2014/12/13

FS 2014 December GM 7th round


7R の相手は最後のGM、ロシアのFominyh です。今回、彼にだけはあっさり負けるわけにはいかないと思っていました。なぜなら、16日から始まるケチケメートのGM トーナメントにも彼も出場するので、今月さらに2試合指すことになるためです。「こいつ大したことないな」と思われるような負け方をすれば、ケチケメートでの試合にも支障をきたすでしょう。前日の負けを忘れるためにも、気合を入れてゲームに向かいます。

Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
First Saturday Dec 2014 GM (7)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. e3 Bg4 5. h3 Bh5 6. Nbd2 e6 7. g4 Bg6 8. Ne5 Nbd7 9. Nxg6 hxg6 10. Bg2 g5 11. O-O?!



オリンピアードのオーストリア戦、Shengelia David のゲームの流れと同じスタートでしたが、Fominyh はここでキャスリングをします。キングサイドへ逃がしたキングは、多少や危うくも見えますが...

11... Be7 12. Re1 Qc7 13. a3 O-O-O 14. b4 Ne4?!


私のアイディアは、次にf7-f5 とポーンを伸ばして白キングの守りを薄くすることでしたが、ここは少し勇み足で、白のクイーンサイドアタックを軽視していました。ここからFominyh は、非常に美しいアイディアを見せてくれます。代わりに14... dxc4! 15. Nxc4 Nb6 16. Qd3 Nxc4 17. Qxc4 Nd5=/+ と指していれば、黒のピースは攻守バランス良く使えました。

15. b5! cxb5?



ここは15... Ndf6 16. bxc6 Qxc6 と指すほうが良かったようです。白はどのようにポーンを取り返してくるのか、はっきりと分からなかったため、取って勝負を選択します。

16. cxd5! exd5 17. Nxe4! dxe4 18. Bd2!


白は慌てず、ますはcファイルを使えるようにします。黒はキングを避けるしかないでしょう。

18... Kb8 19. Qb1



私はQd1-Qb3 ばかりを考えていましたが、白はこの手でb5 とe4 をダブルアタックし、どちらかを取り返せば満足なポジションになるでしょう。

19... f5


この手は成立していない可能性が高いことは分かっていましたが、大人しくb5 を取らせる展開は、ゆっくり白がアドバンテージを拡大していけるだろうと考えていました。19... Nf6 20. Qxb5 Rd5 21. Qb3+/= このコンピュータの指摘する手筋に比べて、私はよりポジションを複雑にすることを望みます。

20. Qxb5 fxg4 21. Rec1 Qd6?!



ここも私は、クイーンを交換してしまえば勝負にならないだろうと判断しました。しかし、実際には読み落としがあり、21... Qb6 22. Qxb6 Nxb6 23. hxg4+/- この展開で我慢するしかありません。

22. Rab1?


ここは白ははっきりと、勝ちのラインを逃しています。22. Bxe4! Nb6 23. Bb4+- この手順であれば、白はe4 のポーンを掠め取りながら、b7 へのメイトスレットを作っており、本譜よりずっと良かったでしょう。

22... Nb6 23. Bb4 Qe6 24. Bxe7 Qxe7 25. hxg4



Fominyh は、これで十分に白が良いと読んだのでしょう。じっくりと時間を使い、このポジションへと導きました。私はここから、白キングへの攻撃のチャンスが残っていないか考えますが、黒マスビショップまで交換してしまっては、有効な攻撃は残っていないでしょう。それならば、e4 とg5 を守るように、丁寧に指すほかありません。

25... Rd5 26. Rc5 Rhd8 27. a4?


これは私にとって、天の助けだと思いました。27. Rxd5! Rxd5 28. Qb4! Rd7 29. Qxe7 Rxe7 30. Rb5+/- という流れであれば、黒はバラバラのポーンを支えきることはできず、負けは避けられなかったでしょう。

27... Rxc5 28. dxc5 Rd5!



私が25手目でイメージしたポジションです。黒はc5 のポーンに反撃をすることで、ひとまずは危機を脱しています。ここから、難解なエンドゲームへ突入していきます。

29. Qb4 Rxc5 30. Qxe4!?


30. Bxe4!? Rc1+ 31. Kg2 Qxb4 32. Rxb4 Rc4 33. Rxc4 Nxc4= ならば、黒にとって不満のあるエンドゲームではないでしょう。私はこのクイーン交換は、すぐにa4 が落ちるので黒が良くなるのではないかと最初は考えていましたが、もちろん、そんなに簡単であるはずがありません。

30... Qxe4 31. Bxe4 Kc7!?



31... Rc4 32. f3 (32. Bf3!?) 32... Rxa4 33. Rb5! (これが白の軸となるカウンタープレーです。) 33... Rc4 34. Rxg5 Rc7 35. Kf2 Na4= コンピュータの評価はイコールですが、私は多少このポジションは危ないと考え、なるべく反撃のないように、a4 を取る手段を考えていました。

32. Kg2 a6 33. Kf3 Ra5 34. Rh1!


白が使えるオープンファイルは、c、dファイルのみだと思っていたので、この手を見てかなり焦りました。34. Rc1+ Kb8 35. Rb1 Kc7= これでドローになるのであれば、黒としては願ったりかなったりです。

34... Nc4!



