2014/12/17

Chess in Kecskemet 2014 December GM 1st round


16日からは休む間もなく、ブダペストからケチケメートへ移動して、新しい大会の始まります。今回のケチケメートでは珍しく、GM, IM, FM 全セクションでの試合が開催されます。私はFS に引き続き、GMクラスへ、FS で戦った中国のFang はIM クラスへ、ロンドンから合流した酒井くんはFM クラスへの参加となります。

各クラスとも、参加者は6名のダブルラウンドロビンで、私の相手はレイティング最下位のアメリカのFM、Betaneli でした。白も引けましたので、FS 最終戦の勢いそのまま、是非ポイントを取りたいところです。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (1)

1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2 Nf6 5. e3!? Ne4!?



昨年、スペインのWinter Chess に参加した際もこの変化に遭遇しましたが、黒はSemi-Slav Anti-Meran ではなく、Stone Wall 型を望みます。実はFS で、Fominyh 戦のためにこの変化を黒で研究しており、なるべくメインの5. Bg5 は避けたいところだったのですが、次回は思い切って指してみることにします。

6. Bd3 f5 7. O-O Bd6 8. b3 O-O 9. Bb2!?


ここは9. Ba3 と指し、黒のアクティブなビショップを交換しにいくのがStone Wall のセオリーですが、この試合ではビショップを残してみることにします。

9... Rf6 10. Ne5 Rh6 11. g3 Qg5 12. Qe2 Rh3



このルークの使い方は少し怪しくも見えますが、ひとまず白はf2-f3 を突けないので、e4 のナイトをどうするかに頭を悩ませます。

13. Nd2 Nd7 14. Rfd1


この時点でのアイディアは、Nd2-Nf1 と退き、g3 とh2 をを守って、f2-f3 を突くことにあります。黒のアタックをしのげば、h3 にいるルークを戻すのに手数がかかる分、白は優位にゲームを進めることができるでしょう。

14... Nxe5! 15. dxe5 Bb4 16. Nf3



黒のNe4-Nc3 を嫌ったために、ナイトはf1 ではなく、f3 に向かうことになりました。これでキングサイドの状況は、複雑なまま保たれることとなります。

16... Qh6 17. Qf1 g5 18. cxd5?


センターポーンを交換しておくことが、どちらにとって得になるかは評価の難しいところです。白はe5 をパスポーンにできますが、黒は白マスビショップがアクティブになります。しかし、実際には黒に攻撃のチャンスを与えてしまうため、このタイミングでのポーン取りは悪手でした。

18... exd5?


黒は18... g4! のタイミングを逃しました。私は最初、Nf3-Nh4 でも良いと思っていたため、このポーン突きをあまり警戒していませんでしたが、よくよく考えれば、黒にはBb4-Be7 というビショップ退きがあるため、h4 の位置はナイトの跳ぶマスとして良くありません。

19. Qg2! g4 20. Nd4



こちらがナイトの跳ぶ正しいマスです。形勢は不明ですが、相手の持ち時間がかなり少なかったうえ、いくらでもチャンスは作れるポジションですので、とにかくゲームを続けます。

20... Be6 21. Rac1 Rf8 22. Be2 Bc8 23. Rc2 Re8 24. Bf1 Ng5 25. f4!


Ne4-Ng5 は、特に警戒していたアタックでしたが、これは対しては思い切ったアイディアでディフェンスを試みます。2段目に上げたルークでh2 を守っているので、アンパッサンからピースを捌いた後は、白がf5 を攻める番となります。

25... Ne4 26. Rdc1 Qf8 27. Qe2 Rh6 28. Bg2 Rg6?



26手目のドローオファーを蹴り、ゲームを続けているとようやくチャンスが巡ってきました! ここからは完全に白が優位に立ちます。

29. Bxe4! dxe4 30. Qc4+ Be6 31. Nxe6 Rgxe6 32. Rd1+/-


お互いに白マスビショップをセンターのナイトと交換した後は、先にオープンファイルを抑え、パスポーンを持つ白が大きく優勢です。

32... Ba5 33. Rd7 Bb6 34. Re2 Qc5 35. Qxc5 Bxc5 36. Rxb7 Rd8 37. Kf2 Re7 38. Rxe7 Bxe7 39. Rc2 c5 40. Ke2 Kf7 41. Rd2?



