2013/11/21

Czech Tour Brno Open 6th round


この日もトラムに揺られて駅前へと出かけていきます。ブルノのトラムチケットは、車内の刻印を押してから15分、30分、60分、24時間有効など、何種類かあって当然値段もバラバラです。会場の最寄り駅、Celni から駅までは、一番安い15分20チェココルナのチケットで十分で、この日、駅前に出る一番の目的は銀行を探すことでした。


お昼ご飯にはいつものサンドウィッチに加え、ブルノのあちこちで見かけるこのケーキを食べてみました。調べてみたところ、この塔のようなケーキはシュピチュカというらしく、「頂上」、「先端」といった意味があるそうです。中身は卵のキュールクリームをカカオクリームで包んであり、それをさらにチョコレートでコーティングしてあります。(ちなみに調べたらこう書いてあっただけで、ペロッ、これは卵のキュールクリーム!と判断したわけではないですよw) 上から下までひたすら甘いので、苦手な人も多いかと思います。

そして、食後に警官を捕まえて銀行の場所を聞いたところ、「それならば、ここから2番トラムで5駅ほど行ったCelniの近くにあるよ」という衝撃的な答えが(笑) 私そこから来たんですけどと苦笑しつつ、ホステルへと戻ります。


これまでCelni 周辺は何もないと高を括ってあまり散策もしませんでしたが、とても大きなSPAR がありました。SPAR とは、ハンガリーでもよく見かけるヨーロッパ大手のスーパーマーケットで、ブダペストマラソンのメインスポンサーなども務めています。ここでなんとか銀行を発見。チェコでもしばらく生存できそうです。

それでは6R の棋譜解説へ。相手は今年で77歳になるロシアのプレーヤー、Golcman です。


Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Golcman, E (RUS, 2209)
Brno Open (6)

1. Nf3 f5 2. d3 Nf6 3. e4 d6 4. Nc3 Nc6 5. Bg5



この日は何となく気が向き、久々にAnti Dutch を指してみることにします。ここでは5. exf5 Bxf5 6. d4 Nb4 7. Bb5+ c6 8. Ba4 も考えましたが、あまりこうした白マスビショップの使い方は好みではありません。

5... e5 6. exf5 Bxf5 7. d4 h6!? 8. Bxf6


この手は白にとってすごく有効ではないと思いましたが、Anand - Carlsen を見ていてチェスはオープニングではないと知ったので(そしてそれは、これまで多くの実戦でも経験してきていることです。)、ナイトビショップの交換を早々に仕掛け、ポジションのバランスを早くに崩すことにしました。

8... Qxf6 9. Nd5 Qd8?



この手はすでに黒にとって致命的なエラーと言えます。9... Qf7! 10. Ne3 O-O-O ならば、黒は何も問題がなく、白としてはどのようにしてチャンスを作りに行くか、頭を悩ませることになるでしょう。

10. Bd3!


白にとって非常に重要な、戦略的一手です。ビショップを片方失っている白にとって、残ったビショップを交換し合うことは、相手のダブルビショップを消すという点で有効です。それに加え、ここではh7-h6 を突いたことで弱くなったg6 のマスを活用されてしまうため、黒としては白マスビショップの交換が望ましくありません。

10... g6 11. Bxf5!?


11. Qe2 Bg7 12. dxe5 dxe5 13. O-O-O+- これですでに勝勢とコンピュータは示しますが、私はエキサイティングなピースサクリファイスが見えた為、その誘惑に耐え切れません。

11... gxf5 12. Nxe5!



Tal であれば、10秒でこのサクリファイスを実行するでしょう。細かい駒数の計算よりも、アタックのチャンスとイニチアチブが重要だと考えるためです。(さすがに私はもう少し読みましたけどねw)

12... dxe5 13. Qh5+ Kd7 14. Qxf5+ Kd6


14... Ke8 15. Nf6+ Ke7 16. dxe5+- では、黒はどうしようもありません。

15. dxe5+ Kc5



黒のキングは安全な場所を求めて疾走しますが、そんな場所は盤上のどこにも存在しません。15... Kxd5 16. O-O-O+ Kc5 17. Rxd8 Rxd8 18. Rd1+- とクイーンを捨てても、3ポーンを持つ白のマテリアルのリードは勝ちに十分でしょう。

16. b4+!?


