16日からは休む間もなく、ブダペストからケチケメートへ移動して、新しい大会の始まります。今回のケチケメートでは珍しく、GM, IM, FM 全セクションでの試合が開催されます。私はFS に引き続き、GMクラスへ、FS で戦った中国のFang はIM クラスへ、ロンドンから合流した酒井くんはFM クラスへの参加となります。
各クラスとも、参加者は6名のダブルラウンドロビンで、私の相手はレイティング最下位のアメリカのFM、Betaneli でした。白も引けましたので、FS 最終戦の勢いそのまま、是非ポイントを取りたいところです。
Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (1)
1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2 Nf6 5. e3!? Ne4!?
Chess in Kesckemet 2014 December GM (1)
昨年、スペインのWinter Chess に参加した際もこの変化に遭遇しましたが、黒はSemi-Slav Anti-Meran ではなく、Stone Wall 型を望みます。実はFS で、Fominyh 戦のためにこの変化を黒で研究しており、なるべくメインの5. Bg5 は避けたいところだったのですが、次回は思い切って指してみることにします。
6. Bd3 f5 7. O-O Bd6 8. b3 O-O 9. Bb2!?
ここは9. Ba3 と指し、黒のアクティブなビショップを交換しにいくのがStone Wall のセオリーですが、この試合ではビショップを残してみることにします。
9... Rf6 10. Ne5 Rh6 11. g3 Qg5 12. Qe2 Rh3
このルークの使い方は少し怪しくも見えますが、ひとまず白はf2-f3 を突けないので、e4 のナイトをどうするかに頭を悩ませます。
13. Nd2 Nd7 14. Rfd1
この時点でのアイディアは、Nd2-Nf1 と退き、g3 とh2 をを守って、f2-f3 を突くことにあります。黒のアタックをしのげば、h3 にいるルークを戻すのに手数がかかる分、白は優位にゲームを進めることができるでしょう。
14... Nxe5! 15. dxe5 Bb4 16. Nf3
黒のNe4-Nc3 を嫌ったために、ナイトはf1 ではなく、f3 に向かうことになりました。これでキングサイドの状況は、複雑なまま保たれることとなります。
16... Qh6 17. Qf1 g5 18. cxd5?
センターポーンを交換しておくことが、どちらにとって得になるかは評価の難しいところです。白はe5 をパスポーンにできますが、黒は白マスビショップがアクティブになります。しかし、実際には黒に攻撃のチャンスを与えてしまうため、このタイミングでのポーン取りは悪手でした。
18... exd5?
黒は18... g4! のタイミングを逃しました。私は最初、Nf3-Nh4 でも良いと思っていたため、このポーン突きをあまり警戒していませんでしたが、よくよく考えれば、黒にはBb4-Be7 というビショップ退きがあるため、h4 の位置はナイトの跳ぶマスとして良くありません。
19. Qg2! g4 20. Nd4
こちらがナイトの跳ぶ正しいマスです。形勢は不明ですが、相手の持ち時間がかなり少なかったうえ、いくらでもチャンスは作れるポジションですので、とにかくゲームを続けます。
20... Be6 21. Rac1 Rf8 22. Be2 Bc8 23. Rc2 Re8 24. Bf1 Ng5 25. f4!
Ne4-Ng5 は、特に警戒していたアタックでしたが、これは対しては思い切ったアイディアでディフェンスを試みます。2段目に上げたルークでh2 を守っているので、アンパッサンからピースを捌いた後は、白がf5 を攻める番となります。
25... Ne4 26. Rdc1 Qf8 27. Qe2 Rh6 28. Bg2 Rg6?
26手目のドローオファーを蹴り、ゲームを続けているとようやくチャンスが巡ってきました! ここからは完全に白が優位に立ちます。
29. Bxe4! dxe4 30. Qc4+ Be6 31. Nxe6 Rgxe6 32. Rd1+/-
お互いに白マスビショップをセンターのナイトと交換した後は、先にオープンファイルを抑え、パスポーンを持つ白が大きく優勢です。
32... Ba5 33. Rd7 Bb6 34. Re2 Qc5 35. Qxc5 Bxc5 36. Rxb7 Rd8 37. Kf2 Re7 38. Rxe7 Bxe7 39. Rc2 c5 40. Ke2 Kf7 41. Rd2?
