2014/12/31

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM 4th round


今年もいよいよ最終日、12月31日ですね。日本の皆さんは今頃、紅白歌合戦でも見ているでしょうか。こちらは変わらず、毎日試合をこなす日々ですが、街の雰囲気は完全に年末のものです。年の瀬のケチケメートでは、こうしたマスクやかつらをよく見かけます。一昨年の年越しはブダペストでしたが、そこでもヴァーチ通りでこうしたマスクが売られ、多くの人が騒ぎながら新年を迎えていたのでした。

大晦日前日、30日の相手はセルビアのGM Ilincic です。もうすっかりケチケメートでは顔なじみですの相手ですが、毎回違った試合展開で勉強させてもらっています。今大会も先に白を持てたため、トーナメントをリードするためにも、勝負を仕掛ける大事な一戦となります。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434)
Chess in Kesckemet 2015 New Year GM (4)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. a4 e6 6. g3 Bb4!?



なんでも指せるIlincic は、前回のDutch Defence とはうって変わり、ソリッドなa6 Slav を選択してきました。オリンピアードで指した、6... dxc4 とは違い、こちらは典型的なCatalan の形になります。

7. Bg2 O-O 8. O-O Nbd7 9. Qb3 a5 10. Rd1 Qe7 11. Bf4 h6?


ゲーム序盤、Ilincic の不用意な一手により、早々に私がチャンスを掴みます。

12. c5!



これはBf4-Bd6 の跳びこみから、エクスチェンジを取るスレットを作りながら、同時にb4 のビショップの逃げ場を無くし、Nc3-Na2 からポーンを掠め取るスレットも作っています。e6-e5 といった気になる反撃があるものの、ここは十分に白が良くなると読み、思い切ってポーンを突いてみることにします。

12... Ne8 13. Na2 e5 14. Nxe5 Nxe5 15. Nxb4 Ng6 16. Nd3 Qxe2 17. Re1


白は駒数がイコールなものの、ダブルビショップを得て優位に立っています。ここからは、黒マスビショップを返してしまっても、ピースの展開の早さ、具体的にはルークの連結の早さで押していこうと考えました。

17... Qh5 18. Be5!? Qg5 19. Re3 Qd8 20. Rae1 Nxe5 21. Nxe5 Nc7 22. Qd3!?



白は黒マスビショップを返しましたが、eファイルをルークでコントロールし、e5 に強力なナイトを得て、やはりアドバンテージを保っています。ここからのプランは難しいですが、f4-f5 といったポーン突きを軸に、キングサイドで押していこうと考えました。b7 のアタックから離れるのは、勿体ないようにも思えますが、黒はどうせ、Nc7-Na6-Nb4 とナイトを回し、b7 を守ることができます。

22... Be6


ここはさすがに、22... Na6?? 23. Nxf7! Kxf7 24. Qh7+- というトリックに引っかかる相手ではありませんでした。このビショップは、f4-f5 からターゲットにもできますが、Qd8-Qc8 を警戒し、ゆっくりとfポーンを伸ばすことにします。

23. h3 Na6 24. f4 Nb4 25. Qe2 b6 26. Ng6



私は残り時間が10分を切り、確信はなかったものの、b7-b6 を無視してキングサイドで勝負を仕掛けることにします。

26... Re8 27. f5?!


ところが、この勝負所でお互いにミスが続きます。私はこのf4-f5 からピースを交換すれば、白にチャンスがあると考えていました。しかし、実際には27. Rc1 Na2 28. Rc2 Nb4 29. Rc1= ぐらいで、白は我慢するしかありません。

27... Qf6?



27... bxc5! 私達はどうしたことか、こんなシンプルな手を見落としていました。ナイトとビショップを取り合うのは、このポーンを取る手を先に入れてからでも遅くはありません。こうされると、白はe6 をルークで取れなくなってしまいます。 28. fxe6 fxg6 29. e7 Qb6 30. dxc5 Qxc5 31. Kh2=/+ このポジションは、わずかに黒が良いとのコンピュータ評価ですが、実際にはe7 のパスポーンの存在が不気味で、正確に指すのはお互いに難しいでしょう。

28. fxe6?


ここも、白は慌ててビショップを取る必要はなく、b6 のポーンを落ち着いて取っておくべきです。私はd4 を取らせるのは、直感的におかしいと考えましたが、後でキングが避ければ、どうということはありませんでした。28. cxb6! Qxd4 29. b7 Rab8 30. Kh2!+-

28... fxg6 29. Re5



さぁここから、さらに難しいポジションになります。白はe6 のパスポーンと、e,f のオープンファイルに運命を託しますが、ビショップの働きに不満があり、どちらが良いのか全く分かりません。

29... bxc5 30. Rf1 Qd8 31. Qg4!?


31. dxc5 Qe7 32. Qe3 では面白くないと思った私は、あくまでキングにプレッシャーをかけて、1ポーンの代償を図る作戦を取ります。

31... Re7?



7段目を先に守っておく手はいかにもありそうですが、g6 のポーンがあるかないかでは、黒キングの守りの厚さに歴然とした差があります。31... Kh7! 32. Rf7 Re7 33. dxc5 Qe8 ならば、黒にチャンスがあったでしょう。

32. Qxg6 Qe8 33. Qg4 Kh7 34. h4!?


どこかでポーンを取り返したかったものの、うまい方法が思いつかず、アタック優先で頭をひねり続けます。h3-h4 の狙いは、h5 までポーンを進めてg6 のマスを抑えるだけでなく、Bg2-Bh3 と指して、ビショップを使い直すことにあります。しかし、ここでは34. dxc5!? Nd3 35. Qf5+ Qg6 36. Rxd5!!