16. Nf6!? Qd4 17. Rd1 Qxe5+ 18. Qxe5+ Nxe5 19. Rd5+ Kb6 20. Rxe5+- こうしてe5 のポーンを取らせても、ピースを取り返せるのは読み落としていた変化です。私はそれよりも、a1 のルークを攻めに参加させることを選びます。

16... Nxb4 17. Nxb4 Kxb4 18. Rb1+ Kc5


18... Ka4 19. Qe4+ Ka5 20. Qxb7 c6 21. Qxc6 Rb8 22. O-0+- これでも黒のキングは絶望的な状況でしょう。

19. e6+ Kc6 20. Qb5+ Kd6 21. Rd1+



これで白はクイーンを取り、残りは時間の問題です。

21... Kxe6 22. Qc4+ Kf6 23. Rxd8 Rxd8 24. O-O Bd6 25. Qd4+ Kg6 26. Qxa7 b6 27. Re1 Ra8 28. Qb7 Rxa2? 29. Qe4+


あとはクイーンとルークを組み合わせ、メイトまで一直線です。

29... Kg7 30. Qg4+ Kf8 31. Qc8+ Kg7 32. Qd7+ 1-0



こうしたアタッキングスタイルは、私が一番に得意とするところではありませんが、こうしたプレーもできることを時々はアピールしておかなければいけませんね(笑) これで4勝1敗1ドローで、優勝を再び狙える位置まで戻ってきました。残りは3戦で、1試合も気が抜けません。


6R の1番ボードはなかなか面白い組み合わせ。72歳のIM Piankov と、13歳のAbdumilak の対戦です。持ち時間はあまり使わないながら、内容はのらりくらりとしたPiankov のチェスでしたが、Abdumilak が一瞬のスキを突いて優勢のクイーンエンディングに。しかし、Piankov はベテランならではのテクニックで、以下のポジションに持ち込みました。


Piankov - Abdumilak

e8 のクイーンが、a4,h5 を守り、h4 のポーンは取られた瞬間にパペチュアルチェックが入ります。これは黒に勝つ方法がなく、ドローで2人は合意しました。

そろそろ大会も終盤なので、私個人だけでなく、上のペアリングをすべて確認しておきます。

11/16 16:00 R1 Kreyssig, B (GER, 1837) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
11/17 09:00 R2 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Kotva, M (CZE, 1996) 1-0
11/17 16:00 R3 Blahynka, M (CZE, 2188) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 1/2-1/2
11/18 16:00 R4 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Abdumilak, Z (WIM, KAZ, 2311) 0-1
11/19 16:00 R5 Stanek, S (CZE, 1941) - Kojima, S (FM, JPN, 2364) 0-1
11/20 16:00 R6 Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Golcman, E (RUS, 2209) 1-0
11/21 16:00 R7 Grove, M (SCO, 2078) - Kojima, S (FM, JPN, 2364)


勝ったのに7R の対戦相手はレイティングが落ちました! スコットランドのGrove は2200台に1人勝っていますが、ゲームを見る限りは、さほど脅威となる相手ではないはずです。ここもしっかりと勝って逆転優勝の望みを作っていこうと思います。そしてなにより、スコットランドのNo.1 GM に勝っておいて、2000台に負けるわけにはいかないですからね! 

Brno Open 2013 7R pairings

1B WIM Abdumalik,Z (5.5) - WIM Semenova, E (5)
2B IM Plat, V (4.5) - IM Piankov (5)
3B Blahynka, M (4.5) - FM Kantans, T (4.5)
4B Grove, M (4.5) - FM Kojima, S (4.5)
5B IM Strebkovs, A (4.5) - FM Burdalev, K (4.5)

いまだ単独トップを守る13歳のAbdumalik は、ロシアのWIM とSemenova と対戦で、1B が女子対決という珍しい事態になりました。Burdalev に負け以外、下に5勝という実力の分かりにくいSemenova ですが、ここはAbdumalik のポイントを削り、大会を盛り上げてもらういたいところです。

遅れてきたリスト1, Plat は初戦で1800台にドロー、2R で寝坊負けというひどいスタートでしたが、さすがの4連勝で2番ボードまで上がってきました。Piankov おじいちゃん相手にどのようなチェスを指すのか、2400代後半の実力を見せてもらおうと思います。

私と3R でドローにした15歳のBlahynka 少年も、まだ上位ボードに残っています。6R はロシアのIM Chudinovskikh のひどいブランダーから逆転勝利。まだまだ怪しいチェスですが、リスト2 のKantans からもポイントを挙げるようであれば、今大会のジュニア賞は確定でしょう。ここも注目のボードです。

ラトビアのIM Strebkovs も下に3ドローと調子は良くありませんが、2300台の実力者でまだまだ上を荒らすチャンスはあるでしょう。2B と同じここのマスター対決も、周りの注目を集めることと思います。


会場には本以外のチェスグッズもそろっています。チェスのネクタイ、590チェココルナ、ビショップの置物、300チェココルナなど(笑)


この日の夕飯はSPAR 内にあるレストランに駆け込みましたが、閉店間際で温かいメインディッシュがすでに片づけられていることに、サラダを取ってから気づきました。泣く泣くサラダとスープのみの夕飯に。か、悲しい...

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お疲れさまです。 ハンガリーのオルバン首相が来日して安部首相と会談したというニュースを見たので ハンガリー オルバン首相 で検索してみたら あんまり評判がよろしくないようで・・?▽o・~・o▽ 謎

Shinya_Kojima さんのコメント...

あんまりハンガリーで、首相がどうしたというニュースは聞いたことがなかったですね。恥ずかしながら、名前も今はじめて聞きました。

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