6+ Nxf6 20. cxb5 cxb5 21. Qxb5


黒は一時的にポーンをサクリファイスしましたが、d4 を孤立ポーンに、d5 をアウトポストにしました。そのうえでbファイル、cファイルから強力な反撃ができることを踏まえれば、1ポーン分の代償は十分にあると考えることができます。

21... Rab8


21... Ne4 22. Ba5 Rdb8 23. Bxc7 Rxb5=/+ も面白い変化です。

22. Ba5!? Rxb5 23. Bxc7 Rdd5 24. Rhe1 Nxh5



こうして1ポーンを取り返した黒は満足なポジションとなり、この後のエンドゲームをうまく指して勝ち切りました。続いて似た例をもう1つ。

Molnar, E (SVK, 1940) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
CAISSA IM January (2)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 13. c3 Be7 14. c4 Qc7 15. O-O-O Ngf6 16. Kb1 O-O 17. Qc2 b5!



この手を許さないためのQd3-Qc2 でしたが、それでも構わず突きにいきます!

18. cxb5 c5! 19. dxc5 Qxc5 20. Be3 Qxb5=/+


これは1つ前のゲームと違い、b,c ファイルをオープンにしたうえでクイーンも盤上に保持できそうです。黒の将来的なアタックは強力で、すでに黒が指しやすいのではないかと思います。ゲーム全体の解説はこちらで。

b7-b5 と突いた場合、黒の弱点はc6 のポーンが弱くなることですが、私の経験上、それを踏まえてもd5 のアウトポストを作るほうが、黒にとってプラスが大きいと判断できる場合が多そうです。オーソドックスなc6-c5 だけでなく、思い切ったb7-b5 が指せると、Caro-Kann Classical のクイーンサイドアタックも、幅が広がりそうですね。

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