Analysis Diagram

少しだけ考えましたが、成立しているのかまったく自信がなく、切り捨てた変化です。36... cxd5 37. Qxg6+ Kxg6 38. Bxd5 Rd8 39. Be4+ Kh5 40. Rd1 Rxe6 41. Bxd3= このポジションをエクスチェンジの代償有りで、満足に白が指せると読むのは、時間切迫ではとても無理なことです。

34... cxd4 35. h5 d3 36. Bh3 Kh8 37. Ref5!



これはもしかすると、チャンスが巡ってきたのではないかと考えました。e6 のポーンをビショップで守ったことで、白はルークがパスポーンのお守りから離れ、fファイルに重ねることができました。これにより、白の念願だったルークの7段目、8段目への跳びこみが、現実味を帯びてきます。

37... Qg8?


Ilincic は、知識や経験など、総合的に判断すれば、まだ私よりも強いでしょう。しかし、前トーナメントで私に敗れた試合でもそうでしたが、最も丁寧なディフェンスが求められるポジションで、時間をたいして使わずに適当な手を指してしまうようでは、この先もレイティングが下がってしまうに違いありません。

38. Rf7! Rae8


38... Rxf7 39. exf7! Qf8 40. Qg6+- は、次にBh3-Bf5 から、h7 のメイトスレットを作って白勝ちとなります。37... Qg8 が悪い理由は、39. exf7 の際に、クイーンがアタックされてしまうことです。黒として、白がf7 をポーンとルーク、どちらで取るかを見極めてから、g7 とh7 をディフェンスしにいくのが正解でした。

39. Qh4!+-



残りは48秒。この手を指して勝ちを確信しました。g8 とe8 のクイーン、ルークの位置は最悪で、f7 を取った際にポーンフォークになってしまいます。そして、黒のe7 のルークはどこにも逃げられず、白の決定的な駒得が確定します。

39... Rxe6 40. Bxe6 d2 41. Qd4 Rxe6 42. Rf8 Re2 43. R1f7!


クイーン対ナイトなので、何も問題なく勝てるはずだと自分に言い聞かせつつ、丁寧なフィニッシュを探します。黒にプロモーションを許しても、先にメイトにできるこの手を見つけて、ようやく人心地つくことができました。

43... Qxf8 44. Rxf8+ Kh7 45. Rf7 1-0



大晦日、今年最後の更新で、こうした白星のゲームを日本に届けることができたこと、とても嬉しく思います。この日はアンダンテで行方不明になったナイトも、なぜかシャンプーの袋の中から出てきたので、何か良いことがあると思っていました(笑)

12/27 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 0-1
12/28 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416) 1-0
12/29 15:00 Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/30 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) 1-0
12/31 15:00 Payen, A (IM, FRA, 2333) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/01 16:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/02 15:00 Eggleston, D (IM, ENG, 2416) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/03 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Groszpeter, A (GM, HUN, 2456)
01/04 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/05 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333)

+1 Kojima, Payen
0 Fominyh, Eggleston
-1 Groszpeter, Ilincic

この日はEggleston がGroszpeter を破り、4R まででGM 全員に土がつきました。今回は完全にIMたちに勢いがあり、後半戦に入っても、私たちで上位3名を争うことになるかもしれません。

さぁそして、これから今年最後の公式戦です。初戦で勝ったリードを保ち続けているフランスのIM Payen が、前半戦最後の相手となります。試合の内容と結果もですが、明日は行きつけのイタリアンレストランが閉まるため、どこでブログを書けば良いのか、そしてあらゆる店が閉まる元旦はどうしたものか、気にしなくてはいけません(笑) それにしても、どうして会場のWi-Fi は、iPhone ではキャッチできるのに、パソコンではだめなのでしょうか...


この日は嬉しい再会がありました。昨年、ノビサドの大会で出会った、セルビアのGM Sinisa Drazic が、チェスグッズの取引のため、ケチケメートを訪れたのです。彼はGM としてプレーする傍ら、ノビサドで多くの大会を手掛けている人物です。またセルビアに足を伸ばす際は、お世話になることでしょう。

2014/12/30

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM 3rd round


ここ数日のケチケメートは、凍えるような寒さになっています。気温は17度で暖かいと記事に書いたのは、つい9日ほど前のはずですが、現在は昼間から氷点下と大変冷え込み、外に出る気力を無くしています。そんなわけで、写真がありません(笑)

3日目の相手は、2年前のCAISSA で対戦した、ハンガリーのGM Groszpeter です。あの時、彼との試合をドローで乗り切っていれば、2つ目のIM ノームはさほど苦労しなかったでしょう。再戦を望んでいたGM とのリベンジマッチです。

Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
Chess in Kesckemet 2015 New Year GM (3)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Nf6 4. e5 Ne4 5. d4 Qa5!?