私も時間をぎりぎりまで使い、この1ポーンアップのエンドゲームに突入しました。ところが時間が増えた直後、私は大きな判断ミスをします。それはルークを交換した同色ビショップエンディングでも、白が勝つ十分なアドバンテージがあると思ったことです。しっかりと考えれば、1ポーンアップですでにパスポーンはあっても、白のキングサイドのパスポーンは全てビショップと同じ色におり、キングも上がれるチャンスがないので、勝のが容易でないことはわかったはずです。正しくは、41. Rc4! Rc8 42. Ra4 Rc6 43. Kf2 とルークを残し、a, c ポーンを攻撃するプランでした。40手目で時間が増えたことに安心し、緩い手を指してしまったことは、この試合での最も大きな反省のポイントです。

41... Rxd2+ 42. Kxd2 h5?


ところが、さらに黒も方針を誤ります。彼はh7-h5-h4 とポーンを進めておくのが正しいディフェンスだと思ったようですが、これは後でもできることですので、まずは基本通りにキングを上げるべきでした。42... Ke6 43. Ba3 Kd5 こうなると、白はどこでポジションを改善すべきなのか、よく分からなくなります。

43. Bc3?!



このアイディア自体は面白いのですが、h4 のポーンを取って良い(むしろ、取らないといけない) とこの時点で判断でていれば、私はキングを先に進めていたでしょう。43. Kc3! h4 44. gxh4 Bxh4 45. Ba3 Be1+ 46. Kc2 Bb4 47. Bxb4 cxb4 48. Kd2 Ke7 49. Ke2 Kf7 このポーンエンディングは、間違いなく白の勝ちです。黒はビショップを交換せずとも、白はc5 を取って勝勢になるでしょう。

43... h4?! 44. gxh4! Bxh4 45. Ba5!


私はこうしてアクティブにしたビショップに、わずかな勝ちのチャンスを託すことにします。彼の勘違いは、h4 に到達したビショップは、h2 を取りにいけると思ったことでしょう。45... Bf2 46. Ke2 Bg1? となれば、白はh2 を取られた時点でKe2-Kf2 と寄り、黒のビショップを閉じ込めることができます。

45... Ke6 46. Bc7 Kd5 47. Bd6 a6 48. Bf8 Bd8 49. Kc2 Ba5 50. a3!?



私はここで1つの勝ちのプランを考え、そのための準備としてa2-a3 を伸ばしておくことにします。

50... Bb6 51. Bd6 Bd8 52. Kd1 Ba5?


この手を見て勝ちを確信しましたが、私はこれが無くても白にチャンスがあると思っていました。しかし、検討戦では相手から、Bd8-Bh4 を繰り返していれば、黒は問題ないのではないかと指摘されました。私の作戦は、c5 のポーンをアタックして黒キングをd5 にとどめておき、その間に白キングがg2 まで向かって、h2-h3 からポーンを交換することでした。ところが、キングがg2 にいる時点ですでにBh4 の位置で待ちかまえられていると、ポーン交換の後で、Bh4-Bf2 からe3 のポーンが落ちます。これを防ごうとするならば、Bd6-Bf80-Bg7-Bf6 のようなアイディアしかありませんが、ビショップがc5 のアタックから離れれば、黒は本譜のBd8-Ba5 が可能となり、別の方面からe3 を狙うことができるようになります。そうなると、白はポジションを改善することができず、やはりドローなのでしょう。勉強になりました。

53. Bxc5!



彼がなぜ、この手を見逃したのかは分かりませんが、私としては勝ちになるオンリーチャンスです。b3-b4 からポーンフォークを入れ、白勝ちのポーンエンドゲームに持ち込むことが、a2-a3 の狙いでした。

53... Bd8 54. b4 Bh4 55. Bd6 Bd8 56. Ke2 Bb6 57. Kf2 1-0


かなり怪しいゲームでしたが、なんとか勝利を収めました。GM トーナメントでの初戦白星は、これが初めてのことです! この貯金を守って2戦目からを戦いところですが、そう簡単ではないでしょう。それでも、今日からまた、頑張っていこうと思います。

12/16 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/18 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473)
12/19 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432)
12/20 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/21 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/22 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319)
12/23 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/24 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
12/25 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)

+1 Kojima
0 Varga, Fominyh, Ilincic, Santarius
-1 Betaneli

試合のスケジュールは暫定のもので、訂正が入るかもしれません。初戦で決着がついたのは、私だけでしたね。酒井くんは1800台とドロースタートでした。まだまだクリスマスに向け、ハードな試合が続くことでしょう。


ライトアップされた古い教会。今夜はケチケメートのクリスマスマーケットが閉まる前に、試合が終われば良いのですが...


ケチケメートと言えば、昨年もお世話になった、トルティーヤです。周りの店が閉まっても、トルティーヤ屋さんだけは遅くまで営業しています。

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