ノビサドから6時間列車に揺られ、今朝再び、ホームのブダペストに戻ってきました。ブダペスト東駅に向かう夜行列車の一番安い二等車は、途中まで廊下の補助席に座らなければいけない混雑ぶりで大変でした(笑) やはり次回は確実に席の確保できるバスを利用することにしましょう。それでは最終戦のゲームを振り返りつつ、今大会のまとめ記事としようと思います。
Tesanovic, R (SRB, 1837) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal Milja Vujovic GM (9)
1. c4 c6 2. Nc3 d5 3. e3 Nf6 4. Nf3 Bg4!?
Memorijal Milja Vujovic GM (9)
4... g6 をいつもは指していますが、この日は少し気分を変えてみます。
5. cxd5 Bxf3 6. Qxf3 cxd5 7. Bb5+ Nc6 8. d4 e6 9. O-O Rc8 10. Bxc6+ Rxc6 11. Bd2 Bd6 12. e4!?
私は12. Rac1 ぐらいをメインに考えていました。IQP にするかしないかで、ポジションの性質は全く変わってきます。
12... dxe4 13. Nxe4 Nxe4 14. Qxe4 O-O 15. Rac1 Rxc1!?
15... Qb8!? と指すのも考えましたが、cファイルを取らせてもd4 の弱点さえ残せれば勝負にいけると思い、 シンプルにルークを交換します。
16. Rxc1 Qd7 17. Re1?!
ルークがeファイルでできる仕事は何もありません。14. Bf4 Bxf4 15. Qxf4 Qb5! でまだ勝負はわからないと考えていました。
17... Rd8 18. Bc3 h6 19. g3 Be7 20. h4 Bf6 21. Kh2?! b6?!
ここは一度b7 を受けておいてからd4 を取ろうと思いましたが、よく見ればf2 が当たるので、すぐにポーンを取ってOK でした。
22. a3 Bxd4! 23. Rd1 e5
ポーンを取った黒は、ここからどう進めれば勝ちの可能性が高いエンドゲームに持ち込めるかを考えます。
24. Kg2 f6 25. Qd3 Qc6+ 26. f3 Rd6 27. Rd2 Kh8 28. h5
なかなか嫌な手です。互いに黒マスビショップが残っているため、黒マスにポーンを固定されるとエンドゲームが難しくなる可能性があります。
28... Qd7 29. g4?! Bc5!
黒は面倒だったピンを外したうえで、駒を交換して勝ちのエンドゲームに移行します。
30. Qc2 Rxd2+ 31. Qxd2
31. Bxd2 Qd4!-+ ならば、白のキングはディフェンスが難しいでしょう。
31... Qxd2+ 32. Bxd2 Kg8
この同色ビショップが確実に勝てるのかどうか、29... Bc5 を指す前に前に読み切る必要があります。f6-f5 とポーンを突くアイディアが見えれば、後は簡単でしょう。