Caro-Kann Two Knights Variation は、ハンガリーで脈々と受け継がれるCaro-Kann 対策の1つであり、ハンガリー国内の1. e4 プレーヤーと、Caro-Kann プレーヤーが、火花を散らして対戦と研究を重ねてきた歴史があります。Groszpeter は、2年前こそAdvanced Variation でしたが、この日はTwo Knights Variation が来ると予想していました。細かいセオリー勝負よりも、実力勝負にしたいのであれば、ベストのチョイスでしょう。

私はかつては最もオーソドックスな、3... Bg4 を指していましたが、現在はそれをやめ、3... Nf6 を指しています。この日は、5... Nxc3 6. bxc3 e6 と指して、黒マスビショップを失っていないFrench Winawer の形にすることも考えましたが、よりCaro-Kann らしい、本譜の変化を指してみることにしました。これもハンガリーのマスターたちによる研究です。

6. Bd2 Nxd2 7. Qxd2 Bf5 8. Bd3 Bxd3 9. Qxd3 e6


黒マスビショップを失った白は、ピースの展開の早さとスペースをいかす勝負に出ますが、Caro-Kann 特有の堅いポーンストラクチャーは、それらを十分なアドバンテージにさせません。

10. O-O Be7 11. Ne2 Nd7 12. c3 O-O 13. Nf4 c5



展開で劣る黒は、丁寧に準備をしながら、ついにc6-c5 を仕掛けます。クイーンサイドからのカウンタープレーを作りつつ、Nf4-Nh5 からのダイレクトなキングサイドアタックにも警戒しておきますが、2つのビショップをすでに消してている以上、白の攻撃は問題なく捌けるはずです。

14. Rfe1 Rac8 15. g3 Qb6


この手は少し意外だったと、Groszpeter からコメントを貰っています。15... b5!? から、b5-b4 を見せ、そのうえでクイーンを退く選択肢もありえたでしょう。

16. Re2 cxd4 17. Nxd4 Qc7!?



実を言えば、d4 をナイトで取り返す手を多少見くびっていました。こうなると、黒はb7-b5 とすぐに仕掛けられないですし、cファイルをすぐには活用できません。17. cxd4 Nb8! と指して、ナイトを組み直すはずだった予定を修正する必要があります。そこで私が考えたのは、e5 を狙いつつ、クイーンを交換してしまうプランです。

18. Rae1 Qc4 19. Qf3 Qxa2


なるほどと思いながらも、ここは予定通りにポーンを取るしかありません。白のアタックは気合でしのぎ切るつもりです。

20. Qg4 Qa6?


この手を指したのは、当然e6 を守り、ナイトのサクリファイスを避けるためですが、20... Nb6! と指していれば、本譜のd5 取りも、e6 を取った際にナイトがターゲットになることも避けています。それでも白には、キングサイドに集めたピースで、ポーンの代償のある面白いポジションでしょう。

21. Nxd5!



この手をGropszpeter は、非常に慎重に読んでから指してきました。私も彼がd5 とe6 のどちらを取るのか、必死で読んでいましたが、確実にアドバンテージを白が得られるのは、こちらで正解です。

21. Nfxe6!? fxe6 22. Nxe6 Rf7 23. Ng5!? Rff8! (23... Rc4 24. f4 Qb6+ 25. Kg2 Bxg5 (25... Nf8? 26. Nxf7 Kxf7 27. e6+ Kg8 28. Qf5 Qd6 29. Re5+/- 検討ではこの変化がメインで出ましたが、私はこれを黒で持ちたくはありません。) 26. e6 Rf8 27. e7 Bxe7 28. Rxe7 Qxb2+ 29. R1e2 Qxc3 30. Qxd7+/=) 24. Ne6 Rf7 25. Ng5= シンプルにルークが退けば、白にはアドバンテージがなく、同じポジションを繰り返すしかありません。

21... Rfe8 22. Nf4?!


私は、21... Bd8 と本譜で迷っていましたが、この手を指されるのであれば、本譜のルークを回す手で正解だったと確信でき、一安心です。私が恐れていたのは、22. Nxe7+ Rxe7 23. f4+/= と指す手で、次のf4-f5 はシンプルですが、黒からうまいディフェンスがなく、白が攻勢を保てるでしょう。他には、22. Rd2! と指す手も良く、白は開いたdファイルにヘビーピースを重ね、手を作りにいくことができます。

22... Bf8 23. h4 b5 24. Nf3 Qb7 25. Ng5 1/2-1/2



最後はGroszpeter からオファーをされ、それを受けてゲームを終わらせました。キングサイドのアタックさえ捌けば、b5-b4 からチャンスを作れそうですが、持ち時間が少なく、あまり自信がありませんでした。それでも私としては、あまり持ったことのないタイプのポジションだったので、実際に時間をたくさん使って考えることができ、良い勉強になっています。

12/27 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 0-1
12/28 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416) 1-0
12/29 15:00 Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/30 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434)
12/31 15:00 Payen, A (IM, FRA, 2333) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/01 16:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/02 15:00 Eggleston, D (IM, ENG, 2416) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/03 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Groszpeter, A (GM, HUN, 2456)
01/04 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/05 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333)

+1 Payen
0 Groszpeter, Fominyh, Ilincic, Kojima
-1 Eggleston

この日は、Eggleston がFominyh を破って初白星。GM にも負けが付いています。明日は前トーナメントで、白で勝ち、黒で負けたIlincic ですので、気合いを入れて、ポイントを取ってこようと思います!


夕飯はDing のお母さんに作ってもらい、2階の自室で食べました。前回のトーナメント中もそうでしたが、日本のプレーヤーにも、ご飯を分けてあげようとするマレーシアのDing 母と、それを快く思わない中国のFang 母の間で争いがあり、今夜は隔離されての食事でした。まるで家族に内緒で、こっそり飼われているペットのよう...

