2014/12/25

Chess in Kecskemet 2014 December GM 10th round


先に結果を書いてしまいますと、GM Fominyh との最終戦は、互いの内容が悪いながらもドローになりました。これを受けて私の最終結果は4勝1敗5ドローとなり、5回目のGM トーナメント参加にして、初優勝を収めています! それでは試合解説へ。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (10)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. d4 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. h3 Bd7 9. e4 e5 10. dxe5 dxe5 11. Be3 Be6



Grunfeld への対策はすべて無駄になり、まさかのKing's Indian でした。この変化はオリンピアードでも指しており、白のプランはしっかり理解しています。

12. Qa4 Qc8 13. Kh2 Re8 14. Rfd1 Nd7 15. Nd5!


ここはナイトが跳びこむことを遠慮する理由はないでしょう。次にRa1-Rc1 とまわし、白はひとまず満足なピースのポジションになります。

15... Ncb8?!



いかにも不自然なこの手は、やはり疑問手です。次にRa1-Rc1 がある以上、c7-c6 はナイトを追い返すスレットになりません。

16. Rac1 h6 17. Qa5! b6 18. Qd2 Kh7 19. Nh4!?


黒のポジションは明らかに崩れており、白は押せ押せです。19. b4 からクイーンサイドを押していくプランもありえますが、私は直接的にキングを攻撃しにいくことを決断します。

19... Nc6 20. f4 exf4 21. gxf4 Qd8 22. Qf2 Ne7?



黒はディフェンスが難しいところですが、これはひどいブランダーでした。ところが...

23. Kh1?


23. Nxe7! Qxe7 24. f5 gxf5 25. exf5+- 単純にピースが落ちています。私の勘違いは、e3 のビショップが浮いているので、eファイルを開ければこれが取られてしまうと思ったことです。実は黒のd7 のナイトも取れるので、やはり白のピースアップですね... こうしたシンプルな手が見えなかったのは、最終戦で少し集中に欠いていたからでしょう。

23... Ng8 24. e5 Kh8 25. Be4 Qc8 26. Bxg6?!



22手目の勝は逃したものの(試合中は気づいていませんが)、白は完全に局面を支配し、勝利は間違いないと思っていました。後は、19. Nh4 からの構想のフィニッシュとして、黒キングを追い詰めるだけでしたが、ここで細かいミスが出ます。残り時間は十分にありましたが、このクリティカルポジションで勝負を決めれば、ブダペストのクリスマスパーティー開始に間に合うと考え、攻めを焦ったことが、この試合の最大の間違いでした。26. Qg2 でh3 を守りつつ、g6 でのサクリファイスを強化しておくのがベターだったでしょう。

26... Nxe5!


26... fxg6?? 27. Nxg6+ Kh7 28. Qc2+- は間違いなく白勝ちですが、ビショップを捨ててから、この手の可能性に気づき、愕然とします。ナイトが動いて、クイーンをh3 に当てるアイディアは、26... Nf8 しか考えておらず、これに対しては普通にビショップを退けば勝勢です。

27. fxe5 Bxd5+ 28. cxd5?



私は試合中、このビショップを取るのは当然だと考え、ポーンとルーク、どちらで取るべきかなのに読みの焦点を絞りました。ところが、正解はキングを動かす手です。ナイトを取られ、チェックしてきたビショップを、取り返さずにキングが逃げるというのは、信じられない1手でしょう! 28. Kh2!! Bxe5+ 29. Bf4 Bxf4+ 30. Qxf4 Re2+ 31. Kg1 fxg6 32. cxd5 Qxh3 33. Rxc7+-


Analysis Diagram 1

こうして整理してみれば、白のキングは危なく見えても問題なく、逆にどうしようもないのは、黒側だということが理解できます。しかし、これを読み切るのは無理でした。

28... Qxh3+ 29. Qh2! Qxh2+?


