この日のケチケメートは、これまでとうってかわり、晴天が広がり暖かな陽気となりました。昼過ぎに見かけた町中の気温計は、この時期では珍しい17度を記録しています。
さて、ケチケメートのGM トーナメントも4戦目を迎え、2人目のGM との対戦となります。相手はケチケメートで頻繁にプレーしている、セルビアのGM Ilincic で、2年前のGM トーナメントでは、1勝1ドローと勝ち越しています。3回目の対戦となる今回、もちろん勝ちを狙ってプレーします。
Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (4)
1. Nf3 f5 2. d3 d6 3. e4 e5 4. Nc3 Nc6 5. exf5 Bxf5 6. d4 Nb4!?
Chess in Kesckemet 2014 December GM (4)
久々の2. d3 Anti-Dutch の登場です。この変化は試合前に軽くチェックしていましたが、6... exd4 だけを調べていて、本譜の手はあまり覚えていませんでした。とは言え、c2 を守る方法は限られていますので、それを選択するしかありません。
7. Bb5+ c6 8. Ba4 e4 9. Ng5 d5 10. a3!
ナイトは早々にa6 に下げさせておき、クイーンをc2 の守りからフリーにします。
10... Na6 11. f3! Nf6 12. fxe4 dxe4 13. O-O Qd7 14. Bb3 Nd5
オープニングは完全に成功です。これで白は1ポーンアップが確定し、優位に立ちました。(勝勢と呼んでも良いかもしれません。) しかし、もちろん前日のVarga 戦の反省がありますので、油断せずにしっかりとゲームを続けます。
15. Ncxe4 O-O-O 16. Qf3!
ここは時間をかなりかけて、自分なりに納得のいく駒組みを探りました。以前の私であれば、勢いだけで16. c4 などと突き、後々d4 の守りに苦労したことでしょう(笑)
16... g6 17. Ng3 h6 18. Nxf5 hxg5 19. Bxg5!?
これが16. Qf3 から私がイメージしていた局面で、白は2ピースルークになる代わりに、3ポーンを得る珍しいマテリアエルをチョイスします。通常、2ピースを持つ側は相手のポーンをアタックするチャンスを多く持ちますが、ここではしっかり守り切れると判断しました。
19... gxf5 20. Bxd8 Qxd8 21. Qxf5+ Kb8 22. Bxd5 cxd5
d5 のナイトも消してしまい、なるべくポジションをシンプルにします。
23. c3 Bd6 24. g3 Nc7 25. Rae1 Rh6 26. Kg2
あまり経験したことのないマテリアルですが、黒の反撃は不十分であり、白の勝勢であることは理屈で理解できます。ここでの白のプランは2つあり、1つはクイーン、さらには可能であればルークを1つ交換してしまい、相手の反撃を消したうえで、キングサイドの2コネクテッドパスポーンを作ること。クイーンを交換した時点で、白のポーンはほとんど落ちなくなるので、勝ちは確定するだろうと考えました。もう1つはややリスクがあっても、クイーンを盤上に残したままでポーンを突き進めることです。
26.... Qg8 27. Re3 a6 28. Rff3 Ka7 29. h3
ここは29. h4! と突けたのを見落としていました。29... Rxh4? 30. Qf6!+- ならば、クイーン交換からのビショップとルークの取りが、両方スレットになります。
29... Kb6 30. Qd7 Qg6 31. Rf2 Qg5 32. Rff3 Qg6 33. Qf5 Qg8 34. a4
私はキングサイドのポーンを進めるタイミングがつかめず、クイーンサイドでもアクションを起こすことにします。狙いは、b2-b3 からc3-c4 とポーンを伸ばすことです。しかしここでも、34. Qf7! Qg5 35. h4! のアイディアが使えました。
34... Kc6 35. b3 b5 36. axb5+ axb5 37. g4 Ne6 38. Re2 b4!?
私は時間があまりなく、この黒のアクティブな反撃にどう対応すべきかよく分かりませんでした。それでも、cファイルを開くことは黒にのキングにとっても危険であることは間違いないので、冷静に対処するよう努めます。
39. Rc2?
39. Ra2! Kb6 40. Qd3! Qc8 41. c4 Nf4+ 42. Rxf4 Bxf4 43. c5+ Kc7 44. Qf3+- という変化はコンピュータの指摘です。こうして並べてみれば、エクスチェンジを返して3ポーンピースのマテリアルにしても、十分に勝てることが理解できますが、実戦ではなかなかマテリアルを返すのは勇気のいる判断でしょう。
39... bxc3?