2014/12/29

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM 2nd round


この日は朝起きて部屋を出ると、10人のプレーヤーがすでに試合を始めていて、少し焦りました(笑) この年末年始のトーナメントも、GM, IM, FM の各クラスで試合が行われており、会場は様々な国籍のプレーヤー、そしてそれを見守る家族で賑わっています。特にIM クラスは7人のプレーヤーによる、14R ダブルラウンドロビンです! 私が言うのもなんですが、こんな年の瀬まで試合をするとは、皆さん、本当にチェスが好きですね!

前日にFominyh に負けた私は、再び白を持って第2戦、イングランドのIM Eggleston との試合に臨みます。これから自分も2400台になる以上、同じレベルのプレーヤーに、白で連敗は許されません。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416)
Chess in Kesckemet 2015 New Year GM (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 b6 3. g3 Bb7 4. Bg2 e6 5. O-O Be7 6. d4 O-O 7. d5!?



このシャープな1ポーンサクリファイスラインは、7. Re1 の変化と並び、Quenn's Indian 対策として興味があり、かつて研究したことがありました。今回の遠征では、7. Re1 を使うつもりでしたが、前夜に気が変わり、徹底的にこの変化を調べ直して、実戦投入です。

7... exd5 8. Nh4 c6 9. cxd5 Nxd5 10. Nf5


黒が1ポーンをキープするために、ビショップの働きを悪くする(ビショップと同じ色にポーンを置く) 間に、白はナイトを5段目まで進めます。g7 を狙いつつ、d6 への跳びこみを見せるこのナイトは、7. d5!? サクリファイスのラインのキーピースとなります。

10... Nc7 11. e4 d5 12. Nc3 Nba6!?



さぁ困りました!(笑) 12... Bf6 はかなり調べたつもりでしたが、こちらには対策が浅かったです。それでも、d5 にプレッシャーをかけ続けるアイディアと、白の基本的なピースのセットアップは同じはずです。どこかでQd1-Qg4、もしくはQd1-Qh5 といったダイレクトなキングサイドアタックを実行するかは、迷うところでしょう。

13. Re1 Bf6 14. exd5 cxd5 15. Bf4


ラッキーなことに、これで12... Bf6 のラインに戻りました。白は素早いピースの展開と、d5 へのプレッシャーで、十分にポーンの代償があるポジションですし、d5 を取り返してもアドバンテージのある形です。

15... Bc8 16. Nd6 Be6 17. Nxd5 Bxd5 18. Bxd5 Nxd5 19. Qxd5 Bxb2 20. Rad1 Qd7?



ここで私の準備を外れますが、すぐにこの手が悪手であることに気が付きました。20... Nc5 (b2 のポーンが消えたことで、c5 はナイトにとって、非常に安定したマスとなります。) 21. Re8!? (フィンランドのGM Nyback のアイディアですが、ドローにしかなりません。) 21... Rxe8 22. Qxf7+ Kh8 23. Qd5 Qd7 24. Nf7+ Kg8 25. Nh6+= これでドローになるということは、意外なことにEggleston も知っていたようで、試合後に確認しました。彼としては、勝負にいくつもりの20... Qd7 だったのでしょうが、これがすでに致命的なミスとなります。

21. Bg5!


シンプルですが、白に十分なアドバンテージをもたらす1手です。白はe7 にビショップを入れても、ルークを入れても勝てる形で、黒には満足なディファンスがありません。皮肉なことに、ルークをつなげようとクイーンを上げたことで、白のBf4-Bg5 に対して、Bb2-Bf6 が指せなくなっています。

21... Nc7


21... Bf6 22. Bxf6 gxf6 23. Qh5!+- ならば、白は次にNd6-Nf5 で、黒キング決定的な攻撃を仕掛けることができます。

22. Qb3! Ne6 23. Nf5!



慎重に読んだ末、これでゲームオーバーだと結論付けます。ナイトをe6 まで回して、eファイルをふさぎつつ、g5 のビショップをアタックするのが黒のディフェンスのアイディアでしたが、白はナイトをf5 に退けば、b2 のビショップを取った後、g7 へのメイトスレットを作ることができます!

23... Bd4 24. Be3!


これでピースを取った白は、後は黒の反撃(とも呼べない無駄なあがきですが...) を捌いて、勝利を収めます。

24... Ng5 25. Nxd4 Nh3+ 26. Kg2 Qg4 27. Qd5 Rad8 28. Qf3 Qc8 29. Nf5 Rxd1 30. Rxd1 1-0



初戦、白で敗れたときはどうなることかと、さらに言ってしまえば、IM タイトルが確定したことで、気が抜けてしまったのかと不安になりましたが、この勝利でその思いを払拭できました! イングランドのIM Eggleston はまごうことなき実力者ですが、そんな彼が連敗スタートになるので、やはりGM クラスは一切の油断ができません。

12/27 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 0-1
12/28 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416) 1-0
12/29 15:00 Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/30 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434)
12/31 15:00 Payen, A (IM, FRA, 2333) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/01 16:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/02 15:00 Eggleston, D (IM, ENG, 2416) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/03 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Groszpeter, A (GM, HUN, 2456)
01/04 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/05 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333)

+1 Fominyh, Payen
0 Groszpeter, Ilincic, Kojima
-2 Eggleston

さぁ、今日は2年ぶり、Groszpeter とのリベンジマッチです。Ilincic とGroszpeter が揃うと、Sax のことを思い出してしんみりしてしまいそうですが、そのこととは別に、試合は試合です。最近はSicilian を指しますが、かつてはCaro-Kann のスペシャリストだったGroszpeter に、Caro-Kann で挑んできます!


