1週間のPilsen Open 全日程が終了しました。6回目の更新ですが、本日の最終戦の棋譜、結果もまとめて更新してしまおうと思います。最初はいつも通り、クリスマスマーケットの食事風景から。6R が始まる前、昨日のお昼ごはんです。
ヨーロッパのクリスマスマーケットに欠かせないものと言えばこれ、巨大なソーセージです。これを売る専門の屋台では、何種類ものソーセージが美味しそうに焦げ目をつけ、お客さんはそれにふらふらと吸い寄せられていきます。私も例にもれず、一本頂いてみました。アツアツジューシー。
そしてソーセージの後は、お姉さんのケーキ屋、Andel Station の屋台へ。本当はまだ試していないチョコレートケーキを食すつもりが、この日は店から持ってこなかったとのこと... 仕方なく、ブルノでも食べた蜂蜜のケーキ、Medovy Dort に再チャレンジです。こちらはこちらで美味しいので、OK なんですけどね。お姉さんには、他のケーキが食べたければ、お店にも寄ってくれと名刺を渡されました。
ついでに今日のお昼に食べたケーキも公開してしまいます。下はチョコレート生地、上はココナッツを使ったクリームでした。(多分ね!) 甘さは控えめ、生地はしっとりでとても食べやすかったです。
それでは6R の試合へ。相手はチェコのFM Bartos, J です。ゲームを見る限り、オープニングにとても詳しく堅いプレーをするようですが、このレイティングということは、どこかに穴があるはずです。
Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Bartos, J (FM, CZE, 2259)
Pilsen Open (6)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7!?
Pilsen Open (6)
黒では何回か指したことがありますが、6. Ne5 を指し始めてから、白では初めて遭遇します。2000年にMorozevich が導入し、人気を博したラインに突入です。
7. Nxc4 Qc7 8. g3 e5 9. dxe5 Nxe5 10. Bf4 Nfd7 11. Bg2 g5!? 12. Ne3 gxf4 13. Nxf5 O-O-O 14. Qc2 Nc5 15. O-O fxg3 16. hxg3 a5 17. Rfd1 h5 18. Rxd8+ Qxd8 19. Rd1 Qf6 20. Bh3!?
ここまで相手はノータイムで指してくるので、完全に準備の範囲内であることが分かりました。この20手目は20. Ne4 がメインであることは知っていましたが、勝ちに行くためにはピースを多少残そうと思い、凝ったアイディアで勝負です。
20... Kb8 21. Qd2! Rg8 22. Qd8+!?
クイーンを交換し、8段目にルークを入れれば優勢だろうと思っていましたが、相手には見事なディフェンスがあります。
22... Qxd8 23. Rxd8+ Kc7 24. Re8 Nc4! 25. Nh6?!
当然だと思ったこの一手がいまいちで、25. b3!? Nxb3 26. Ne4! ならば、難しいポジションになるでしょう。
25... Nd6! 26. Ra8
このe8 のルークをアタックしながら、f7 をディフェンスする手は盲点でした。26. Re5?! Bxh6 27. Rxc5 Rxg3+! も白が劣勢です。
26... Rh8 27. Rxa5
たっぷり時間を使ったうえでこの手を指しましたが、直後にダメなことに気づきます。しかし、27. Nf5 Nc4! でも苦しい以上、白にはすでにうまい手がありません。
27... Kb6?
27... Na6! 28. Nxf7 (28. Nf5 Nc4!-+ これでエクスチェンジが捕まり、黒の勝勢です。) 28... Nxf7-+ 当然、こちらもピースの代償は不十分で、私の負けでした。
28. Ra8 Bg7 29. a5+ Kc7 30. Rxh8 Bxh8 31. b4!? Na6
31... Bxc3 32. bxc5 Ne4 33. Nxf7 Nxc5= この異色ビショップは、まずドローになるでしょう。本譜も似たようなものですが、少ないチャンスを求めて戦いを続けます。
32. Na2 Bg7 33. Nf5 Nxf5 34. Bxf5 Bf8 35. Bd3 Nxb4
このポジションで、相手からドローオファーが来ました。客観的に見ればドローになりそうですが、hポーンが落ちるであろう黒が、ドローのために努力しなければいけないポジションで、白がオファーを受ける理由はありません!
36. Nxb4 Bxb4 37. a6 bxa6 38. Bxa6 Kd6 39. e3 f5 40. Be2 Ke5 41. Bxh5
これで白はポーンアップになりましたが、この異色ビショップエンディングが勝てるのかは疑問なところです。
41... c5 42. Bf7 Ba5 43. Kf1 Bb4 44. Ke2 Ba5 45. Bc4 Bb4 46. Bd3 Ba5 47. Kf1 Bb4 48. Kg1 Be1 49. Kg2 Bd2 50. Kh3 Be1 51. f4+ Kf6 52. e4 fxe4 53. Bxe4 Bd2 54. Bd3 Bc1 55. Kg4 Bd2 56. Kf3 Bc1 57. g4 c4?
ここで黒がポーンを突き捨てなければいけない理由はないはずです。2コネクテッドパスポーンを持つうえ、白マスビショップが完全にフリーになったことで、大きなチャンスがきたことを感じます。
58. g5+ Kg7 59. Bxc4 Bd2?!