時間のほとんど無い中、この手に運命を託すことにします。g5 とg7 を単に取られるだけでは分が悪いので、まずはNc4-Nd2+ のスレットを作りつつ、bポーンを進める準備をしておきます。

35. Bf5 Kd6!


キングを7段目にとどめておけば、次のRh1-Rh7 が困ります。エンドゲームでは、キングをなるべく前進させるものだと、先月、Kasparov も教えてくれました。

36. Rh7 g6!



g7 のポーンはルークではなく、ビショップで取らせることで、次のg5 へのアタックを1手遅らせます。

37. Bxg6 Rxa4!


ここで黒もaポーンを取り、コネクテッドパスポーンを作ります。37... Ne5+ 38. Kg3 Rxa4 (ビショップを取る手は、Rh7-Rh6 があるため、うまくありません。) 39. Bf5 b5 40. Rg7 b4 41. Rxg5 b3 42. Rg8 Nc6= でも問題ないというのがコンピュータの評価ですが、ナイトはc4 に残しておくことで、b2 までポーンが進んだ際に、それをサポートしておくほうが分かりやすいと考えました。

38. Bf5 b5 39. Rh5 b4 40. Rxg5 b3



こうなれば、黒はg5 のポーンを捨て、ポーンレースで勝負するしかないでしょう。g7-g6 の絶妙なポーン捨てにより得たテンポで、黒はかなり先までポーンを伸ばすことに成功しました。さらにここで追加の30分を得て、余裕を持つことができました。

41. Rg6+ Kc5 42. Rg8 b2


ここは相当考えて、ポーンを7段目まで進めます。ルークがbポーンの後ろに回る手も考えましたが、結局、Ra4-Ra1 の可能性も残しておくことにしました。

43. Rc8+



試合中、この手で負けの可能性は少なくとも無くなったと思いました。それは、白キングでgポーンwのブロックしに行けるためです。43. Rb8!? Ra1 44. g5 Rg1 45. g6 a5 46. Ke2 a4 の場合、実際は黒にわずかなチャンスがあるようですが、試合中はそこまで正確に判断ができません。

43... Kd6 44. Rd8+ Ke5 45. Re8+ Kf6 46. Rf8+ Ke7 47. Rb8


ルークで追い回された黒キングは、最終的にe7 に落ち着きました。自分のポーンのサポートはできませんが、代わりに白のパスポーンを止めにいける位置です。

47... a5 48. g5 Rb4



最後はかなりぎりぎりまで考え、安全策を取ることにしました。実際悩んでいたもう1つの候補手は全然だめで、白の勝ちでした。48... Ra1?? 49. Rb7+! Kd6 50. Kg2+-

49. Rxb4 axb4 50. Ke2 Na3 51. f4 1/2-1/2


最後はビショップを貰っても、残った1つのポーンを捨てるしかありません。ここでFominyh のオファーを受け、長くタフなゲームをドローで終わらせました。30手目後半は、我ながらエンドゲームでうまく指せたと思っています。中盤はぐだぐだでしたが、ここだけは成長の証がちょっぴり見えている気がします。

First Saturday GM Dec 2014

12/06 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fang, X (CHN, 2295) 1/2-1/2
12/07 Flumbort, A (GM, HUN, 2463) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
12/08 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Medvegy, Z (GM, HUN, 2527) 0-1
12/09 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Arngrimsson, D (IM, ISL, 2386) 1-0
12/10 Benkovic, P (IM, SRB, 2395) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/11 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Dragnev, V (FM, AUT, 2364) 0-1
12/12 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/13 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Golubov, S (RUS, 2382)
12/14 Free Day
12/15 Torma, R (IM, HUN, 2417) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)

+4 Medvegy, Z
+3 Torma, R
+2 Flumbort, A
+1 Fominyh, A, Fang, X
0 Benkovic, P
-1 Golubov, S
-2 Kojima, S
-3 Dragnev, V
-5 Arngrimsson, D

さぁ残すところ、今月のFS もあと2試合です。この日はTorma が好調だったFang を、Flumbort がGolubov を破りました。私としては、8R の相手が直前で白を持って敗れるのはありがたいことです。しかし、Dragnev 戦のこともありますので、白とは言え、しっかり指してポイントを取れるようにしてきたいですね。


前日のDragnev 戦では、かなりがっつりオープニングの準備をしていたにもかかわらず、初手から外されるという事態だったので、この日は準備はあっさり目に。その代わりに空いた時間は、気になっていたカフェで、ティラミスを買ってきて食べました。去年のイタリアの記事でもさんざん登場したティラミスは、「私を元気にして」という意味があり、前日に落ち込む黒星のあった私にぴったりのお菓子です。

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