まさか! と目を疑いました。恐らくIlincic も、取ってから自分のミスに気づいたでしょう。39... Kb6! とcファイルからキングを避けておくのが正解で、そうすれば黒はd4 のポーンに対する反撃で、チャンスを作ることができたでしょう。
40. Rfxc3+! Kd7 41. Ra2!
ルークを最大限に働かせ、キングにプレッシャーをかけることによって、白は再びチャンスを引き寄せます。
41... Qb8? 42. Re3!+-
黒のディフェンスは、41... Qg6 以外にあり得ません。それでも白は、クイーンを交換して勝ちのチャンスが大いにあるでしょう。本譜では、ピンになったe6 のナイトを攻めたて、白は決定的なアドバンテージを得ます。ちなみに42. g5? Rh5! 43. Qf7+ Be7 44. Qxh5?? Nf4+-+ は大失敗なので、先にナイトをルークでアタックしておき、その後でg4-g5 を狙うのがポイントです。
42... Qg8 43. Ra7+ Kc6 44. Ra6+ Kd7 45. Ra7+ Kc6 46. Qc2+!?
オリンピアードのMovsesian 戦ではメイティングネットを完全に張っておきながら、最後の最後で詰めを誤りましたが、今度こそ間違えるわけにはいきません。46. Qf1! Qc8 47. Rc3+ も確実な勝ちです。
46... Kb6 47. Qa2
これで黒のキングはどうしようもなく、黒はメイトを防ぐためにルークを捨てざるをえません。47... Qxg4+ が見えたときは少し冷や汗が出ましたが、a2 のクイーンはきちんと守りの駒がいました(笑)
47... Qxg4+ 48. hxg4 Rh2+ 49. Kf1 Rh1+ 50. Kg2 Rh2+ 51. Kg1 Rxa2 52. Rxa2 Nxd4
これでダブルエクスチェンジアップになった白は、2つのパスポーンを丁寧に押し進めて、ゲームを終わらせるだけです。
53. Rd3 Be5 54. Rg2 Kc5 55. g5 Ne6 56. g6 Ng7 57. Rc2+ Kd6 58. b4 d4 59. b5 Ne6 60. b6 Nc5 61. Rxc5 Kxc5 62. b7 Kc6 63. g7 1-0
、
2年ぶりのGM戦勝利は、前回と同じ対戦相手、セルビアのIlincic からでした。これで前半戦で早くも2つ目の白星を得て、トーナメントをリードしています。さらに、もう結果をTwitter で知らせているので書いてしまいますが、今日の午前中に行われたFominyh 戦も無事に勝ち、貯金を3つに伸ばしています。これにより、ライブレイティングは自己最高の2392となり、これから午後に行われるBetaneli 戦で白星を収めれば、レイティングはちょうど2400に乗ります! これからノームではなく、初めてIM タイトルのかかった試合を行ってきます。かなり緊張しますが、なんとか無事に終わると良いですね。
12/16 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 15:00 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/18 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473) 1/2-1/2
12/19 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) 1-0
12/20 09:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/20 16:00 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/21 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319)
12/22 15:00 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/23 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)
+3 Kojima
+1 Varga, Santarius
0 Fominyh
-2 Ilincic
-3 Betaneli
Santarius - Fominyh は非常に手数の長い熱戦になりましたが、最終的にはドロー。Santarius は間違いなく、2300代後半の実力があるでしょう。そしてイケメンです。
この日は酒井くんも、午前午後ともに1800台に勝って、レイティングを大きく稼いでいます。昨年、Sean, Lyell たちと足を運んだケーキ屋に赴き、祝杯を挙げました。この調子で2人とも、日本にレイティングを持って帰りたいですね。
4 件のコメント:
2400点突破おめでとうございます▼o・~・o▼ 黒は...26 a5 とかクイーンサイドの白ポーンをdark squareにfixさせようとするふりをしてキングの逃げ道を作り 27 a4 とかしようものなら ...Rxh2 とか一発狙ってみたほうが良かったのでしょうか・・・? ▽o・~・o▽ 汗
黒のどの手が悪手でポーンダウンになってしまったのでしょうか?
ピカチュウさん ありがとうございます! 詳しくはまた、今夜の記事で~。
匿名さん 記事の中では詳しく書かなかったですが、黒マスビショップの利きを開こうとした9... d5 は欲張りすぎで、ピースの展開を遅らせてしまったことが痛手となりましたね。ここは9... Nf6 がベターだと思います。
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