この手を見て私は、相手はこの異色ビショップエンディングへの理解が足りていないことを知りました。おそらく、黒が最もドローに持ち込みやすいのは、d8-h4 のダイアゴナルにビショップを置き、g5 のポーンをアタックしながら、f5-f6 を防ぐことでしょう。59... Ba3 60. Ke4 Be7 61. Kf5 Bd6! 私はその場合、ポーンを進めずにキングを上げるつもりでしたが、 f4 のポーンをアタックされたときにうまい手がわかりません。
60. Kg4 Bc1 61. f5 Bb2 62. Bb5 Bc3 63. Be8 Bb2?
私はf5,g5 にポーンが並び、黒のビショップがd8 にいかなかった時点で、白の勝ちは確定だと思いました。(後はビショップをh5 に置き、キングをe6 まで運んだうえで、f5-f6 を突く) しかし、試合後にロシアのIM Chudinovskikh がロシア語で何かまくしたてているので、何事かと伺ってみると、このポジションはドローだとのことです。63... Kf8! Bh5 Ke7!!
このようにビショップをアタックしつつ、キングをe7 に持ってくるのが黒の正しいディフェンスで、こうすることで白のキングはe6 に到達することができません。(Bh5-Bg6, Kg4-Kh5 には、...Bg7! というディフェンスがあります。) そうなると白は別の勝ちのプランを考えなければいけませんが、どのようにf5-f6 を突けば良いのか、よくわかりません。このポジションを勉強した、Endgame Manual をもう一度読み直してみようと思います。
64. Bh5!+-
この後は、何事もなく白勝ちです。黒はf5-f6 を止めるために、ビショップをa1-h8 のダイアゴナル、キングをg7 から離すことができませんが、白にはキングをe6 に運ぶプランがあります。
64... Bc3 65. Kf3 Bb2 66. Ke4 Bc3 67. Kd5 Bd2 68. f6+ Kf8 69. g6 Bh6 70. Ke6 Kg8 71. Ke7 Bf8+ 72. Ke8 Bh6 73. Bg4 Bf8 74. Be6+ Kh8 75. Kf7 1-0
最後は75. Kxf8? とだけ、指さないように注意が必要です。このラッキーな勝ちまでは良かったものの、今日の午前中に行われた、優勝をかけたIM Strebkov との最終戦は、内容がひどすぎました。
Strebkov, A (IM, LAT, 2324) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)
Pilsen Open (7)
1. Nf3 d5 2. g3 Nf6 3. d4 c6 4. Bg2 Bg4 5. O-O Nbd7 6. b3 e6 7. Bb2 Bd6 8. Nbd2 O-O 9. c4 Qe7 10. Ne5 Bh5 11. a3 a5 12. Re1 Bc7!? 13. Qc2 Rfd8?!
Pilsen Open (7)
ここはさっさとナイトを交換し、シンプルなポジションにすべきでした。13... Nxe5! 14. dxe5 Ng4! 15. Nf3 f6= これで黒には何も問題がないはずです。
14. cxd5! exd5 15. e4! dxe4 16. Nxe4 Qf8?
あり得ない手でした。ここもナイトを交換で、さほど黒は苦しくないはずです。16... Nxe5 17. dxe5 Nd7=
17. Nxd7! Nxd7 18. d5!
d4 に孤立ポーンが残れば黒が指しやすいかと思っていましたが、白はこの1手ですべてを解決します。黒はクイーンサイドの崩壊を防ぐ方法がすでにありません。
18... cxd5?? 19. Ng5!+-
まさかのピースただ落ち... この時点で勝負は決まりました。
19... Bg6 20. Qxc7 Nc5 21. Rad1 Nd3 22. Re2 h6 23. Nf3 Nxb2 24. Rxb2 Qxa3 25. Rbd2 Qxb3 26. Ne5 Rdc8 27. Qd7 Rd8 28. Bxd5 Rxd7 29. Bxb3 Rxd2 30. Rxd2 Kh7 31. Nxg6 fxg6 32. Ba4 Rc8 33. Rb2 Rc4 34. Be8 Rc8 35. Bb5 Rc7 36. h4 Kg8 37. Kf1 Kf7 38. Ke2 Ke6 39. Bd3 a4 40. Ra2 1-0
優勝のかかった一番大事な試合でなぜこうなるのか... ラトビアのマスターにはこれで3連敗。まだまだ修業が必要なようです。
11/24 16:00 Kalist, K (CZE, 1886) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
11/25 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Paldus, P (CZE, 2022) 1-0
11/26 16:00 Ernst, M (AUS, 2164) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
11/27 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Abdumilak, Z (WIM, KAZ, 2312) 1-0
11/28 16:00 Schmidt-Schaeffer, S (GER, 2382) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1/2-1/2
11/29 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Bartos, J (FM, CZE, 2259) 1-0
11/30 09:00 Strebkov, A (IM, LAT, 2324) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1-0
最終日はなかなか荒れたゲームが多かったです。2B のSchmidt-Schaeffer, S - IM Ianov, V のゲームは、黒がポーンアップで、まさかのIanov 滑り込み入賞かと思いましたが、なぜかルークチェックにキングを行ったり来たりでドロー。勝負にいかない理由がよく分かりませんでした。さらに同時優勝のチャンスがあった3B の白、Abdumalik は、まさかのIM Chudinovskikh に負け。(トップの写真、奥のゲームです。) ブルノ、ピルゼンと下に負けが続いていたロシアのマスターも、最後は意地を見せたようです。
7R 終了後、仲良くなったポーランドの親子と記念撮影。12歳になる息子さん(左) は日本語を少し勉強したとのことです。次回は、是非ポーランドの大会にも来てくれと誘われました。
The 1st Prize IM Strebkov, A from Latvia
The 2nd Prize FM Kojima, S from Japan
The 3rd Prize Schmidt-Schaeffer, S from Germany
私はこれから、プラハにバスで向かい、チェコ最大のクリスマスマーケットを楽しんでから、ウィーン、マヨルカと移動して、今回の遠征最後の大会に向かいます。日本の皆さんも、良い週末をお過ごしください!