私も時間をぎりぎりまで使い、この1ポーンアップのエンドゲームに突入しました。ところが時間が増えた直後、私は大きな判断ミスをします。それはルークを交換した同色ビショップエンディングでも、白が勝つ十分なアドバンテージがあると思ったことです。しっかりと考えれば、1ポーンアップですでにパスポーンはあっても、白のキングサイドのパスポーンは全てビショップと同じ色におり、キングも上がれるチャンスがないので、勝のが容易でないことはわかったはずです。正しくは、41. Rc4! Rc8 42. Ra4 Rc6 43. Kf2 とルークを残し、a, c ポーンを攻撃するプランでした。40手目で時間が増えたことに安心し、緩い手を指してしまったことは、この試合での最も大きな反省のポイントです。
41... Rxd2+ 42. Kxd2 h5?
ところが、さらに黒も方針を誤ります。彼はh7-h5-h4 とポーンを進めておくのが正しいディフェンスだと思ったようですが、これは後でもできることですので、まずは基本通りにキングを上げるべきでした。42... Ke6 43. Ba3 Kd5 こうなると、白はどこでポジションを改善すべきなのか、よく分からなくなります。
43. Bc3?!
このアイディア自体は面白いのですが、h4 のポーンを取って良い(むしろ、取らないといけない) とこの時点で判断でていれば、私はキングを先に進めていたでしょう。43. Kc3! h4 44. gxh4 Bxh4 45. Ba3 Be1+ 46. Kc2 Bb4 47. Bxb4 cxb4 48. Kd2 Ke7 49. Ke2 Kf7 このポーンエンディングは、間違いなく白の勝ちです。黒はビショップを交換せずとも、白はc5 を取って勝勢になるでしょう。
43... h4?! 44. gxh4! Bxh4 45. Ba5!
私はこうしてアクティブにしたビショップに、わずかな勝ちのチャンスを託すことにします。彼の勘違いは、h4 に到達したビショップは、h2 を取りにいけると思ったことでしょう。45... Bf2 46. Ke2 Bg1? となれば、白はh2 を取られた時点でKe2-Kf2 と寄り、黒のビショップを閉じ込めることができます。
45... Ke6 46. Bc7 Kd5 47. Bd6 a6 48. Bf8 Bd8 49. Kc2 Ba5 50. a3!?
私はここで1つの勝ちのプランを考え、そのための準備としてa2-a3 を伸ばしておくことにします。
50... Bb6 51. Bd6 Bd8 52. Kd1 Ba5?
この手を見て勝ちを確信しましたが、私はこれが無くても白にチャンスがあると思っていました。しかし、検討戦では相手から、Bd8-Bh4 を繰り返していれば、黒は問題ないのではないかと指摘されました。私の作戦は、c5 のポーンをアタックして黒キングをd5 にとどめておき、その間に白キングがg2 まで向かって、h2-h3 からポーンを交換することでした。ところが、キングがg2 にいる時点ですでにBh4 の位置で待ちかまえられていると、ポーン交換の後で、Bh4-Bf2 からe3 のポーンが落ちます。これを防ごうとするならば、Bd6-Bf80-Bg7-Bf6 のようなアイディアしかありませんが、ビショップがc5 のアタックから離れれば、黒は本譜のBd8-Ba5 が可能となり、別の方面からe3 を狙うことができるようになります。そうなると、白はポジションを改善することができず、やはりドローなのでしょう。勉強になりました。
53. Bxc5!
彼がなぜ、この手を見逃したのかは分かりませんが、私としては勝ちになるオンリーチャンスです。b3-b4 からポーンフォークを入れ、白勝ちのポーンエンドゲームに持ち込むことが、a2-a3 の狙いでした。
53... Bd8 54. b4 Bh4 55. Bd6 Bd8 56. Ke2 Bb6 57. Kf2 1-0
かなり怪しいゲームでしたが、なんとか勝利を収めました。GM トーナメントでの初戦白星は、これが初めてのことです! この貯金を守って2戦目からを戦いところですが、そう簡単ではないでしょう。それでも、今日からまた、頑張っていこうと思います。
12/16 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/18 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473)
12/19 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432)
12/20 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/21 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/22 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319)
12/23 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/24 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
12/25 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
+1 Kojima
0 Varga, Fominyh, Ilincic, Santarius
-1 Betaneli
試合のスケジュールは暫定のもので、訂正が入るかもしれません。初戦で決着がついたのは、私だけでしたね。酒井くんは1800台とドロースタートでした。まだまだクリスマスに向け、ハードな試合が続くことでしょう。
ライトアップされた古い教会。今夜はケチケメートのクリスマスマーケットが閉まる前に、試合が終われば良いのですが...
ケチケメートと言えば、昨年もお世話になった、トルティーヤです。周りの店が閉まっても、トルティーヤ屋さんだけは遅くまで営業しています。
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