11月に入り、ノビサドでの大会も4日目を迎えました。この日はGM Dobrov との1試合が午後からあるのみなので、午前中は再びノビサド市内を散策してみることにしました。またペトロバラディン要塞に行くのも芸がないので、どうしようかと思っていると...
観光案内所を発見したので、いまさらながらノビサドの地図をゲット。案内所のおばさんは親切で、安くておいしいセルビア料理の店も教えてくれました。こちらは後ほど。ちなみに日本人がこの案内所に来るのは今月3人目だと言っていましたが、11月に入ったことに気づいていなかったのか、この日だけで3人来たのか。
ドナウ川沿いをしばらく歩き、再び中心街に戻ろうとまだ見ぬ路地を進んでいたところ、割と大きな市場を発見。ケチケメートでもそうでしたが、ハンガリーやセルビアの皆さんは、スーパーだけでなくこうした場所を利用して食材を手に入れるのが日常なんでしょうね。私はキロ100ディナールのバナナを1房、ちょうど1kg 購入しました。
お昼は偶然見つけた、地元民のためのような店にふらりと入ってみました。メニューも店員がしゃべるのも全てセルビア語でしたが、英語の喋れるお客さんのヘルプでなんとか無事にポークバーガーを注文。会場近くのピザはおいしいですが、さすがに他のものも食べたかったので助かりました。
試合前最後の発見はこちら。ホテルのような立派な建物ですが、なんと中に入ってみると本屋でした。ギャラリーのような広いスペースに本はわずかで、一般の本屋とは何か違う雰囲気を感じました。チェスの本はセルビア語で書かれた1冊のみ。なかなか面白いスタディが載っていました。また時間のある明日にでも、チェックしに行ってみようと思います。それでは試合へ。
Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
Memorijal Milja Vujovic GM (6)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. f3 Qb6 4. a4 e6 5. a5!?
Memorijal Milja Vujovic GM (6)
私の経験上、まさかこの変化は指されないだろうと思ったものほど、なぜか大事な試合で指されるものです。11月最初の試合がFantasy になるとは思いませんでしたが、考えてみれば、ロシアのGM, Timofeev, Nepomniachtchi らが最近この変化を指しているので、Dobrov がその影響を受けていたとしても何ら不思議はありません。
5... Qc7 6. c4!? dxe4 7. Nc3 Nf6! 8. fxe4 e5
白のセンターに対抗するためにポーンを突き直しますが、白もポーンばかりついているので問題はないはずです。時間をたっぷりと使いましたが、なんとか満足な形に持ち込めそうです。
9. Nf3 Nbd7 10. d5?! Bb4!
この手で多少困るのではないかと思いつつも、ここでドローオファー。Dobrov が30分以上の長考をする間、私も白にあまり良い手がないことを再確認しますが、彼は試合を続けることを決断します!
11. Qa4!? Bxc3+ 12. bxc3 Nxe4 13. Ba3 c5?
黒マスビショップの利きを完全にシャットアウトするつもりでこの手を指しましたが、c5 はナイトにとって絶好のアウトポストでもあるため、それを潰してしまうのはもったいないでしょう。13... Ndc5 14. Bxc5 Nxc5 15. Qb4 と進めば、まだまだ実戦的には難しいですが、白のポーンの代償は十分ではなさそうです。
14. Bd3 Nd6 15. O-O O-O 16. Ng5
Dobrov は昨年、Timofeev 相手に3ポーンをサクリファイスして勝つほどの鋭いアタッカーです。それでもこれはさすがに受けきれると考え、慎重に正しいディフェンスを探します。
16... h6 17. Bh7+?! Kh8 18. Qd1 Nf6
18... Qd8!? も考えましたが、この手を入れずにナイトをf6 に置けるならば、それに越したことはありません。
19. Bc2 Bg4 20. Qd2 Nxc4?
20... hxg5! 21. Qxg5 Nde8! 22. Rxf6!? Nxf6 23. Rf1 Qd6 24. Qh4+ Bh5 25. g4 Nxg4 26. Qxh5+ Nh6-/+ がコンピュータの指摘で、黒は駒得による優勢をキープできます。全然読み切れません!
21. Qd3 Nxa3 22. Rxf6 g6
20... Nxc4 を指したタイミングでは、ここで22... Nxc2 と指せば問題ないと思っていましたが、ナイトがg5 にいるため、h7 のメイトスレットが消えていませんでした。
23. Qg3??
Dobrov が試合後にひどかったとコメントしたのはこの手です。私もすでにかなり時間切迫ながら、これはメイトにならないだろうと読み切り、ビショップを頂いておくことにします。
23... Nxc2 24. d6 Qd7 25. Qxe5 Kg8
25... Rfe8! (もう1つのルークばかりを考えており、この手を失念していました。) 26. Nxf7+ Qxf7 27. Rxf7+ Rxe5-+ これで白は早々にどうしようもありませんでした。
26. Qd5 hxg5?!
26... Bf5!-+ ならばg6 を安全に守ることができます。大きな駒得から、久々のGM に勝ちが目の前にちらつき、正確な手が指せなくなっています。
27. Rxg6+ Kh7 28. Rf6 Bh5 29. Qxg5 Bg6-+
白のアタックをこれで受けきり、2ピースアップの黒が勝利は揺るぎないだろうと思っていました。しかし、何があるかわからないのがチェスです!