勝利を収めて元気のはずですが、それはそれ、これはこれということで、ティラミスをいただきます。Wi-Fi を繋ぎに来ているこのイタリアンレストランも、この日は接続が不安定でした。ここもダメになった場合、私はどこでブログを書けば良いのでしょうか(笑)

2014/12/28

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM 1st round


短いクリスマス休暇を終え、再びケチケメートに戻ってきてしまいました。今年はこの町で、初めての年越しを迎えます。この大会が終われば、ロンドンに寄り路をして、1/13 頃に帰国する予定です。ロンドン行きについては、また後日の記事で説明しましょう。

年末年始のケチケメートは、発表通りの6名ダブルラウンドロビン。初戦の相手は、24日に試合をしたばかりの、GM Fominyh で、しかも色まで同じです! 3日前に勝ち損ねたゲームの指し直しに臨みますが、予想していない展開になりました。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
Chess in Kesckemet 2015 New Year GM (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. h3 Bd7 9. e4 e5 10. dxe5 dxe5 11. Be3 Be6 12. Qa4 b5!?



24日の試合では、オープニングがさっぱりだったFominyh ですが、この手を新手としてひっさげて再チャレンジです。実はこの手は、私も前回の試合中に少し考えていた、面白いポーンサクリファイスです。

13. cxb5 axb5 14. Qxb5 Nd4 15. Qxe5!?


私はクイーンサクリファイスを視野に入れ、果敢に2つの目のポーンを取りにいきます。15. Nxd4 exd4 16. Rfd1 c5 17. Bg5 Rb8 となれば、黒には十分なポーンの代償があるでしょう。

15... Nxf3+ 16. Bxf3 Nd5 17. Qxg7+!?



私はクイーンを捨ててダブルビショップを手に入れるのであれば、手に入れておくべきは黒マスビショップだと考えていました。17. Qg5 Bf6 18. Qh6 Bg7 19. Qg5= ならば、ドローにしかならず、白としてはやや面白みに欠けます。

17... Kxg7 18. Nxd5 c6


18... Bxd5 19. Bd4+! Kg8 20. exd5 ならば、ダブルビショップ+2ポーン vs クイーンというマテリアルになります。白はクイーンサイドのパスポーンを武器にしたり、c7 のポーンを狙うといったプランが明らかなのに対し、黒はどのような方針で指せば良いかが、少しわかりづらいでしょう。クイーンを捨てた代償は、十分にあると思います。

19. Nb4?



クイーンを捨てたまでは良かったものの、そこからの構想が変でした。19. Bd4+! f6 20. Nf4 Bf7 21. Rfd1 と指せば、黒は白マスビショップを残しているものの、上記のラインと同様に白は満足に戦うことができたでしょう。本譜では、私はh3 を捨てて、c6 を取り返し、クイーンサイドにコネクテッドパスポーンを作ろうと画策しましたが、それらの前進は遅く、キングの守りを弱めるほうが、痛手になってしまいました。

19... Qd6 20. a3 Bxh3 21. Rfd1 Qe6 22. e5


22. Rac1 Rfd8! このルークを素早く交換し、dファイルを奪うアイディアは強力です。23. Rxd8 Rxd8 24. Rxc6 Rd6 25. Rxd6 Qxd6 26. Nd5 h5-/+


22... Bg4!



のんびりとc6 を取り返そうとした私に対して、Fominyh のアイディアはシンプルかつ、強力でした。白マスビショップを交換してしまえば、白はキングの守りと白マスが非常に弱くなります

23. Bxg4 Qxg4 24. Nxc6 Rfc8 25. Rd6 Ra6 26. Nb4 Rxd6 27. exd6 Rd8!


この手を入れずに、h7-h5 でも十分ですが、d6 を失っても単純に負けてしまう白は、これでも困ってしまいます。

28. Bc5 h5!



この手が決定打となり、私は完全に負けを悟りました。h5-h4 からhファイルを開いても、h3 までポーンを指しても、黒のキングサイドアタックは強力で、白にはディフェンスがありません。

29. Rc1 h4 30. Nc6 h3 31. Bd4+ Kh7 32. Nxd8 Qf3 0-1


クイーンサクリファイスの判断は、勝負にいくために面白かったですが、その後が全くダメで完敗でした。ここまで3試合して、負けの無かったFominyh に初負けで、今大会、悔しい黒星スタートです。

12/27 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 0-1
12/28 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416)
12/29 15:00 Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/30 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434)
12/31 15:00 Payen, A (IM, FRA, 2333) – Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/01 16:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/02 15:00 Eggleston, D (IM, ENG, 2416) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/03 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Groszpeter, A (GM, HUN, 2456)
01/04 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
01/05 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333)

+1 Fominyh, Payen
0 Groszpeter, Ilincic
-1 Eggleston, Kojima

この日は私とイングランドのIM Eggleston が白を持って負け。彼も8月のこの大会、2つ勝ち越しで優勝した実力者ですが、GM クラスでは何が起こるか分かりません。GM 3人、IM 3人(1人は予定) のハイレベルトーナメントは、まだ始まったばかりです。


今大会に臨むにあたり、アンラッキーなことがいくつか。1つは手持ちのチェスセットのナイトが消えたこと。もう1つは、私のパソコンで、会場のWi-Fi に接続できなくなってしまったことです。仕方がないので、ブログを書くために近所のイタリアンレストランへ。氷点下になったこの日の夜、温かいお茶が身に沁みます。