33. Kf1 Kf7 34. Ke2 Ke6 35. Kd3 f5! 36. Ke2?
h5 のポーンがターゲットになりますが、まだ36. gxf5+ のほうが粘れそうです。
36... fxg4 37. fxg4 Kd5-+
キングの位置の優劣がはっきりしました。あとは問題ないでしょう。
38. g5 hxg5 39. Bxg5 Kc4! 40. b4 Bd4 41. Kf3 Kd3
パスポーンを進める準備ができた黒に、対抗できるすべはありません。
42. Bh4 e4+ 43. Kf4 e3 44. Kf3 Bc3 45. Kf4 e2 46. Kf5 e1=Q 47. Bxe1 Bxe1 0-1
こうして最終戦を無事に白星で締めくくり、初めてのセルビアでのトーナメントが終了しました。レイティングはマイナス7 ですが、なかなか貴重な体験ができたので、ブダペストから足を伸ばした甲斐はあったと思います。
R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402) 0-1
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362) 1/2-1/2
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1-0
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436) 1/2-1/2
R8 11/02 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Milivojevic, M (SRB, 1557) 1-0
R9 11/03 10:00 Tesanovic, R (SRB, 1837) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
最終戦が終わって周りを見渡してみると、まだ残っているボードが3つほどあり、中でも白熱していたのはMilivojevic, J (私が8R で対戦した少女の姉) - Stankovic のゲームでした。今大会、最もIM ノーム獲得に近いと思われたStankovic は、9R で1800台にヒットしたことで、対戦相手の平均レイティングが基準を切るという不運に見舞われます。(あと平均が5高ければ、最終戦に勝ってIM ノームでした。) ところが平均レイティング云々ではなく、Stankovic はまずいポジションに追い込まれます。
このポジションで白は残り数秒。唯一勝ちになるのは1. Ba5! ですが、彼女はこれを見逃し、ゲームはドローに落ち着きました。この直前のポジションも私の考えとは違って形勢が二転三転していたようですが、なにはともあれStankovic にとっては救われたゲームです。しかし、私の対戦相手もそうでしたが、2300, 2400 クラスでも、黒で1800 に勝つのはそう簡単ではないですね。
そして私にとってもう1つ印象的だったのは、2番ボードのOmorjan, D (SRB, 1665) - Drazic, S (GM, SRB, 2472) のゲームです。2002年生まれの少年、Omorjan は序盤から押しに押してSinisa 相手にピースアップとなりましたが、そこからGM の地力で大逆転、黒の勝ちとなりました。ただ上位のプレーヤーが逆転しただけというならば、日本でもありそうな話ですが、Omorjan は試合後に号泣し、親や周りのプレーヤーに慰められていました。おそらく単に負けたことではなく、人生で初めてGM に勝つチャンスを逃したことが悔しいのでしょう。こうした強い気持ちは、私も忘れてはいけないと思います。(私もDobrov に負けて号泣すれば良かったか...)
大会終了後はSinisa にブリッツ大会に誘われ、2時間で7R 程のミニトーナメントに参加してきました。Sinisa に勝ったのは良かったのですが、Sredojevic, Stankovic, Dobrov に負けて4勝3敗の5位に終わりました。最終戦1B のDobrov 戦は、勝てば逆転優勝のチャンスがありましたが、ポーンエンディングへの理解が足りていませんでした。
41. Rd2?
このポーンエンディングは問題ないと思ったのが勘違いでした。
41... Rxd2 42. Kxd2 Kc5 43. Ke3 a5 44. e5 fxe5 45. fxe5 a4 46. e6 Kd6 47. Kd4 c3 48. bxc3 b3 0-1
Oh... Breakthrough... 代わりに愛弟子Rudakov には、きっちり勝ったので良しとします。ラウンドロビンを7試合、スイス式を2試合、そしてブリッツを7試合で、今回のチェスのスケジュールは完全に終了です。
大会初日にも見た路上ペインターの作品。これだけ並んでいると壮観です。やっぱり買っても良かったかな~。
こちらはセルビアの宿泊証明書。こちらをゲットせずに出国しようとすると、列車内で捕まって罰金、もしくは家庭裁判所送りになる可能性があります。チェックなんかされなかったよ~という声もよく聞きますが、私の友人は昨年6月にひっかかりました。用心のために持っておき、何もなければ話のタネにするのが良いかと思います。セルビアに行く予定のある皆さんはご注意を!
ブリッツ大会が終了したのが午後4時。ブダペストの戻る夜行列車が出るのが午後11時半です。7時間半も暇でしたが、周りを歩いてまだ見ぬ教会をチェックしたり、駅に戻るルートを確認していたり、お土産を考えていると時間はあっという間に過ぎ、ノビサド最後の夜は更けていきました。前日、土曜日の夜に比べると、少し人通りが少なかったようにも感じます。
昨年6月にベオグラードに行った際は、Misha の隠れ家に半軟禁状態だったので、(ベオグラード中心地からは少し離れており、夜出歩いてはいけないと言われていました。) 1人でゆっくりとセルビアの町中を周れたのは今回が初めてでした。6泊7日という短い期間でしたが、自分なりにセルビアを楽しめたように思えます。また機会があれば、今度はMisha とともにセルビアのトーナメントに参加してみたいですね。次回はレイティングも稼げますように!
2 件のコメント:
>GM の自力で大逆転
そういう言い方もあるでしょうが普通は「地力」でしょうね。
ご指摘ありがとうございます。修正しておきました。
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