30. Raf1 Qe8! 31. Kh1 Qe3 32. R6f4 Kg8 33. h4! Rae8?
h4-h5 に対してどうビショップを守れば良いか、残り数秒まで考えても閃きませんでした。33... Rfd8! 34. h5 Rxd6 35. hxg6 Rxg6-+ とビショップを返しながらも、2ポーンを取ってルークを活用するのが正解で、白はこれ以上アタックを続けるのが難しくなります。
34. d7 Rd8 35. h5 Rxd7 36. hxg6 f6? 37. Qh5 Qe7?
すでに黒のアドバンテージはわずかなものになっています。37... Qxc3! 38. Rh4 f5 (これでh8 のマスを守るという発想が出ませんでした。) 39. Rc1 Re8 40. Rxc2 Re1+ 41. Kh2 Qe5+ 42. g3 Re3=/+ ならば、黒は2ピースを返して、わずかな駒得とイニシアチブのみです。
38. g7?
Dobrov が見落としたのは、38. Rh4! Qg7 39. Qf5!+- とルークをh7 に突入させる変化で、こうなれば2ピースダウンからの大逆転に成功です。
38... Qxg7! 39. Qe2?
さすがにやりすぎです。39. Rg4 Ne3! (この手があったのは、私にとって大きなラッキーでした。) 40. Rxg7+ Rxg7 (次に、41... Rh7 と41... Nxf1 がダブルスレットになっている。) 41. Rxf6! Rxf6 42. Qe8+ Kh7 43. Qxe3= こうして2ルーククイーンのイコールポジションにするのが、白としてはベストチョイスだったでしょう。
39... Qh7+ 40. Kg1 Rg7?
2R 同様、時間切迫ではとんでもない手が飛び出します。g2 への反撃は黒が勝つための重要なアクションだと思いましたが、これでは先に黒キングが死にます!
41. Qc4+?
41. Rxf6+- f6 の守りは1つあれば十分だと思っていましたが、なんとバックランクメイトがあるではありませんか。これをDobrov が見逃したのは、私としてはとても意外です。
41... Rff7 42. Qe6 Qg6 43. R1f2 Qg5 44. a6 bxa6 45. Qe2 Re7
ここはナイトを逃がすべきですが、完全に冷静ではなかったですね。45... Na3! 46. Qxa6 Rd7! 47. Qe6+ Kh8 48. Qe8+ Kh7 49. Qe4+ Rg6-+
46. Qc4+ Ref7 47. Rxc2
何事もなくナイトを取られました。一時期は2ピースアップだったのに不思議でしょうがありません。しかし、まだポーンの多い黒は、勝ちを諦めずに試合を続けます。
47... Qg3 48. Re2 Rg6 49. Rh4 Kg7 50. Rh7+!
次に7段目でルークを振られてはたまらない白は、ここでルークを交換しに行きます。一気にキングが危険になった私は、互いのパペチュアルの筋を考えながら、とにかくキングは死守するように指そうとします。
50... Kxh7 51. Qxf7+ Kh6 52. Qf8+ Kh5 53. Qxc5+ Rg5
より簡単だったのはクイーンを挟む手ですが、1つ勘違いをしていました。53... Qg5 54. Qxa7 (54. g4+? Kxg4 55. Rg2+ Kh5-+ 黒はクイーンを取り返せるので、このポーンエンディングは黒勝ちです。54. g4+ が有効でないと読めていれば、間違いなくクイーンを挟んだでしょう。)Qc1+ 55. Kh2 Qf4+= ならばドローです。
54. Qe7 Qd3! 55. Re3 Qc2??
最後のミスです。単純にチェックして、黒は問題ありませんでした。55... Qb1+ 56. Kh2 Qb8+ (恥ずかしながら、このマスでチェックができることを見落としていました。) 57. g3 (57. Kg1 Qb1+=) 57... Kg6!=
56. Qe8+ Kg4 57. Qe6+
57. Rg3+! Kxg3 58. Qe3+ Kg4 59. Qf3+ Kh4 60. Qh3# このような勝ち筋もありました。
57... Qf5 58. Re4+ Kh5 59. Qxf5 1-0
え、ここでクイーン交換? と思いましたが、次にポーンフォークでした。かつてカペルで2ポーンアップからGM に負けた時は、馬場さんと弘平くんを置いて1人でホテルに帰るほどの荒れぶりでしたが、2ピースアップから負けると逆にどうしようもなくなります。チェスというのは、どんなポジションからでも様々なことが起こることを再確認しました。
R1 10/29 17:00 Bodiroga, P (IM, SRB, 2387) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R2 10/30 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sredojevic, I (FM, SRB, 2402) 0-1
R3 10/30 16:30 Stankovic, M (SRB, 2408) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R4 10/31 10:00 Dimitrijevic, A (WFN, BIH, 2263) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
R5 10/31 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Rudakov, A (RUS, 2362) 1/2-1/2
R6 11/01 16:30 Dobrov, V (GM, RUS, 2528) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1-0
R7 11/02 10:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Kostic, V (GM, SRB, 2436) 1/2-1/2
7R の結果もすぐに伝わるので書いてしまいますが、GM Kostic とはドローでした。こちらの試合は、明日の記事に回すとします。今日は2時間後からもう1試合あるので、そろそろ初勝利をゲットし、戦績をせめてイーブンに戻して、ブダペストに戻ろうと思います。
夜は観光案内所で紹介された店に行ってみました。セルビア語で緑のテーブルを意味する名前の店は、そのまんま緑のテーブルがぽつんと置いてあります(笑)
頼んだのは200g のチキングリルが入ったハンバーガー。地元の人に愛されるのが納得の味と値段でした。ちょっと待たせるけどね!
4 件のコメント:
(T_T)
まさにそんな感じです。
今年はロンドンに行くのでしょうか・・
そう、ロンドン誘われてるんですよね。行くならばそろそろ決めないと...
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