2014/12/26

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM Tournament Information


ケチケメートでの長い10戦が終わり、ブダペストでのクリスマス休暇を満喫中の私ですが、明日にはもう、あの街に舞い戻ります。今年は自身初となる、ケチケメートの年越しトーナメントに参加するためです。12/27-1/5 のスケジュールで開催される次の大会、GM クラスのメンバーは以下のように発表されています。

Groszpeter, A (GM, HUN, 2456)
Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
Ilincic, Z (GM, SRB, 2434)
Eggleston, D (IM, ENG, 2416)
Kojima, S (FM, JPN, 2356)
Payen, A (IM, FRA, 2333)

Groszpeter とは2年ぶりの再会&対戦となります。Varga が抜けた代わりに彼が入り、他のGM 2人は同じ面子ですね。アメリカの2人に代わって入る、イングランドとフランスのIM 2人も強そうです。私の対戦相手5人の平均は、2421 と過去のGM トーナメントでも最高の数字で、1つ負け越しでもレイティングは+8 となります。12月前半のケチケメート同様、大きくレイティングを稼ぐチャンスですね。1月に入れば新レイティングが発表されますが、大会開始時の2356 で計算はされるはずですので、係数も20 のままだと思います。ハンガリー最後のトーナメント、頑張って戦ってきます!


そして私以外の日本のトッププレーヤーたちも、この年末年始、すでに動き始めています。年末を代表するトーナメント、アメリカ、ラスベガスで開催される、North American Open へと旅立っていったのは、トロムソオリンピアードのチームメイト、南條くんとAlex の2人です。(他にもいますかね?) 私も2011年に参加したこの大会は、アメリカの他のトーナメント同様にスケジュールはハードですが、クリスマスと年末のラスベガスの雰囲気を味わうことのできる、素晴らしい大会です。夏以降、不調の続く南條くんも、懐かしのアメリカの地で、IM としての実力を発揮して、レイティングを稼いできてほしいですね。

そしてもう1人、日本でも最注目の人物がヨーロッパに向かいます。年末の対局予定をなんとかやりくりした羽生さんは、スウェーデンのストックホルムで開催される、Rilton Cup に参加します。年内に終了するNorth American Open と違い、こちらは1/5 までの年越しトーナメントです。夏頃から今年の年越しトーナメントをどうするか、羽生さんと相談してきましたが、無事にRilton Cup に参加できることが決まり、本当に良かったです。昨年のポーランド同様、IM ノームを取れると信じていますので、来年の頭には、日本に3人のIM がいることを期待しましょう! 是非皆さん、日本から各大会の経過をチェックしてみてください。


本日のおまけ。ブダペストの市民公園には、巨大なスケートリンクが設置されていました。寒空でもよく晴れた今日は、たくさんのお客さんで賑わっています。ブダペストでゆぅくりできる日程もあまり残っていないので、懐かしの場所をいくつか、見て回ろうと思います。

2014/12/25

Chess in Kecskemet 2014 December GM 10th round


先に結果を書いてしまいますと、GM Fominyh との最終戦は、互いの内容が悪いながらもドローになりました。これを受けて私の最終結果は4勝1敗5ドローとなり、5回目のGM トーナメント参加にして、初優勝を収めています! それでは試合解説へ。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (10)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. d4 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. h3 Bd7 9. e4 e5 10. dxe5 dxe5 11. Be3 Be6



Grunfeld への対策はすべて無駄になり、まさかのKing's Indian でした。この変化はオリンピアードでも指しており、白のプランはしっかり理解しています。

12. Qa4 Qc8 13. Kh2 Re8 14. Rfd1 Nd7 15. Nd5!


ここはナイトが跳びこむことを遠慮する理由はないでしょう。次にRa1-Rc1 とまわし、白はひとまず満足なピースのポジションになります。

15... Ncb8?!



いかにも不自然なこの手は、やはり疑問手です。次にRa1-Rc1 がある以上、c7-c6 はナイトを追い返すスレットになりません。

16. Rac1 h6 17. Qa5! b6 18. Qd2 Kh7 19. Nh4!?


黒のポジションは明らかに崩れており、白は押せ押せです。19. b4 からクイーンサイドを押していくプランもありえますが、私は直接的にキングを攻撃しにいくことを決断します。

19... Nc6 20. f4 exf4 21. gxf4 Qd8 22. Qf2 Ne7?



黒はディフェンスが難しいところですが、これはひどいブランダーでした。ところが...

23. Kh1?


23. Nxe7! Qxe7 24. f5 gxf5 25. exf5+- 単純にピースが落ちています。私の勘違いは、e3 のビショップが浮いているので、eファイルを開ければこれが取られてしまうと思ったことです。実は黒のd7 のナイトも取れるので、やはり白のピースアップですね... こうしたシンプルな手が見えなかったのは、最終戦で少し集中に欠いていたからでしょう。

23... Ng8 24. e5 Kh8 25. Be4 Qc8 26. Bxg6?!



22手目の勝は逃したものの(試合中は気づいていませんが)、白は完全に局面を支配し、勝利は間違いないと思っていました。後は、19. Nh4 からの構想のフィニッシュとして、黒キングを追い詰めるだけでしたが、ここで細かいミスが出ます。残り時間は十分にありましたが、このクリティカルポジションで勝負を決めれば、ブダペストのクリスマスパーティー開始に間に合うと考え、攻めを焦ったことが、この試合の最大の間違いでした。26. Qg2 でh3 を守りつつ、g6 でのサクリファイスを強化しておくのがベターだったでしょう。

26... Nxe5!