イコアライズのチャンスを貰ったFominyh ですが、さらにミスを重ねます。29... Qxe3! 30. Re1 Bxe5! 31. Rxe3 Bxh2 32. Rxe8 Rxe8 33. Kxh2 Re2+ 34. Kh3 fxg6 35. Rxc7= ならば、黒はドローに持ち込めるでしょう。おそらく、30... Bxe5! を見落としていたのではないかと思います。

30. Kxh2 Bxe5+ 1/2-1/2



ここでこの試合、Fominyh から最後のトリックがありました。それは、ドローオファーです! 攻撃を捌かれ、e5 まで落ちたことで、私は黒が優勢に転じたと考えました。そのため、ここでの黒からのドローオファーはありがたいと考え、受けることを決めます。ちなみに、私の残り時間は5分ほどでした。

ところが、コンピュータでチェックしたところ、最終局面は白良しでした。そのような読み違いが自分にも起こりうることに驚き、また勉強させてもらいました。31. Kh3! Bf6 (31... fxg6 32. Nxg6+ Kh7 33. Nxe5 Rxe5 34. Rxc7+ Kg6 35. Rg1++/- この変化が白良しであることは理解できます。) (31... Bxb2 32. Bd2! Bxc1 33. Bc3+!(この切り返しのチェックは実に見えづらいです。) 33... f6 34. Bxe8 Rxe8 35. Rxc1+- ピースアップの白は、問題なく勝てるでしょう。) 32. Bd4! Bxd4 (32... fxg6? 33. Rxc7+-) 33. Rxd4 fxg6 34. Rxc7+/-


Analysis Diagram 2

やはり、上記の変化と似たこのポジションになります。白は次にg6 を取れるので、パスポーンを持っている分、勝ちのチャンスがあるでしょう。Fominyh としては、敗勢のポジションで何とか粘りに粘り、最後にドローオファーをして誤魔化したゲームでした。最後の局面は、彼にとっても、評価の難しいポジションだったと思います。私としては、完全に勝勢だったゲームを落としたのは痛いですが、これも勉強ですね。

12/16 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 15:00 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/18 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473) 1/2-1/2
12/19 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) 1-0
12/20 09:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/20 16:00 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/21 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319) 1/2-1/2
12/22 15:00 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/23 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
12/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 1/2-1/2

+3 Kojima
+2 Fominyh
0 Varga, Santarius, Ilincic
-5 Betaneli

最後は負け、ドローと失速したものの、レイティング平均が2386 のGM トーナメントで、4勝1敗5ドローの優勝というのは、自己最高の記録です。レイティングも38稼いで、次の更新では、自己ベストのレイティングは2396 になります。なにより、Ilincic に負ける前まで、ライブレイティングが2400 を超えていたことで、IM タイトルの獲得も決まりました! 9R の負けは、初のGM ノームを目指して果敢に挑んだ結果ですので、あまり気にせず、今回の結果に満足しようと思います。皆さん、今大会中は多くの応援、そしてお祝いのメッセージをありがとうございました! 今回の結果を受け、1月半ばには日本に帰国することを決めています。


IM クラスは、中国のFang が圧倒的な強さで優勝しましたが、モンゴルの少女、Nomin-Erdene もFang を超える7勝を挙げ、レイティングを大幅に稼いでいます。ハンガリーで馴染みだったIM To Nhat Minh も7/10 でしたので、完全にこの3人に星を取り合ったトーナメントでした。Fang もこの調子でいけば、年末年始のIM クラスで、レイティング2400を超えるでしょう。


ハンガリーの大会初挑戦の酒井くんも、無事にFM クラスで優勝を収めています。レイティングは+14 ですので、ロンドンに比べれば上げ幅は少ないですが、それでも満足な数字でしょう。彼は26日の午前中までかけて、2つ目のFM クラスの大会での試合を終え、ブダペストに戻ってきます。残り3試合の結果次第では、レイティングが2000 に乗る可能性も十分にあるでしょう。


Fominyh との試合を終わらせた私は、駆け足でブダペストへと戻ってきて、日本食レストラン、小町で開催されたクリスマスパーティーに跳びこみました。かつてこのブログにも登場した、奥山さんのお寿司も、私の分が確保されていて一安心。IM タイトル獲得のことも、ブダペストの友人たちに祝ってもらいました。


クリスマスケーキは、チョコレートでデコレーションされたフルーツケーキでした。2年ぶり、2回目のブダペストのクリスマスの夜は、とても楽しかったです。やはり、ケチケメートにとどまらず、こちらに戻ってきて良かったと心から思います。次のケチケメートのGM トーナメントは27日の午後に始まるので、2日後にはまたハンガリーの田舎町にとんぼ返りです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>このクリティカルポジションで勝負を決めれば、ブダペストのクリスマスパーティー開始に間に合うと考え、攻めを焦ったことが、この試合の最大の間違いでした
読み手からすれば試合とパーティーを天秤にかけてるところ、おもろーですね

Shinya_Kojima さんのコメント...

これはダメでしたね ( ̄▽ ̄) タリはサッカーの試合を見るため、ナイトをサクリファイスして、早々に勝負を決めたという逸話がありましたが、私は未熟でした。

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