26... fxg6?? 27. Nxg6+ Kh7 28. Qc2+- は間違いなく白勝ちですが、ビショップを捨ててから、この手の可能性に気づき、愕然とします。ナイトが動いて、クイーンをh3 に当てるアイディアは、26... Nf8 しか考えておらず、これに対しては普通にビショップを退けば勝勢です。

27. fxe5 Bxd5+ 28. cxd5?



私は試合中、このビショップを取るのは当然だと考え、ポーンとルーク、どちらで取るべきかなのに読みの焦点を絞りました。ところが、正解はキングを動かす手です。ナイトを取られ、チェックしてきたビショップを、取り返さずにキングが逃げるというのは、信じられない1手でしょう! 28. Kh2!! Bxe5+ 29. Bf4 Bxf4+ 30. Qxf4 Re2+ 31. Kg1 fxg6 32. cxd5 Qxh3 33. Rxc7+-


Analysis Diagram 1

こうして整理してみれば、白のキングは危なく見えても問題なく、逆にどうしようもないのは、黒側だということが理解できます。しかし、これを読み切るのは無理でした。

28... Qxh3+ 29. Qh2! Qxh2+?


イコアライズのチャンスを貰ったFominyh ですが、さらにミスを重ねます。29... Qxe3! 30. Re1 Bxe5! 31. Rxe3 Bxh2 32. Rxe8 Rxe8 33. Kxh2 Re2+ 34. Kh3 fxg6 35. Rxc7= ならば、黒はドローに持ち込めるでしょう。おそらく、30... Bxe5! を見落としていたのではないかと思います。

30. Kxh2 Bxe5+ 1/2-1/2



ここでこの試合、Fominyh から最後のトリックがありました。それは、ドローオファーです! 攻撃を捌かれ、e5 まで落ちたことで、私は黒が優勢に転じたと考えました。そのため、ここでの黒からのドローオファーはありがたいと考え、受けることを決めます。ちなみに、私の残り時間は5分ほどでした。

ところが、コンピュータでチェックしたところ、最終局面は白良しでした。そのような読み違いが自分にも起こりうることに驚き、また勉強させてもらいました。31. Kh3! Bf6 (31... fxg6 32. Nxg6+ Kh7 33. Nxe5 Rxe5 34. Rxc7+ Kg6 35. Rg1++/- この変化が白良しであることは理解できます。) (31... Bxb2 32. Bd2! Bxc1 33. Bc3+!(この切り返しのチェックは実に見えづらいです。) 33... f6 34. Bxe8 Rxe8 35. Rxc1+- ピースアップの白は、問題なく勝てるでしょう。) 32. Bd4! Bxd4 (32... fxg6? 33. Rxc7+-) 33. Rxd4 fxg6 34. Rxc7+/-


Analysis Diagram 2

やはり、上記の変化と似たこのポジションになります。白は次にg6 を取れるので、パスポーンを持っている分、勝ちのチャンスがあるでしょう。Fominyh としては、敗勢のポジションで何とか粘りに粘り、最後にドローオファーをして誤魔化したゲームでした。最後の局面は、彼にとっても、評価の難しいポジションだったと思います。私としては、完全に勝勢だったゲームを落としたのは痛いですが、これも勉強ですね。

12/16 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 15:00 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/18 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473) 1/2-1/2
12/19 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) 1-0
12/20 09:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/20 16:00 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/21 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319) 1/2-1/2
12/22 15:00 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/23 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
12/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 1/2-1/2

+3 Kojima
+2 Fominyh
0 Varga, Santarius, Ilincic
-5 Betaneli

最後は負け、ドローと失速したものの、レイティング平均が2386 のGM トーナメントで、4勝1敗5ドローの優勝というのは、自己最高の記録です。レイティングも38稼いで、次の更新では、自己ベストのレイティングは2396 になります。なにより、Ilincic に負ける前まで、ライブレイティングが2400 を超えていたことで、IM タイトルの獲得も決まりました! 9R の負けは、初のGM ノームを目指して果敢に挑んだ結果ですので、あまり気にせず、今回の結果に満足しようと思います。皆さん、今大会中は多くの応援、そしてお祝いのメッセージをありがとうございました! 今回の結果を受け、1月半ばには日本に帰国することを決めています。


IM クラスは、中国のFang が圧倒的な強さで優勝しましたが、モンゴルの少女、Nomin-Erdene もFang を超える7勝を挙げ、レイティングを大幅に稼いでいます。ハンガリーで馴染みだったIM To Nhat Minh も7/10 でしたので、完全にこの3人に星を取り合ったトーナメントでした。Fang もこの調子でいけば、年末年始のIM クラスで、レイティング2400を超えるでしょう。


ハンガリーの大会初挑戦の酒井くんも、無事にFM クラスで優勝を収めています。レイティングは+14 ですので、ロンドンに比べれば上げ幅は少ないですが、それでも満足な数字でしょう。彼は26日の午前中までかけて、2つ目のFM クラスの大会での試合を終え、ブダペストに戻ってきます。残り3試合の結果次第では、レイティングが2000 に乗る可能性も十分にあるでしょう。


Fominyh との試合を終わらせた私は、駆け足でブダペストへと戻ってきて、日本食レストラン、小町で開催されたクリスマスパーティーに跳びこみました。かつてこのブログにも登場した、奥山さんのお寿司も、私の分が確保されていて一安心。IM タイトル獲得のことも、ブダペストの友人たちに祝ってもらいました。


クリスマスケーキは、チョコレートでデコレーションされたフルーツケーキでした。2年ぶり、2回目のブダペストのクリスマスの夜は、とても楽しかったです。やはり、ケチケメートにとどまらず、こちらに戻ってきて良かったと心から思います。次のケチケメートのGM トーナメントは27日の午後に始まるので、2日後にはまたハンガリーの田舎町にとんぼ返りです。

2014/12/24

Chess in Kecskemet 2014 December GM 9th round


日本はもうイブの夜時間ですね。日本のチェス界の皆さんは、どうお過ごしでしょうか。こちら、ケチケメートのショッピングモールもクリスマスモードですが、私はもちろん、試合です!(笑)

23日は最終戦の前日、Ilincic との第2戦です。ユーゴスラビアの元代表、GM Ilincic とはここまで2勝1ドローで、私が最も得意としているGM です。この日もわずかなGM ノームのチャンスをかけ、勝負を仕掛けていきます。

Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (9)

1. d4 d5 2. g3 Nf6 3. Bg2 c6 4. Nf3 Bg4 5. Ne5 Bh5 6. c4 e6 7. Nc3 Nbd7 8. f4 Be7 9. Qb3 Qb6 10. e3 Nxe5 11. fxe5 Nd7 12. c5 Qc7



予想外のオープニングではありましたが、ここまでは黒が満足です。ここから、b7-b6 のブレイクのタイミングを探ります。

13. e4 O-O 14. Bf4 g5!?


私はすぐにb7-b6 ができないと読み、怪しいながらもこの手を入れたのですが、Ilincic からはどうしてすぐ突かなかったのかと、試合後に指摘されました。14... b6! 15. O-O! (15. exd5 cxd5 16. Nxd5? exd5 17. e6 Nxc5! 18. dxc5 Qxc5 19. Bxd5 Rad8 20. exf7+ Kh8-+ このように、私の読んでいたナイトサクリファイスは、展開の遅い白にとって非常に危険な選択肢でした。) 15... bxc5 16. exd5 cxd5 17. Nxd5! exd5 18. e6 Qd8 19. exd7 Qxd7 20. Rae1 こうなると、形勢は不明です。

15. Be3 b6 16. cxb6 Nxb6 17. Qc2 Nc4 18. Bf2 Rfd8



18手目も相当悩みました。私の予定通り、c5 のポーンを取り除いたうえで、Nd7-Nb6-Nc4 を実現したわけですが、ここからどう手を作っていくか、意外と見えてきませんでした。

19. O-O Rab8 20. b3 Na3 21. Qc1 Qa5


cxd5 から、Nc3-Nxd5 がスレットとなっているため、ここでクイーンを避けておきます。c3 のナイトをアタックしておくことで、g5 のポーンを取りづらくしておくのもポイントです。

22. Be3 Bg6! 23. Rf2 c5?



途中時間を使いすぎたため、私はこの時点で残り時間が20分を切っていました。ここで勝負だと、センターを開くような勝負手を放ちますが、これが完全に不発に終わりました。23... Bb4! 24. Ne2 h6 25. h4 dxe4 26. hxg5 hxg5 27. Bxg5= これでイコールというのがコンピュータの評価ですが、人間には判断が難しいでしょう。h7-h6 はg5 のポーンが安全になるように見えて、逆に白からh2-h4 のチャンスを与えると思い、アイディアとして外しておきました。そこでd5 を弱めても、cファイルを開けて、c1 のクイーンを負担にしようとしたのですが...

24. Bd2!+/-


Qa5-Qb6 と退けば、d4 のアタックになるため、直前までこの手は有効ではありませんでした。ところが、私がc6-c5 と仕掛けたことで、d4 のポーンをクイーンでアタックできなくなっています! これが私の痛い読み落としでした。

24... Qa6 25. Bxg5 Bxg5 26. Qxg5 cxd4 27. Ne2!?



ここは27. Na4 も指せそうですが、本譜のナイトのマヌーバリングは非常に素直です。このナイトがf4 に向かい、h2-h4-h5 と仕掛ければ、黒の不安定なビショップとキングは、脅威にさらされることとなります。

27... Nc2 28. Rd1 Ne3 29. Rxd4 Nxg2 30. Kxg2 Qc6?


ここは他の手でもダメなのですが、この手はひどすぎました。まだ30... Qb6 のほうが、白の対応が難しかったでしょう。

31. Nf4 Qb6 32. Rfd2 Kf8 33. exd5 exd5 34. e6 1-0



不調だったIlincic も、後半戦はSantarius と私を連続で下し、星をイーブンまで戻しています。一番大事なポジションでは、私のミスで崩れてしまいましたが、久々に要所要所でGM の底力を見せてもらったようなゲームでした。

12/16 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 15:00 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/18 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473) 1/2-1/2
12/19 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) 1-0
12/20 09:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/20 16:00 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/21 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319) 1/2-1/2
12/22 15:00 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/23 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
12/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)

+3 Kojima
+2 Fominyh
0 Varga, Santarius, Ilincic
-5 Betaneli

最終戦はトップを走る、私とFominyh の直接対決です。GM ノームのチャンスは消えてしまいましたが、最後に勉強させてもらってくるつもりです。


ケチケメートの広場にこの時期だけ出現する移動式簡易遊園地では、大人も子供関係なく、皆ゴーカートではしゃいでいます。


ヨーロッパでは、フクロウとハリネズミをモデルにした置物やおもちゃが多いですが、そうと知らなければ、これがハリネズミだとは分かりませんね(笑)

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